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避難用作品投下スレ

1021すれ違う者達:2007/04/22(日) 10:44:50 ID:P3RNtTFE0
陰鬱な雨が天より際限無く降り注ぎ、それが森を覆う木の葉のカーテンと接触し、不快な音を奏でる。
木々の隙間より雨粒が零れ落ちる森の中を、河野貴明一行はゆめみを先頭に据えて進んでいた。
教会には留まれなくなった以上、当面の行き先は爆発音が聞こえてきた辺りだ。
当然ただ歩くだけで時間を食い潰すなどといった愚は犯さず、足を動かしながらも事情の説明を受ける。
「じゃあその、リサ=ヴィクセンって人が裏切って宮沢有紀寧に付いちゃったんやな?」
「ええ、そうです。リサさんは全く躊躇せず、佐祐理達に攻撃してきました……」
佐祐理はそう言って、包帯が巻きつけられた右肩を示して見せた。
包帯にこびり付いた鮮血が、佐祐理の受けた攻撃の凄まじさを雄弁に物語っていた。
「もしかしたらリサさん達ももう、教会の情報を入手しているかも知れません。そして、リサさんは多分軍の人間だと思います。
 そんな方に襲われてしまったら恐らくは……。だから私達は一刻も早く移動しなければならなかったんです」
その言葉を聞いて、ゆめみは少し疑問を感じた。
「でも相手は二人なんでしょう? 争いごとは嫌いですけど、私達全員で立ち向かえば十分に撃退出来るのでは……」
少なくとも人数面だけ見れば、自分達の方が圧倒的に優位だった。
何しろこっちは六人いるのだ。武器も十分過ぎる程揃っている。
幾ら相手が戦い慣れしている人間であろうとも、戦力面で劣っているとは到底思えなかった。
しかし――佐祐理の返答を待たずに、ささらがゆっくりと首を振った。
「私と貴明さんは、湯浅さんって人に会った事があるんだけど、その時にリサ=ヴィクセンって人について話を聞いたわ」
全員の視線が集中するのを確認してから、ささらは続けた。
「湯浅さんは言っていた……リサさんは世界トップクラスの実力を持ったエージェントだと」
「な――!?」
ささらの言葉を受けた珊瑚達は、背筋が凍りつくような戦慄に襲われた。
トップクラスのエージェント――即ち超一流の戦闘技術を誇る怪物が、ゲームに乗ってしまったのだ。
「リサさんが凄いのは何となく分かりましたけど、まさかそれ程とは……」
佐祐理もリサの正体までは知らなかった為、大きく動揺していた。
そして同時に、何故あの時柳川が撤退という選択肢を選んだのか、合点がいった。
柳川はリサの実力を見抜いていたからこそ、不利だと判断し自分一人で足止め役を買って出たのだ。
いくら柳川でもその道の達人が相手では、命を落としてしまった可能性も――言い表しようも無い不安が、佐祐理の胸を過ぎった。


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