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『プログⅩ』

1とら:2010/01/26(火) 22:35:08
 プログⅩこと、レイミが活躍する話をいくつか書いてみたので、お楽しみください。
『リバースⅩ』を真っ先に上げさせていただきます。

2とら:2010/01/26(火) 22:36:11

『リバースⅩ』


 世界制服を企む悪の秘密結社、『ナロス党』は度重なる敗北に頭を悩ませていた。
原因は彼らの企みを常に邪魔する正義のヒロイン『プログⅩ』だ。『プログⅩ』という
名前は本来、彼女の祖父が開発した薬の名前である。注射をすればその肉体は鋼鉄の様
な強靭さと絹のようなしなやかさをあわせ持つようになり、量によってはさらに巨大化
させ、使用者を巨人にする。また成長途中の子供に使えば、成人するまで急成長させる
事も可能な脅威の薬だ。プログⅩはその薬を使い、彼らの企みを何度も阻止していた。
 ナロス党は世界制服の野望のため、その薬を手に入れようとしたが、正義のヒロイン
『プログⅩ』はスーパーレディを絵に描いたような存在で、付け入る隙を殆ど与えてくれ
なかった。


 ナロス党の総統は幹部達で『プログⅩ』を倒すための会議を開いた。
「……いったいどうすればヤツを倒せるのだ……」
 開口一番、総統はそう切り出す。
「いっそ、『プログⅩ』とは一切戦わないというのはどうでしょうか? 目的だけ遂行し、
ヤツが現れたら一目散に逃げ出す。……こうすればヤツは我々の邪魔はできません」
「馬鹿者! そんな逃げ腰でいれば部下達の信頼を失うわ! 軍人は弱いものは尊敬しない!
まさか、この意見に賛成の者は居ないだろうな!」
「……総統」
「……我々は皆、彼の意見に賛成です……。時間は掛かりますが、我々の力ならヤツと
戦わずとも世界制服が可能な筈です!」
『プログⅩ』相手に負け続けているが彼ら幹部は優秀であり、皆現実主義者だった。
戦っても勝てない相手と戦う必要など無い、……それに皆『プログⅩ』との戦いで疲れきり、
心も折れそうになっていた。


「……解った。ならばあの『プログⅩ』を倒せると思うものだけここに残れ」
 幹部達はそう言われると次々と出て行き、総統の前には3人しか残らなかった。
「……なんだこれは……どいつもこいつもそれでもナロス党の誇る戦士か! いや、それ以上
に帝国国家の軍人の男か! 女1人に負けて悔しくないのかッ!!!! 畜生めーッ!」
 会議場の外では総統の現実を見ない言葉に彼の愛人が涙を流していた。……実際のところ、
総統とて勝算が無い事は判ってはいたが、部下の余りの情けなさに感情を爆発させるしか無く
なっていた。
「……済まない、君たちはやる気があるのだったな。案があったらどんどん言ってくれ」
「――総統、わたしには『プログⅩ』を倒す策があります」
 部屋に残った3人の1人が静かに口を開いた。


 時は数ヶ月前に遡る。ナロス党は遂に『プログⅩ』の研究を手に入れる事が出来た。この成果に
ナロス党は上から下まで沸き立った。しかし、それは『プログⅩ』の研究のごく一部で『プログⅩ』
を作り出すには到らなかった。ナロス党はまたも正義のヒロイン『プログⅩ』に出し抜かれた、
……かに思えた。
 落胆したナロス党の幹部達はそれを場末の研究部に送った。誰ももう期待はしていなかったが、
一部の者とこの研究部は執念で研究を続けた。


「……毎日毎日この『プログⅩ』の出来損ないを作って何になるというんでしょうか」
 女性研究員はこの研究部に飽き飽きしていた。お金は無いし、備品は悪いし古臭い。その上、
作らされるのは他人の研究のパチモノ。……こんな事をする為にここに入った訳では無いというのに。
「言うな! いつかコレからあの『プログⅩ』をも上回るモノを作り出して、ケチな連中を見返して
やるのだ!」
 そう息を巻く研究部長の薬品を入れたフラスコには、だいぶヒビが入っている。中身が漏れないのが
奇跡のように思える。
 ……無理でしょ。彼女はその言葉を心の中だけで、もう数え切れない程言っている。
「さあ! この薬を試験して来い!」
「はいはい……」
 今度は超能力を研究する部署にでも、転属を願い出てみるか。そう思いながら、彼女はフラスコを
受け取る。だが、次の瞬間フラスコは何と持ち手が取れてしまい床に叩き付けられ、中身もなにも全て
飛び散ってしまった。
「ああ……。だから、貧乏なところはイヤなのよ……」
「大変だ! 急いでモップを持ってこないと!」
 研究部長が大急ぎでモップを取りに行った。女性研究員の方もフラスコの破片を拾おうとする、
……だが何かがおかしい。
「た、助けて!」

「お、おい! 君、一体どうしたんだ!」
 暫く経って、モップを手に戻ってきた部長が見たのは、白衣の中でもがく小さな女の子の姿だった。


 ……これが後に正義のヒロイン『プログⅩ』を最大のピンチに陥れる悪魔の薬、『リバースⅩ』
誕生と発見の瞬間だった……。

3名無しなメルモ:2010/01/27(水) 14:28:42
『リバースⅩ』:2


 正義のヒロイン『プログⅩ』ことレイミは、家でゆっくりとくつろいでいた。最近は出動も無く、
専ら『プログⅩ』の研究に専念していた。いつもは世界制服を企む秘密結社、遠い星から来た異星人、
あるいは地底人や知性を持った植物に諜報組織を相手に大立ち回りを演じている彼女だが、今はただの
休日を楽しむ女の子だった。


「ふぅ……、さっぱりした。ミミー! シャワー開いたわよ、あなたも入りなさい!」
「はい! レイミさん!」
 ここ、ハナマル研究所でレイミは少女ミミーとともに研究員と助手として働いていた。正義のヒロイン
として活動している時以外はこの研究所で『プログⅩ』や新素材の研究を行っていた。
「……最近はナロス党も活動していないみたいだし、思う存分羽が伸ばせたな〜。いつもこういうのなら
いいんだけど……」
 先日、ナロス党に彼女が行った『プログⅩ』の研究が盗まれるということが有ったのだが、幸い一部のみで
済み、『プログⅩ』が悪人達に悪用されるような事は無かった。
 レイミはグラスにミルクを注ぎ、プログⅩスーツを眺める。このスーツは恩師であるハナマル教授が
開発した特殊ゴムで作られており、このスーツなら巨大化しても破れる事は無かった。
(巨大化しても大丈夫な下着があれば言う事ないんだけど、ゴムの下着っていうのもね……)
 実は以前にゴムの下着も作ってみたのだが、着け心地があまりに悪かった為、今も彼女はスーツを着るとき
下には何も着けていない。


 注いだミルクを飲みながら、レイミは平和な街の夜景を眺める。
(いつか本当の平和が訪れて、『プログⅩ』以外の研究にも打ち込める日がきたらな……)
『プログⅩ』は止むを得ず彼女のライフワークとなっているが、彼女自身は兵器の様な『プログⅩ』
ではなく日用品や新素材の研究開発という形で人の役に立ちたかった。そう、彼女の為にプログⅩスーツを
作り出したハナマル教授のように……。
「レイミさんッ!」
 ミミーが突然駆け込んできた。シャワーの途中だったのか、バスタオル1枚だ。
「ミミー! どうしたの!」
 そう質問しながらもレイミは何が起こったのか薄々気付いていた。
「ナロス党が暴れています! レイミさん、出動です!」


 レイミが到着した時、ナロス党は既に街全体を占拠していた。武装した兵隊や装甲車までいて
すぐに撃退する事などとても無理に思えた。プログⅩ以外は……。
「ここまで運んでくれてありがとう、あなたもすぐに逃げて!」
「レイミさん、グッドラック!」
 ヘリはレイミを運び終えるとすぐさま飛び去っていった。冷たいようだが、これが一番お互いにとって
安全な方法だった。ヘリを見送るとレイミはナロス党員の方へと向き直る。
「ナロス党! 覚悟しなさい!」
 レイミはポケットから万年筆を取り出す。この万年筆は実は注射器になっており、この中に『プログⅩ』
が入っているのだった。レイミは目盛りを5に合わせ、自分に『プログⅩ』を注射する。するとレイミの身体
は膨れ上がるように巨大化した。つま先から指先までをぴったりと覆うスーツも、巨大化に合わせる様に伸び
ていく。
 巨大化はすぐに終わった。レイミは手を開いたり閉じたりして、異常が無いか確かめる。スーツの方も
どこも破れてはいない。
(巨大化すると胸とお尻のラインが出ちゃうのがいつも気になるけど……問題は無いわ!)
 どれ程の色気や美貌があってもそれが恐ろしい敵では感じる暇など在りはしない。今、ナロス党の者達が
感じている感情は“恐怖”であった。……一部の者達を除いては……。
 巨大化したレイミは兵士達を相手に構えをとる、街の平和を守るために!
(待っててね、みんな。すぐにナロス党の奴らを追い払ってあげるから!!)

4名無しなメルモ:2010/01/27(水) 14:29:16
『リバースⅩ』:3


 ナロス党はレイミに対して攻撃を始めた。装甲車は機銃、歩兵はアサルトライフルで
戦うが、勿論鋼鉄のような身体を誇る彼女には通用する事は無い。
(とにかく前に出ないと……!)
 早く終わらせる事と流れ弾を防ぐ為、レイミは前に出て戦闘員達を蹴散らし、装甲車を
踏みつけて大破させる。

(……この調子だと、すぐに終わりそうね)
 彼女に怖気づいたのか、装甲車も歩兵も後退し始める。
(まったく、そんなんなら騒ぎなんて起こさないでよね)
 そう頭の中で愚痴りながら、レイミはナロス党を追う。指揮官、最悪でも部隊長は捕まえて
おかないと、何の為にここを襲ったのかが解らなくなるからだ。解らなければ、次に何処が
襲われるか見当がつかない。次に襲われるのは別の街かもしれないし、別の街かもしれない
のだ。
 そうして逃げた連中を追うと突如、開けた広場に出た。気が付くと、レイミは囲まれていた。
ポン、と間の抜けたような音が響く。足元を見ると、ごま粒のように見えるものがいくつも
転がっていた。
(なにこれ……?)

 そう思った途端、ブシュー! とそれらから煙が吐き出された。
(もしかして毒ガス!? だとしたら他の人達が危ない!!)
 しかし煙は民家の方へ行かず、戦闘員たちもガス榴弾?を撃ち続けた。そして、煙は辺りを
真っ白にして、何も見えなくなった……。
(目くらましのつもり? それに真っ白になったら攻撃が止んだ……。何を考えてるの?)
 何も見えなくなったレイミは、近くの建物の影に近づき、身を潜めた。
(……よく考えたらもう避難は終わってるし、殆ど風が無いからさっきのビルにも行かないわ。
毒だとしても、あたしには効かないはずだし。……ナロス党は一体何を考えているの?)
 その疑問はすぐに解ける。視界が真っ白で気付きにくかったが、建物に近づいた事で異変
に彼女は気がついた。

(な、なにこれ! 建物がどんどん大きくなってる……!? 違う! あたしが小さくなってるの!)
 まだ『プログⅩ』の効果が切れる頃では無い筈だった。だがしかし、現に彼女の身体はドンドン元の
大きさに戻ろうとしていた。原因があるとすれば、この煙しか有り得なかった。
(元の大きさになったら『プログⅩ』を奪われるかも……隠さなきゃ! あるいは……)
 レイミはポケットから器用に万年筆を取り出すと、思いっきり踏み潰した。簡単には悪用されないよう
『プログⅩ』を改良してあったが、念には念を入れる必要がある。

