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避難用作品投下スレ2

30深淵に秘めたる想い:2007/04/25(水) 22:31:53 ID:.QizSAos0

確かに、勝負は決まったも同然だった。
敬介と環は倒れ、留美だって体力を消耗してしまった。
ゆめみは右腕を破壊され、佐祐理も前から左肩を負傷している。
唯一珊瑚だけは無事であったが、彼女が殺されてしまった時点で全ては終わりなのだから、前線で戦う戦力としては数えられない。
対する敵は、三人とも余力十分である上に、新たな武器まで入手してしまったのだ。
(柳川さん……すみません。佐祐理達はここまでかも知れません……)
もう勝ち目など無い――いや元から勝算など、微塵も無かったのかもしれない。
たとえ自分達が全員五体満足な状態であったとしても、リサと有紀寧を打倒するなど出来ないのではないか。
そんな思いに駆られ、佐祐理の頭を深い絶望が支配する。
それは留美も、ゆめみも、珊瑚も同じで、誰もが悔しげに敵を睨みつける事しか出来ない。

「――それじゃ、キングを取らせて貰いましょうか」
リサは異形のような眼で珊瑚を睨みつけた後、ゆっくりと足を踏み出そうとする。
しかし突如足首に違和感を感じ、一歩も先に進めなくなった。
「……敬介?」
何本もの釘で腹を穿たれた筈の敬介が、リサの右足首をがっちりと掴んでいた。
敬介は大きく息を吸い込んで、人生最大の、そして恐らくは最後になるであろう絶叫を上げた。
「みんな、逃げろおおおおおおおおっ!!」
工場内に――いや、それどころか村中にさえ響き渡ったのではないかと思える程の声量。
その叫びは、絶望に打ちひしがれていた佐祐理達の心を揺れ動かす。
「早く……逃げてくれっ! 僕がリサ君を、止めていられる間に……!」
今度の声は、先程より随分と小さかった。
無理もないだろう。口の端から、次々と血の泡が吹き出ているのだから。
しかしそれでも、敬介の言葉は十分に伝わった。
敬介と留美達は面識が無いにも拘らず、心が伝わった。


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