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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

1名無しさん:2004/11/03(水) 14:07
ここはなんでも書けるスレです。初心者、エロエロ、ムード系、落ち無し、
瞬間的モエ、特殊系、スレ内SS感想等なんでもщ(゚Д゚щ)カモーン!!
どんなカプでもお気軽にドゾー!!
投稿ルール、スレ説明は>>2、その他意見・質問はまずロビスレへ。

※もちろん個人での派生スレ設立は、さらに大推奨※

90海神続きmore kiticlly:2004/11/22(月) 18:02
斡由は言う。
「ふん、お互いをたすけようと美しい主従愛ですね。まあ、あなた方の場合、性愛が
入っていますから単なる主従愛とも違いますが。更夜、その必要はないぞ。私は台輔
の言のほうを重んじることにするのだから。さあ、風漢、いや主上。あなたのその目で
しっかりご覧になって頂きたい。あなたの何より大切な美しいものが私や家来たちに
蹂躙されて、よがり声を上げ腰を振るさまを。そして、その後は台輔の美しい顔も
玉の肌のしなやかな体もえぐって傷だらけにして原型をとどめないようにしてさしあげ
ます。もちろん小さく愛らしい尻の蕾もね。抉り取って大きく広げてしまいましょう。
二度と主上がお楽しみになれないようにね。これだけの名器はもったいないが、あな
た一人を楽しませておくのは私は我慢がならないのですよ。醜く夜のお相手の役にも
たたなくなった台輔を連れてどうぞお帰りになって下さい。私は謀反人とし断罪されて
も本望ですから」

91海神続き ちょこっと純愛編:2004/11/22(月) 18:22
すると、尚隆は意外な顔をした。この状況で、ふとかすかに笑ったのだ。
「…言っておくがな」
さすがに苦しそうな息の下、小さく、だがはっきりとした言葉を投げる。
「俺はそいつがどんな姿になろうと、気持ちは変わらん…俺はそいつに、惚れているのだからな」
見た目に意味などない、と尚隆は言った。

92海神続き:2004/11/22(月) 18:28
「六太にさわらないでくれ!」
「いいんだ、尚隆。おれはどんな姿になっても。尚隆が生きていてくれれば、それで
いいんだ」
「ふん、台輔。台輔は醜くなったことがないから、今後のことがおわかりでないのかも
しれないですね。常世一の美貌から常世一の醜い生き物に成り下がる。そうなれば
誰も台輔を愛さないでしょうね。王でさえも。その体も二度と誰も抱こうなどとは
思わなくなるのですよ。淫乱なあなたがいくら尻を振って誘うような声を出してもね。
そのかわいい尻も抉って醜くしてしまうのですから。あなたは今後どのようにお暮らし
になるやら。オトコ無しで淫乱な体がもちますまい」

93海神続き:2004/11/22(月) 18:31
うわ、バッティングすまぬ…

94名無しさん:2004/11/22(月) 18:33
どなたか両方をいかして上手くつじつま合わせて
続きお願いしたく…

95名無しさん:2004/11/22(月) 18:47
ええと、91と92を逆の順番にし、私の92は1行目と、2行目の「いいんだ尚隆」
を削れば、なんとかつじつま合いますね。

96海神適当続き:2004/11/22(月) 19:18
斡由は、二人を脅しつけながらも、それを実際に
やり遂げる気持ちはさらさらなかった。
六太の体を一度味わってしまったら、それを忘れることはできない。
尚隆を殺し、六太は地下につなぎ自分一人の玩具として
仙の長い寿命を持って、味わい尽くすつもりだった。
だが自分をコケにした尚隆には仕返しをせねばならない。
六太がほかの男に蹂躙される様を見せつけてやろう。

97名無しさん:2004/11/22(月) 19:34
六太は俯き泣いていた。こんな状況では聞きたくなかったけど。
惚れてる―。この世にそんな嬉しい言葉が有ったのか。だがそれは、尚隆が発した言葉だから。
もう、それだけで十分だ。

「…そんな泣かせる台詞は、事が全て終わるまで取って置いて頂きましょうか。
果たして醜く変貌した台輔を前に、そんな台詞が出てくるやら…」
そう言い、尚隆の顔を蹴ろうとしたが、その脚が止まる。
「ああ、貴方も女が寄り付きそうな良い男振りをしておられる。…そしてこちらも」
蹴ろうとして止めたその足で、尚隆のものを軽く踏み付けた。そして大仰に驚いてみせる。
「流石は、王だけの事はありますな」
芯を突く痛みにギリ、と唇を噛む。気違いが、と睨め付けるが斡由は意に介さない。
その瞳は限り無く虚ろであった。
―もう、軍が動く迄どうにもなるまい。
尚隆は六太を見据える。これから数々の男達に輪姦され精を受け、麒麟としての矜持など
粉々にされるであろう六太を。
「…六太。今からお前がされる事、お前の身に起こる事、全て目を逸らさず見届ける」
全て受け入れてやる、何もお前の身が穢れる事は無いのだから、と言外にそう言う。
その意を受け取ったのか、六太は顔を伏せ小さく頷いた。
その様子がまた斡由の癪に障る。
この後尚隆は殺され、六太は自分の性具になるとも知らずに。

斡由は家来達を振り返り、軽く手を上げる。
「主上のお許しが出たようだ。お前達、台輔に日頃の労を労って頂け」

98海神続き:2004/11/22(月) 20:58
体に引っ掛けただけの薄い絹は瞬く間にはぎ取られ
六太は白いすんなりした体を晒された。
そして家来たちは六太の腕を押さえつけると
足をつかみ大きく割り開く。
ひくんと六太自身とその後ろの可憐な少し湿った蕾が
男たちの目に晒される。
「やめろ・・」抵抗するが、その強い力には敵わず、六太を押さえる家来たちは
その艶かしいからだが、揺れて抵抗する様に情欲をそそられ、つばを飲み込む。
皆このような艶かしい体を見たのは初めてだった。
更夜の炊く香が甘く、六太の思考を妨げる。
黄海でとれる麒麟にのみ効き目のある高価な媚薬。
体が痺れる。
「ん・・・」
ぴくんと反応する六太の体を男たちが見下ろしその目に情欲をにじませた。

99名無しさん:2004/11/22(月) 21:18
だが、家来たちの中で動ける者は居なかった。
人の扇情を煽るような痴態を晒しながら、なおその瞳の輝きを失わない台輔に、
自然畏れの念が湧く。
家来達が、皆で顔を見合わせたまま動かないのに剛を煮やした斡由が怒り叫ぶ。
「意気地無しどもめ!!この身体を見て抱こうともせぬなど、此処は不具者の集りか!?」
「もうやめろ斡由。」
六太がつぶやく。
「お前は数十年前の荒れた雁を忘れたのか?王である尚隆を殺せば、またあの頃に逆戻りだ。
俺はどうされても良いから、お前のしたいようにすれば良いから、尚隆手出しはしないで・・」
言い終わらぬうちに斡由の掌が六太の頬を強くぶつ。
「何と・・何処まで慈悲ぶかいのやら!!お言葉通りずっと俺の性奴になって頂こうか?」
叩かれてうつ伏せた六太の腰を後ろから掴むと膝だけを立てさせて、準備のまだ整わぬ身体に請求にに己の猛ったモノをねじ込んだ。
「うっ・・ああぁっ・・・・・」
苦しげに呻く六太にかまわず、強く深く何度も腰を打ち付ける。

100ええかげん海神:2004/11/22(月) 21:30
狂ったような自分たちの主とは対照的に、囚われている王はただ静かに二人の姿を見つめている。
家来達の間に静かな動揺がうごめく。
皆が卑屈にうつ伏せ加減な視線で、それでも二人の情事に目を取られて居る中に、
尚隆とはまた違う静かな視線で二人を見つめる者が居た。
「王は麒麟を返して欲しいんだよね?もし返してやれば、俺の望みを叶えてもらえるの?」
脇に立っていながら王を見もせずに小さくつぶやく。
尚隆が見上げると、静かに。
しかし焔を宿した瞳の少年が、六太を犯し続ける斡由を見つめていた。



・・・・請求・・・・・→性急(汗)

101海神続き:2004/11/23(火) 01:00
「俺は妖魔に育てられた。でも誰もが妖魔を恐れる。その妖魔と一緒に住める場所が
欲しい」
と尚隆を見もせずにつぶやく少年。
「その場所を与えよう。妖魔に襲われることの無い国だ」
その言葉を聞き、少年は初めて尚隆の顔を見つめた。

斡由はあいかわらず六太の体を攻め続けている。
六太は快感に溺れそうになりながらも、なんとか斡由に一矢報いたいと最後の気力
を振り絞った。その唇から必死に嬌声以外の声を出そうとする。
「しょうりゅ…に・・比べ…れば、お前はっ…あ、・・んっ、…あぅ!…
お前は…屑だ!」
突き上げられながら必死にその言葉を言った。
「しょう…りゅ…なら…んっ…あ、ああん、んっ、…そんな…ふうに、は、しない…
もっと強くて…んっ!……もっと気持ち、よくて…お前など…」

102海神続き:2004/11/23(火) 01:13
「私が王に劣るというのか!」
斡由は頭に血が上った。斡由としてはこれ以上ないほどの精力を傾けているのだ。
それに自身は果てしないほどの快楽を得ている。台輔のほうだって相当感じているよう
に見えるのに。
「もっと強くて気持ちいいと仰られましたね。ふん、それならもう私だってなんの
容赦もしません」
斡由はそう冷酷に言い放った。そして今までにも増して狂ったように腰を六太の体に
打ちつける。
「ぁ…んっ! しょうりゅ…あっ! たすけてっ! あぅ!」

103名無しさん:2004/11/23(火) 01:53
ああもう鼻血吹いてしまった

104名無しさん:2004/11/23(火) 02:18
楽しい・・・
海神続き頼んます
ついでに延の冬、えっちくならんので
誰か協力プリーズ

105雁いや延・冬(ソナ?):2004/11/23(火) 04:35
いよっしゃぁ・・ほのぼのHで〜・・・


いつに無く素直に甘える六太に尚隆は目を細める。
人前では決して見せない姿が愛おしい。
小さな半身を胸身に抱き、その金の鬣を優しく梳く。
さらさらと心地良い手触りのその鬣は、尚隆がいつも触れるのを好む六太の一部分だ。
優しく自分に触れる尚隆の手が嬉しくて、六太はうっとりとされりが侭になっている。
鬣を梳く手が顎に下りてきて、尚隆の唇が額に頬に触れる。
その耳元で低く囁く。
「六太・・」
自分の声に、小さな身体がピクリと反応する。
「したくなった。抱いてもいいか?」
「・・あ・・・えと・・・」
頬を上気させて、少し困ったような顔になってあれこれ考えを巡らす様子の六太の姿も可愛らしくて、失笑してしまう。
「このままが良いのなら、無理強いはせん。が、許しが出るならもっと暖めてやるぞ」
六太はじっと尚隆の顔を見上げる。
ゆっくりと尚隆の首に腕を絡ませながら告げる。
「・・・暖めて」

106延・冬:2004/11/23(火) 05:44
六太の言葉に答えるようにゆっくり口付けながら、その帯を解き夜具をすり落とすと、真っ白な肌が露わになる。
降ったばかりの雪のごとくの無垢さを表す肌に、紅い飾りが2つポツリと散らされ尚隆を煽る。
耳元で「綺麗だな」と囁いてやると、真っ赤になり「見るな」と身体を丸めて背を向ける。
身を隠そうとしているのだろうが、今度はうなじや肩、背中から細い腰、そして臀部を曝してしまっているのに気付かぬあたりが、この麒麟の可愛さだ。
脇腹から手を差し入れ、胸の突起を触りながら背中に唇を這わすと、小さな吐息が漏れる。
敏感すぎるほど過敏な六太の身体の中でも、背中は感じ易い部分の一つだ。
「・・ぁっ・・・・・」
小さく声が上がる。

107名無しさん:2004/11/23(火) 07:05
姐さん素晴しい
延(うちのへっぽこ辞書には正式な国名がでねえ)
冬ソナ
いい!!
ネッチリ優しくエロエロ頼みます

108名無しさん:2004/11/23(火) 07:42
お前らいい加減にしろ!
徹夜しちゃったじゃないかー (´Д`;)ハァハァ!

