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ショートショート作品

15beebeetomxxx:2010/01/03(日) 00:42:23
「カレンダー」


ぼくは正月の朝、壁に貼っておいたカレンダーの表紙をめくってみて
その異常さに気づいた。
本来なら2010年1月の暦のはずなのに
そこには1973年1月の暦が印刷されていた。
表紙の年号は間違いなく2010年であった。
「お母さん、この間買ってきたカレンダー変しいよ。」
ぼくは階段を降りて、キッチンでおせち料理の準備をしていた
母親に声をかけた。
しかしそこには40歳のお母さんはいなかった。
いたのは3歳くらいの可愛らしい幼児だった。
ただ着ていたぶかぶかの割烹着とエプロンはお母さんのものだった。
「おい、おまえ誰だ?どこから来たんだ?」
するとその女の子が叫んだ。
「何言ってるのよ?あたち、あなたのお母たんよ。
ヘンなこと言わないで。」
ぼくは目を丸くして、その子の顔を改めてじっくりと見た。
確かにその顔には母親の面影が多少残っていたが
あの厳しさも凛々しさも微塵もないとてもあどけないものだった。
「正月早々、何を騒いでいるんだ?」
後ろから少年の声がしたので、ぼくは思わず振り返った。
そこには自分より年下の8歳くらいの男の子が
テーブルに座って新聞を広げていた。
彼も身体にはまるで合わないぶかぶかのパジャマを着ていた。
「おとうたんもちんぶんなんて読んでないで、すぐきがえなちゃい。」
少年はぼくの父親だった。
ぼくは何がなんだか分からなくなった。
しかも驚くべき状況がこの家にだけ起きている訳ではないことが
すぐにわかった。
居間のテレビにも異常な光景が映っていた。
若い頃の姿の大御所やベテランアナウンサーたちに混じって
だぶだぶ服の少年少女や赤ん坊
そしてものけの殻になった着物や衣服があちこちに山を作っていた。
ぼくはその時やっとカレンダーの意味を理解した。
みんな1973年、つまり37年前の姿に若返って見えるのだ。
そしてあの服の山は37歳未満のタレントがいたものに違いないと思った。
ぼくは怖くなってキッチンを出ると階段を駆け上がって部屋に戻った。
そして部屋の壁のカレンダーをもう一度確かめた。
間違いなく1973年1月。ぼくが生まれる25年以上も前の暦だった。
ぼくはなぜこんなことになったのか想像できないまま、
さっき剥がしたカレンダーの表紙をセロテープで貼ってみた。
しかしいつの間にか、表紙の年号も1973年になっていた。
ぼくは恐怖のあまりベッドに頭から突っ込んだ。
そして夢であることをひたすら祈った。


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