したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

避難用作品投下スレ2

43深淵に秘めたる想い:2007/04/25(水) 22:40:52 ID:.QizSAos0
「何だと!?」
そこで柳川の胸を、驚愕をよぎった。
柳川の剛剣が目標に達する寸前で、リサが横方向に軽やかなステップを踏んだのだ。
リサは迫る一撃からあっさりと身を躱すと、そのまま腰を大きく捻らせて鋭い回転蹴りを放ってきた。
柳川は慌てて後ろへ跳ねようとしたが、間に合わない。
半ば弾き飛ばされる形で後退し、苦しげな表情で蹴られた腹部を押さえた。
(……どういう事だ? 俺はあの女の身体に、間違いなく青矢を掠らせた筈だ)
どうして敵が何事も無かったかのように反撃に移れたのか、まるで理解出来なかった。
その疑問を見透かしたかのように、リサが口元を吊り上げる。
それから腰に手を当てて、余裕の表情で口を開いた。
「その矢は確か、麻酔薬が塗ってるのよね? でも悪いけど私にそういった類の薬は一切効かないわ。
 職業柄――そういう身体なのよ、私」
それで柳川は全てを理解した。この女の素性は知らないが、軍の関係者なのは間違いない。
そして、そういった裏の世界で生きる人間ならば、薬への耐性をつける訓練ないしは実験をしていても可笑しくは無いのだ。

「クッ……!」
柳川は一旦仕切り直すべく、大きく後ろへ飛んだ。
身体の節々に走る痛み、乱れる呼吸。
左腕は一度攻撃を受けたものの、まだ動く。骨に罅が入っているかも知れないが、まだ動く。
しかし先程の不意を突く回し蹴りは不味かった――恐らく、腹部の骨が一本、折れている。
救いは日本刀がよほど出来が良い品なのか、未だに罅一つ入っていない事だけだった。
「グ……ハァ……ハァ…………」
外部だけでなく、内臓にもダメージを受けている所為で、時折喉の奥から血が溢れそうになる。
「苦しそうね。眼は闘志を失っていないようだけど、身体の方はそろそろ限界かしら?」
悠々と話すリサの身体は、戦いが始まる前の姿と見比べてもなんら遜色は無い。
手にしたトンファーも表面こそ木製である為にボロボロとなっているが、中に仕込まれた頑強な鉄芯は健在だった。
「貴様、本当に人間か……!」
「ええ、生物学的にはその筈よ。けれどね、とっくの昔に私は人間なんて捨ててるわ。
 ある時は狡猾な雌狐として、ある時は獰猛な兵士として目的を果たす、ただの兵器よ」
リサは冷たい声でそう言うと、地面を大きく蹴った。
金色の髪が翻り、影が柳川の下へ迫り来る。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板