グッジョブ!

109名無しさん:2004/11/23(火) 10:35
107> 「雁」は(がん)か(かり)で出ますぜ姐さん(^^d
お褒めサンキュです
此処がキチクのみでなくネッテリエロンでもオケと判って嬉しいっす
(ソノワリニハゴジダツジオオシ・・・・テチヤヅカレトミノガシテ・・・・アセアセ)

110雁・冬…甘々:2004/11/23(火) 11:27
雁にしたけど良かったかな?


六太の背に口付け、震えるその身を抱き締める。身体と身体の間の隙間を埋めるように。
「…俺は冬が苦手でな。初めてこちらに来た時は、驚いたぞ。あちらは、こうも寒くは
なかったからな」
あちら―尚隆が育った、瀬戸内の小さな国。六太の頭に美しい青い海が開ける。
今はもう無い国ではあるが、六太にはこの尚隆を育てたあの土地が愛しく思える。
実際六太もあの土地に居た当時は、その様に思ったか覚えが無いのだが。
目を閉じてする温かい回想を、遮る様に声が降ってくる。
「お前がこちらに連れて来たのだからな。責任を取って俺を温めろ」
責任を取れ、と言う割りにその声音は限り無く優しい。
六太は体の向きを変えて尚隆と向き合う。そして尚隆の夜着の襟に手を掛け、それをするすると
脱がそうとする。直に肌と肌を合わせた方がより温かい。
「こう寒いと、関弓の街に降りて遊びに行くのも億劫って?」
揶揄する様に言ってやると、「莫迦者」ときつい抱擁と共に返ってくる。




甘くて恥ズカチイヨ…海神ではリンカンネタも有ったのに…。

111海神続き:2004/11/23(火) 12:46
「助けて、とは…。主上が無事なら、何をされても良いのでしょう?本当は自分が
助かりたい…馬脚を露しましたかな、台輔」
知らず助けを求めてしまった。だが違う。六太は激しく首を振る。尚隆の命が有る
のなら、自分はどうなっても良い。それは本心だ。
けれど尚隆なら、あの縛りを解いて己を救ってくれるのではないか、何故かそうも
思った。王など信じては居らぬのに。
「しょうりゅう…」
「いい加減、その口は塞がねばなりませんな…」
言いつつ胸元から大きな張り形を取り出す。
斡由は惜しみつつ六太から自身を抜き、替わりにその張り形を宛がう。小さな蕾を
無理に抉じ開け、突き込む。より大きく、そして無機質な物が六太を苛む。
盛大に上がる悲鳴をやり過ごし、乱暴に向きを変えさせる。
「こんな物を挿しては、多少名器が損なわれるかも知れませんが、神仙ならばすぐ
に元に戻るでしょう」
六太のきれいな髪を掴み、そして未だ隆起したものを強引に口に含ませる。形の良
い唇が歪み、六太の口腔を犯す。
後頭部を押さえ、激しく前後させるが先程のような快楽は得られない。けれど麒麟
に奉仕させている、その状況が斡由を酔わせた。
「もっと真剣にやって頂けませんか?主上の命が掛かっているのですよ?それとも、
あまり慣れていらっしゃらない…」

更夜の背後に居た妖魔のろくたが尚隆に近づく。だが彼はそれを恐れるでもない。
「あなたは、妖魔が恐ろしくはないのですか…?」
「なに、お前が命じぬ限り人を襲いはせんのだろう?」
ろくたはいよいよ尚隆に顔を近付けるが、一向に動じない。むしろその整えられた毛
並みを楽しむ風でもある。
更夜は迷っていた。

112海神続き:2004/11/23(火) 14:03
可憐な蕾に凶悪なまでのものを挿し込まれ
口内を犯される。
苦しげに眉をよせ金の睫毛に涙をにじませる様は
いかにも儚げで。見ていた家来たちは我を忘れ、
その淫微な様に酔いしれた。
小さな窄まりは、限界まで押し広げられ悲鳴を上げる。
その張り型は微かに振動し、六太の中を刺激する。
斡由が張り型のボタンを押すと震動は大きくなり
六太の内部で暴れだす。
「んんーーーー」
口を斡由のものに塞がれたまま、六太は悲鳴を上げた。
家来たちは魂を抜かれたように、責めさいなまれ苦しげに身を攀じる
六太の白い体に見とれていた。

113海神続き:2004/11/23(火) 15:35
何度か六太の口を往復させ、斡由はその口中に精を吐いた。
涙目になり呻く六太の後頭部を押さえ付け、無理にでも飲ませようとする。
だが斡由が少し手を緩めた際、その隙に口を強引に引き離し、結局吐いてしまった。
その様子に斡由は舌打ちし、六太の頭をもって寝台に叩きつける。
苛々と息を切らし、辺りを見やれば興奮し、淫に酔った家来達の様子が窺えた。
斡由は口端を上げ、薄く笑う。そして六太から張り形をずるり、と引き抜く。
「お前達…今度は出来るな?」

その言葉に数人の男が六太の側近く寄る。
尚隆のために、覚悟は決めた。それでも怯え身を震わせる。
知らず男達から後退る様子を眺め、斡由は語り出す。
「真剣に相手をして頂きたいですな。…その者達は二十数年前に昇山しましてね」
二十数年前…昇山…。それが今、この状況に何の関係が有るのだ。
いや、二十数年前に雁の民が昇山したのなら。その時の蓬山公は――自分だ。
「皆、国を思い命懸けで黄海を渡り、延麒に会いに行ったのですよ。それは辛く、
仲間を何人も亡くした旅だった、と。…ところがです。時の蓬山公は昇山者にあ
ろう事か侮蔑的な態度を取り、挙句逃げてしまったという話です」
あたかも自身が昇山したかの様に劇的に語る。
「選定をせず麒麟としての仕事を放棄し、その為に国の復興は遅れ死者は増え…」
思わず目を閉じ眉根を寄せる。それは六太の痛い所を突き、慈悲の心を痛ませる。
「更に、その延麒が選び、王としたのは政を軽んずるろくでなし…」
ちら、と尚隆を見やり肩をすくめ、さも無念そうに嘆いてみせる。
「…酷い話、酷い麒麟だとは思われませんか、延台輔」
斡由の話術により、六太は錯覚に陥った。これは、自身に対する罰なのだ、と。
「まあ彼らも、苦心して会いに行った延麒がこの様な聖獣、ならぬ淫獣だと知り、
それは気落ちしたとの事です。国の恥、だと」
そして恥だと罵られ。
六太はおずおずと小さな尻を男達に差し出した。

114名無しさん:2004/11/23(火) 20:01
「斡由・・まず俺にさせてよ」
男たちの後ろから声が掛かる。
乱れた姿の斡由の前に歩を進めたのは更夜だった。
「お前がこの淫獣とやるというのか?」
面白そうに斡由が問う。
「もともと六太が可愛いって目を付けて、あなたに進言したのは俺だろう?
こんな時くらい、皆より先にやらせてよ。
それに俺は。される方の気持ちも良く判るからね、・・六太をうんと可愛がって上げれるよ?」
そう言って口の端だけで笑ってみせる。
「良いだろう、うんと啼かせて見せてみろ」
更夜は、下卑た笑いを浮かべる主から、今使用されていたおもちゃを受け取ると、凍るような目で六太を振り返る。
「・・そんな・・やめて・・更夜・・・」
顔色も無く怯える六太に更夜はつぶやく。
「何もかももう遅いんだ、六太」

115海神続き:2004/11/23(火) 22:31
「いや、どけ。俺たちが先だ」
目の色を変えた家来たちが更夜を押しのける。
六太の痴態に狂乱のボタンが入った家来たちは息も荒く
六太の小さな尻をわしづかみにすると、まず一人
その狂い猛ったそれを蕾みに乱暴にねじ込んだ。
「ひいっ」
悲鳴を上げ背をそらせる六太。瞳には涙がにじむ。
「お・・おお、これはすげえ・・信じられん」
息を荒くして六太の中をかき回す家来の瞳は恍惚として、別世界へ誘われた
かのように夢中手で腰を振る。
感じやすいだけでなく、香の淫香で性感を支配されている六太は
嫌悪感に涙を零しながら、同時に体中を走る快楽に支配されその細く白い
腰を振った。
ほかの家来たちも息を荒くして、その高貴な生き物が深く男根を飲込み
快楽にほほを染めている様に見入る。
既に雄の野獣のように、家来たちの目は凶悪な光を宿す。

116海神適当:2004/11/23(火) 22:52
「お前だけ楽しむのはずるいぞ、俺にもやらせろ」
「残念だな入り口は一つだ」
「いや、上の口が開いている」
うつぶせに突かれている六太の顔をぐっと起こし猛ったそれを口に押し込む
「ーーーーーっ」
乱暴に押し込まれ苦しさに息が止まりそうになる。
「噛み付くなよ、舌を使え、そうだ。おお・・」
気持ち良さそうに喘ぐ家来。
ほかの家来はうらやましげにそれを眺め順番が巡ってくるまで
六太の可憐な紅い乳首や、白い尻をいじる。
息を荒くし、責め立ててくるものに耐え、快楽に金の睫毛を涙で濡らし腰を振る
高貴で淫微な獣の姿に、ますます情欲は強さを増す。
「駄目だ、我慢できない。俺も入れるぞ。」
欲望を限界まで昂らせたそれを男は強引にまだほかのものが入っている
そこにあてがう。
六太は男が何をするかに思い至り、恐怖にひっと悲鳴を零す。
そのとき六太の口を塞いでいたものがびくんと精を口内に放った。
気持ち悪さにそれを吐き出す六太は、油断している隙に
ぐっと二本目のものを差し込まれる。
「ひああああ」
その小さく可憐な蕾は二本分の昂りを差し込まれ、六太はその苦しさに悲鳴を上げる。
「おお・・これは堪らん」
無理矢理差し込んだ家来はうっとりした目つきで腰を動かす。
割けるぎりぎりに広げられ,突かれるたびに恐怖と苦痛に六太は喘いだが
天性の清純さとともに淫乱さの宿るその体は、ねっとりと二本の欲望をからみとり
しめつけ、六太自身も快楽に腰を振り始める。
「とんだ淫獣だ、主人の目の前で二本も飲込みあげくによがって腰をふるとは」
斡由は軽蔑した目で六太を見下す。
六太は自分のこのような浅ましい姿を尚隆に見られているのが堪らなかった。
だが心に反して体は喜びをむさぼっている。
こんな淫乱な自分は尚隆に嫌われてしまうだろう。
見ないでくれ。
快楽と胸の痛みにぽろぽろと涙を流し、それは白くそして薄桃に上気したしなやかな
体に溢れてゆく。
巧まずして淫猥な一枚の絵に自分がなっていることを六太は気づかない。

