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避難用作品投下スレ2

34深淵に秘めたる想い:2007/04/25(水) 22:34:49 ID:.QizSAos0
「――危ない所でしたね」
「ええ。本当にね……」
工場内部に二人の女の声がする。
一人は有紀寧、そしてもう一人は――敬介に決死の攻撃を仕掛けられた筈の、リサだった。
リサは背中を冷や汗でびっしょりと濡らしながら、後頭部を砕かれた敬介の死体を眺め下ろしていた。
あの時、間違いなく自分は死にゆく運命にあった。
その運命を捻じ曲げたのは、ライターの側面に見える、小さな罅だろう。
その罅が自分達との戦いの時に生成されたものか、それより以前からのものかは分からないが――ともかくそれが原因で、ライターより燃料が漏れ出たのだろう。
敬介のライターには十分な燃料が無く、火を巻き起こす事が出来なかった。
結果として、ライターのスイッチを入れても何も起こらず、唸りを上げるトンファーが敬介の頭部を破壊したのだ。


リサが頬に付着した汗を拭い取り、ゆっくりと口を開いた。
「有紀寧。貴方は岡崎を連れて、佐祐理達を殺してきなさい」
それを聞いた有紀寧は、訝しむような表情となった。
相手は怪我人だらけな上に、工場内の戦いなら電動釘打ち機を持つ自分が相当有利なのだから、追撃する事自体に文句は無い。
しかしリサの口ぶりに少し違和感を覚え、有紀寧は問い掛けた。
「……それは構いませんが、リサさんはどうなさるおつもりで?」
「私は此処に残るわ――彼と決着をつけなければならないようだから」
リサが首を回した先、工場の正面入り口。有紀寧はその空間を眺め見る。
「……成る程、そういう事ですか」
そこには、白いカッターシャツで長身の体躯を包み、眼鏡の下には紅蓮の炎を宿した眼を持つ男。
『鬼の力』を持つ、正真正銘の人外――柳川祐也が立っていた。


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