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緊急投下用スレ
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「今年も、見れなかったね」
夜空を見上げながら、君は呟いたんだ。
つまらなそうに。でも、ちょっとだけ嬉しそうに。
そんな天の邪鬼ぶりが、いかにも君らしくて……
あの時、僕が浮かべた苦笑いを、君は気づいていただろうか。
「うん。結局、晴れなかったな」
僕も、隣に佇む彼女に倣って、想いを虚空に放った。
病院の屋上から、どんよりと曇った夜空へと。
「折角、ここまで天体望遠鏡を担いできたってのにさ」
「ごくろうさま」
彼女――柿崎めぐは、いつになく優しい笑顔を作った。
自然に生まれただろう微笑なのに、僕には、それが文字どおりの作り物に見えた。
やっぱり、天の川を見ることができなかったから、怒っているのかな。
そのときの僕は、まだ人間的に幼稚で、そんな野暮な見立てしかできなかった。
「ねえ、知ってる? ここ数年、七夕の夜は曇ってばかりなのよ」
「そうだっけ? 去年は曇ってたって憶えてるけどさ」
「去年も、一緒に見ようとしたものね」
そう。だから、はっきりと憶えていたんだ。
水銀燈を……共通の友人を介して知り合った僕らが、初めてデートっぽい事をした記念日だったから。
あれから、もう1年が経ってるなんて、つくづく不思議な気分がしたものさ。
「本当に、残念だよ」
僕は心から、口惜しく思っていた。めぐに天の川を見せてあげられないことを。
まあ、昨今の日本は夜空が明るすぎて、見える星の数は、高が知れてるけど。
吐息混じりに言った僕の左手を、君は、そっと握ってくれたよね。
そして、静かに肩を寄せてくれた。
冷えてゆく夜気の中で、君がくれた温まりを、この左肩はいまも憶えている。
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