 レイミはとうとう元の大きさまで戻ってしまった。身体の方も弾丸を弾く事は恐らく無理だろう。
(ここは悔しいけど一時撤退ね!)
 そう思って逃げようとするが彼女の肉体の変化はまだ終わってなかった。いや、これからが本番
だった。
(…………?)
 逃げている内に何故かスーツが少しだぶついてきた、どんな時にもサイズピッタリにフィットする
特殊ゴム製のスーツがだ。
(ちゃんとピッタリに作ってあるはずなのに……。伸びたのかな?)
 そう思って建物に映った自分の姿を見て、レイミは愕然として立ち止まってしまった。
(嘘! 体が小さくなってる!?)
 遠くからたくさんの足音が近づいてくるのがわかる。ナロス党だ、逃げなければ捕まってしまう。
レイミは走って逃げるが、走っているうちに彼女の身長はどんどん縮んでいく。大きかった胸も縮み、
平らになってしまう。お尻も小さくなり、腰のくびれも消え、レイミはとうとう幼児体型になってしまう。
(走りにくくなって来た…………きゃ!)
 レイミはだぶだぶになった裾に足を取られ、転んでしまう。彼女がどんなに巨大化してもフィットした
スーツも、小さくなる事までには対応できなかった。
(な、何でこんな事に)
 原因はどう考えてもこの煙に含まれる成分にあると思われるのだが、ナロス党員たちはろくな装備も
無しでこの煙の中を無事にレイミを追いかけていた。もし煙に原因があるのなら、彼らにも影響が無ければ
ならなかった。
(考えるのは後にしないと!)
 彼女は転んでもすぐに起き上がって逃げようとしたが、追いついたナロス党員たちに押さえつけられ
てしまう。
「は、はなちなちゃい!」
 レイミは叫んだが、その声はキンキンと甲高く響いて完全に子供のものだった。その上、舌足らずで
碌にうまく喋る事ができず、自分自身でも何を言っているのか解らなかった。彼女は短くなった手足を
じたばたと必死に振り回して抵抗したが、とうとうナロス党員に薬を嗅がされ意識を失ってしまうの
だった……。

5名無しなメルモ:2010/01/27(水) 14:29:46
『リバースⅩ』:4


 気がつくとレイミは狭い部屋の中にいた。彼女は椅子に座らされており、腰にベルトをされて
固定されていた。ベルトを解こうと手を動かそうとしたが、手も縛られていて動く事は出来なか
った。
(……ここはどこ? あたし捕まったんだっけ……? ……そういえば!)
 レイミは自分の体を確認してみる、肩にはずっしりと胸の重みが掛かっており、自分は元の
大人の体だった。
(……夢? それとも幻覚でも見させられたの……?)
 そう思うには余りにリアルな夢だった。それにさっきのが夢だとしたら、自分が捕まっている
理由を説明できない。


「お目覚めかな“プログⅩ”」
 部屋に4人の男達が入ってくる、おそらくナロス党の幹部とその部下達だろう。
「随分と我々を苦しめてくれたな……。まあ、そんな苦渋の日々ももう終わりだ。こうしてお前を
捕まえ、『プログⅩ』の秘密を聞き出してやるんだからな」
「目的はやっぱそれね……、絶対に言わないわよ!」
 もし彼らが『プログⅩ』の秘密を知ってしまえば、世界は彼らのものになるだろう。『プログⅩ』
はそれほどまでに強力だった。何しろどんなに幼い子供でも無敵の兵士に出来るのだから。
「そうか……、それでは拷問でも何でもして、お前から是非に聞き出さねばな!」
(拷問! 何をするつもり!)
 部屋の中は男が4人で女が1人、レイミの脳裏に嫌な予感が過ぎる。
「ふふふ……、分かってるだろう? こんな状況で男女がそろえばやる事は1つだ、さあダンゲ!
やってしまえ!」
(くっ!)
 レイミは目を閉じて覚悟する。だが、出てきた言葉は予想とは違っていた。


「……え? 自分ですか?」
「ここにお前以外にダンゲがいるか?」
「やるって……あれですよね?」
「あれに決まっているだろう?」
「いや……実は自分にはできません……。その……勃起障害なので……すみませんがその役目は
辞退させていただきます……」
 自分のピンチだが、レイミも彼に少し彼に同情してしまった。
「…………そうか、若いのに大変だな。ではハンス、お前がやれ!」
 次にガッチリとした体つきの大男に役が回った。
「出来ません!」
「そうか、分かった。そうなると…………何故だ、ハンス?」
「その様な行為は我が家名を著しく傷つける為、絶っ対ぃにぃできませんっ!」
「……そうか」
(……嫌な予感は気のせいかもね……)
 レイミもこの男の暑苦しさに多少呆れながら、自分の直感の精度を疑い始めていた。
「では、バルシュタイン。貴様の出番だぁ!」
 少佐は次にハンサムな男に声を掛ける。
「そんな、女の子に乱暴な事は出来ませんよ。……少佐はいかがですか? 仕事で出来るなんて
役得ですよ?」
(この男、うまいこと言って逃げたわね……)
「わ、わしは女には手を上げんと決めておる! ……それにバレたらカミさんに殺されちまう……」
 少佐は彼の奥さんには頭が上がらないらしい。
「「「では、一体誰が彼女に拷問を?」」」
 レイミ以外のほぼ全員がその疑問を口にする。
「「「「……………………」」」」
 拷問室の中がしん、と静まり返る。レイミもさっきの嫌な予感は気のせいである事を確信した。
(ヘタレ男どもめ……)
 ナロス党の男達は良く言えば紳士的。悪く言えば皆、甘ちゃんなのでこういう事には不向きだった。
レイミはそう思うような状況ではないがナロス党の男達に呆れ返った。

6名無しなメルモ:2010/01/27(水) 14:30:16
『リバースⅩ』:5


 しばらくして拷問室に届け物がされた。少佐と呼ばれた男はそれを受け取り、レイミに向き直る。
「フフフ……。気を取り直していこうか、プログⅩ。さっきの事は忘れてくれ、これからが本番だ」
 少佐は受け取った物をレイミに見せる。先程届いたのは点滴器具だった。
(点滴……? 自白剤か何か?)
「自白剤だと思うか……。 フフフ、もっといい物だ」
 少佐は部下達に命じて彼女の袖を捲らせ、点滴の針を刺した。
「さあ、吐いて貰おうか。『プログⅩ』の秘密を言え!」
「言うわけ無いでしょう。尋問ならもっと頭を使う事ね」
「ふん、やれ!」
 部下は指示を受けると点滴器具を操作し、ビニールの管を通して液体がレイミの体の中に入っていく。
「さあ……少しは言う気になったか?」
「ふん。これはただの水か何か? 何も変わらないわよ」
「それはどうかな?」
 質問をされ、断わる度に液体はレイミの中へ入っていく。それが繰り返される内に、彼女の大きな胸
とすらりとした長い足は徐々に縮み始めた。また彼女自身には分からなかったが、顔は段々と幼さの方が
目立つようになってゆき、身長や腕の方も縮み出した。
「な、何よこれ!」
 レイミは思わず叫ぶ。
「ふふ……。今お前に使われている薬品は『リバースⅩ』! 使われたものを若返らす薬だ。我々はお前から
盗んだ研究でこの薬を作り出したのだ!」
「何ですって!」
 ……彼女への尋問は何度か繰り返され、その度にレイミはどんどんと縮んでいった。

「まったく……こんなになってもまだ喋らないのか」
『リバースⅩ』を使った尋問をされる内に、レイミは幼児体系になり、満足に喋る事も出来なくなっていった。
「こ、こぉんなことでしべったりちないんだからね!」
「最後の質問だ、『プログⅩ』の秘密は一体何処にある!」
 もう次に若返れば彼女は喋る事も出来ない乳児になってしまうだろう。
(でも、そうだとしても『プログⅩ』の秘密は漏らせないわ!)
 レイミは覚悟を決める事にした。
「……いぇなぁいわっ!」
「仕方ない……やれ!」
「はっ!」
「いやぁ!」
 レイミの体は幼児を通り越し、乳児にされてしまった。もう喋る事もできない。若返りが終わるとレイミは
拷問室から別の場所へと移されるのだった。


 ナロス党からの尋問が終わった後、レイミは捕虜としては何不自由ない生活を送る事に
なった。ただしそれはあくまで赤ちゃんとしてである。レイミは子供好きなナロス党の
女性仕官に毎回人肌に暖められた粉ミルクを与えられ、お風呂に入れられ、オムツを着けられ、
汚れればそれを交換してもらった。
 だがレイミは20歳を越えた大人の女性であり、これらの事は恥辱でしかなかった。彼女は
時間が経っても一向に元にもどる気配は無かった。『リバースⅩ』が『プログⅩ』を元に作り
出された薬品であるなら、時間が過ぎれば元に戻るはずだった。実は彼女に定期的に与えられ
るミルクは『リバースⅩ』が混ぜられており、これのせいで彼女はずっと赤ちゃんのままだった。

 レイミは保育所の様な部屋に閉じ込められていた。ドアに鍵は掛けられていないようだが、
今の姿ではハイハイする事しか出来ないのでとても脱出は出来そうに無かった。その部屋には
レイミ以外にも赤ちゃんや子供が居た。その子達は皆女の子で、レイミは最初ナロス党に攫われた
子供かと思っていた。だが彼女達の話し声に耳を傾けてみると「早く戻りたいわね」とか「子供の
姿じゃ彼氏と付き合えないわ」などおよそ子供らしくない会話がされていた。彼女達の正体は
ナロス党の女性兵士たちで、『リバースⅩ』の実験に協力した姿だと思われた。
(それにしても全員女? もしかしたら……)
 レイミは彼女達を見て、ある考えを強くするのだった。

「ご機嫌はいかがかね? プログⅩ」
 レイミの元には1日1回、彼女を尋問した少佐が訪ねてきた。
「そろそろ離乳食がいるんじゃないかね。……そんなことは無かったな、君は成長を止められている
のだから。……どうだい? そろそろ協力する気になったか?」
 彼はナロス党に協力するよう言ってきたが、レイミはその度に必死に首を横に振って断った。赤ち
ゃんの体ではそうするのも一苦労だった。
「……ふん、いつまでこの生活に耐えられるかな? ま、せいぜい歩き方を忘れんようにな」
(くっそ〜、今に見てなさい)
 悪人たちに『プログⅩ』を渡すわけにはいかない為、レイミは何時までも大人に戻れないままだった。

7名無しなメルモ:2010/01/27(水) 14:30:46
『リバースⅩ』:6


 ……赤ちゃんにされてしまったが、レイミは未だ『プログⅩ』に関しての重要人物であった。
 彼女の両親は『プログⅩ』についての資料を全て捨て、その上、今どこにいるとも分からない。
 彼女の協力者のハナマル教授は『プログⅩ』について何も知らず、助手のミミーもどこにいるかわからない。
 ……秘密を知っているのはレイミだけであった。彼女のその手は小さくなってしまったが、未だ大きな
秘密を握っていたのだ。
 その事を分かっているレイミは決して『プログⅩ』の秘密を喋ろうとはしなかった。例えお漏らしをして
汚れたお尻を綺麗に拭いてもらっても、ナロスの女性隊員たち皆に抱っこされたりキスをされても、子守唄
を歌ってもらっても、一緒にお風呂に入っても、一緒に記念撮影をされても、果ては最近子供を生んだ隊員
に母乳を分けてもらっても、絶対にレイミは首を縦に振らなかった。
(余談だが、レイミにはナロスの女性隊員たちに結構な人数の隠れファンがいた。彼女達は皆、レイミの世話、
もとい『拷問』に参加した。その上、赤ちゃんになったレイミは随分可愛らしかったのであっという間に女性
達のアイドルになった。また、男性隊員たちはこの『拷問』に参加させてもらえず皆、肩を落とした)
 たとえ赤ちゃんになっていても、レイミはひたすら反撃のチャンスを待った。


 一方、ナロス党も『プログⅩ』の秘密を何時までも見つけられない事に苛立っていた。レイミが秘密を
喋らないので、彼らはハナマル研究所やレイミの家を調べたが既にどちらも、もぬけの殻で『プログⅩ』
の秘密どころか、その1滴すら見つける事は出来なかった。
「まだ見つからんというのか! 仕方ない、やるしかないか……」
 この為、ナロス党はある決断をするした。


 ……目が覚めるとレイミはベビーベッドではなく、ソファーの上で寝ていた。彼女の肉体は10歳ほどの
年齢まで成長していて、毛布以外には何も着せられていなかった。
「目が覚めたかね、プログⅩ」
「……あなた達、何のつもり?」
「……着たまえ」
 レイミに患者服が投げつけられる。目の前には彼女を尋問した少佐と呼ばれる人物が立っていた。少佐は
レイミに拳銃を突きつけてこう言った。
「プログⅩ、いやレイミ君。単刀直入に言おう。『プログⅩ』を作りたまえ」
「あなたたちの命令に、わたしが素直に従うと思ってるの?」
 無論、レイミは子供だろうと赤ちゃんだろうと力でねじ伏せる相手の言う事はきかない。そのような心の強さ
こそが彼女の強さだった。
「今、君には効果が切れない程度の量の『リバースⅩ』が投与され続けている。従わなければ、もう一度赤子に
戻ってもらう。……点滴器具におかしな真似をすれば命な無いぞ、我々や作ってもらう薬についてもだ!
……ちなみに今、幾つかの都市に対して攻撃の準備をしている。我々が何を言いたいのかはわかるな?」
 見れば、彼女には点滴がされていた。
(これが『リバースⅩ』! ……私の研究を元にしているだけあって、『プログⅩ』によく似てるわ……。
……私の推測が合っていればここに逆転の糸口がある筈!)
「……分かった。やるわ……」
 レイミはナロス党の誘いに乗り、賭けに出る事にしたのだった。

