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避難用作品投下スレ2

104娘の願い、母の願い:2007/05/01(火) 15:18:29 ID:RYnJ3lb.0
倒れこんだ秋子の視線の先……立っていては木に邪魔され見えなかった位置。
雨から逃げようともせずにその身で受け、立ち尽くす少女の後姿。
光も差さぬ暗闇。視界を奪う雨。
だが見誤う訳がない。
「……な、名雪? 名雪ぃぃぃっ!!」
痛みのことも忘れ、秋子は雨の中へと駆け出していた。
最愛の娘の下へ。

「あ、お母さん」
秋子の葛藤も知らぬそぶりで、名雪はゆっくりと振り返り笑顔を浮かべながら答えた。

……違和感を覚えた。
その顔も、その声も、ずっと一緒に暮らしてきた娘のものであることは間違いないはずなのに。
瞬間、秋子の足は止まっていた。
すぐに近寄って抱きしめたい衝動に狩られながら、体は拒絶するように秋子の体を押さえ込んでいた。
向かい合う二人の前に沈黙が訪れる。
声をかけたい、でも口が動かない。
――何故!?
名雪がくるりと秋子に背を向け、そして顔を天に向けた。
雨は名雪の額を、頬を、顔のすべてを打ち付けているにもかかわらう、一向に気にする様子もないまま天を仰ぎ続ける。
「――お母さんは……」
背を向けたまま、名雪がポツリと口を開く。
「放送を聞いた?」

直感でその問いが祐一の死を指すものだと気づく。
「祐一さんは……」
言葉に詰まる。
いまだかける言葉が思い立っていなかった。
だが秋子の答えを待たずして帰ってきた返事は、秋子の想像とはまた違ったものだった。


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