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避難用作品投下スレ

323深夜の奇襲3:2007/01/23(火) 01:52:20 ID:O1m.R34I
迷いなど一切ない素早い動きでトカレフを構える、次の瞬間その引き金は連続して引かれていた。
放たれた銃弾は二発、それは正確に春夏の防弾アーマーに撃ち込まれる。
さすがの春夏も衝撃で尻餅をつく、その手からショットガンがこぼれた場面を目にし耕一は勝機を確信した。




この武装の差で彼が逆転できたのは、春夏自身の覚悟の違いに他ならない。
そもそも春夏の覚悟というのは「ゲームに乗って人を殺す覚悟」であり、「自分が死んでもいいから相手を殺す覚悟」ではない。

つまり、春夏も恐れているのだ。自身の、死を。
十人殺さなければ娘は死ぬ、だが自分が死んだ時点でもそれは同じ。
人を殺して、自分は生き抜くということ。
危険なリスクに乗ろうとしない、その姿勢を見抜いた耕一にストレートに攻め込まれたことで、今度は春夏の方が追い込まれる立場になった。

絶体絶命の春夏、トカレフに残った最後の一発で止めを刺すべく、耕一はさらに彼女に近づいてくる。
しかし春夏の執念も、ここで簡単に諦めがつくほど浅いものではない。
・・・・・・また、彼女の手数というのも取り落としたショットガンだけではない。それに固執する理由もないのだ。

警戒しながら近づいてくる耕一を横目に、春夏は自分の鞄の中身を漁った。
金属の塊が指先を掠める、先ほどまで使用していたのだから目的の物は簡単に見つけることができたようだ。
立ち止まり再び照準をこちらに合わせるべく耕一が構えをとろうとした時点で、春夏もマグナムをしっかりと握りこんでいた。
それは鞄の中という彼の視界には映らない場所で行われていた準備、彼女の姿勢のおかしさに耕一が気がついた時にはもう遅い。
正確な射撃をとろうとした、そのために敢えて作った間が仇となる。
なりふり構わず鞄の中から引き出した手の勢いで春夏は発砲してきた、耕一が身構える暇もなくそれは彼の利き腕を掠っていく。
めちゃくちゃな照準であったがお互いの距離が近いことが利点へと働いたことになる、くぐもった声を上げ膝をつく青年を見て今度は春夏にチャンスが訪れる。
二の腕辺りが赤く染まる様を冷静に一瞥し、その手からトカレフが取り落とされたことを確認した後春夏はそっと距離を詰め始めた。
顔を上げようとする青年の額にマグナムの切っ先を押し付ける、悔しそうな表情に罪悪感が沸かないでもないが・・・・・・春夏はそんな思いを表面には出さず、一定の声色で話しかけた。

「残念だったわね」
「本当だよ。ここまで来て、か」


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