117海神適当:2004/11/23(火) 23:08
六太の中に先に差し込んでいた家来がうっとうめく
「もう駄目だ・・出る」
びくんと六太の中に精を放つ。
「ひっ」と声を上げて六太はしなやかな背を反らせた。
精を放った男は満足そうにそれを蕾から抜き取る。ずるっとした感覚に
びくんと体を震わせると、まだ入ったままのもう一本をきゅっと締め付ける。
「すごい・・天の慈悲だ・・おお・・・」
麻薬に溺れたように腰を振る男。
六太の体はそれを受け止め腰を振り、またつるんとした自分のそこを男の固い陰毛が
すりつける感覚に耐える。
周りのものも六太に酔いしれ白い尻を嬲り,背中に舌を這わせ,首筋に甘く噛み付く。
「ああんっ」思わず声を上げてしまう。
王の前で、こんな痴態をさらす自分が嘆かわしく厭わしい。
更夜もしばらく手を出せず静観を決める。
「おいそろそろ俺にもやらせてくれよ」
欲望に目をぎらつかせた男が後ろから声をかける。
その男が帯を解き取り出した一物を見て六太は恐怖に体を固くした。
その締め付けて六太の中の男がうっとりと果てる。
「私にも慈悲を恵んでくださいませんかねえ」
息を荒くした脂ぎった顔で近づいてくるその男のそれは二本分のものをあわせたより
太くそれがむんと欲望を滾らせ天を向いてそびえ立っている。
六太は恐怖に怯え後ずさる。こんなものを入れたら壊れてしまう。
血の汚れにあたる恐怖がまだ痺れる体を懸命に動かし、その男のものから逃れようと
這いつくばるようにして逃げる。

118海神適当:2004/11/23(火) 23:19
「おっと、逃げてはいけませんよ。慈悲は平等に与えてくれなければ」
家来はそう言うと六太の体を子供におしっこをさせるときのような形で抱えた。
そしてその体を待ち構えている男の巨根にあてがおうとする。
六太は恐怖に怯え,尻を揺らしてそれから逃れようともがく。
白い尻をふり、それから逃げようとする姿は,巧まずして淫猥で,同時に儚げでもあり、
見ているものの嗜虐心をそそる。
奇麗なものをめちゃくちゃにしたい子供のような感覚に家来たちは動かされ
ている。
「やめてくれ・・そんなのできない・・いや」
首を振り、恐怖に涙を流す六太は、可憐な蕾をひくつかせる。
その様を見せつけられ、男の巨根は益々猛る。
「し・・しょうりゅう」
主の名を呼ぶ。助けてほしい。もういやだ。

119てきとー海神:2004/11/24(水) 00:14
見ないでくれ、その六太の願いとは裏腹に、尚隆は麒麟を贄とした狂宴を見据える。
何が起こっても、全てを見届け知った上で、事が済んだ後あの子供を抱き締め、受
け入れてやらねばならないのだ。
己の命を救う為に、文字通り身体を張った子供の為に。
だが、今はそう考えるしか出来ない己の不甲斐無さに腸が煮える思いを抱える。
男達が六太を漁っている間に、何か出来る事は無いか。
だが、今己が解き放たれたら、きっと六太を犯した者全てを殺し、六太を血の海に
溺れさせるだろう。

尚隆のその思いが殺気を孕んだのか、斡由は囚われの王を振り返る。
その下肢に目をやり、斡由は眉を寄せ苦笑する。
「おや…主上。愛しい者が穢され犯される様を見て興奮してらっしゃるとは。あなた
も大概ろくでなしの様ですね」
更夜、と呼び掛け立ち尽くしていた少年は振り返る。
「王が苦しんで居られます。お前、鎮めて差し上げなさい」
意を察した更夜は表情を変える事無く尚隆の前に屈み込む。そしてその帯を解き、現
れた尚隆のものに口を寄せる。
「止めろ…!」
その声が大きかったのか、それとも王の声は麒麟には良く届くのか、六太は尚隆を見
やる。何か酷い事をされているのでは、と思えばそれは友が己の王に愛撫を施す光景
であった。
「あ…やだ、嫌だ、更夜、おれから、おれの尚隆を取らないで…!」
弱弱しく吐き出した声に対して、無情な答えが返ってくる。そして更夜は六太から良く
見えるよう角度を変える。
「良いじゃない。君はもう散々王の目の前で王を裏切って、浮気して悦んでいるんだよ?
その上王を独占したいだなんて、王が可愛そうだとは思わない?」
「そんな…!」
何を求めたかったのか思わず手を伸ばす。だがその手は男に掴まれる。もうお喋りは終
わりだ、とばかりに再び差し込まれる。

120名無しさん:2004/11/24(水) 02:19
海神難しくて続きが書けない…
侠気のある姐さん一つ頼みます。

121『台輔の勤め』9:2004/11/24(水) 02:47
適当海神に悶えつつ隙間を見て更新。




何だか居心地が悪い。
氾王を連れ庭を散策したのち、茶席の設けられた庵に向かい合って腰をかけた。
護衛の官が二人を見並べて感嘆の溜め息をつくのもわかるというもの。
背の高い方の貴人の装いは質素な玄英宮ではまず見られないあでやかなものであった。
正式訪問ということで黒が基調ではあるが、その生地は上品な光沢を纏い、薄紅の見事な牡丹が描かれている。
帯は落ち着いた藍色の刺繍が見事な細工で施され、その上を飾る帯留めの玉は水晶であるか、
貴人の優雅な動きにつれてかすかに揺れる度に濃い紫の輝きを散らせる。
髪留めや耳飾りに至るまで、派手ではあるのだが決して下品さを感じさせない。
一つ一つが質の上等なものであるというだけでなく、統一のとれた美がそこにはあった。
氾王の漂わせる気品とその流麗な物腰もあいまって、何か人ではない
─王だから人ではないのだが─、幽玄の佳人をそこに見ているかのような錯覚を起こさせる。
加えてその佳人と向かい合う台輔・六太のいでたちがこれまた可憐な花が咲いたようである。
体型に合わせて特別に縫われた着物は淡い生成色、鮮やかな桜の刺繍が花びらを散らせている。
黒地の羽織は凝った抜き編みのもので、隙間から桜色が覗く。
長い金の髪を多目の後れ髪とこめかみの一筋を残して高く結い、毛先を長く散らしている様が
何とも華やかで、あでやかな色香をかもしだしている。
ここは本当に見慣れた我が宮か、と官は目をしばたかせた。
或いは玉京の眺めとはこの光景のことを言うのではないか。
彼は目の前の二人の姿、そのあまりにも美しい姿に至福の感動さえ覚えていた。
一方、当の六太はやや当惑気味である。
何しろ氾王ときたら機嫌が良いのだ。恐ろしいくらいであった。
普段子猿子猿と自分を呼ぶところが今日に至ってはそれが台輔である。
着慣れない着物とあいまって無性に居心地が悪い。
「…氾王」
とうとう口に出した声にどうしたのだね台輔、とやはり優しげな声が返ってきた。
「降参かえ。…まだ手は残っておると見ゆるがね」
「いや、そうじゃなくて。その…何か変なんだよな…その…態度」
そうかえ、とくすりと笑う顔を見上げる。
氾王は楽しげに目を細め、訝そうに自分を見てくる六太を見つめ返した。
「何、お主の艶姿にちと心を迷わせておる。…認識を改めぬとならぬであろ」
甘やかな瞳に見つめられ、六太は思わず下を向いた。

122名無しさん:2004/11/24(水) 02:54
適当海神が戴国並のメロドラマになっている・・・
二人の恋人を襲う怒濤の運命!!
待ち受ける更なる悲劇と葛藤!!
っつー感じに
続きプリーズ

123『台輔の勤め』10:2004/11/24(水) 03:47
何故かはわからないが、顔を上げられない。何だかとても恥ずかしい。
かすかに頬を染めてうつむいた六太の仕草が無性に可愛らしく思えて氾王はくすりとまた笑った。
「よいよい。では台輔はやめるかえ。延麒、これならよいであろ。…延麒」
近う、と言われて顔を上げる。その瞬間己の立場を思い出した六太は
はい、と答え体を貴人の近くに寄せた。
さら、と氾王の長い指が六太の髪を梳いた。ぴくりと頭が動く。
えっとそちらを向けば氾王の笑みが眼前に近付き、六太は目を見開いて体を固くする。
思わず目を瞑りそうになった時、その唇は頬をかすめた。
髪を梳いた指がそれをかき入り、六太の首筋に触れて優しく撫でる。
耳元に触れた唇の熱があった。
「っ…!」
「まこと感心することよ…こ度の役目をよう心得ておる。私はね、お主を見直したのだよ延麒」
耳に注ぎ込まれる囁きがくすぐったく、六太はかすかに身じろぎした。
「…こ度、我が麒麟梨雪のようにお主を愛でてくりょう…」
囁きと共に氾王の腕が六太の背を引き寄せた。自然前に倒れた六太の体が氾王の胸に落ちる。
慌てて起こそうとしたが、両の腕に抱き締められて叶わなかった。
「あ、あっと…俺…ちょ…」
頭が混乱する。押し付けられた胸は思いの他固く、自分を包む腕の布越しの感覚も
そこについた固い筋肉を想像させる、意外なほどに逞しいものであった。
すっぽりと抱きしめているそうは見えない広い肩幅と共に、
その肉体が成人の男のものであることを六太に伝えてくる。
心臓が不穏な動きをしだす。
氾王は六太を抱き締めたまま離そうとしない。
六太の頬が熱を持った。
「は、氾王…っ!」
思わず上げた己の声が思いの他上擦ったものであったことも頬の熱の温度を上げた。
ふふ、と笑いを漏らした声が耳元に聞こえ、束縛していた腕の力が緩む。
素早くもたれていた胸に手をついて六太は体を離す。
はあ、と荒く息をついた。心臓はまだ早く脈打っている。
「困ったような顔をしておるの」
そんな六太の様子を愉快げに氾王は揶揄した。
「別に、そういうわけじゃ…」
下を向いたまま慌てて否定する。
もてなす責任者の立場は、前提として相手には気に入られねばならない。
だからこそ身なりも相手に合わせて整えるのである。
成功ではないか。氾王は今回の六太の態度を気に入り、
あろうことか半身である氾麟と同等に扱うとまで言ったのだ。

124名無しさん:2004/11/24(水) 05:47
適当海神参加者増えすぎかイマイチ動きに一貫性を作れなくなってきた。
何とか本編合わせに話を纏めようと持って行き過ぎたかしら?
キチク下手な私は出る幕無しだ。
ので尚隆同様しばし股間を難くしつつ傍観しまつー・・・。