8名無しなメルモ:2010/01/27(水) 14:31:21
『リバースⅩ』:7


 レイミはナロス党員の男達に囲まれながら、薬を作る作業をした。赤ちゃんから久しぶりに戻った影響か
歩くと少しふらつく、その上、肉体年齢が10歳程なので作業が結構きつい物になったがレイミは順調に
薬を作っていく。
 『プログⅩ』を作っている内に何か別の物が溜まっている事に男達は気付く。
「……これは一体なんだ? 調べさせてもらうぞ」
「ただの廃棄物よ。下手に触らないで、何かあったら大変だから」
「廃棄物だというのなら捨てるぞ、いいだろう?」
「これは『プログⅩ』を作る途中で出来た廃棄物よ? うっかり捨てるとあとで何が起きるか分からないわ。
……あとで巨大なハエに追いかけられたい?」
「ま、まあ、任せることにしよう」
 


 そんなこんなで、レイミは遂に薬を完成させた。
「完成したか、貸せ!」
 男はレイミから薬を奪うと、用意していた魚にそれを注射した。……だがしばらくしても何の変化も無い。
「おい、どういう事だ。何も起こらないぞ!」
「当然よ、そういう風に作ってあるんだから」
 これには彼女と一握りの人間しか知らないある秘密があった。彼女の祖父が作った『プログⅩ』は最初、
あらゆる生物に効く予定だったが、レイミは悪人たちの手に渡った時の事を考え、薬にある仕掛けを施した。
彼女が作った『プログⅩ』は人間の女性、1部の鳥類と哺乳類のメスにしか効果が無く、人間の男性にはまるで
効果が無いのだ。その為、注射された魚にはまるで効果が無かった。無論、男達が使っても効果は無い。
「くそ!」
 男達がレイミにいっせいに銃口を向ける。
「残念、時間切れよ。……賭けには勝ったみたいね」
 レイミがそういうと男達が次々と若返りだした。……今、部屋の中には彼女が作った『リバースⅩ』ガスが充満
していた。その所為で男達は若返りだしたのだ。
(……私の研究を基にして作ったから、あなた達の作った『リバースⅩ』はおそらく女性にしか効かなかった。
様子をみていて確信したわ。そして、オリジナルを知っている私なら男にしか効かない『リバースⅩ』も作れる)
 さっきの廃棄物の中にレイミ版『リバースⅩ』はあった。ちゃんと作れるか、バレたりしないかという部分は
賭けだったが、彼女は見事に勝ったのだ。
 部屋の中にいる男達が全員、赤ちゃんに戻った事を確認するとレイミは点滴を引き抜き、さっき作ったばかりの
『プログⅩ』を注射した。


 ……次の日、レイミは自分の家でのんびりとくつろいでいた。新聞の1面には『ナロス党支部壊滅! プログⅩ
の帰還!』と大きく記事が出ている。
(……『リバースⅩ』にはこれからも苦戦させられるだろうけど、私は負けない。御祖父ちゃんの作った『プログⅩ
のためにも……)
 レイミは家で決意を新たにしていた。
「レイミさん。無事に帰ってきて本当に良かったです」
 見ればミミーが彼女の為に、朝食を作ってきてくれていた。
「ありがとう、ミミー。……粉ミルク以外の食事をとるのは久しぶりね」
「え? なんですって?」
「いやいや、何でもないの。ん〜、美味しい」
 こうしてレイミは実に久しぶりに紙オムツ以外の下着を着け、自分でシャワーを浴び、粉ミルク以外の食事を口に
する生活を手に入れるのだった。

9<削除>:<削除>
<削除>

10とら:2010/01/27(水) 22:04:14

『プログⅩ』:orign 


 レイミは9歳の時、両親と共に何者かに誘拐された。その時の相手が何処の何者なのかは
彼女も知らない、わかる筈が無かった。どこかの廃工場のような場所(潮の香りがするので
レイミは海の近くだろうと思った)に連れて来られ、レイミの父はそこで何かの薬を作る様
に命令された。最初は勿論断ったが、母とレイミを人質に取られ、父は言われるままに薬を
作った。この時のレイミは知らなかったがこの薬こそがプログレスⅩ……通称『プログⅩ』
であった。


「さあ、『プログⅩ』を作ったこれで良いだろう!!」
「……ああ。本当によく作ってくれた……。……だが、これの効果をちゃんと確かめないと
な……」
 そういうと男はレイミに『プログⅩ』を注射した。
「な、なにをするんだ!」
「……何を慌ててるんだい、先生……。……まさかあっしらを騙して毒を造りなさったんじゃ
無かろうなぁ……?」
「違う! 初めて作ったんだから思いも寄らない副作用が――」
「……おっと、効果が出始めたようですぜ……」

「う、ううん……」
 男に注射をされたレイミは体中が痛み出し、呻き声を上げて蹲ってしまう。
 注射をされた彼女の身体はグングンと大きくなった。服は成長についてこれず、途中で
ビリビリに破けてしまった。そしてある程度するとそれにつれて、胸が膨らみ、お尻が
大きくなり、腰がくびれて……。レイミはみるみるうちに美しい大人の女になっていった。
「レ、レイミ……」
「ぱ……パパ……ママ……助けて……」
「……ほう、こいつは大した薬だな。イイモノ見られたぜ……」

「うっ……い、いたい……」
 だがしかし、変化はそこで止まらない。彼女は大人の体になると、その姿のまま大きく
なっていった。彼女に対して、もう彼女に対して大分小さくなってしまった服が引き千切
れてしまったが、それでも一向に止まる様子は無かった。
「……先生、こいつぁ効きすぎだ。逃げるぞ、先生あんたらもだ……」
 嫌な予感がしたのか男は2人に銃を突きつけ、逃げ出した。男の部下は成長を通り越して、
巨大化をしているレイミに対して拳銃を撃ったが、すでに彼女の肉体は鋼の様に強くなって
おり、拳銃の弾丸など簡単に跳ね返してしまった。

 レイミは両親を追いかけたかったが、巨大化にともなう痛みでとても動けない。やがて嘘の
様に痛みが引いたのでレイミは立ち上がった。彼女の身長は工場より大きくなっており、立ち
上がるときに天井を突き破ってしまった。
 立ち上がるとレイミは身長約16メートルの女巨人になっていた、注射をされる前の10倍
以上の大きさである。彼女の体型はすっかり大人になっていて、ヒマさえ有れば誰もが見とれる
ナイスバディになっていた。肌や髪の方もきめ細かく、つやがあり、絹のようにしなやかで
美しかった。

 巨人になったレイミは辺りを眺めて、黒い車を見つける。自分達を攫ったヤツらの車だ!
「待てーっ!」
 レイミは車を走って追いかけた。……この時彼女が年頃の娘だったら、自分の姿が恥ず
かしくて、もしかしたら追いかけられなかったかもしれない。だが、体が大人でもレイミは
本当は9歳の女の子だ。裸だからちょっと恥ずかしいな、位にしか思わなかった。それに両親
が連れて行かれるという恐怖に比べればこんな事は些細な事だった。

 レイミはあっ、という間に2台に追いつく。男達はとうぜん持っていた拳銃で反撃をしたが、
鋼鉄の硬さと絹のしなやかさをあわせ持つ今の彼女の体には、まるで歯が立たなかった。
 自分の両親が乗っていない事を確認すると、レイミは車を蹴っ飛ばし、前を走る車を追い
かけた。
「……こいつはやばいぜ……」
 男はバックミラー越しにレイミを見たが、もう鼻の下を伸ばす事は無かった。
「……しばらく女の裸がトラウマになるかもな……」
 このままでは逃げられないと思った男は、車ごと勢いよく海に飛び込んだ! 車はどんどん
沈んでいき、まるで海がレイミの両親を地獄へ飲み込もうとしているかのようだった。
「パパ! ママ!」
 レイミはすぐに車を海水の中から拾い上げた。自分達を攫った男はもう居なくなっていて、
車の中には両親の姿しかなかった。
「よかった……」
 レイミは安心して、ほっと胸を撫で下ろした。その表情はまさしく9歳の女の子の物だった。

11とら:2010/02/21(日) 12:51:41

『リバースⅩ』:3 another(上)


 巨大化したレイミはすぐにナロス党員たちを街の広場まで追い詰めた。このまま彼らを蹴散らすと
思われたが、この機をうかがっていた司令官が命令を発し、彼らは反撃を開始した。
(きゃ! 何!)
 ナロス党員たちは大砲などでレイミにガス攻撃を仕掛けた。
(……毒ガスは私に効かないって分かってるはずなのに、何故こんな無駄な攻撃を?)
 だが彼らの反撃の効果はすぐに現れた。レイミの体が縮み始めたのだ。
(嘘! まだ効果が切れるような時間じゃないはずよ!)
 動揺しながらもレイミは辺りを見回す、彼女はいつの間にかナロス党員たちに囲まれていた。追い
込まれていたのはレイミのほうだった。
(くっ!)
 レイミは体制を立て直すため、一旦逃げ出した。

 ガス攻撃を受けてからしばらくして、レイミは元の大きさにまで戻ってしまった。
(とにかく、もう一度『プログⅩ』を使わないと……)
 彼女は『プログⅩ』が入った万年筆を取り出すと、自分に使おうとした。しかし……

 プスッ!

(痛ッ!)
 レイミは突然の痛みを感じる。もしや撃たれたのかと思って確認してみると、麻酔銃の弾丸のような
物で撃たれていた。すばやく針を体から引き抜くが、すでに薬品は体の中に入っていた。
「きゃ……!?」
 すぐに効果は現れる、彼女の体が縮み始めたのだ。
 レイミは素早く物陰に隠れ、『プログⅩ』を全部自分に注射した。
(……小さくする薬なら、もしかしたら効果を打ち消しあうかも……)
 だが、『プログⅩ』を全部使ってしまってはもう戦う事は出来ない。仕方なく、レイミは逃げることにした。


 逃げている内にレイミは敵に自分が何をされたのか分かってきた。自分の体を見れば段々と小さくなっ
てきている。……いや、小さくなっているのではない。段々と若返ってきているのだ。レイミの元の年齢は
22歳だが、18歳の高校生の頃の外見に戻ってしまっている。
(とにかくこの格好のままじゃ目立つし、着替えないと……)

「すみません! 服を貸してくれませんか!」
「な……なんですか!?」
 レイミは近くのアパートに逃げ込んだ。そこには女の子が住んでいて、レイミがプログⅩだと分かると快く
服を貸してくれた。
(よし、これで少しは目立たなくなったわ!)
 変装したレイミは多少色が地味な格好で、下に着込んだプログⅩスーツを隠すため、袖と裾の長い服を選んでいた。
レイミは闇夜に紛れて、街の外に出る。その間にも彼女自身は若返り続け、今では中学生くらいになっていた。
(……どこまで若返るんだか。下着を借りなくて正解だったわ、着けてたら邪魔になってたろうし……)
 近くを通りかかったトラックの荷台にこっそりと乗り込んだ。目指すは彼女の隠れ家だ、ハナマル研究所や彼女の家では
今頃、ナロス党の魔の手がすでに伸びている事だろう。幸い、助手のミミーには何かあったときそこへいく様に指示して
あるので大丈夫なはずだった。

12とら:2010/02/21(日) 12:53:04

 リバースⅩ 3:another (下)


 トラックが隠れ家への道の近くを通ると、レイミは荷台から飛び降りた。
「しまった……」
 飛び降りてから彼女は大変な事に気付く。隠れ家は結構な山奥にあり、しかもかなりの距離があったのだ。
……若返りながらその道を行くのはかなりの事に思えた。だがミミーと合流するには、そこに行くしかない。
レイミはとにかく隠れ家へと歩き出した。
 山の中を進んでいるうちに貸してもらった服はだぶだぶになり、すっかり着られなくなってしまう。
(……もうスーツの方も邪魔になってきた)
仕方なく彼女は借りた服もスーツも脱いだ、するとすっかり子供の様になってしまった体が下から現れた。腰のくびれ
は無くなり、胸はぺったんこ。まるで筒のような体型だ。
(完全に子供の体になってる……。わたし、一体どこまで若返っちゃうの……)
 とにかく、進まなければ状況は悪くなる一方だ。レイミは借りた服の方は森の茂みの中に隠し、スーツの方は体に巻きつけた。
これだけは無くすわけにはいかない、もしもの時彼女の身分の証となるものだ。


