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緊急投下用スレ

996謎のミーディアム:2009/07/12(日) 05:03:24 ID:49MvjLLs
>>995
 
「でも……これはこれで、いいと思わない?」
「どうしてさ。めぐだって、楽しみにしてたじゃないか」
「そりゃあね、見られるに越したことはないわよ」
「だったら、なおさら――」
「言わないで」
 
繋いだ君の手に、ほんの僅か、力が込められた。
「もう、いいのよ。これで、いいの」
 
だって、と。君は嘲るように、鼻を鳴らした。
『類は友を呼ぶ』と言うけれど、その仕種は、水銀燈とよく似ていたよ。
いまなら解る。それが、センチメンタルなことを言う照れ隠しだったんだと。
 
「なにが、だって――なんだ?」
「1年に一度きりの、恋人たちの逢瀬だもの。そっとしておいてあげたいじゃない」
「……まあ、な。野次馬に邪魔されたくないだろうし」
 
恋人と呼べる人を得てから、めぐは変わったし、僕も変わった。
自分たちが幸せになって初めて、心から他人を思いやれる余裕が生まれたんだろう。
 
「織姫と彦星も、今頃は再会して、触れ合える喜びを満喫してるかな」
「その言い方……なんか、やらしいね」
「邪推しすぎだっつーの。って言うかさ、そういう発想自体、やらしいと思うぞ」
「あははっ。そうだよね……私、やらしいなぁ」
 
朗らかに笑う君を見ていたら、胸に募る想いを止められなくなって。
僕は、めぐを抱きしめて、その薄い唇を塞いでいた。
つきあいだしてから1年目にして、初めてのキスだった。
奥手すぎるにも程があるよな、まったくさ。
 
しかも、僕としては、文字どおりのファーストキスだったんだぜ。
正直、不安で胸が潰れそうだったよ。上手にできていたのか、解らなかったし。
それに……君はものすごく強く、僕の左手と服を握りしめていたからね。
まるで、全身全霊をもって、僕の想いを受け止めようとするみたいに。
 
 
「初めて……だったの」
 
めぐは、離れたばかりの唇を指でなぞりながら、はにかんだ。




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