125海神まとめに入ります:2004/11/24(水) 09:08
その次の瞬間六太の目の前が真っ赤に染まった。
何事か一瞬訳が分からずぼんやりしたが,次の瞬間覚えのある感覚が
躰を走り力を奪う。
六太は頭から血をかぶっていたのだ。
視力は奪われ、視界は紅い闇に沈む,音が遠ざかる。
だが微かに耳に悲鳴が届く。
断末魔の悲鳴。「うわあああああ」
家来たちの叫びが聞こえる。
遠ざかる意識の中六太は何事か理解した。
更夜の妖獣が家来を襲っているのだ。
更夜は斡由を慕っていた。斡由が望むなら,自分の手を汚してもよかった。
だが、大切な友達である六太に加えられる暴力を見せつけられ、自分のしていることに
自信が持てなくなってしまった。
本当にこんなことをしていいのか.斡由は生きている限り王を嫉み,六太に対して
加虐心を持ち続ける.
本当は領地をよく治める、よい令允であるのに、そのねたみが斡由を歪め苦しめる.
もうそんな斡由を見たくはない、斡由に罪を行わせたくない。
そのねたみを終わらせるためには斡由自身を終わらせてしまうしかないのだ。
それだけねたみは深く,斡由を蝕んでいることを更夜は知っていたのだ。
六太の躰がふわりと持ち上がり優しく抱きしめられるのを感じる.
懐かしく愛しい王気。そのまま気を失ってしまう。
大切なものをこの腕に取り返した思いを噛み締める。血で汚れたこの場所から
一刻も早く去らねばならない。
更夜は次々とその場にいたものを妖獣の鋭いくちばしで屠る.
斡由が血の海に横たわるのが見えた。
斡由はもう一人の自分であったかもしれない。
六太が自分を選ぶことなく誰か別の者のそばに使えていたら、自分はそれを妬まずに
いられたろうか。
麒麟と言う聖獣に選ばれ、すべてを我が手におさめる、王と言う存在。
嫉妬と羨望をその身に集め、欠けることなく幸福を約束されているように見えるだろう。
だがその王座には自分だけが存在する。
誰もいない。
背負った者の重さを知る者は自分以外に、ない。
誰もその孤独を分かちあえはしないのだ。
だからこそ天は、王に麒麟を与えてくれたのだ。
気が狂いそうになるほどの孤独な道のりをともに歩むものを。
王の半身を。
尚隆が六太を抱えその場を走り去る.
悲鳴を残して。

126名無しさん:2004/11/24(水) 09:25
そして、海神は雁、冬ソナへ続くのか
冬ソナねっとりのほほんラブ、いいよー
鬼畜でちょい疲れたので癒してください。

127雁・冬つづき:2004/11/24(水) 10:22
「そんなに子供の身体って暖かい?」
「ああ」
「…尚隆も暖かいよ。すげー…気持ち良い…」
北東に位置する、冬は寒冷な雁国の地。その地を力強く照らす、雁の太陽。…おれの太陽。
その太陽が凍えたなら、暖められるのがおれならば良い。
互いを求め、掻き抱く腕に力が篭る。尚隆の半ば露わになった厚い胸が六太の平らな胸と擦れる。
暫し後、尚隆は少し身体を離し六太の胸元を確認する。赤く、小さな乳首は痛々しく先端を尖らせている。
いつも思うのだが、と前置きして言った。
「お前は授乳をする女でもあるまいに、何故こうも尖らす?俺に吸うて欲しいのか?」
「知るかよ」
ぷい、と拗ねて横を向いたその耳元に唇を寄せ、囁く。
「…淫靡で可愛いな」
言われぞくり、と背筋が反応する。
「可愛いぞ、六太」
耳朶を甘く噛みながら、尖った乳首を指先で転がす。
はあ、と切なげな声を漏らせば頬に口付けが降ってくる。
さっきから綺麗だの可愛いだの。そんなのは女に言う台詞だ。男だと思われていないようで腹が立つ。
腹が立つ一方、心が喜んでいるのを感じる。胸がトキメク、とはこういう感覚だろうか。
「肩が冷えるだろう」
横を向いた際布団からはみ出した裸の肩が、尚隆の大きな掌に包まれる。その手が嬉しい。



海神は原作に沿わないバッドエンドでも良いかなー、とか思ったりしてメロドラマ
にしてスマン。雁冬はハートウォーマーな感じでひとつ…。

128適当海神:2004/11/24(水) 13:28
だが、六太を抱えた尚隆の行く手を阻む者があった。
「ふん、逃げられると思うなよ!」
行く手を阻んだのはあの巨根の男だった。
「卿伯は倒れても俺が卿伯の願いを叶える。約束通り、王の命までは奪いはしないが、
卿伯の願い通り、台輔には常世一醜い姿になっていただく」
この男は無類の忠義者だったのである。しかも常識はずれの巨根故、女達から避けられ
ている自分に斡由は台輔との快楽を与えようとしてくれたのである。そして恐ろしい
ことに、この男は更夜にも勝る妖術使いだった。
あっ、という間に尚隆は金縛り状態にされてしまった。
六太も足が動かなくなり動くことができない。
男は刀を抜く。
「自分たちだけ幸せの限りを味わう王と台輔よ、思い知れ!!」
凶悪な刀は六太の美しい顔を抉った。鮮血が飛ぶ。
尚隆は金縛りで声を出すこともできない。
抉り続けるうち、美しい顔は、目は潰れ鼻は削げ頬といい額といい顎といい、肉を
抉られまくった醜い肉塊となり果てる。血の穢れに倒れた体をさらに凶刃が襲う。
愛らしい小さな尻の双丘は抉りとられ、かわいい蕾も容赦なく抉られ、もはや、
並ぶものがなかったほどの名器の面影を全く留めない。そして体中の柔肌に隙間無く
醜い深い傷が入れられ、足には後遺症を残さずにはおかないほどの打撃が加えられる。
もちろん胸の可憐な桃色の飾りも切り取られてしまう。金の髪も生え際から削がれる。
もはや六太は醜い肉の塊でしかなかった。
男は全ての作業を終えるとその醜い肉塊を蹴り上げ唾を吐きかけた。
そして今度は自らの胸に刀を向ける。
「卿伯、この肉塊を捧げます」
祈るようにそう言うと、刀は胸に突きささり、男の命は果てた。

129海神まとめさせて:2004/11/24(水) 13:51
そして尚隆にとって永遠とも思える時間が過ぎ去ったとき、やっと救援は訪れた。
「主上、大丈夫でございますかっ。さ、参りましょう」
「ま、まて、六太を運ばねば」
「え? 台輔がどこにおられるのでございますか?」
尚隆は足を引きずり、倒れた六太の前に立った。
「は? なぜ、こんなところに肉の塊があるのですか?」
尚隆はその言葉を無視して声をかけた。
「六太…」
意識を失っていて返事はできない状態だろうと思ったが、声をかけずにはいられな
かったのだ。だが、予想に反して、肉塊は微かに動いた。そして掠れた弱弱しい
声が聞こえた。
「しょ・・りゅ・・・。あるけな…い………おぶって」
「六太、聞こえるか。まず、手当てをしてもらおう。それからお前をおぶって帰ろう」
もちろんお互いにおんぶなどできない状況であるのはわかっていた。例えどんなに
手当てしようが、帰るには柔らかい寝床に横たえて運ぶしかないだろう。それでも
六太はそう言ってみたかったのだ。言葉だけでも甘えてみたかった。外見に関係なく
想ってくれるといった主の気持ちを、今こそ味わわねば生きる気力を持続できないか
もしれないと思ったのだ。
「六太、俺がついている」
「尚隆、おれは生き続ける。例えどんな醜い生き物に成り下がろうとも。生きていら
れればそれでいいんだ。俺が生きていさえすれば尚隆は生きられるから」

130海神まとめさせて:2004/11/24(水) 14:05
六太は遠のく意識の中で思った。自分は常世一醜い生き物として生き続け、尚隆の治世
は長く続いていくだろう。今日は初めて尚隆に肉体を愛される幸せを味わったけれど、
そのような幸せはもう二度と戻っては来ないだろう。尚隆はたくましい体を抑制できず、
他の誰かを抱くだろう。美しい誰かを愛するようになるかもしれない。それは六太に
とっては体を引き裂かれるほどにつらいことだけれど、でもそれでもよい。これは
自分で選んだ道なのだから。時がたち醜い六太を見なれるにつれ尚隆は外見に関係無く
「惚れている」と言った言葉を忘れるようになるかもしれない。そうなったって、
自分は尚隆を愛し続けるだろう。尚隆には国を治め続け民に安寧を与え続けてほし
い、そのためなら己の外見など少しも惜しくはない。尚隆を守るため醜くなった己の
姿に六太はむしろ誇りを感じてさえいた。それは人に不快感を与えるものであるから
今後はなるべく人目を避けねばならないけれども。

131海神まとめさせて:2004/11/24(水) 14:26
明るい日差しの輝く庭園の東屋。
尚隆は思い出話をそこまで語った。陽子はこの悲惨な話を気丈に聞いていた。
隣に座っていたはずの楽俊は、そのつつしみ深さ故に聞き終えた途端、卒倒して床に
落っこちていた。
「俺は斡由のほうが玉座にふさわしかったのではと思うことがある。斡由はもう一人
の自分であると」
「そうですか? 私には延王のほうが優れているとしか思えませんが」
「慈悲の生き物である麒麟を切るなど普通、できることではない。家来にそこ
までさせるとは斡由は並大抵の者ではない。そして斡由のこの行動があったからこそ、
俺も延麒もお互いへの真実、深い想いの底に気付くことができた。人にこれだけのことを
気付かせられるというのは、すごいことではないかな……だから、私は斡由が教えて
くれた大切なことを忘れないために、ときどき斡由の墓を訪れ祈りを捧げているのだ」

132海神まとめさせて:2004/11/24(水) 15:00
楽俊もやっと気をとり直して座りなおし、陽子と共に神妙に尚隆の話しを聞いていた。
話の余韻の中、静かな空気が流れ、三人はしばし、それぞれ想いをめぐらせていた。
すると、その空気を破るように明るい声が聞こえてきた。
「よう、陽子と楽俊じゃないか!」
現れたのは常世一の美貌の持ち主、延国の麒麟であった。
「これは、延台輔」
陽子は会釈し楽俊は人間形態に変身し慌てて着物を着、拱手して礼をとった。
「何しけた昔話してたんだよ?」
尚隆は延麒の頭を撫でると、恋人達を二人だけにしてやろうというように立ち上がり、
延麒を促した。
「陽子と楽俊は、まあのんびりしていけよ」
美しい麒麟は笑顔でそう言い残すと、大股で歩き去る己の王に追いつこうと走っていく。
陽子と楽俊は、仲睦まじそうに去っていく二人の背中を見送りながら考えに浸った。
延台輔はこの世に並ぶ者の無いほど美しい。あの思い出話は真実なのだろうか。王は
客人に、この話を通して伝えたことを忘れさせないために、話に色をつけて語った
のだろうか。
 いや、真実の想いや真実の美は何があろうと汚されたり損なわれたりするものでは
ないのかもしれない。民意とはどんな傷をも修復できるほど、本当は強いものなの
かもしれない。天帝はこの世に生る者にそのような強さを与え賜うたのだろう。