 レイミはやっとの思いで隠れ家へと辿り着いた。体は疲れ切っている上に、おそらく幼稚園児ぐらいにまで若返っていた。
しかも、まだ止まる気配は無い。このままでは自力で動けなくなるのも時間の問題だ。
(早く『プログⅩ』を……!)
 隠れ家のドアはレイミの眼と指紋が鍵になっているのだが、今の体ではセンサーに届かない。彼女は慌てず、体
に巻きつけたスーツを使って自分の体をセンサーに届かせる。レイミはドアが開くと転がり込むように中に入った。
「ミミー! いる!」
 スーツをもう一度体に巻きつけ、レイミはいる筈のミミーを呼ぶ。体の方は幼稚園児よりも若返っていて、もう
一刻の猶予も無かった。
「レイミさん! 無事だ……っ……た……の?」
 声に反応して出てきたミミーだったが、レイミの見て愕然とする。
(こんな姿じゃ仕方ないわね……)
 とにかく説明しているヒマはない。急がなくてはいけないのだ。
「ミミー! 急いで『プログⅩ』を取りに行くわよ! わたし1人じゃ難しいの!」
「え……? レイミさん……?」
 目の前にいるのが小さな子供。だがスーツの事もあり、ミミーはレイミだと分かるようだが理性が邪魔をしている様だ。
「早く!」
 説明している時間は無いので、レイミは勢いで押し切る事にした。
「わ、わかりました!」

 レイミはミミーとともに『プログⅩ』を保管している隠し金庫に向かった。隠し金庫はレイミの指紋と瞳が鍵に
なっていたがセンサーは高い所にあった。もう今のレイミは小さくなりすぎて、高いところへよじ登る体力も時間も無かった。
レイミははミミーに抱っこしてもらって金庫を開けた。
「はやく! わたしに『ぷろぐえっくちゅ』をうって!!」
 レイミはうまく喋る事が出来なくなっていたが、すばやく指示をし、ミミーは金庫が開くとすぐに『プログⅩ』をレイミに注射した。


 ……レイミの若返りは止まった。彼女の肉体はもう生後6ヶ月くらいまで若返っていた。
(あのまま若返りが進んだらどうなっていたか……)
 少なくとも彼女は自分自身でその結果を確かめるつもりは無い。ナロス党の新兵器に脅威を感じながら今はとにかく
疲れきった体を休めるレイミだった……。

13とら:2010/02/22(月) 22:03:51

『プログⅩ』:プログⅩ登場


 あの誘拐事件から7年が経った、レイミはすくすくと成長し16歳になった。悪人たちから身を
守るため海外に逃れてから、レイミはずっと悪人達と戦うトレーニングを続けた。自分と『プログⅩ』
の秘密、そして何より両親を守るためである。
 あの誘拐事件が彼女にこの事を決意させたのだ。父とともに祖父の後を継ぎ、彼女は『プログⅩ』の
研究をした。その結果、彼女は悪人達に『プログⅩ』を利用されないよう、人間の女に特に効き、
男に効かないよう改良をした。こうすれば万が一盗まれても、悪用される可能性は50%に減る。
 彼女がスーパーヒロインとして活躍する準備は万端に思えた。だがその前に用意するものがあった。


「そうか……巨大化しても破れない服が欲しいか……」
「はい……。普通の服じゃ耐えられなくて……」
 レイミは自分と彼女の父の恩師である、ハナマル教授のもとを訪れていた。彼女のための特別な服を
作るためである。
『プログⅩ』は使用者を巨大化させるが、使用者だけだ。着ている服まで巨大化する事は無い。
 レイミももう年頃の娘だ。幼い頃のように丸裸で戦うなんて、とても出来たものではない。ましてや、
自分が大人になった時の裸を見せるなど、誰に対してのサービスなのか。例え巨人になっても着ていら
れる服を作る必要があった。
「それなら良い物がある」
 そういってハナマル教授は布のような物を取り出した。
「これはわしの作った特別性のゴムでね、何と30倍以上伸びても耐えられる特別製なんだ」
 彼がそういって布を伸ばすとそれはまるでモチのように伸びた。
「これを使えば君が望むものを作れるだろう」
「ありがとう! ハナマル教授!」


 ……こうしてハナマル教授の協力により、レイミは自分専用の服を作った。デザインはライダースーツの
様で彼女の体にかなりフィットする物だった。レイミ自身はまだ成長期で身長もスリーサイズもまだまだ大きく
なる事が予想できたが、今はこれでよかった。

「うむ、レイミ君。かなり良い物が出来たようだな。もう巨大化はしてみたかね」
「いえ、これからのつもりです!」
 レイミは悪党達の前で巨大化のテストをしてみるつもりだった。
『緊急速報です! ただいま“ナロス党”を名乗る者達が港湾部でテロ活動を行っています! 住人とその
付近の皆様は至急避難をしてください!』
「ハナマル教授! では行ってきますね!」
「あっ! レイミ君!」
 レイミはハナマル教授の言葉を最後まで聞かずに行ってしまった。

 現場に着くとレイミはすぐに『プログⅩ』で巨大化し、あっという間にナロス党を撃退した。
「ふぅ……。流石に『プログⅩ』ね、さっさとナロス党を片付けちゃった」
 だが元に戻ると彼女はあることをすっかり忘れていた事を思い知る。
「きゃあ! 着けていた下着がボロボロじゃない!」
 特別製のスーツは巨大化に耐えても、普通の素材の下着まではそうは行かなかった。彼女はついうっかり、
お気に入りのブラとショーツをつけたまま巨大化をしてしまったのだ。
「……よかった。それだけで済んだか」
「よかった、じゃないですよ。ハナマル教授!」
「いや、レイミ君。君はあのスーツの耐久実験をしたかね?」
「いえ……。特には……?」
「まったく……慌て者じゃな、君は。あのスーツが巨大化や戦闘に耐えられる物だと確かめない内に飛び出して
しまうとは。何事もなくてよかったが、下手をすれば君に恥ずかしい思いをさせてしまうところだったよ」
「きょ……教授、それって……」
 レイミは教授の話を聞いて恥ずかしさで顔を真っ赤にしてしまうのだった。


「……ううう。何だか気持ち悪い」
 後日。レイミは特別製の素材で巨大化に耐えられる下着を作ったが、それは最悪の付け心地だった。
 仕方なく彼女はこれからはスーツの下は何も着けない事を決めるのだった。

14とら:2010/02/23(火) 22:18:03

『リバースⅩ』side B(上)


 女スパイ、ファントムは秘密結社ナロス党の秘密基地に潜入していた。
 目的はナロス党の新兵器である。先日、スーパーヒロイン、プログⅩことレイミがナロス党によって倒された。この事態を重く見た世界各国、
そしてスーパーヒーロー達は早速この新兵器の調査に乗り出していた。このファントムもそうしてナロス党に送られた1人である。
 ナロス党の女軍人に扮したファントムは秘密基地の限られた者たちしか出入りできない区画に入り込み、新兵器の情報を探っていた。


「誰だっ!」
 見張りの兵がファントムの姿を見つけられてしまう。見張りはファントムが隠れた物陰にそろそろと近づき、素早く銃を向ける! ……だが、
そこには女性軍人用の制服しか残ってなかった。
「……?」
 見張りが不審に思い、それに近づいた瞬間。
「!?」
 壁から2本の腕が伸び、見張りの首を締め付け、気絶させてしまった。……見張りが気絶すると壁からするするっと裸のかなりのナイスバディを
した女が出てきた。彼女こそが女スパイ、ファントムである。
「……危なかった」
 ファントムは兵士を動けないようにすると、脱げてしまった服を再び着直す。
 ファントムは超能力を持ったスパイである。彼女はこのように超能力を使ってどのような窮地も切り抜けてきたのだ。物質透過の力は使うと裸に
なってしまうのが、難点だが仕方が無い。


 ……ファントムは慎重に各区画を回った。だが、ナロス党の新兵器を見つける事は出来なかった。途中、なぜか保育室を見つけたが関係ないと
思ってよく調べる事はしなかった。……もし彼女がそうしていれば、確実に歴史は違っていただろう。


 ファントムは基地の中をくまなく探したが、プログⅩであるレイミを探し出す事は出来ない。
「まだ探してない場所は……保育室。でもそんなところにプログⅩを閉じ込めるとはとても思えないが……。……探してみるか」
 だがその時、基地全体を地響きが鳴り響く。
「何っ!」
 ファントムは危険を感じ急いで基地の外へと脱出した。


「プログⅩ! 生きていたの!」
 基地の外ではプログⅩ、レイミが巨大化してナロス党と戦いを繰り広げていた。何故かいつものスーツは身に着けておらず、一糸纏わぬ姿で戦って
いたが確かにレイミであった。
「……もう、相変わらずはしたない子ね。男達が鼻の下を伸ばしながら戦ってるわよ、まったく」
 ナロス党の中にはうつむきながら戦っていたり、鼻血を垂らしながら戦っている者もいた。生真面目な者達が多いナロス党にとって、この戦いは少し?
気の毒かもしれなかった。

 レイミはナロス党に対して圧倒的な戦いを繰り広げていた。やがて、劣勢に追い込まれたナロス党はレイミに対してガス攻撃を行った。ファントムは
知らなかったが、このガスこそナロス党の新兵器『リバースⅩ』であった。これによってレイミは無力化されたわけだが、今回は対策を考えていた。
レイミは自分に向かってくるガスに向かって思いっきり息を吹きかけた。この単純だがな効果的な方法によりガスは方向を変えた。ファントムのいる所へと。

(つづく)

15名無しなメルモ:2010/02/27(土) 12:34:18
いつも楽しく読ませていただいてます
ファントムがどんな姿に変わり果てるのか楽しみにしています

16:2010/02/28(日) 22:06:48

『リバースⅩ』 sideB(下)


 レイミによって行き先を変えられた『リバースⅩ』のガスは、あっという間にファントムを囲んでしまう。
「まずい!」
 ファントムは危険を感じ、第2の超能力である瞬間移動を使ってその場から脱出する。
「……危なかった」
 ファントムの瞬間移動は着ている服までは効果が無いため、彼女はその魅力的なボディをさらす事になったが危機から脱する事は出来たかに思えた。
「とりあえず、服を探さなければ……」
 だがすでに『リバースⅩ』は彼女の体に侵入しており、すぐにその効果を発揮し始めた。
「馬鹿なっ……体が縮んでいく! 早く瞬間移動を使って、アジトに帰らなければ……」
 まだ服を着ていなかったが仕方が無く、ファントムは瞬間移動で帰還することにした。

「うわっ!」
「きゃあ!」
 だが、さっそく他人の家の中にテレポートしてしまう。一気にアジトまで行ければ苦労は無いが、距離がありすぎて複数回の使用が避けられない。
ファントムはすぐに瞬間移動を使い、煙の様に消えてしまった。
 テレポートを繰り返す間にも、『リバースⅩ』はファントムを若返らせていく。その様子はまるでファントムの成長の様子を逆コマ回しで見ているようだ。

「こらっ! あなた、なんて格好で出歩いてるの!」
 途中、女性の警官に声を掛けられてしまった。その頃にはファントムの年齢は4、5歳くらいまで退行していてもう幼稚園児くらいにしか見えない。
「お母さんは? どこに住んでるの?」
「……さよならっ!」
「あっ! 待ちなさい」
 相手をしている暇は無い、ファントムは物陰に入ってすぐさまテレポートをした。

 ……その日、奇妙な現象が報告された。街のあちこち、例えば広場や家の中で裸の人物が大勢に目撃された。性別は女、何も身に着けてはいない
という格好であることは共通していたが、年齢はまちまちで成熟した大人の女という証言や10代の少女、或いはよちよち歩きの幼児という報告も
あり、人々は混乱した。その人物は決まって一瞬で現れた後、煙のように消えてしまう、という共通点も有りその奇妙さにみな首を傾げるのだった。


 人々を混乱させてしまったが、ファントムはやっと自分のアジトの所にまで戻っていた。その体は完全に幼児にまで退行している。今まで数多の男たち
を虜にしてきた豊満なバストはすっかりぺったんこになってしまい、160cmを越える身長は1m以下になり、くびれたウエストはぽっこりと出ている
下腹部に取って代わられた。かつてのモデル体系の大人の美女であった事を証明する部分は彼女の何処にもなくなってしまい、今やそこに居るのはすっぽ
んぽんの小さな女の子でしかなかった。
 ……だが不思議な事にその様な姿になってもファントムからは色気を感じる事ができた。その表情と仕種には大人でもドキリとさせる力が未だにある、
それが何処から来るかといえば、おそらく彼女の内面からに違いない。
 ファントムは壁を通り抜けてアジトの中に入る。中はしん、と静まり返っており人は居ないように思える。
「ファントムよ、戻ってきたわ」
「……ファントムなのか、ずいぶん小さくなったものだな……」
「あまり驚かないのね」
「……まあな……」
 ファントムは彼の名前どころかコードネームさえ、知らない。ただ、他の者に合わせて“男”と呼んでいる。
「こうなった理由はたぶんナロス党の新兵器ね、あのガスのせいよ」
 ファントムの体はまだ若返り続けていた。足がふらついて立っているのもつらくなっている。ファントムはその場に座り込んで話を続け、必要な情報は全て男に伝えた。
「……ファントム、後の事は俺に任せろ……」
 男はファントムに上着をそっとかける。今の彼女には大きすぎるが、それでもファントムには嬉しかった。
「ありがとう……後の事は任せたわ……」
 そう言い終えたファントムは男に寄りかかり、すやすやと寝息をたてはじめた。若返り続ける体の影響と超能力の連続使用によって疲れていたのだろう。ぐっすりと眠っている。
 男はファントムを抱きかかえると、彼女を依頼主に届ける為、夜の闇に消えるのだった。

