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避難用作品投下スレ3

243クールと湯気と変人と/サイカイ:2008/01/26(土) 22:39:05 ID:8AMPA8vg0
 その事実は往人に行動を起こさせるには十分な動機であった。
 往人自身も既に人を、殺人鬼とはいえ人を殺している。だから文句を言える立場でないのは分かっている。だが……
「だからと言って、ガキを……クソ生意気だったがまだ小さいガキを平気で殺すような奴を放っておくわけにはいかないからな。それに、あいつは」
 言いかけて、その先の言葉は飲み込んでおくことにした。旅芸人というのは往々にして侮蔑の目で見られることもある。汚いものを見るような目で見られることも一度や二度ではない。もうそれにも慣れてしまったが……だが、みちるはそんな自分にも友達のように接してくれた。もちろんこれは往人から見た主観的なものであり、実際はどうだったかは分からない。けれども往人は自分の見方が間違っていないと確信している。
 みちるだけじゃない、観鈴も、佳乃も、美凪も……往人をそんな目で見ることはなかった。だからこそ、倒さなくてはならないのだ。危害を加えようとする殺人鬼を。どんな理由があったとしてもだ。

 それで、自分が憎まれるような殺人鬼になったとしても。

「……ま、元々俺は一人だしな」
 別に殺されたところで誰もそんなに悲しみはしないだろう。したとしてもそれは一時の感傷だ。いやむしろ、ここには死があり過ぎるほど渦巻いている。特に気にされることもないかもしれない。その方が、往人としては楽なのであるが。
「……待てよ?」
 ホテルから随分下ったところで、往人は何か重要なことを聞き逃していたことに気付きかけていた。

「あ」
 しまった、とでも言うように口をぽかんと開いたまま呆然とする。あのマシンガン男がどっちから来てどこへ行ったのか聞いてない。もしかしたら間逆の方向に走っているのではないか?
「……」
 一瞬、戻ろうかという考えが往人の頭を過ぎる。しかしそれはあまりにも格好悪いことであったし、そんなことをしていてはタイムロスになる。

 散々考え、十数度ホテル方面と平瀬村方面に方向を変えた挙句、往人は自分の勘が間違っていないと信じて今まで進んでいた方向に進むことにした。
 なに、見つからないなら見つからないで他に何かやりようもあるさ。まずはこの先の平瀬村で情報を仕入れることにしよう……
 無理矢理自分を納得させながら、往人は足を進めていった。


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