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箱庭の伊織

1藤色ずきん ◆dBQtRqra3s:2013/03/04(月) 00:40:13
 容姿端麗。文武両道。そして才色兼備。
 私の周囲の人々は、私をそう褒め称える。両親然り。友人然り。そして妹然り。
 ハーフである母親譲りの美貌。ミステリー作家である父親譲りの知性。そして私の引き立て役である平凡な妹。この私、香坂伊織は生まれつき多くの才能を有している。
 私はそんな何不自由ない生活の中で何時しか自惚れ、今の高校生活がこのまま続くと信じていた。そう、今日この瞬間まで。

「ねえ、根倉さん。こんな所で待ち伏せて何の用なの?」
 空が橙色に染まり始める春の放課後の一幕。女子バスケットボール部の練習を終えた私は、眼前に立っているクラスメイトの根倉陽子にそう問う。
「……ウフフ……ウフフ……」
 長い黒髪で目元の表情を隠した根倉陽子ことネクラっ子は、私を小馬鹿にするかの如く薄気味悪い笑みを浮かべる。バスケットボール部のエースである私と違って背も低いし、均整の取れた私と違って胸回りも貧相だし、何となく哀れな人ねネクラっ子って。
「……香坂さんって完璧な人ですね。私は人間のオーラが見えるから、他の人より香坂さんの魅力が分かります……」
「だから何? こんな校舎裏で待ち伏せて愚直でも聞いてもらいたい訳? お生憎様。私は貴女と違って暇じゃないの!」
「ええ、そうですね……。私と違い、香坂さんは男の子を取っ替え引っ替えする程モテるから、そりゃあ暇じゃないですよね……」
 嫌味のつもりなのだろうか? ネクラっ子の癖に生意気ね。先程から変な呪文も唱えているし、男子に馬鹿にされて呪いでも覚えたのかしら。
「香坂さんは運動神経もスタイルもいいし、私と違って男子にモテモテだから、暇じゃないって分かっています……。でも、時間の心配なんかしないで下さい。貴女はもうすぐ暇になりますから……」
 俯き加減に歩を進めながらネクラっ子はそう呟き、私の腰回りを冷たい指先で触る。この娘はもしかして同性愛の気があるのだろうか? もしかして私の裸体の写真でもバラまくつもり? でもネクラっ子の細腕じゃ、私に返り討ちに合うだけなのにね。
 そもそも私はネクラっ子に恨みを買った覚えはない。ネクラっ子って渾名は私が付けた訳じゃないし、ネクラっ子の前では「根倉さん」って呼んでるのに。
「……ウフフ……。そんなに難しい顔をしないで。私は香坂さんに呪いを掛けただけですから……」
「のっ、呪い……!? そんな物が存在する訳ないでしょ?」
 放課後の校舎裏で二人っきりになっているからだろうか。普段の私なら呪いなんて鼻で笑うのに。今日の私は平静を装っても、その実、内心の動揺が隠せなかった。自分でも驚く程に。
 絵本に出てくる魔女の様に、私から美貌を奪うつもりなのだろうか?
 それとも私の知性を自分の物にして、溜飲を下げるつもりなのだろうか?
「私の呪いは、そんなに悪質なものじゃないですよ……。十三年から十四年くらいで自然に解ける、そんな優しい呪いです……」
「十三年!?」
 何の呪いか知らないし、ネクラっ子の呪術なんて半信半疑だけど、十三年から十四年も呪われたら溜まったものではない。そう思った矢先。


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