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避難用作品投下スレ2

45963番目のマルタ:2007/05/31(木) 03:41:44 ID:W2QwV58E0
はだけたシャツの胸元に鼻先を突っ込んで顔をしかめながら、晴子が言う。
つまらなそうなその視線の先、モニタに映っていたのは、黒い影だった。
島の北西部、高原池の畔に佇むそれは、跪いてなお周囲の木々より頭一つ抜きん出ている。
木々の緑と紺碧の池、そして漆黒と銀の機体という色彩のコントラストはまるで一幅の絵画のようで、
その周辺だけ時間が静止しているかのようにも感じられた。

「キレイなもんやなー、……ぴくりとも動かへん」

にたにたと気味の悪い微笑みを浮かべる晴子。
すぐにウルトの声が返ってくる。

『……カミュにも大神の加護というものがあります。それに、あの子ならこの程度の術法、
 容易くかわしてみせるでしょう』
「せやから動かへんねやろ」
『……』

沈黙が降りる。
狭いコクピットの中に小さく、奇妙な音色の咆哮が響いていた。
直下、巨大な少女たちの哭く声だった。
額にかかるほつれ毛をかき上げた晴子の視線の先で、光が膨れ上がっていく。

「ハ、ええ感じで気合入っとるやん。……黒んぼの方は、顔上げようともせぇへんな」
『……まさか、カミュの身に何か……』
「どうやろなあ。盛大にぶっ壊れてくれたら笑えるんやけどなあ」

言って、晴子が乱杭歯を見せて笑んだ瞬間。
太陽を思わせる光が、爆ぜた。
絶対の死を内包する蒼白い光芒が、その行く手に存在する何もかもを焼き尽くしながら、黒い機体へ向けて迸る。

『カミュ―――!』


******


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