17名無しなメルモ:2010/03/02(火) 14:13:19
リバースX最強ですね…
もうレイミには効かなくなったんだと思うけど、他のヒロイン達がどんどん
小さくされていく様子がおもしろいです(笑

18とら:2010/03/06(土) 15:44:50

『プログⅩ』:最終回? (1)


 レイミたちはナロス党との最終決戦に勝利した。ナロス党は壊滅し、彼らの世界制服の野望は
粉々に打ち砕かれた。
 ……だがしかしレイミは、最終決戦の時にナロス党が創り出した『リバースⅩ』の雲に突入し
てから、ずっと行方不明のままであった。


「……あら、赤ちゃんだわ」
 ティミーは森の中で可愛らしい赤ちゃんを見つけた。赤ちゃんは服のような物に包まれていた。
なぜ『服のような』という表現かといえば、それはゴムのような物で作られていたからだ。彼女の
常識では服は自分たちも着ているような木綿や麻で作られた、1枚の布のような物を指していた。
外人が着ているような洋服の知識はある程度持ち合わせていたが、その赤ちゃんが身を包んでいる
特殊ゴム製のスーツなどはティミーの常識には存在しなかった。
「捨て子かしら……こんな森の中に捨てるなんて、誰にも拾ってもらえないわよ。あなた運の良い
子なのね」
 この辺りは貧しく、捨て子は決して珍しくない。だが普通捨てるにしても、もう少し人の居る
場所で捨てるのが普通だ。こんな所に子供を捨てるなんて、余程人でなしの親だったのだろう。
ティミーはこの子を捨てた親に心の中で怒りを燃やした。
「布? に何か書いてある……“rei……?”……レイ……何とか……? ……この子の名前かしら?
 まあ、こんな所に捨てていくようなお父さんとお母さんのつけた名前なんて要らないよね。きっと、
わたしがもっといい名前をつけてあげるわ」
 ティミーは赤ちゃんを家へ連れて帰ることにした。

 ミミーや現地の警察はレイミの捜索に全力を挙げていた。……だがレイミが生きていると思って
いたのは、彼女の関係者のみだった。
 なぜならナロスの研究者に話を訊くと、『リバースⅩ』を大量にとれば過剰な年齢退行の末に消滅
してしまう可能性があると知ったからだ。行方不明になる直前、『リバースⅩ』の雲に突入したという。
状況は明らかに絶望的で最悪の場合、レイミは遺体すら存在していない場合があった。
 みんな偉大なヒロイン『プログⅩ』の死を考えたくは無かった。だがレイミの0歳から写真を眺め
ながら捜索者たちは最悪の場合、どう捜索を打ち切ろうか頭を悩ませていた。


 ティミーは赤ちゃんを家に連れ帰った。彼女の家は裕福で、兄弟姉妹も大勢居て今更1人増えるのは
どうという事はなかった。
「それでティミー、父さんにこの事は話したのか?」
「兄さん、それはこれからよ」
「面倒を見れないって事は無いだろうけど、ちゃんと事情を説明しとけよ」
 ティミーは赤ちゃんを変な布からだしてあげながら返事をした。
「わかってるわ。……あら? この子、女の子ね」
「……? ティミー、この赤ちゃん。恥ずかしがって無いか? 赤くなってるぞ」
「気のせいよ、だって赤ちゃんですもの」
 そんな事を話していると、遊び人でご近所に有名な叔父がやってきた。
「お、ティミーちゃん。近頃、ますます可愛くなったね〜」
「おじさん、まだふらふらしてるんですか。そろそろしゃんとしてください!」
 おじさんはアロハシャツを着ていて、いかにも遊んでいそうな格好だった。
「ははは……ティミーちゃんは厳しいなぁ。それはそうとその服、俺にくれないかい」
「服? やっぱり服なんですかこれ?」
「ティミーちゃんは知らないかなぁ。いやさ、海の向こうじゃ女の人がこういう服着てたりするんだよ
ね。映画とかで見るとセクシーでたまらないんだよね〜。……まあ、ここらじゃまだ早いから物好きが
買ってくれる程度だろうけど」
「……そうなんですか。ま、わたしには要らないものですから、これはおじさんにあげちゃいます」
「やった! ティミーちゃんはやっぱりいい子だなあ〜。これ、お金になったらティミーちゃんに1割
あげるね」
 おじさんはガッツポーズをしながら喜んだ。
「……いりませんから」
 そんなおじさんをティミーはジト目で見るのだった。

19とら:2010/03/07(日) 22:15:39

『プログⅩ』最終回? (2)


 ……その夜、ティミーは自分が連れてきた赤ちゃんの事を父に話した。
「そうか、分かったよティミー。だけどまずは警察にこの子の事を知らせないといけないよ、両親が
探しているかもしれないからね」
「お父さん、あんな森の中に置いていくような親なんて、きっとろくな人じゃないわ。すぐにわたし
たちの家族にしてあげましょうよ」
「今頃自分のやったことを悔いているかもしれないし、もしかしたら間違って置いて来てしまったの
かもしれない。とにかく少しでも探している可能性がまずはその子の親を探してみるべきだ」
「そんな……」
 ティミーは赤ちゃんを寂しそうに見つめた。
「ははは。まあ、見つからなければこの子は私達の家族だ。なにか身元が分かるようなものは無かった
かい?」
「……いいえ、無かったわ」
 ティミーは赤ちゃんを自分の妹にする為、嘘をついた。
「そうか。ふ〜む、この子は私達と肌の色が違うね。外国の人の子供かもしれないよ」
「わざわざ外国まで来て赤ちゃんを捨てに来たの! ……ひどい人たち」
 ティミーは自分が嘘を吐いたことについて少し気が楽になった。間違いでもそんな事をするような親に
赤ちゃんは渡せないと思った。
「きっと家族になりましょう。わたしたちであなたを幸せにして見せるわ。……名前はそう、レイラがいい
わ!」
「おいおい、もう名前を決めているのかい。気の早い子だね」




 レイミの捜索は難航した。生きているのか、死んでいるのかも分からないというだけならともかく、
今現在の年齢がまるで予想がつかないというのは捜査員達も初めてのことだった。レイミの各年齢の
写真が分けられたが、なかなか手がかりには繋がらなかった。
 ミミーはレイミが赤ちゃんになっていて、捨て子と思われ孤児院にでも送られたかもしれないと考え
て各孤児院を回った。しかし、そこにいるのは赤ちゃんだけでもかなりの数であり、本来他人である
ミミーが彼女たちとレイミと見分けるのは絶望的であった。


 ティミーは拾った赤ちゃんをレイラと名づけ、毎日世話をした。レイラは気の難しい子なのか普段は
素直だが、いうことをなかなか聞いてくれない時があったがそれでもティミーは世話をした。
 しばらくの間、両親を探して見つからなければレイラは家族の1員になれるので、ティミーはレイラ
の本当の両親が見つからないよう、毎日祈った。
「あらティミー、久しぶりじゃない。元気だった?」
「おばさん! 久しぶり〜」
 ティミーはレイラと一緒に散歩をしていると、久しぶりに近所に住んでいたおばさんにあった。
「ちょっと! 私、おばさんなんて歳じゃないわよ? お姉さんでしょ」
「えへへ、ゴメンゴメン。リィルも元気だった〜」
 ティミーはお姉さんが抱きかかえている赤ちゃんに挨拶をした。お姉さんは最近、母親になったばかり
だった。
「それよりティミー、あなたまた兄弟が増えたの?」
「ああ、この子は違うの」
 ティミーはそれからお姉さんにこれまでの事情を説明した。
「……ふーん、そうだったの。大きな声じゃ言えないけど、応援してるわよティミー。レイラもいい家族
になれるといいわね」
「うん!」
 ティミーは嬉しそうに返事をしたが、レイラは気のせいか不満そうな顔をするのだった。
 その時、お姉さんはレイラのおむつからある臭いが漂ってくる事に気がついた。
「ティミー、この子しちゃってるんじゃない?」
「……え? あ、本当だ」
 ティミーはレイラを寝かせ、おむつを換えようとしたが、レイラがじたばたと暴れて換えさせてくれない。
「もう、この子ったらおむつを換えようとするといつもこうなんだから。お姉さん、手伝って」
「分かったわ」
 ティミーは少し乱暴だが、お姉さんに腕と足を押さえてもらい、レイラのおむつを交換した。下半身を
綺麗にする頃にはレイラもおとなしくなり、ティミー1人でおむつをはかせてあげた。途中から暇に
なったお姉さんは自分の子供に母乳を与えながら、それを見ていた。するとレイラのお腹が小さく鳴った。
「あ、お姉さん、レイラったらお腹が減ったみたい。……おっぱい、大丈夫かな」
「大丈夫よ、おっぱいは2つあるんだからね」
 お姉さんはレイラを抱き寄せると、おっぱいを吸いやすいように自分の胸に顔を近づけたが、レイラは
そっぽを向いて、なかなかおっぱいを吸おうとはしない。だが、時間が経つと空腹に耐え切れなくなったの
か、おっぱいを吸い始める。
「いっぱい飲んで大きくなってね」
 その様子をティミーは笑顔で見つめるのだった。

20とら:2010/03/07(日) 22:18:46

『プログⅩ』 最終回?(3)


 ミミーは孤児院の赤ちゃんを調べたが、全員レイミではなかった。この事でもミミーは軽く打ちのめされた
がさらに彼女を徹底的に打ちのめすことが起きた。
 レイミの着ていたプログⅩスーツが見つかったのである。すぐにミミーはスーツを調べたが、レイミの受精卵
すら見つける事はできなかった。スーツの方も出所が分からず、レイミを探す事は暗礁に乗り上げた。
「生きていればまた会えますよ、へらへら」とテキトーになぐさめる者も居た。もはや、レイミの捜索は続けられず
ミミーはレイミのいない研究所へ帰るしかなかった。


「兄さん、みんなでレイラをお風呂に入れてあげて。わたしちょっと手が離せなくて、お願い」
「分かった。おーい、みんな風呂に入るぞ〜!」
 ティミーの兄は弟たちを集めてレイラと一緒に風呂に入る事にした。お風呂に入る子供たちはレイラ以外みんな
男だった。
 ティミーの兄もレイラの服を脱がせるのは苦労したが、服をちゃんと全部脱がして風呂に入れたのだった。


 研究所に帰ったミミーは1人、無為に時間を過ごしていた。
 もしレイミが生きていれば既に何か連絡をしていることだろう、だがいまだしていないということは出来ない様な
状態にあるということ。もしレイミが消滅や受精卵化を免れていても、あの『リバースⅩ』の量と今まで連絡が無い、
ということから鑑みてでは自分で行動する事は不可能な状態、ようするに赤ちゃんになっているということだ。赤ち
ゃんの状態であの国を生き抜くことは絶望的だった。
「今日でもう2週間経つわ……2週間?」
 自分でそうつぶやいてミミーはあることに気がついた。これまで『リバースⅩ』による若返りにはレイミもミミー
も『プログⅩ』を使って無理矢理その効果を打ち消していて、2人は知らなかったのだが、ナロス党の創り出した
『リバースⅩ』の効果はある程度長続きするものだったらしい。
「たしか最終決戦で使われた『リバースⅩ』の効力は聞いた話によれば、どんなに長続きしても2週間のはず……!」


 一方そのころ……。
「にいちゃん、レイラの様子がおかしいよ」
「え?」
 レイラは突然ぐずりはじめた。
「おかしいな……いつもは泣く子じゃないんだけど」
 心配したティミーの兄はレイラを抱きかかえて風呂から出ようとした。だが、彼がレイラを抱きあげると突然レイラ
は大きくなりはじめた。
「うわわわわ……」
 突然、重くなっていくレイラにティミーの兄は体重を支えきれなくなり、しりもちをついてしまう。その間もレイラ
は成長し続け、手も足も長くなっていき、そのバストもヒップも女らしさを増していく。そして、とうとう20代の美
しい大人の女性へと変身するのだった。
「あいたたたた……、ごめん、押しつぶしちゃった。まさか、こんなに急に大きくなるなんて……」
 成長したレイラ、いやレイミはティミーの兄を起こしてあげたが、彼もその場に居合わせた男の子たちもみんな彼女の体に釘付けになっていた。 
「おっぱい、おっきい……」
 ティミーの兄にいたっては鼻血まで出していた。
「う゛……。お、お世話になりましたっ!」
 レイミはそのまま走ってそとに飛び出していくのだった。