                <了>

133名無しさん:2004/11/24(水) 15:14
「適当な東の海神」勝手にあとがき
言い出しっぺのキチーク者が、勝手に最後をまとめさせていただきました。
多くの姐さん方のご協力により、素敵にエロい鬼畜小説に仕上がったと思います。
というか私一人ではとてもここまでのエロさや迫力、アイディアは出せませんでした。
(とゆーより、ほとんど姐さんたちが書いてたんだが)
この場を借りてお礼を言い、完成の祝杯を上げたいと思います。
書き手の皆様、ろむの皆様、本当にありがとうございました。
今後も別館にモエ多かれと祈らせていただきます。
                                一鬼畜者

134名無しさん:2004/11/24(水) 19:50
残酷シーンはちょっぴり気絶しそうになりました。
こわいよう・・・がくがくがく・・・

135名無しさん:2004/11/24(水) 20:40
>133
残酷シーンは読めなかったけど(ゴメン
まとめ、乙です。心情とか、上手くまとまってるなあ…。
「おぶって」が…。六たんが切ないよ…。

136名無しさん:2004/11/24(水) 22:01
>134、135
まとめ読んでくれてありが㌧。怖がらせてすみません。
海神のハイライト書いてくれた他の姐さん方も、それぞれあとがき書いてくれたら嬉しい
んだけど。エンドレスに出来ないのはわかってたけど、いつまでも読んでいたいくらい
素敵でした。一応、結末はつけたけど、体の修復&お清めエチ書こうと思います。
残酷シーンいやな思いされた方は、その辺は無かった
ことにして(尚隆が話に尾ひれをつけたという説で)、お清め編は全くの別の話と
捉えてもらえれば…。むちゃかなー。残酷書きたかったのでユルシテ。

137名無しさん:2004/11/24(水) 23:22
汚しても汚し切れない清らかさが六太の魅力・・・
ちょい参加させて頂けて幸せでした〜
これでちったぁキチクも書けるようになった・・・らいいな(爆)
   一参加おたく

138名無しさん:2004/11/24(水) 23:39
なんだかみんなで「おつかれさまー」って感じですね。
楽しく参加して読めました。
今は氾六の展開と冬ソナのネッチリ加減が気になるところ。

139心の傷痕:2004/11/25(木) 00:50
キチーク者です。なんか136の書き方もヘンだった…。話尾ひれ説ととられた方は、この
続編はスルーということで。さすがにこのままでは気持ちがなんだかなので、じこまん
的に補足させて。

140心の傷痕:2004/11/25(木) 01:34
*誘拐事件の後、なんとか玄英宮に帰り着いた六太である。六太がおそらく常世一
であろうと思われるほどの醜さに変貌し、かつての美しさを取り戻すすべもないと
わかると、女官長は泣き崩れた。彼女にとって台輔の美しさは誇りであり、美しい
六太をさらに美しく磨くのが生きがいだったのである。そして台輔の美を誇って
いたのは玄英宮の他の誰もが同様だった。六太は彼らの落胆する様が気の毒になり
心が痛んだ。足を引きずる癖は奇跡的に治り一人で歩けるようにはなったが、なるべ
く人目につかぬように暮らし、顔の部分には被り物から布を垂らして醜悪な顔で
人々を怖がらせることがないよう装っていた。
 外見は恐ろしく醜悪なままではあったが、黄医の努力の甲斐あって、信じられない
ほどの回復力で痛みは感じられないまでになってきた。それでそれ以後は、これ以上
の回復はもう望めないだろうと、黄医の診察も断り、全く人に素顔をさらすことなく
暮らしている六太である。そんなある日のこと。

 痛みは全く感じなくなった。だが最近は別のことに悩まされていた。体がうずくの
である。それは尚隆の体を求めてのうずきだった。体が火照り、腰に熱がともる。
唯一日、尚隆と体の喜びを分かち合った日のことが頭に浮かぶ。あのときの底知れぬ
快感が心を離れない。他のことで気を散らそうとしても全く駄目だ。それどころか
欲望は日増しに大きくなってきており、もう限界だと感じられた。
 だが、尚隆に求めるわけにはいかない。ただでさえ、こんな醜い姿はさらせない
のに。尚隆は何かと言えば六太と共に過ごそうとするが、六太のほうはなるべく
尚隆を避けていた。こんな欲望に捉えられる前すら、あの事件以来感じる奇妙な
寂しさにかられ、ともすると尚隆に体を摺り寄せたくなってしまうのだ。だが、
いくら尚隆が見かけではなく惚れていると言ってくれたとはいっても、このような
姿になったら醜い者としての分際というものがある。惚れてると言ったって、
こんな姿形の者に擦り寄られたら気持ちが悪くなってしまうだろう。顔を隠した格好
をしていても、あの事件直後を見られていると思えば、近寄れない。あまつさえ、
尚隆は顔を隠す布を剥ぎ取ろうとしたことが一度あったのだ。六太があまりにも
怒ったので二度とはなかったが。自分で見てさえ思わず食べた物を吐いてしまった
ほどの顔なのである。絶対に見せることはできない。
 そしてそんな自分だから、どんなに体がうずこうが、あの日のように肉体を抱かれ
愛されるなど、もう二度と願っても叶わないことなのだ。尚隆なら頼めば抱いて
くれるかもしれない。六太の醜さを思えばあまりに突飛な考えではあるが。だが、
そんなことは死んでもいやだった。心はこんなに尚隆の体を求めているのに。

141心の傷痕:2004/11/25(木) 02:03
 六太は熱に浮かされたように、その場所にやってきた。玄英宮の庭園にこんな場所
があるとは今まで見過ごしてきたほどに、そこは庭園の隅であり、さびれた場所だった。
だが、そこには小さな泉がある。あまりきれいな水ではなかった。だが、ここなら
人は来ないだろう。六太は衣服を脱ぎ捨て、うずきに火照った体を吹き抜ける風に
さらす。全て脱ぐと泉に入る。麒麟が入れば濁った水も浄化される。それは六太の
ような醜く変貌した麒麟であっても同様であった。六太が体を浸けると水は次第に
透明さを増し、きらきらと美しく日光を反射する。
 しかし。泉に映る己の姿がふと目に入ってしまい、六太は硬直し吐きそうになった。
なんとか吐き気を抑え、普通の皮膚というものが見えない傷痕だらけのでこぼこ抉れた
体を水で清め、泉からあがった。
 水浴びを終えても一向に疼きは収まらない。もともと水で疼きを抑えるために
ここへ来たのではない。もっと嘆かわしい理由で来たのだ。
水から出た六太は、自分の手の指が己の肉棒へと伸びて行くのを制止できない。
そのためにここに来たのだから。と言っても水浴びをすれば気が変わるかも等と
空しい期待もあるにはあった。しかしやはりみっともない欲望を抑えることが出来なか
ったのである。肉棒に指を添えただけで、はあはあと息が上がる。
「ん…」
そこからはもう自制心も理性も吹き飛んでしまった。尚隆のことだけが頭にある。
愛しい面影を心にしっかりと抱き指を動かす。あの日の尚隆を思い出す。胸の飾りや
首筋を吸われたこと。そして股間に顔をうずめられ吸い上げられたこと。甘い囁き。
「尚隆…」
指の動きは次第に高まっていく。六太は我を忘れた。
「しょう、りゅ・・あ、あぁん、・…んっ…あぅ…んっ…しょ、お、りゅぅ…」

142心の傷痕:2004/11/25(木) 02:39
 尚隆は珍しい小鳥を捕まえにいくところだった。手ずから捕まえた珍鳥を渡せば
六太を喜ばせることができるかもしれない。女官が庭園のはずれの泉でその鳥
を見たと教えてくれたのである。政務などどうでもよかった。六太は顔を隠す布を
とってはくれないが、なんとか喜ぶ声を聞きたかった。それに鳥を持っていけば
長居させてくれるかもしれない。
 鳥を驚かせぬようにと木の繁みからそっと顔を出し泉の方角の様子を窺う。
だが、そこで尚隆の目を捉えたのは鳥より遥かに美しい姿だった。尚隆は驚きに息
を飲んだ。そこには一人の子供の後姿があった。
 日光に輝く瑕一つ無い白い肌。日差しにきらきらと輝く金の髪。華奢な細腰。
すんなり伸びた足。悩ましく上がった小さな尻。その尻はもだえるように僅かに
動いている。
 思わず何もかも忘れて見とれていると、唐突に自分の名前が聞こえびっくりした。
「ん…しょうりゅぅ…あっ、んっ、あぁんっ…しょ…りゅ…」
尚隆は我に返り、何が起こっているのかを理解した。だが、あの姿は? ありえない
ことではないのか。しかし疑問を長く留めておけないほどに尚隆は欲情を感じ始め
ていた。
「六太」
名前を呼んでも気付かない。そもそも麒麟が王気に気付かないとは。行為に夢中に
なっているせいだろう、と尚隆は思った。こんな状況で声をかけるのはまずいかと
も思ったがこの不思議な光景を見捨てて去ることはできなかった。
 実は六太が気付かなかったのは行為に夢中だったせいもあるが、空想の中で王気
に浸ってみていたというせいもある。尚隆が近づいてきても、その王気を自分の
空想の産物と取り違えていたのだ。
 だからそっと近づいた尚隆が六太を後ろから抱き締め、後ろから廻した手で愛撫を
始めても、それも空想の産物と捉えるしかなかった。いや、むしろ、そう思いたかっ
ただけなのか、そこはわからない。あまりの現実感に、抱き締められたまま首を後ろ
に巡らす。
「ん…しょうりゅう…?」
いつしか肉棒に添えた手は尚隆の手に取って代わられていた。尚隆の手の感触…
俺の想像だ、と六太は思った。
ひとしきり吐精させた後、尚隆は六太を抱き上げた。

143心の傷痕:2004/11/25(木) 03:12
自分の現実感ある想像力に六太はうっとりとなっていた。本当に抱き上げられている
ようだ…。
 
 尚隆は久しぶりに見る美しい顔に見とれていた。裸の六太を抱いたまま自室へ向かう。

欲望、そして二度と戻らないと思っていたものが再び得られた嬉しさに、はやる心を
抑え、遥かな距離を歩き尚隆は自室に辿りついた。通りすがる者たちも部屋の前の
衛兵も目をまるくしてこちらを見たが、かまってはいられなかった。
 部屋に入ると真直ぐに寝台へ向かい六太をそっとそこに降ろす。そうすれば後は
もう己の全身で美しい麒麟に情愛をぶつけていくだけである。六太のほうは、まだ夢見
心地で現実とは気付けない。だからこそ厭わずに裸体も顔も晒せる。感じればその
まま声や体で表現できる。二人の夢のような、だが激しい交情はいつまでも続いた。
尚隆は感嘆するしかなかった。六太はなぜか以前よりさらに美しく、又,交情から
得られる快感も以前を上回るものになっていたのだ。以前でも充分すぎるほどの
快感だったのだが。恥じらいながら尚隆を受け入れるかわいい蕾は以前に増して
尚隆自身をキュッと締め上げ陶酔に導いてくれるのだった。

