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オパール・キッス

3オパール・キッス:2005/11/17(木) 23:58:40

                         2

地球連邦警察機構───
そこが、美崎麗奈の所属する組織の名である。各国の警察組織では対応できない凶悪犯罪に対抗するため
選りすぐりのエリートたちで構成された機関だ。

美崎麗奈四十歳──
彼女はいわゆるキャリア組である。役職は日本の警察でいえば警視クラス。
本来なら、現場に出るような立場ではなく本部で指揮を執るべき人間なのだ。
しかし、彼女自身長年追っていた“オパールキッス”の密売組織だけは自らの手で壊滅に追い込みたかった。
そしてもうひとつ、麗奈が“オパールキッス”密売の組織にこだわる理由があった。

夫の弔い合戦──
三年前、同じく連邦警察に所属していた夫の達哉は、“オパールキッス”の密売組織を追い
殉職してしまったのだ。
麗奈はそれから当時十三歳だった息子を女手ひとつで育て、いつか夫の仇を討とうと心に誓っていた。
そして、今回『マルスの導き』の“オパールキッス”への関与が疑われたとき、自ら潜入捜査に
志願したのである。

息子の翔も猛勉強の末、十六歳という年齢で飛び級をし、達哉や麗奈と同じ連邦警察への道を選んだ。
いまも最終試験のため本部へと赴いている。これに合格すれば連邦警察の一員としてようやく現場へ
出ることができるのだ。

(そうすれば僕も父さんの仇を討つ手伝いができる)
それに母さんと一緒に正義のために戦うことができるんだ──翔は殉職した父以上に母を尊敬し慕ってもいた。
連邦警察への道を選んだのも母の影響が大きかった。
(がんばるよ。母さん)
決意を胸に秘めて試験に向かう翔。だが、このときすでに愛する母は教団の手に落ちていた。
もちろん、そんなことを知る由もない──

そして──
母子の関係がこれからどうなっていくのかも──

                         3

「うっ……ここは……」
麗奈は目を覚ました。
動こうとしたが両手は高小手に拘束され両足には鉄球が鎖でつながれており身動きできない。
目をこらして辺りを見回すが明かりひとつなく、ここがどこなのかもよくわからなかった。

「痛ッ……」
後頭部に鈍痛を覚える──ようやく記憶が戻ってきた。
「そ、そうか……わたし後ろから殴られて──」
考えられない失態である。ようやく夫の仇がとれると気が緩んだのだ。
情けない……これでは夫にあわせる顔がないではないか。

しかし、落ち込んでばかりもいられない。なんとかここを抜け出さねば……
麗奈はそう考え両手に力をこめて鎖をはずそうともがく。だが格闘技全般をこなし、
人間凶器という異名まで持つ麗奈とはいえ所詮生身の人間である。
拘束している鎖をはずすことなどできるはずもなかった。

そのとき、急に明かりが灯り部屋全体を照らしだした。あまりのまぶしさに麗奈は思わず目を閉じてしまう。
「おや、ようやくお目覚めのようだな。お嬢さん」
聞き覚えのある声に目をあけると、そこにはおかしくてたまらないといった表情の教祖が
麗奈を見つめ立っていた。

「くっ……おまえは……」
「いいざまだな、連邦の捜査官殿。いや、美崎麗奈ちゃんとお呼びすればいいかな?」
どうやら気を失っているうちに所持していたIDカードを奪われたようだ。
知られたのは名前だけではないだろう。
「ふん、なんとでも呼べばいいわ。でも覚えておきなさい。連邦警察はすぐに動き……ぐはっ」
教祖は力をいっぱい彼女の鳩尾にこぶしを叩き込んだ。
「まだ立場がわかってないようだな?おまえの生殺与奪権はわしがもってるのだよ。まあよい、
時間はたっぷりとある……じっくりわからせてあげよう」
彼女のあごを持ちそう言う教祖の顔に麗奈は馬鹿にしないで、とばかりに唾を吐きかける。

「ふふふ、なかなか気が強い女だ。しかし、その方が弄りがいがあるというもんだ。」
教祖はそう言って麗奈の豊満は胸に手をかけ荒っぽく揉みしだく。
「くっ……やめなさい……」
「くくく、まだまだこれからだ。楽しみだのぉ〜、れ・い・なちゃん──ひひひひひ」
ジュピターは嘲るような笑いを残して、その場から立ち去っていく。

もちろん麗奈はまだ希望を捨ててはいなかった。必ず脱出する、そう思っていた。
まだ、このときまでは……


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