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避難用作品投下スレ

638落穂拾い(前編):2007/03/11(日) 14:52:24 ID:9HYljyok0
「機関は死んでないみたい。燃料は十分あるわ」
「詩子は機械をいじれるのか?」
「原付のエンジンはいじったことあるけどねえ。船はないよ。でも四級小型船舶は取ってるから」
「ほう、船を操作できるのはありがたいな」
詩子の特技は期待できそうだ。
「乗馬とかお花とかお香も一通りはできるよ。あとクレー射撃もね」
「そんなこと聞いてないって……え? 詩子って、上流階級のお嬢様なのか?」
「フフフフ。秘密だよ」
「実は元華族の流れをくむ家系です。……って、嘘です」
いつの間にか緊張感は解けて冗談さえ言える雰囲気になっていた。
「この人を外に出そう。茜と詩子は足を持って」

結局女の身元は判らず、砂浜に埋葬することにした。
船を後に一行は歩き始める。
西日を浴び、浜には三人の長い影が映えた。
と、突然、茜が智代の腕をクイクイと引っ張った。
「ん? どうした」
茜は二人に手で座るよう指示する。
何事かと思っていると、砂浜に文字を書き始める。
【首輪の盗聴器のこと忘れてました。船を見つけたこと、喋ってまずくないですか?】
あっ、と軽い悲鳴を上げたが既に遅い。詩子を見ると同じように気まずい顔をしている。
【まずかったな。今は私達が生き残ることを考えようではないか】
──前向きに考えよう。
そのためにはまず、ウサギの指示通りに行動する者達──敵を斃さなければならない。
(望まずとも殺し合いをすることになるんだな)
立ち上がると暗い気分払拭するように沖の方を眺める。
あいにく大海原は見えなかった。泳いで渡れそうなほどの距離にある小さな島に遮られて。


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