その翌日だった、尚隆が真実を知ったのは。黄医に六太を診察させたのである。
黄医は台輔の肉体が完璧に再生されたのだと奇跡を告げたのまではよかったが。
だが、事件の後遺症として六太は心に傷を負ったのだった。端から見れば誰よりも
美しい六太であるが、自身が我が身を見れば、それが姿見に映る姿であろうと己から
見える範囲の体の部分であろうと、事件当時の醜い姿にしか見えないのだった。
黄医はこれは難しい症状であると頭を抱えていた。誰がなんと言い聞かせようと
六太は己の目に映る姿しか信じようとしないのだ。

144名無しさん:2004/11/25(木) 03:15
なんか一人でこういうの書くって、すごく恥ずかしいorz

145名無しさん:2004/11/25(木) 03:25
こっちはじりじり萌えながら読んでるっすよ。
ハァハァ…とりあえず身体は治ってて良かったね、六タン。

146心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:34
ね・・・姐様・・・萌えです〜・・・
こんなナイス続編まで用意して下さるなんて神です!
「二人の夢のような激しい交情」の妄想をおかずに、ご飯3杯大盛りでいけます。
恥かしがらずに、もっと啼いてごらん・・・いい子だ・・
という事で、なるべく流れを妨げずに妄想補足参加させて頂きます。

翌日目覚めた六太は、見慣れた自分の寝台の天井の模様を見上た。
ぼやけた意識が覚醒してきても、どうも自分が此処にいつ入ったのか記憶が定かで無い。
昨日の事で思い出せる事とえいえば、いつもの様にあの隠れた泉で自分に施しをしていて常ならぬほど夢中になった事ぐらいだ。
しかし、いつもならあの行為にふけった後は、後悔と自己嫌悪にさいなまれて、沈んでいるはずの気持ちが、妙にすっきりしている。
身体は、腰がだるく感じられ、後ろの口には甘い痺れと痛みすらあるが、とても満たされた感じがする。
「どうしたんだ?俺・・」
考えを巡らそうとした時、ある気配を察して六太ははっと首を上げる。
間違えようの無い主の気配だ。
慌てて被り物で自分を覆ったと同時に自室の扉が開かれる。
布越しなのに、いつのに増して明るく眩しい陽光のような尚隆の王気に目が眩む。
黄医を伴い部屋に入って来た尚隆は。真っ直ぐ自分の方に歩を進めて来る。
尚隆が近づいて来ると、どうした事か身体が小刻みに震え出す。
混乱し動揺する六太のその心はただ「嬉しい」と叫ぶ。
「目覚めたか。具合はどうだ?」
いつもの尚隆の低い優しい声に「大丈夫」と答えようとしたのに声にならず、溢れた涙が褥にポタポタと落ちる。
慌てたように尚隆が「おい」と声を掛けて来るが黄医に遮られる。
「主上はお外に」と促され、そのまま無言で尚隆が退室する。
静かに遠ざかる王気を寂しいと感じながらも、六太はようやく少し落ち着きを取り戻せた事に安堵する。

147心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:36
「では診察をいたしましょう」
言ってそっと被り物を取られて、思わずうつむく。
ずっと自分の治療にあたってくれている、自分の素顔を間近に見ている唯一の人間だ。
しかしたとえ自分の主治医である黄医であっても、醜い自分を曝すのにはどうしても抵抗が無くならない。
診察が終わり、ようやく被り物で我が身を隠す事が出来てホッと息をつく。
「今日はとても具合が宜しいようですね?ご気分は如何ですか?」
「ドキドキしてる・・。だって。起き抜けに尚隆に会えるなんて思わなかったから」
クスリと笑ってそういうと、自分を見つめる黄医の目がすっと細められる。
「まだ、主上にお顔をお見せになれませんか?」
ドキリとして顔を背ける。
「・・駄目だ。こんな醜い姿、他の誰に見られても尚隆にだけは見られたくない。」
吐き捨てるようにそう言うと、静かに黄医が告げる。
「主上は寂しがっておいでですよ」
え?と思わず顔を上げると、にこやかに黄医は微笑んでいる。
「一緒に悪さが出来なくなってしまって、毎日一人で官に色々と文句を言われていらっしゃいますから」
なるほど・・と思わず噴出すと、六太の手を取って黄医は告げる。
「今回の乱では、台輔は心にも身体にも深い傷を負われました。同じように主上も傷ついておられるのです。
御自分の心の一番奥を、よくご覧なさいませ。そして主上にも主上のお気持ちが御座います。決め付けずにもっと寄り添うてお上げになってみては如何でしょう。」
そう言って、そのまま静かに黄医は部屋を出て行く。

148心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:39
・・・・尚隆の気持ち・・・・
あのことが有ってから、自分の辛さばかりにかまけていて、尚隆からにげてばかりいた。
そんな自分を尚隆はどう感じていたんだろう?
考え込んでいた自分の目の前に、金色の鳥篭が差し出される。
びっくりして見上げると、尚隆が笑っていた。
「ぼうっとしおって」
「・・・考え事してんだよっ」
拗ねるように言って鳥篭に目を戻す。
クスクスと笑う尚隆の声が耳にこそばゆい。
「でもどうしたんだ、これ?」
聞くと王宮の庭園で捕まえたという、水色で尾の長い小鳥が2匹入っている。
鳥篭の中では可哀想だと言うと、頭の良い鳥なので慣れてしまえば放しても鳥篭の入り口を開けていればまた戻って来るらしい、と言う。
小首を傾げてこちらを見る様子も可愛らしく、すっかりこの小鳥が気に入った六太は、どの位でなれるのかな、そか考える。
尚隆と鳥篭をはさんで笑いあいながらふと、こんな風に他愛も無い話をするのも、随分と久しぶりなような気がする。
会話が途切れ、小鳥を見つめ合いながら、ゆるやかに時間が過ぎる。
ふと尚隆が問う。
「で、身体の具合はどうだ?昨日の今日ではまだ辛いか?」
「・・・昨日?」
何の事かわからずに、尚隆の顔を見上げる。
しばし自分の顔を無言で見下ろす主の視線は、痛いほどで・・。
「六太」
急に名を呼ばれて胸がはずみ、思わず鳥篭を抱く。
「今晩は俺の部屋に来い。」
全身の血が下がる。
「窓に厚い幕を引こう。部屋に入れば明かりはみな消すが良い。だから、おれの部屋に来い、六太」
「・・・駄目だ・・駄目だ!そんなこと出来ない。尚隆」
指先の震えを止めたくて、指が食い込むほどに鳥篭にしがみ付く。
「今宵の伽をせよ。逃げる事は許さん。勅命だ」
尚隆は静かに、しかし確かにそう告げて、ゆっくりと立ち上がると、部屋を出て行く。
尚隆の背中が扉の向こうに消えても、その閉じた扉から随分と長い間六太は目を離すことが出来なかった。


という事で、エッチ書き逃げは駄目ですよっ♪お姐さん!
お後がよろしいようで〜・・

149名無しさん:2004/11/25(木) 11:28
>148
まさに逃げようかと思ってたんだがw
148さんが書いてくれれば展開のわからないのを読む楽しみがあっていいんだがなあ…

150名無しさん:2004/11/25(木) 23:10
>149さんが頑張ってエチ書いてくだされば、相乗りしますよ〜きっと
148

151『台輔の勤め』11:2004/11/27(土) 16:20
可愛らしい。
よもやこの子供にこれほどの興趣が湧くことがあるとは。
麒麟が美しい生き物であることは知っている。この幼い姿の延麒とて例外ではなく、
あの好色な猿王が唯一溺愛しているというのもわかる。
だが、ここまで変貌するとは思いもよらなかった。
氾王は己の胸に久しぶりに感じる高揚感を楽しんでいた。
──久々に楽しみが出来たようだ。
「いつもと違うお主と対するのは面白いものよ」
頬を染めたまま下を向いている六太に、にこりと笑う。
「…他の顔にも興味が湧くというもの」
「え…?」
その囁きはかすかで、六太の耳には届かない。聞き返した六太に何、と笑い返して氾王はついと立ち上がった。
「他愛のないことよ。…更なるもてなしに期待が出来るやもなと、そう申したに過ぎぬよ」
「そう…か」
やや不安げに眉を寄せた表情も愛らしい。赤く濡れた唇が小さくつぐまれるのを目を細めて眺める。
「…やれやれ、またもうあれに会わねばならなくなったかえ」
氾王の溜め息混じりの言葉に、その視線の示す方を振り向き見れば、
「…もてなし役とは言えお前のものではないぞ。あまり気安くそれに触れるな」
低い声で言った尚隆が目の据わったままの表情で二人の方へ近付いてくるところであった。
「尚りゅ…うわっ」
己の名を呼びかけ立ち上がった六太の腰に手を掛け、その体をぐいと引き寄せた。
「おい、尚隆…!」
「お前は黙っておれ。好き放題されおって。──こいつには
釘を刺しておかねば何されるかわからんのだぞ、六太」
「相も変わらずなかなかに心外なことを言ってくれるの。
…お主と一緒にするでないわ山猿。──延麒、私の側へ」
冷たい火花が散ったような二人の長身の男の間で六太はとまどう。
きつく抱かれた腰を解くことも出来ず、ただ睨み合う二人の王の顔を交互に見つめた。
「尚隆、なあ…」
困ったように主を見上げる。…どうしたらよいのか。
尚隆という自分の主を離れ、訪れた王に誠意仕えるのが今回の自分の責務である。
だが、何分初めてのこと、その境界がよくわからない。
加えて普段と違う格好、身なりによって体が動きずらい。
氾王の意外な反応も手伝っていつものような言動・行動がどうにもうまく出てこないのだ。
その姿は二人の王の目に大変悩ましく可憐なものに映っていた。

152『台輔の勤め』12:2004/11/27(土) 16:56
「……」
六太は眉を寄せて見上げる。その瞳が一瞬細くなったのを見た氾王は突然
一歩前へ進み出ると腕を伸ばして尚隆の手をはらった。
「っ──何をする!」
「たわけ!痛がっておるのもわからぬか」
氾王の一喝に尚隆は目を見開いた。
息をついた六太の姿に知らず力をこめてしまっていたことに気付く。
チッと短く舌を打ち、顔を背ける。
「──…すまん…」
押し殺したようなその呟きに、六太は胸が切なくなるのを覚えた。
「いや…平気だから…」
「足がふらついておろう」
その氾王の言葉と同時に脇の下に両腕が差し入れられたと思った次の瞬間、
不意に視界が高くなり六太は驚く。
抱き上げられたのだ。
「え、あっ!ちょっ…氾王」
「愛でてくりょうと申したであろ。私は半身の梨雪をあのように無体に扱ったりはせぬ主義ぞ。
延麒はいつもあのように扱われておるのかえ。不敏なことよ」
宵の宴席までまだ時間があろう、と六太を腕に抱いたまま氾王はくるりと尚隆に背を向ける。
「無粋な横槍はそれまで望まぬ」
そしてそのまま少し歩を進めたところで振り返る。
「…確かに延麒は私のものではないが、こ度の滞在中は私の配下に置かれる。
王と言えど私の許しなく無体を働くことは認めぬよ」
邪魔することもの、と切り結んだ言葉に尚隆は顔をしかめて吐き捨てた。
「…勝手にしろ」
しばらく対峙したのち、ついとまた向きを変え、六太を抱き上げたまま氾王は小立に消えた。
「くそ…あの野郎」
ぎり、と唇を噛み消えた方向を睨みつける尚隆に、そこにいた官がおろおろと声をかける。
「あの…主上。どういたしましょう…やはり後を追った方が…何かありますと」
それを遮り、構わんと尚隆は怒鳴った。
「邪魔するなと言ったのだ。放って置け!何かあってもあいつの責任なのだからな。
俺は知らん!」
は、はいと官が飛びはねる。
「あ、あの…主上はどちらへ…」
「寝るのだ!くさくさしてかなわん!──おい!」
「はっ、はい!」
「朱衡に伝えておけ!宴の準備をさっさとしろとな。…あー!!おさまらぬ!」
頭から湯気を立てながらやはり小立に消える主を見送り、官ははい、と呟いた。