21とら:2010/03/09(火) 19:48:29

『プログⅩ』 最終回?(4)


 レイラ……いや、レイミは走りながら電話を探していた。自分が無事である事をミミーに知らせなければいけなかった。
このまま永久に赤ちゃんのままかと思いかけたが、やっと戻る事ができた。赤ちゃんになっていたので、長い間連絡が取
れず彼女も心配していることだろう。……だが彼女はパニックから大変なミスを犯していた。
「せめて服を着てから出るんだった!」
 慌ててティミーの家から逃げ出してきたレイミは一糸まとわぬ姿で出てきてしまった。しかもレイミが行く先々は全部
ひどい人ごみで、彼女にできることは両手で胸と股間を隠しながらそこを走り去る事だけだった。
「もうっ! せめてベビー服でいいから着てくるんだった!」
 レイミはただ電話を探して走るしかなかった。彼女は恥ずかしさのあまり気が付かなかったが、道を行く人々はレイミ
で走るレイミを見ても大した反応もせずに通り過ぎるだけだった。中には警察官もいたのだが、レイミを何故かレイミを
捕まえるような事はせずに通り過ぎた。
「あった! 電話!」
 ようやく1台のコイン式の公衆電話を見つける。レイミは物陰に隠れて電話を掛けようとした……だが。
「しまった……お金……」
 まさしく裸で家を飛び出したレイミはお金を全く持っていなかった。
「どうしよう……」
 この国の役所へ行けば確実に電話を掛けさせてくれるだろうが、確実に逮捕されるだろう。たとえ、されなかったとしても
すっぽんぽんでそんな所へ行きたくは無かった。と、レイミが悩んでいると突然声を掛けられた。
「うわっ、お嬢ちゃん、すごい格好してるね」
「ひっ!」
 レイミはつい飛び上がりそうになる、声の主は偶然にもティミーのおじさんだった。あのいかにもボンクラそうなおじさん
である。
「もしかして暑かったの、最近の若い子は大胆だね〜。どう? 脱いだついでにおじさんと一緒にホテルへ行かない?」
「結構です!」
「そう? じゃ、さよなら〜」
「待って!」
 おじさんは帰ろうとしたが、レイミは思いついた事があって呼び止めた。
「ん?」
「……あの……お金……貸してください……」


『レイミさん、よかった無事で……! 今からすぐ迎えに行きますね!』
「うん、早めに頼むわよ。……ふぅ」
 電話を掛け終えるとレイミはほっと一息ついた。
「大変だったわね〜。もしかして、強盗にでもあってパスポートも服も全部取られちゃったのかな」
「……まあ……そんなところです」
 レイミはとりあえず彼の言う事に肯定して頷いた。事情を説明してそれを信じてもらう以前に、真実を話したくも思い出
したくも無かった。
「そうそう、とりあえず電話代の方は後で必ず払ってもらうからね。安くなんだからさ」
「ははは……」
 レイミは最後にもう1つ頼みごとをする事にした。
「……よければ服も貸してもらうと嬉しいんですけど……」


 ……翌日、レイミは迎えにきたミミーとともに帰国した。ティミーのおじさんに借りたアロハシャツはクリーニングに
出されて、程なく彼の元に戻った。彼から借りた国際電話代はミミーに立て替えてもらった。
「大変でしたね。でも、これでナロス党も壊滅して世界は平和になりました」
「そうね……」
「レイミさん、お疲れ様でした。ミルクを1杯、どうぞ」
 ミミーはレイミを労い、ミルクを差し出した。
「……ゴメン……それはミミーが飲んで。何か別なの、お願いね。ミルクは当分いいわ……」

22とら:2010/03/09(火) 19:50:08

『プログⅩ』 最終回?(5)


「……ティミー。レイラは誘拐犯の人質にされている所を、たまたま君に保護されたそうなんだ。……もしあのまま放って
置いたら卑劣な誘拐犯の目的は達成されるところだった。君は立派な事をしたんだぜ……」
 おじさんは泣いているティミーを優しく抱きしめた。
「レイラのお父さんとお母さん……優しそうな人だった……?」
「ああ、優しそうだった」
「どこに住んでるか聞いてきた……?」
「……あ……忘れたてた……」
「もうっ! おじさんったら!」

 ティミーを慰めたあと、おじさんは自分の部屋へと戻った。
「家では結構優しいおじさんなのね」
「……ファントム、君か……」
 彼は仕事用の特徴のある口調に切り替える。
「それにしても……すっぽんぽんになって困ってるプログⅩを助ける必要な無かったんじゃないの? あのまま放って
おいても彼女は何事も無く故郷に帰れたと思うわよ。あの様子だと知らなかったんじゃない、あの子。この国は裸で外
を歩いても捕まらない……って事」
 ファントムは笑いを堪えながら言った。
 男の故郷である国は気候が温暖で影響で、元々は服を着る習慣が無く、その名残で服を着る事を国民に義務化してい
ない。近代化で裕福な者たちは近くの国から輸入した服をきる様になったが、お金の無い者たちにはその習慣は広まら
なかった。
 しかしこの国を乗っ取ったナロスの生真面目な者達には裸で歩き回る国民性は刺激が強すぎたようで、わざわざ輸入
して服を与えたのだ。……もちろん安物だが。
 そのお陰で彼の甥や姪のような子供の世代は服を着ない生活を知らず、裸を恥ずかしがるようになった。レイミに押し
潰されそうになった子は、あの時の感触を思い出すたびに鼻血を吹き出している。
 自分があれ位の子供の頃はどんなグラマラスな女の姿を見ても平気なものだった。レイミが逃げるのを見ていた大人達
も、何故レイミが裸を隠すのか不思議に思っていたくらいだ。
 もっとも、自分もある程度は鼻の下を伸ばす事を覚えた。もう、ナロス党が壊滅してもこの国からもう服を着る習慣が
無くなる事はないだろうと男は昔を思い出しながら、しみじみ言った。
「……今どき、この国でそんな事をする奴はもう居ないがな……。……すっぽんぽんで困る事あるのは君の方が多いだろう? 
ファントム……」
「私は違うわよ!」
「……それにプログⅩは長年、我が物顔でおれの故郷にのさばっていたナロスの連中を壊滅してくれたんだ……。……助けない
理由など無いだろう……」
「あらそう、それは実にいいニュースね。今朝の新聞に出てたわ。……お祝いに乾杯でもする?」
「……そうだな……」
 男が頷くと、ファントムは2つのグラスとワインを取り出した。
「この国の未来に」
「……そして裸のスーパーヒロインに……」

「「乾杯!!」」


 ……幾多の星が瞬き、欠けたところの一つ無い月が浮かぶその日の夜空は、まるでこの国の新しい出発を祝福しているようだった
という……。

23とら:2010/03/12(金) 22:44:42
『プログⅩ』は最終回ですが、まだまだ続きます。 ?って付いてるからね。『もうちょっとだけつづくんじゃよ』ってことです、できればお付き合いください。

24とら:2010/03/12(金) 22:52:40

『プログⅩ』:イミテーションⅩ 1


 ……地球は睨まれていた。いくつもの眼に。
 銀河連合の者達は地球人をどうするか考えていた。地球人は同胞同士で争う種族で、その星には常に
争いが絶えなかった。その上、問題は宇宙側にもあった。銀河連合に未加盟の者達、その惑星の美しさ
に目をつけた者、他星への侵攻の中継基地にしたいもの、単純に資源が欲しく植民地にしたい者。そん
な者達が地球の領有権を主張し、彼らもまた争い合った。


 このような事態を重く見た彼らはすぐに話し合った。
「もう爆弾でふっとばせばいいんじゃないですかね、手っ取り早いし」
 そう会議で発言した者は意見の余りの乱暴さにすぐに全員から睨まれたが、参加した者全員が『その方
が手っ取り早くて良いよね』と心の奥底では彼の意見を肯定していた。
 一方、地球をどうするかという意見ばかりで地球人たちのことはすぐに忘れられてしまった。これでは
まずいと宇宙の生物を記録する銀河連合の学者達は団結して、ある提案をした。
「地球人の調査をしたい。彼らの生態を早急に調査し、後の為に生態標本も採取したい」
 地球人及び地球生物を調査しておけば、仮に地球を爆破されても学術上の被害は抑えられた。体毛や皮
膚の一部でもあれば種族の再生は可能である。また生態を解明する事によって事態が解決する事もありえた。
 彼らのこの提案は可決され、地球に調査隊が派遣される事になった……。かくして地球に100人の調査隊
がその地に降り立つことになる。100人とはいっても全て同じ種族であり、銀河連合は彼らをイミテーションⅩと呼
んでいる。
 イミテーションⅩは通常は不定形の生物だが、体組織を変形させて様々な生物そっくりに変身する事がで
きた。強力な念力とテレパシーも持っていて、互いに意識を繋げる事も可能で、その事から連絡を取ること
も容易だった為選ばれた。
 地球に降り立ったイミテーションⅩはとりあえず皆、姿をそっくりになりすます相手を探した。この内の
1体のイミテーションⅩもその例に漏れず、変身相手を探し、狙いをつけたのだった。

25とら:2010/03/12(金) 22:54:23

『プログⅩ』:イミテーションⅩ 2


 一方、レイミは自分達の研究所で『プログⅩ』の研究に励んでいた。ナロス党の活動もここしばらくは大人しく、
彼女も研究に打ち込むことができていた。ふと作業の手を止め、ミミーが話し出す。
「それにしても『プログⅩ』の派製品も種類が増えましたね、今ではまったく効果の違うものもありますしね」
『プログⅩ』とは生物を急成長させ、果ては巨大化させる薬である。元はレイミの祖父が発明したものだが、
悪人達に簡単には利用されないよう、レイミが人間の女にしか効き目が無いよう改良した。

「ええ、そういえば。……でも本当に役に立つ物を作れてるのかな」
「そんな事ないですよ。『プログⅩ』にすごい美容効果があることが分かったじゃないですか、そのお陰か
わたしもレイミさんもお肌ピチピチじゃないですか。すごいですよ」
「それだけじゃあ……」
「じゃ、『リバースⅩ』とかどうです? これにも美容効果がありますし。将来、不老不死への糸口になるかも」
『リバースⅩ』とはレイミの研究から、悪の組織ナロス党が偶然発見した若返りの薬である。彼女の研究を基に
したためかナロス党が作った物は人間の女にしか効き目が無い。現在、ナロス党が使用するものはほとんどレイ
ミ用の兵器と化している。対策と研究の為、レイミたちも『リバースⅩ』を作った。最初の頃は様々な生き物に
も効果のあるものを作っていたが、今は結局、女性にしか効き目の無いものを、厳重に保管している。
「いい思い出が無いわ……。わたしはね、ミミー。格好良く歳をとりたいの、生き物はどうしても歳をとらないと
いけないんだから。そっちの方が賢い選択でしょ。第一これ、わたし達が作ったものじゃないし……」
「じゃあ、『バストグロウⅩ』はどうですか。わたし達の作った物ですし……」
「ミミー、本気で言ってるのあなた! アレ、最低の発明でしょ!」

 ……『バストグロウⅩ』とは『プログⅩ』の研究中にレイミが発見した薬品である。使用すれば胸の部分が
驚くほど大きくなる。効果はそれに留まらず、乳腺を刺激して母乳を分泌できるようになるという薬である。
……どこまでの生物に効果があるのかはよく分かっては無いが、おそらく哺乳動物全般に効果があると思われる。
「でもこれにもすごい美容効果がありますよ! 将来、お乳の出の悪いお母さんや牛の役に立つかも知れません!」
「言っちゃ悪いけどアレは、下半身でものを考えてるバカ学者が発明するようなもんでしょ! 君の発明するような
物じゃないって、同僚から釘を刺されたわよ!」
 動物実験で効果がよく分からなかったため、危険性も無いと判っていたので思い切って自分で実験してみたレイミの
バストは、スイカかビーチボール大になり、数週間ほど母乳を出し続けた。そんな事もあってかレイミはすぐに『バスト
グロウⅩ』を研究所の奥深くに『リバースⅩ』よりも厳重に封印した。

