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避難用作品投下スレ

646誇りに懸けて:2007/03/14(水) 12:57:10 ID:m6Hl9Iu.0
街道と森の間は坂になっている。朋也は左右に用心しつつゆっくりと滑りおりた。遮るものがなくなって痛いくらいに日光が突き刺してくる。
見上げると、まだ太陽の位置は低くそれほど日が昇りきっていないように感じる。まだそんなに時間は経っていないのだろうか。
「岡崎さん? 下りるわよ」
特に何もしない朋也にしびれを切らしてか由真と風子が次々に下りてくる。
由真は周囲をきょろきょろと見回して誰もいないのを確認する。今のところ、街道には人の気配はない。
「大丈夫…みたいね。みちるー、下りてきてもいいわよ」
「んに、今行くよ――」
そう言ったときぱららららら、とタイプライターを叩くような音が聞こえて、みちるの体が不自然に跳ね上がった。
「…えっ、な、に、今の…音」
由真が声にならない声を上げた直後、バランスを崩したみちるが赤い色をした水飛沫を上げながら坂を転げ落ちてきた。
その顔が、身体が、べっとりとした鮮血に染まっている。
「――あ、あ…わぁぁぁーーーーっ!」
普段なら絶対に聞けないであろう、心底からの悲鳴を風子が上げ、ぺたりと地面にへたり込んだ。
「て…敵なのかっ!」
初めての敵襲に恐れ戸惑い、矢鱈滅多に周囲を見まわす朋也。武器と言えるものがない以上銃、しかも銃声から判断するにマシンガンの類には抵抗する術が無い。
『敵』はこちらの出方を窺っているようで出てこようとしない。だったら、すぐにでも逃げるのが得策ではあるのだが。
(みちる…)
ぴくりとも動かない仲間の遺体を放っておくのは――
「…ぅぅ…」
わずかに聞こえてきた呻き声に朋也は目を見張った。まだみちるは辛うじて生きていたのだ!
「みちるっ!」
朋也が悲鳴に近い声を上げて呼ぶ。呼ばれた当の本人は虚ろな目で必死に焦点を、呼びかけた主に対して合わせようとしていた。しかし出来ないと思ったのか、今度は震えている手を朋也へと伸ばそうとする。
「――ぉか、ざき、とも」
朋也の名前を呼ぼうとしたが、それはまたすぐに『タイプライター』に遮られた。
けたたましい音がしたかと思うと、もう一度だけみちるの体がびくん、と跳ねてそれきり動かなくなった。
「あっ」


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