153名無しさん:2004/11/27(土) 22:15
この後、氾王がどこまでなさるのでしょうか ワクワク
よろしくおながいしますね姐さん。
尚隆もおめかし状態の六太を食べてよいのかしら。

154名無しさん:2004/11/28(日) 02:06
尚隆の主食は六太ですもんね〜・・・♪
それを氾王に横からつまみ食いされちゃ・・・
違う意味で尚隆切れるのかしら??
続き、たのしみで〜す

155名無しさん:2004/11/28(日) 03:15
六太がかわいい・・・
もーめろめろです
続きまってます

156春怨二人1/尚六ほのぼの:2004/11/30(火) 19:49
書き捨てスレなのにレベル高くて書き捨て難い…。
>2を思い出してゴー!!
設定/尚隆碁石集めは飽きた頃以降、陽子とか泰麒が現れる以前。特に意味無いけど。
まだくっついてない主従。
これきり書き捨てか、だらだら続け…ます。


緑の柱が立ち並ぶ、歓楽街のとある妓楼。女達の嬌声かしましいその一房。
男は昨夜の情事に怠い身体を窓辺に凭らせ、春日に呆ていた。
舞い散る桜を何とはなしに見やり、胡弓の音は耳に心地良く転がって来る。
胡弓の弾き手は昨夜の相手の妓女であったが、年端の行かぬ娘には無い、
しっとりとした色香があった。

不意に胡弓の音が止む。気付き、男は続きを促そうと女に目をやる。
すると弾いていた筈の胡弓を傍らに置き、女は三つ指をついていた。その改
まった様子に男は首を傾げる。
「風漢さま。私、この春見受け先が決まりまして…。今までご贔屓にして下
さり、有難うございました…」
女は頭を下げ、感謝の念を示す。瞬時呆け、風漢は目を丸くする。だが直ぐ
に飄々とした面を浮かべ、戯言を吐く。
「何だ、そうか。―惜しいな。俺が見受けしようと思っていたところを」

157春怨二人2:2004/11/30(火) 19:57
「ほほ…冗談ばかり。たびたび有り金を巻き上げられ、店の下働きをされる
方に払える額ではございませんよ、私は」
女の冗談に、風漢は気を悪くするでもなく「そうか」と苦笑する。それに、
と女は話を続ける。眼差しに、戯れを感じさせない。
「風漢さま、心から想う方がいらっしゃるのでしょう?―これは、女の勘で
すが。違いますか?」
これで最後だからか、男に立ち入った事を尋ねる。
暫し、風漢は何かを考える様に窓の外に目をやっていたが、やがてその問い
に答えた。
「…まあな。だが、どうにも手を出し損ねておる」
女はそれには驚いてみせる。初心でいらっしゃる事、と。
「風漢さまに本気で口説かれたなら、落ちぬ女など居ないでしょうに…」
「ならば、そなたを口説こうか」
女の顔を覗き込み、顎に手を掛けるが、女はゆるゆると首を振る。
「それこそ、お戯れ。本当に、掴めぬ方だこと」

その楼の門を後にした。振り向けば楼上から先程の女がこちらに手を振っていた。
初めて会った頃のその女は、物慣れぬが愛嬌の有る娘だった。年を経てそれ相応
に落ち着いたが、その変化も好ましかった。惚れてはいないが、好いていた。
だが共に永い生を生きる者でなければ、それは忽ち過去となる。しかし風漢の恋
愛遊戯の相手は尚隆にとって雁の一民となり、その民の幸せを願う。
女に手を振り返し、楼から去った。

158春怨二人0・5:2004/11/30(火) 20:20
春麗らかな玄英宮。春鶯はさえずり、見上げれば空は桃色で覆われていた。
春眠暁を覚えない、雁国の台輔は四阿に横たわっていた。
暖かい春の光の元での日光浴は、陽光が身に染みるようで心地が良い。
この感覚は何かに似ている、そう思った。


↑冒頭に来る筈が、コピペし忘れた。トホー。

159名無しさん:2004/12/01(水) 08:10
いやん、新作。
楽しみにしてますー

160名無しさん:2004/12/01(水) 16:55
身請け…ぐらい書いてクレロ。
ほかの文がキレイナノニ、もったいないダロ。

161名無しさん:2004/12/01(水) 20:40
尚隆のほうが言い出せずにいた系のは別館では初めてのようで
楽しみです。尚六スレのとパターンが逆ですよね。

162『台輔の勤め』13:2004/12/02(木) 03:44
オフの修羅場の中息抜きに更新。レス下さった方有り難うございます。
どこまでいってよいものやら迷いあぐねている内にこんな数…orz




風が強い。
「…なあ」
あおられて顔にかかる髪をうるさそうに指ではらいながら六太は声をかける。
先程の庵から場所を変えた玄英宮の端、雲海を見渡す広い庭園に二人はいた。
「何だね」
「小姐はどうして来なかったんだ?」
六太はあの生意気ながらも愛くるしい氾麟の姿を思い浮かべる。
「梨雪には小用を任せておったのでね。随分とさみしがっておったが…仕方あるまいよ。
些細なことであるのだがね、ちと手の離せぬ件があるのだ。だが、あれに任せておけば安心出来よう」
「…へぇ!小姐は中々優秀なんだな」
そう言った六太に、意外かえ、と愉快そうに氾王が目を細める。
「梨雪はああ見えて骨があるぞえ。延麒にも劣るまい」
俺は別に、と六太は口をすぼめた。国政の大切な仕事を任されているらしき氾麟に
己の身を照らした六太は彼女を少し羨ましく思ったのだ。
尚隆は自分をそのように見ているだろうか。有能で、いざという時に頼れる麒麟だと。
(ちょっと違うよなあ…)
己が役に立つのはその子供の外見を生かした諜報くらいのものだろう。
尚隆は自分に国政の一端を任したりはしない。
「いいな、小姐は。信頼されてるんだな、随分と」
「延麒とてそうであろ」
「違うよ。俺は何にも出来ない」
「おや!」
随分と殊勝なことよ、と氾王は大仰に笑った。
「子猿の台詞とは思えぬの」
「ちぇ、本音だよ」
「かように台輔の役を果たせておるであろ。…その様装がお主を慎ましくさせているのかえ?」
全く愛らしいことを申す、とやはり氾王は柔和に面を崩したまま呟いた。
「あまりに上出来すぎてお主の王が臍を曲げておるというに…」
くつくつと笑う。
「…そなたはあやつにとりかけがえのない麒麟よ。何を案ずることがある。
あれの無張面なぞ見慣れたものだがね、ほれ。あそこまで臆面ものう
吝気を見せたのはついぞ初めてのことよの」
明らかに尚隆は怒っていた。氾王に、そして六太に対して。
確かにあれが嫉妬ではないと誰が思うだろう。
「…延麒よ」
六太は顔を上げて氾王を見上げた。
「私はね、本来はあまりかような心情を抱くことはない」
意味深げに細められた瞳に、六太は眉を寄せその真意を問う。
「…だがね、あれを見て少々悪趣味な気持ちが湧いた」

163『台輔の勤め』14:2004/12/02(木) 04:52
「え?」
意味がわからずに聞き返す。
氾王はそれには答えずただ笑い、少女のように可憐な装いをした目の前の美しい子供を見つめた。
「景色は悪くないが、ここはちと風があるの…なんと埃を被ったことよ」
立ち上がり髪に手をやった氾王に、六太も慌てて立ちその着物に指をやった。
舞い上げられ薄くついた砂を、布地に気を遣いながらはらい落とす。
甲斐甲斐しいその様を満足げに見下ろしながら氾王はお主もの、と言い六太の髪を撫でた。
「さよう…宴の前に湯を使わせてくりゃるかえ」
口にした言葉は六太の動きを止める。
「え。──ああ!うん。構わないけど…」
「ならば女官を控えさせておかなくてはなるまいね。湯上がりの様装も整えねばならぬであろ」
そなたはね、と氾王は六太を見て微笑んだ。六太の目が開く。
「えっ──ちょ、それって、もしかして──」
俺も、と開きかけた口をそれに触れた長い指が押しとどめる。
「…よもや湯殿での身世話を他の者に任せるなどということはすまいね、台輔?」
「──!…」
何か言おうとしたものの甘く、だが真っ直ぐに煌めく瞳に見据えられ六太はとうとう頷く。
「わかったよ…。──沃飛」
はい、と足元から返した女の声に告げる。
「…女官に氾王の湯殿の用意、…それと、俺の浴着の用意をするよう伝えてくれ。
新しい着物も…それから」
おめかしの支度もですね、と柔らかな笑いを含んだ声がそれを引き継いで絞める。
「…そうだ」
六太は短く応え、女怪を行かせた。
「なあ…。思い付いた悪趣味ってこれか?」
溜め息をついて見上げると、なんの、と言って氾王は笑った。
「湯世話など当然の義であろ、台輔」
「じゃあ何だよ」
「…この場で申すようなことかえ。総い延麒にはその覚悟が出来ておると思うておったのじゃが?」
ぴくりと背が張った。
「…予定は今日一日のはずじゃ?」
日を跨ぐとは聞いてはいない。
胸が不穏な音を立て始める。六太は横を向き、平静を装って尋ねた。
「確かにね。そのつもりであったのじゃが…さてね」
だから宴も早い時間に設定されている。だが湯を使えばそれは遅れることになろう。
そうすれば宴席の終わりには陽は落ちている。国賓を夜に帰すことは有り得なかった。
無論不測の事態に備えて臥室の用意はされている。…だが、この状況でそうなれば。
まさかとは思うが、…だが。
六太の表情が強張った。
「……」
覚悟がない訳ではなかった。


伽という役。

164春怨二人3チラシの裏気分。:2004/12/02(木) 21:19
尚隆は乗騎を預けてある宿屋へ向かい、そして己を乗せたとらを空へと走らせた。
こんな風に、突如時の流れから弾かれた様な日は、あの城へ帰りたかった。
時の流れの緩慢な、己の家へ。

光が、寝返りを打つ金の頭に反射し弾ける。
春光の中、ぬくもりに満たされるこの感覚―。似たものは直ぐに思い出される。
六太はやや眉を顰め、寝そべったまま腕を高く上げ、ある方向を指で指し示す。
「…あっち」
誰に言うでもなく、意味の無い行動は「似たもの」を思い出した事が悔しかったから。
悔し紛れに、己の思考がすぐに主に直結する事を肯定してやった。

不意に、己を満たす心地良さ―陽光が強くなった。もう昼を大分過ぎた頃か。
もしも、もしも尚隆が自分を置いて逝ってしまい、次の王を選んだとしても、この
陽光が有れば自分は生きていけるかもしれない。そう思ったその時。
「人を指で指すな、莫迦者」
突如現れ、ずかずかと歩み寄る背の高い男。
―何だ、本物か。姿を見ずとも分かる、降り掛かった声にやや気落ちする。
己にはこれに代替するものが無いのだ、と。

寝そべったままの六太の隣にどっかと腰掛け、尚隆は項垂れ、大仰にはあ、と溜息
を吐いた。
「…女に振られた」



>160
それがよう、インフォシーク辞典に【身請け/見受け】と有ってよう。
字面の柔らかい方を使いたくてよう。厨でゴメン。

165名無しさん:2004/12/02(木) 21:44
微妙な心のうごきとか、何気ないやり取りの中に見える感情とかが禿萌えなので
春怨二人はなんかすごい楽しみにしておりますよ!
チラシの裏気分で書きなぐってくだせえ。

166名無しさん:2004/12/03(金) 09:36
春怨、いいですね。萌えます
ねちねち尚隆の心をがっちり描いてください。
氾六の六太かわいい!