「……アレは今後10年、いやこの地球の全女性の為に絶対に表に出さないからね、まったく。……叫んだら喉も渇いたし、
ちょっとコーヒーを淹れてくるわ」
 そういって部屋を出ようとしたレイミだったが、すぐにその足を止めてしまった。ミミーも『それ』を見て呆然とな
っている。レイミの目の前には巨大なアメーバの怪物のようなものが天井に張り付いていた。
「……なにコイツ……!」
 ミミーをかばおうと動こうとしたが、レイミの身体はどういうわけか動かなくなっていた。

26名無しなメルモ:2010/03/13(土) 08:56:48
とらさんいつも更新ありがとうございます。
それとこれからも続けていただけるみたいですので嬉しくてしかたありません。
新章すごく楽しみです、特にバストグロウXにはすごく期待しております。
レイミのバストがビーチボール大になった姿と母乳が止まらなくなった姿はぜひ現在進行形で見てみたいですね。
アメーバに内容を聞かれてるみたいですので悪用される日が楽しみです。
他にもヒップグロウXやファットX、はたまたそれらのリバースXとの複合型といったものもぜひ登場させてほしいです。
それでは続きを心待ちにしておりますのでこれからも頑張って下さいね。

27とら:2010/03/13(土) 21:39:27

『プログⅩ』:イミテーションⅩ 3


 念力で2体の地球人を動けなくしたイミテーションⅩはとりあえず、どちらの姿をコピーするか悩んだ。すこし考えて
すぐ目の前にいる方にしようと決め、自分の身体をそちらにくっつける。イミテーションⅩはすぐに触れた対象の遺伝子
情報と記憶を読み取り、自分の触れた地球人そっくりに変身した。
「……うまくいったわ、名前はレイミっていうのね。あなたが女の子でよかったわ、わたしの種族に性別は無いけど
仲間の中じゃ女の子っぽく振舞ってるから。自己紹介をするとわたしの名前は……」
 そう言ってイミテーションⅩはレイミの方をちらりと見た。
「わたしが変身したあなたの名前はレイミっていうみたいね、それにちなんでわたしはレイカって名乗る事にするわ。
よろしくね」
 レイミそっくりに変身した異星人はそう名乗り、レイミに頭をくっつけてさらに記憶を探った。レイカと名乗った異星人
は姿かたちはレイミそっくりに変身したが、表情や態度は全く似てなかった。というか本人には似せる気すらなかった。
 元々、相手そっくりに変身するのはイミテーションⅩ達にとってあいさつの様なもの。コミュニケーションの一環であり、
別に相手になり済ましているわけではない。別にうまく変身できなくともテレパシーでいくらでもごまかす事が可能だった。
「……どうしよっか。普通は変身のモデルは任務が終わるまで眠らせて置くんだけど……レイミもミミーも『キレイ』で
『カワイイ』しなぁ……」
 イミテーションⅩたちは、アメーバ状の姿でよその星出身であるということを信じられないほど『キレイ』なもの、
『カワイイ』ものが大好きな種族だった。驚くべきことに、この『キレイ』『カワイイ』といったものは完全に地球人が
使ってる言葉とまったく同じ意味と使われ方をしていた。……いや、どんな姿にでもなれるからこそなのかもしれない。
『キレイ』なもの、『カワイイ』ものを愛するというのは宇宙では想像以上に普遍的な感覚だった。


「ん? 何かなこれ? これ、どこにあるの? 案内してよ」
 レイミの記憶を探っているうちに、興味の引かれるものを見つけ、レイカはそれを調べる事にした。
「……わか……ったわ……」
 強力なテレパシーによるお願いによって、レイミはレイカの言うままにそこまで案内した。
「……これが『プログⅩ』かぁ。他にも色々種類がある、わたしも使ってみたいな。……でも注射は嫌だな」
「だったらこっちはどうです? 液体の飲み薬になってますよ」
 ミミーが使いやすいように改良したものを持ってきた。すでにテレパシーによって、2人は大分スムーズに
アリカに接するようになっていた。
「よぉし! ……駄目だ……なにも変化が無い。多分、人間じゃないからだね」
 自分に使っても意味が無いと知ったアリカは、今度はレイミたちに薬を使ってみる事にした。
「ミミー、あなた『プログⅩ』を使ってみて。いいよね?」
 ……普通なら聞いて貰えないだろうが、テレパシーによって余程でもないがぎり無茶なお願いでも聞いてもらえた。
「分かりました、いいですよ。あっ、でも大きくなりすぎると困りますから大人になる程度の量にしますね」
 それにミミーは『プログⅩ』を1度使った事があり、内心また使ってみたいと思っていて快諾した。ミミーは
『プログⅩ』をほんのちょっと飲む。すると成長途中のミミーの背や手足はぐんぐん伸び、胸もお尻も大きくなってすっ
かり大人の女に変身した。
「んぅ……。ちょっと服がキツイ……」
 大人に成長したミミーにとって、17歳の時の服は少し小さいようだ。
 成長によるの変化は少しのものだったが、それでもレイカは驚いた。
「すごい……。地球人ってこんなに変化するんだ……。私達が変わるのは大きさぐらいだからなぁ……。ねぇねぇ、
こんどは『リバースⅩ』っていうのを使ってみようよ。こっちはレイミ、あなたが使ってみて」
「……わたしが? どうしてもなの?」
 レイミは『リバースⅩ』に対しての記憶のせいか、テレパシーを使ってもなかなか首を縦に振らない。
「お願い! この通り!」
「……分かったわ」
 だが結局、レイミはレイカのテレパシーには逆らえずに『リバースⅩ』を持ってきたのだった。

28とら:2010/03/13(土) 21:51:57

『プログⅩ』:イミテーションⅩ 4


「……思いついたんだけどさ、これで赤ちゃんってヤツになれるんでしょ。なってみてよ」
「……………………」
 とうとうレイミは何も言わなくなってしまった。強力なテレパシーも『リバースⅩ』関係の嫌な記憶を押し
のけて、『はい』と言わせることはできず、これ以上は無理に思えた。
「わたしがやりますよ、注射をするのは結構難しいですからね。レイミさんは服を脱いでおいてくださいね、
大変ですから」
 そういうとミミーはテキパキと準備をはじめた。一方、レイミはしぶしぶ服を脱ぎ、程なく準備は終わった。
「レイミさん、下着は着けたままなんですか」
「うん……。あのさ……痛いの……嫌なんだ……」
「じゃ、お尻にしましょう。さ、こっちにお尻を向けて屈んで下さい」
「…………」
 レイミはもう覚悟を決めるしか無かった。

「ちくっとしますよ〜」
「痛っ……!」
『リバースⅩ』を打つことによって、レイミの肉体は急速に若返り始めた。背は縮み、胸も薬を打ったお尻も小さく
なっていった。着けていた下着のサイズはたちまち合わなくなり、どんどんずり下がっていく。
「うわわわわ……」
 レイミは下着がずり下がらないよう、必死につかんだがすっかり子供体型になってしまった身体では意味が無かった。
やがてレイミは立つことができなくなり、床に座りこんでしまった。その内、座る事もできなくなり、寝転んでしまう。
……こうしてレイミは生後6ヶ月くらいの赤ちゃんになってしまった。
「……カワイイ! 赤ちゃんて、こんなにキュートなヤツだったのね! 地球人ってすごいわ!」
 さっきのミミーの変化も驚いたが、今度はそれ以上の驚きだった。レイカは感動し、すっかり赤ちゃんになってし
まったレイミを抱きしめ、頬ずりするのだった。
 赤ちゃんは普通かわいいものだが、レイミの場合は一段と可愛かった。その理由は元々の素質もあるが彼女が普段から
正義の味方として『プログⅩ』を使い、今は『リバースⅩ』で若返っている事により両方の美容効果の恩恵を受けている
事も大きい。これによってレイミはものすごく綺麗で可愛い赤ちゃんになるのだった。
「レイミさん、かわいいなぁ……。わたしにも抱かせてくださいよ」
「いいよ」
 アリカはミミーにレイミを渡した。
「うわぁ……。ホントかわいい……」
 1人の地球人と1人の異星人はレイミの可愛らしさに微笑む。一方、当のレイミはムスッとしていた。だが、それが
かえって本人の可愛らしさを引き出した。


 ところでイミテーションⅩは相手の容姿をコピーする時にどうしても真似したくても、出来ない所があった。相手が着て
いる服である。その為、アリカは変身しても何も着ていなかった。テレパシーによって気にはならなくなっていたが、
ミミーはレイカが寒くないのかとずっと思っていた。それで脱いであるレイミの服を見て思い切って聞いて見た。
「レイカさん、寒くないですか。……レイミさんの服を着てみたらどうです、似合うはずですよ」
 レイカは脱いであるレイミの服を着てみる。レイミそっくりに変身しているのでもちろんピッタリだった。
「ねえ、これもらってもいい」
「ええ、どうぞ」
「ありがとう〜」
 レイミは赤ちゃんになってる間に異星人に服を一式とられてしまった。レイカのテレパシーのせいで不満に感じることは
無かったが、正気であれば抗議しただろう。……話す事さえできれば。

29とら:2010/03/15(月) 21:11:10

『プログⅩ』:イミテーションⅩ 5


 そうこうしているうちにレイミのお腹が小さく、くぅと鳴った。お腹が減ってきてしまったのだ。
「大変。レイミさん、いまミルクを取ってきます」
「ねえ……今度はアレやってみてよ」
「あれ?」
「おっぱい、あげてみてよ。赤ちゃんのごはんなんでしょう? あたし、どうしても見てみたいわ」
「うーん……」
 本当なら無茶なお願いだが、テレパシーによりそう思わなくなっており、ミミー自身もレイミの為にいつも何かしてあげ
たいと思っていた。そして、それを叶える手段もあった。
「そうだ、ちょっと待っててください」
 ミミーは厳重に保管してあった『バストグロウⅩ』を持ってきた。
「これならうまくいきますよ」
 そういうとミミーは自分に『バストグロウⅩ』を注射した。すでに『プログⅩ』によって大きく成長していたミミーの
胸はこれによって、まるでスイカのように膨れ上がってしまった。
「さ、レイミさん。どうぞ」
 だがレイミはミミーの母乳を飲もうとはしなかった。考えてみれば身体は赤ちゃんでも、中身は20代の立派な大人の女性
なので当たり前といえば当たり前だろう。
「困ったな〜。……そうだ!」
 レイカはレイミに目隠しをして、こうささやき始めた。
「……レイミは赤ちゃん……レイミはかわいい赤ちゃん……」
 その言葉を聞いているうちにレイミは自分が22歳の大人の女性である事、正義のヒロインとして毎日戦っている事を思い
出せなくなっていく。レイミはレイカのテレパシーによって精神も赤ちゃんにされてしまった。
 精神も赤ちゃんになってしまったレイミは赤ちゃんの本能に素直に従い、ミミーの母乳を飲みはじめる。
「カワイイ……!」
 精神が幼いレイミもまた可愛らしく、レイカはこれに満足するのだった。

 ……色々楽しんだ、もとい調査をしたレイカはこれを自分ひとりではなく仲間と一緒に楽しむ事にした。レイカは
テレパシーで仲間を呼び、『プログⅩ』と『リバースⅩ』の存在とその使い方を教えた。『バストグロウⅩ』も仲間に
広めたかったが、これはろくに研究をしておらず、量産が出来なかったのでレイカは仕方なくあきらめた。自分で作る
という選択肢もあったが、レイカにはこのような薬を作る技術も知識も無い。

「この薬で地球人を大きくしたり、小さくしたり出来るわ! おっきくした地球人はキレイだし、ちっさくした地球人は
とってもカワイイわ! ね、みんなでいろいろ使ってみましょ!」
 こういってレイカは仲間に『プログⅩ』と『リバースⅩ』を広めた。だが『リバースⅩ』は注射でないと効果が無く、
仲間が使うには不便な薬だった。
 レイカは自分たちが使いやすいよう、元に戻ったレイミとミミーにお願いした。
「レイミ、ミミー。みんなが使いやすいように、『リバースⅩ』も飲み薬にして」
「わかったわ」
「……わかった」
 2人は『リバースⅩ』を改良して飲み薬にした。ミミーは膨れ上がった自分のバストに苦労しながらも、レイミを手伝った。

 だが薬はどちらも量が少なく、あっという間に無くなってしまう。
「みんなが使えるように薬をもっとたくさん作って」
「わかったわ」
「……わかった」
 2人は薬をレイカの仲間に行き渡るよう、全員分作った。

