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オパール・キッス

13オパール・キッス:2005/11/18(金) 00:16:06

                         9

(おかしい……)
翔は首を傾げた。
教団の施設への侵入に成功したのはよいが、どうも腑に落ちないことだらけだった。
まず、侵入が容易すぎたということ。
正面にはかなりの数の信者らしき人間が警備していたのだが、
裏の方へ回ると警備をしている人間の姿はほとんど見かけなかったのだ。

なんなく施設内に入ったのだが、中の方でもおかしなことが多かった。
警備が手薄すぎる───。
自分が今いる階はどうやら地下一階のようだが、ここへ来るまで誰一人として信者を見かけていない。
もちろん声がしたりすると、そちらを避けて通っているわけだから、出会わないのは
当然なのかもしれないが、それにしても出会わなすぎるのだ。

しかも、声が聞こえてくるのは決まって道が分かれていたりするような、
どちらへ進もうかと迷う場所だったりする。まるで誘導されているかのようだった。

と、その時後ろの方から「侵入者だっ!!」という声が響いた。
振り返ると数名の男たちが、手に手に銃を携えてこちらに向って走ってくる。
翔はしまった、と思った。やはり、この場所へと誘導されてしまっていたのか!
彼はとにかく逃げようと反対方向へと走り出した。

すると、なんと前方からも銃を携えた一団が、こちらへ向ってやってくるではないか。
挟み撃ち───
翔は完全に嵌められたと思った。だが、こんなところで捕まるわけにもいかない。
母を救い出さねば……

もちろん、母が捕らえられたとは限らない。栗原の言ったように通信機の故障なのかもしれない。
だが、それであれば余計に捕まるわけにはいかないのだ。母の任務のさまたげになってしまう。
翔はふと横にドアがあることに気づいた。ばればれだが、とにかくここへ身を隠すしかない。
うまくいけばやり過ごせる可能性もある。

そう考えドアノブへと手をやる。よし! 鍵はかかっていない。
中に入った翔はドアに鍵を締め、隠れるところはないかと探す。
焦っていた──なんとかこの場をやりすごさねば……そんなことしか考えていなかった。
そのため普通の状態ならすぐに気づくはずの、後方からの殺気を感じられなかったのだ。
ガツン!! という鈍い音がして翔は後頭部を思い切り痛打されてしまった。

うっ、とうめき後ろを振り返りながらその場に崩れ落ちていく翔。
倒れていく彼の目に映ったのは、ボンデージ衣装に身を包んだ女が妖しげに微笑む姿だった。

****************************************

目の焦点が定まっていないようだ。
オパール・キッスⅡを注入された麗奈の身体は、徐々にその新種の麻薬によって蝕まれていた。
注入後十秒たった頃、ジュピターの指示で彼女を拘束する、両手足の戒めが解かれた。
へなへなとその場に崩れ落ちていく麗奈。どうやらこの麻薬には筋力を弛緩させる効果があるようだった。

「ほほう、こうなると、かの人間凶器も形無しだな」
栗原はそう言いながらニヤリと笑う。
「本当の効果はこれからだよ。彼女は今、桃源郷を彷徨っている最中だ」
ジュピターの言葉を裏付けるかのように、麗奈の瞳が焦点を失いさらには口元が緩んでくる。
そして、だらだらと涎を垂らしていくのだ。

「おい、大丈夫なのか? 気の狂った女を抱いてもしかたないぞ」
「ふふふ、安心しろ、これは前段階だ。あと数分するといい感じになってくるはずだから」
栗原の問いにそう言って答えるジュピター。
しばらくすると麗奈はガクガクと身体を痙攣させ、その場に突っ伏してしまう。

「し、死んだんじゃないよな?」
栗原は少し心配そうに尋ねる。ジュピターは笑みを浮かべながら、彼にこう言った。
「さて、どうかな? 動物実験ではこの後目を覚ますはずだ。それからが本番だよ。
栗原警視殿、彼女が目を覚ましたら一番に顔を見せるんだ。いいね」
栗原はジュピターの言葉に頷きながら、気を失っている麗奈の顔を覗き込む。

しばらくして───麗奈はゆっくりと瞼を開いていった。
そう、オパール・キッスⅡの本当の力はこの時点から始まるのだった……


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