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避難用作品投下スレ2

774或る愛の使徒:2007/06/28(木) 16:58:31 ID:GXOQZrfA0
「クソが……人が、ヒトがコワれるの、は……、畜生が、ああ、楽しい、タノシイ、楽しいな……ッ!
 待ってろ、もう少しだ、畜生め……!」

叫ぶや、虚空に向けられていた高槻の視線が、唐突に彰を捉えた。
ふるふると奇妙に揺れる眼に、彰は思わずへたり込んでしまう。
端的に言って、それは狂人の瞳だった。
荒い息をつきながら、高槻が搾り出すように彰へと語りかける。

「ああ……クソ、怖がらせちまってるよな……、ごめんな、彰……。
 ……俺、俺さ、俺ン中に、おかしな俺がいて……うるせえ、黙ってろッ……!
 ああ、ごめんな、彰……お前のことじゃねえよ……クソ、時間、ねえな……」

座り込んだまま、彰は声も出せずに高槻を見上げていた。
何をきっかけに激発するか、知れなかった。
呼吸の音や鼓動ですら、高槻を刺激するのではないかと思われた。
両腕で自らを抱きしめるようにして、彰はただ震えていた。

「うるせえ! うるせえな! すぐだ、すぐに壊してやる! 待ってろ、それでいいんだろうがッ!
 黙ってろ、誰でも、コワせりゃ誰でもいいんだろうが、手前ェはッ!」
「……ひッ……!?」

彰が、小さく悲鳴を上げた。
瞬く間に、目尻に涙の粒が溜まっていく。
見上げた高槻の手、そのぶるぶると定まらない手に、何かが握られていた。
掌に乗るほどの、小さな持ち手。尖った先端には、何かの汚れが染み付いている。

「そ……れ……、僕、の……」

高槻が握り締めていたのは、小さなアイスピックだった。
乾いた血で汚れたそれは、紛れもなく、彰の隠し持っていたものだった。
どうして、と考える余裕もなかった。
彰の視線はまるで吸い込まれるように、その鋭い先端から離れない。
がたがたと、歯の根が鳴っていた。

「たす、け……や、め……」
「―――うるせえッ!」
「ひぁぁ……っ!」


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