 イミテーションⅩ達は『プログⅩ』と『リバースⅩ』を自分が変身した相手とその周囲の人間達に使いはじめた。
だが、またもここで困った事が起きた。人間の男に使えないのだ。イミテーションⅩ達は、ぜひ人間の男達も大きく
したり小さくしたりしたいと思った。 
「レイミ、人間の男にも使える薬を作って」
 だがレイミはこのお願いを断った。
「ダメよ。人類全員が使えるようなら悪用の危険が2倍になるわ。女だからって安全とは限らないけど、だれもかれも
簡単に使えるよりはマシだと思うわ」
 というかそもそも『プログⅩ』を狙ってくる悪者たちはそのほとんどが男だった。
「お願い! 作ってちょーだい!」
「絶対にダメ!」
 ……結局、この願いはレイカがどんなにテレパシーを駆使しても叶うことは無かった。無論、地球人の平和の為には
その方がいい。


 ……こうしてイミテーションⅩたちは『プログⅩ』と『リバースⅩ』を地球人に使いまくった。地球人の男にはその
どちらも使えなかったが、それでも彼らは十分に楽しんだ。
 普通ならとっくに地球に大混乱が起こっていてもおかしくは無いが、イミテーションⅩのテレパシーによって地球人
たちは相変わらず平和な毎日を過ごした。地球人にとって幸運だったのは、イミテーションⅩたちの薬の使用方法が
イタズラの域を脱していない事にあった。もしそうでなかったら、とうに地球は終わっていただろう。

30とら:2010/03/16(火) 22:11:14

『プログⅩ』:イミテーションⅩ 6


「ね、レイミ。1歳から22歳のあなたの姿を全部みせてよ。お願い!」
「分かりました、レイミさん。『リバースⅩ』をどうぞ」
「……」
 若返り、様々な年齢に変身するレイミを見ながら、イミテーションⅩであるレイカは自分が帰る1週間前になって唐突に
もう1つの自分の使命を思い出した。
「しまった! この星で人間と同レベルに繁栄してる生物の捕獲も頼まれてたんだっけ、お願い、手伝って!」
「いいわよ」
 若返りながら、これまでに比べて特に何の事はない要求に思えたのでレイミは1つ返事でOKした。

「レイミ! そっち、そっちいったわよ!」
「きゃ!」
 ……人間と同レベルで繁栄している生物とは、節足動物の1種、要するに『昆虫』のことであった。レイミは小さく
なった自分の身体と動き回る虫達に苦戦しながら、草むらや森、台所の中を駆け回った。ちなみにミミーはまだ
『バストグロウⅩ』の効果が続いている事もあり、家で留守番だった。


 ……色々な事があったがすべての調査も終了し、イミテーションⅩたちは宇宙へと帰っていった。 
 イミテーションⅩたちが宇宙に帰ると地球の人々は程なく正気を取り戻すとともに彼らと関わっている時の記憶を無く
した。多くの人は何とも無かったが、一部では子供が大きすぎる服を着ていたり、逆に大人が小さすぎる服を着ていたな
どという事件が起きていた。また、気がついたらオムツをつけていたという人もいた。もっともオムツに関連しては、
恥ずかしくて言う人は誰も居なかった。
 ……何故か被害者が全員女性という、不思議な事件だった。
 
 無論、レイミとミミーも正気を取り戻した。
「どうして、わたしこんなサイズの合わない服を着てるの!? キツイ……。一体どうなってるの!」
「わたし大人になってるっ! それに胸もおっきい……ちょっといいかも……?」
 ……余談だがこの後、2人は『プログⅩ』と『リバースⅩ』の悪用を疑われて、警察に事情聴取される事になるのだが
2人も被害者ということですぐにその疑いはすぐに晴れるのだった。巨乳を通り越して奇乳になっているミミーの事はみ
んなそっとしておいた。……本人は気にした風では無かったが。



 銀河連合本部に戻ったイミテーションⅩ、レイカは何時の間にかまとめたレポートを上司に提出し、こう報告した。
「地球人はホントキレイでカワイイんです! 大きくなるとキレイだし、小さくするとカワイイ! スゴイですよ
ホント! もしかしたら宇宙一かも!」
 それをレイカの上司はやや引き気味に受け止めながらも、冷静に訊き返した。
「本当か?」
「……もしかしたら違うかもしれません。ちょっと試してきますね」
 レイカは自分たちが持ち出してきた『プログⅩ』や『リバースⅩ』を宇宙の全種族に片っ端から試そうとしたが、
もちろん上司に止められた。人間の女にしか効果の無い物ではあったが、それでも止める事に越した事は無い。
 銀河連合の学者達はアリカたちが持ち帰った生物サンプル、レイミとミミーを含む約100人の髪の毛と昆虫、そして
持ち出した薬を自分達の安全の為、しっかりと預かった。その中にはあの『バストグロウⅩ』もあった。
 学者達は研究の為に髪の毛から人間を再生し、レイカたちの言葉が事実である事を知った。地球人の赤ちゃんはみんな
可愛らしかった。
「……カワイイ……!」
 だがすぐに赤ちゃんは成長してしまう。大きくなるとそれはそれでいいが、赤ちゃん時代をもっと見たかった。なので
学者達は『リバースⅩ』を改良し、不老不死の薬を作った。効果はこれも女性限定だがこれによりいつまでも赤ちゃんの
ままにしておけた。もし成長させたくなったら『プログⅩ』を使って大人にした。
 ……人類は自分達の預かり知らぬ所でいつの間にか長年の夢、不老不死を手にしていた。ちなみに不老不死というのは
銀河連合の中では原始的な精神を持つものが欲しがるもの、と認知されていてそれを自分達に使おうとはしなかった。
 もったいない気もするがそういうものだ、仕方が無い。

31とら:2010/03/17(水) 22:28:52

『プログⅩ』:イミテーションⅩ 7


 さて、学者達はこんな素晴らしいものを自分達で独占しているのは良くないと、地球人のコピーを大量生産して銀河
連合中の星に売り出した。地球人は人気商品となり、異星人の子供達が毎日デパートでおねだりした。

「お母さん、地球人、地球人買ってよー!!」
「駄目です! あれ男の子でしょ、どうせ買うなら女の子のほうにしなさい!」
 男より女の方が人気があった。不老不死の薬でいつまでも赤ちゃんとして可愛がる事が出来るからだった。
「いやだー!! 男がいい、男は大きくなるとカッコいいもん!」
「……レイミちゃんなら女の子だけど大きくすればカッコよくなるはずよ! それかミミーちゃんにしなさい、この
2人が100種類ある地球人のなかで人気があるんだから!」
「やだー! 男の子がいい!」
 レイミとミミーの2人は地球人の中でも人気があった。レイミは赤ちゃんの時は可愛らしく、大人にすればカッコよく
キレイになるので1番人気。ミミーも赤ちゃんの時は可愛らしく、大人にすると女性らしく美しくキレイになるという
ことで2番人気だった。
 ……ただ、それでもこの異星人の子供は男の子が欲しかった。
 
 人気商品となった地球人をみて、銀河連合に未加入の異星人たちの1部も欲しがった。だが地球人は銀河連合に加入
した星の者にしか売られていなかった。地球に侵入しようにも、銀河連合の監視の目を潜り抜ける事は不可能だった。
不正規のコピーを手に入れようとしても、それにも厳しく対応されていて捕まればただでは済まなかった。
 ……結局、興味のある異星人たちは銀河連合に加入するしかなかった。銀河連合の定めた秩序は広がり、宇宙はより
平和になった、と言えるかもしれない。

 そんなある時、銀河連合に加入手続き中の星が恐ろしい疫病に襲われた。罹った者は物凄い速さで老化し、死んでいくと
いう病気だった。事態の解決を図るため、銀河連合は彼ら用の『リバースⅩ』を作り提供した。『リバースⅩ』は彼らの
病気を治す事は出来なかったが、症状を緩和させ多くの命を救った。『リバースⅩ』で時間を稼ぎ、学者達は病気の特効薬を
開発し、その星から病魔の脅威は去った。救われた星の人々は銀河連合の学者達と『リバースⅩ』を創り出した地球の者、
要するにレイミに感謝した。……正確には発見者はレイミでは無かったが、彼らにそんな事は分からなかったし、もう既に
地球と言えばレイミのイメージは銀河中に広まっており、大した問題にはならなかった。


 また他の星でも危機が起きていた。その星は地球人と同じく哺乳動物が知的生命体に進化した星だった。彼らは乳を聖なる
ものとして崇め、一大特産品として他の星に輸出していた。だがある日突然、その星の彼らを含めた哺乳動物から乳が出なく
なった。乳を崇める彼らはパニックに陥った。
 原因はこれも病気だった。銀河連合は『バストグロウⅩ』を彼らに提供した。『バストグロウⅩ』はまったくと言っていい
ほどレイミも銀河連合の学者たちも研究しておらず、一か八か、同じものをたくさん作って送られた。最初誰も彼もこの薬に
期待はしていなかったが、それとはうらはらに目覚しい効果をあげた。それだけでなく乳の生産力は以前と比べて170%アッ
プし、彼らの星は経済的にも潤った。彼らは『バストグロウⅩ』を神の薬といい、地球人に感謝するのだった。

32名無しなメルモ:2010/03/17(水) 23:15:09
バストグロウXはBEも好きな私にとっても神の薬です!

ぜひサイドストーリーでレイミが実験に使用した時の話やミミーがイタズラでレイミに投与する話をよろしくお願いします!

33とら:2010/03/20(土) 22:54:36

『プログⅩ』:イミテーションⅩ 8


 ……こうして地球の技術が宇宙の平和に貢献する事によって、地球は人気になり一大ブームとなった。このブームにより
宇宙で『驚異の地球展』が開催された。
『驚異の地球展』では過去に捕獲された地球の生物、星を救った地球の技術、そして地球人が展示された。
 過去に捕獲された地球の生物とは『昆虫』の事であった。生きたまま展示された昆虫達は全てイミテーションⅩたちが捕
まえたものの子孫であり、その貴重さと重要さからどれも好評であった。とくに人気を博したのがチョウとゴキブリだった。
チョウは幼虫から成虫からへの華麗な変身、ゴキブリはその強い生命力が評判になった。これはたまたまだが、どちらもレイ
ミがアリカと協力して捕まえた虫であった。
 地球の技術はレイミの元から持ち出された多くの薬品がが紹介された。『プログⅩ』、『リバースⅩ』、『バストグロウⅩ』
以外にも多くの薬品が紹介されたが、ここでは省略する。銀河の多くの人々が星を救った技術を見ようと、またこれからの発展
に対してのヒントを見つけようと我先に押し寄せた。

 そして地球人の展示だが、これは無論1番人気があり宇宙の平和に貢献したレイミ、そのコピーが展示される事になった。
「……あなたたちは地球人代表の展示モデルとして、しばらくの間ここにいてもらいます。いいですね?」
「「「「「はーーーーーい♪」」」」」
 銀河連合はレイミの年齢別のコピーを作り、それぞれ展示させた。
「それから地球人の身体のつくりを皆さんに知ってもらう為、衣服は着用しない事。すこし寒いかもしれないけど、頑張って
くださいね」
「「「「「わかりました♪」」」」」
 大勢のレイミが声をハモらせながら返事をした。
 ……こうして地球人、レイミの全年齢の全ヌードが全銀河に公開された。なお、偉大な者のコピーを作り出すのは銀河では
一般的な事である。
 展示されたレイミのコピーを見た銀河の人々は、ある者は感謝の涙を流し、またある者は両手を合わせ祈りの捧げたという。


 この『驚異の地球展』によって銀河の地球ブームはますます加速した。地球といえばチョウとゴキブリとレイミのイメージは
固まり、銀河の人気者になった。
 地球自体の銀河連合内の評価も『文明が未発達な原始的な星』から『驚異の可能性に満ちた星』になった。銀河連合に未加入
の異星人たちは地球の評判が変わってしまった為、地球に手出しをしにくくなってしまった。今の評判の地球に手出しをすれば、
自分達が完全に悪者になり、他の星からの介入は必至だった。
 ……結果的に地球は守られ、危機は去った。


「ミミー、わたしの下着と服を知らない? いつの間にか無くなっちゃって」
「『バストグロウⅩ』といくつかの薬品も行方不明です」
「……それはわからなくてもいいわ。誰かの迷惑にさえならなければ。でも、金庫を強引に開けた形跡は無いのに、どうして無く
なったんだろう」
 まさか自分達が開けて、他人に譲渡したとは夢にも思わないだろう。
「レイミ、ミミー! また小さくなってみてよー!」
「ダメよ! 今忙しいんだから!」
 ……イミテーションⅩのレイカは今でも時々2人の元を訪れているという。もちろんテレパシー能力で2人も、他の人々も誰も
不自然に思う事は無い。できれば『次』が無いように、地球人たちは畏れ、祈るしかない。
 それはこれを書き、そして見ている私達とて同じ事である……。


 ……え? そういう事をいうような作品じゃ無いだろって? ……仕方ないね。


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