167春怨二人4そんな良いモンじゃないですチラシの裏。:2004/12/04(土) 21:04
それには六太は腹を抱えて笑ってやった。主の情けなく、しょぼくれているであろう
顔を見てやろうと半身を起こす。気だるく起こす金のあたまから、降り積もった桜の
花弁がはらはらと流れ落ちる。
頬杖を突き面白くもない面をした主を仰ぎ見ると、その姿は想像通りで六太を愉快に
させた。彼をよく見れば服装から、下界からたった今帰って来た事が窺え、足元には
騶虞のたまがじゃれ付いている。
「格好悪いなあ、お前。一国の王様が」
主を無視する様にたまに飛び付き、その抱き心地を楽しむ。一応、主の話し相手も務
めてやる。
「ふん。王は関係有るまい」
「どうせ、遊びだったんだろーが。相手の女の方が迷惑だっての」
背を向けたまとじゃれ合い、六太は何気無く表情を隠した。
どうもこの手の話は良くない。尚隆の只の話し相手として、平然と付き合うのは身に
堪える。それは、悋気などではない。尚隆が下界を遊び歩いている内は、雁はきっと
安泰なのだ。そう割り切りつつ、胸に苛々しさを生じさせる。だが六太にはその苛々
の正体が知れていた。例えるなら、妻を失ったやもおの息子が、その父の再婚に際し
て抱くような気持ち、寂しさだと思う。
尚隆が妻を迎えたなら、自分はきっと寂しい。それだけ。悋気ではない。
決して、ない。

168春怨二人5    ベタ:2004/12/04(土) 22:36
尚隆は多少は色の有る話の中で、ふとこの子供を口説いてみたくなった。
六太と己との平行線とも言える間柄は、いつか、いずれは交わる時が来るのだろう。
そう漠然と思っていた。しかしそこで気付いた事がある。己は姿形を変えず、依然
悠久の時を過ごすつもりなのか、と。

「まあな。…言っておくが、お前には俺を慰める義務が有るぞ」
「はあ?何でだよ。麒麟にそんな義務有るわけねえだろ」
―さもありなん。どうにも伝わらぬ様子がおかしい。元より、男に口説かれるとは六
太も思うまい。
だが暫し間を置き、六太は尚隆を振り返る。そして、慰める訳ではないが、と前置き
して。
「…お前が本気で好きなら、無下にする女はそう居ねえんじゃねえの…」
それは先程の苛々を吹っ切る為に吐いた言葉だった。だが主は眉を寄せ、じっと六太
を見つめる。その為、六太はやや慌てた。
「い、いや、客観的に見て、だな」
「本当か?」
「う…。まあ、良い線行くんじゃねーの」
どうでも良いような口振りに「そうか」と返し、六太の側近く寄り目線を合わせる。そ
して目の前のその小さな手を取り、真摯なまなざしを向けた。
「…我が春怨の君よ。俺の、生涯の伴侶となってはくれぬか」
空気が止まった。それは春風が吹き抜け、桜の花弁を攫う事が見て取れる時間。
この尚隆の全ての行動、発言が六太の考えの及ばぬところであった。六太は目を瞬かせ、
やがてこの上無く白けた顔をする。
「何それ。練習か?…お前な、そんな芝居掛かった爺臭い台詞で口説かれる女なんか、
幾らなんでも居ねーだろ。重いしさ」
尚隆の握る手を払い、前言撤回、とばかりに呆れてみせた。

169名無しさん:2004/12/04(土) 23:27
やばいこれ、もうドキドキでキュンキュンですよ先生。

170名無しさん:2004/12/05(日) 09:06
いかん・・・
続きが読みたい。春怨。
六太と尚隆の微妙な駆け引きが・・・ああん
私を殺す気ですか姐さん

171春怨二人6:2004/12/05(日) 20:56
払った手が、払われた手がそのぬくもりが去っていく事が少し寂しい。
「仕方なかろう。俺も、年寄りだからな」
爺臭いのは勘弁しろ、と言って笑う。
「あのさ、思ってもない事言うなよな。どこにこんな好色な年寄りが居るんだよ。世の
お年寄りが聞いたら呆れるぜ?」
「お前こそ、何時までも子供のつもりだろうが」
お前は変わらんな、と腕を伸ばし六太の頭をくしゃりと撫で付ける。それに少し眉を寄せ。
「そんな事ねえよ。中身はちゃんと大人になってる。気付いてないのは、お前だけ」
そして、尚隆こそ、と言いかけ主の顔を覗き込む。―そうしようとした時。突風が吹き
付け尚隆の黒髪を掻き乱した。
六太は腰を上げ手を伸ばし、彼の面に掛かった髪を側面に除けた。小さな手が頬に触れ、
どうにもこそばゆい。だが、されるがままにしていた。
六太は尚隆の面を、瞳を凝視している。何かを探るように。
面と面が近付き、近付き過ぎ、尚隆は緊張する己を感じた。
このまま腕を伸ばし、この「自分は大人だ」と言う子供の腰を抱き、肩を抱いて少し顔
の角度を変え、目を閉じれば―。

「…うん、今は良い感じだな。悪くない。前は少しやばかった」
不意に身体を離し、一人六太は納得する。だがこちらは納得がいかない。何が良くて何
が悪いのか。そして、己は一体何をしようとしていたのか。
「前?」

172春怨二人7路線変更シリアスくずれ:2004/12/05(日) 21:49
主が問えば、六太は言うつもりではなかったのか顔を顰め、背ける。
「そうだな…。百年くらい前、かな?」
ぽつりと漏らしたそれに、尚隆は思わず身を固くした。
「あの頃さ、なんか上手く言えないんだけど…。仕事するのも、遊びにも、目が死んで
たっつーか。…精彩を欠いてた、っつーの?そのくせ妙にぎらぎらしててさ、…とにか
く変だった、お前」
漸う語り出した六太も、尚隆も互いに顔を逸らし、ただ正面を見やる。先程の突風に吹
かれた花弁はまだゆらゆらと辺りを漂っている。舞い散る桜の花弁が暗示するもの。
「おれさ、あの頃雁の歴史とか、各国の王朝の昔を調べたりしてたんだ。…成笙がさ、
そうしろって」
成笙も無茶を言う。各国の歴史など、麒麟には酷な陰惨な事も多かろうに。だが、前王、
梟王の忠臣としてその変貌する様を知る男は、現王の半身たる麒麟に訴えたい事が有っ
たのだろう。
「で、何が分かった?」
「…立朝三百年頃、善政を敷いていた王が暴君と化して国が滅びる事が多い…って事と
か、かな」
二人は漸く面を向け、瞳を合わせた。六太は固く膝を抱いている。
「…お前がその頃、俺にそのような話をした覚えが無いが」
「お前に説教とか忠告すんの?…お前がその気になったら、おれ達が何言ったって無駄、
かえってお前を煽るだけだろう?」
「それは、突き放しているのではないのか?」
尚隆は眉を寄せる。己が暴走しても、誰も止めてくれぬとは。
「いや、絶対ムキになる。だから、自然の成り行きに任せた」
腑に落ちない尚隆を横目に、でも、と言う。
「おれは、思ってたよ…。お前がそんな例通り、暴君と化す様なつまんない、三流の王
なんかじゃないって…」
「三百年持たせて三流と言うか。…そうなったら、朱衡が嬉々として下らん諡を付ける
様が目に浮かぶわ」

尚隆は否定も肯定もしない。だが六太はこう読んだ。尚隆にも暴君となり得る時期が有
ったのだ、と。
主の顔を仰ぎ見、恐る恐る、慎重に言葉を吐く。ずっと確かめたかった事を聞く。合わ
せた目を、目を逸らさないでくれ、と祈りながら。
「…昔の話、だよな?」
「ああ」
目を逸らさず事も無げに言ってのければ、六太はにんまりと、輝くように笑った。

173春怨二人8:2004/12/05(日) 22:27
「あーあ、心配して損しちゃったなあ。なあ、たま」
倒れ込む様にたまにしがみ付いた。その小さな背中は、肩は震えていた。声を押し殺して、
泣いているのだろう。
背を向け隠しても、こちらから見えるたまはくおんくおん、と鳴き、慰めるように主の頬
を舐めていた。
その涙は、唯一無二の主に仮にも裏切られた悔しさ悲しさの為、しかし現状を省みての安
堵ゆえ。その身体に、きっと百年もの間その憂いを封じ込めていたのだろう。
尚隆に今、六太に掛ける言葉は無い。ただ、気の済むまで泣かせていた。

どれくらい経ったのか、泣き止んだ六太が尚隆を振り返る。少し作った感が有るが、笑顔
を浮かべていた。
「でもさ、良く考えたら、いや良く考えなくても、雁が四百年も持ってる方がキセキ、ま
ぐれな訳だしな!おれ、いつでも覚悟は出来てるよ?」
雁はお前の好きな時に、好きな様にしろ、と言外に言った。
「…そう言われると何やらつまらんな」
「それが、ねらい」
お前の性格なんかお見通しだ、と小さく作った拳を伸ばし、主の頬にぐりぐりと押し付ける。
―この子供の、気丈さ強さが何より好きだ。踏みにじられても、決して折れぬ。もっとも、
これを踏みにじるのは己以外有り得ないが。
「…泣いたくせに」
「はあ?泣いてねえよ?お前何か見間違えたんじゃねえの?」
惚けてみせる六太の、泣き腫らした面の頬を摘み、ぎゅう、と引っ張る。
「どの顔で言うか、鴉かお前は」
そうすると、六太の頬は餅のように良く伸びた。
「いてててててっ!麒麟の御尊顔を引っ張るな!!」
「お前のどこが尊いのだ。よく食うわ遊ぶわ、低俗麒麟が」
「低俗って言うな!てめーだって似たようなもんだろうが、この振られ男!」






コメントに冷や汗する心苦しい中の人です。
春怨=恋に嘆き悲しむさま。って事らしいです。
で、誰も気にしてないと思いますが、台詞に有った「春怨の君」ってのは
「自分を恋に嘆かせるあなた」、てな風に強引に。ウソ語ですが。ウソ日本語。
でも「春怨」→「春エン」→「春雁」と被るのがちょっと良いかと。
恐らくレス15前後掛かるかと思われますが、一応内容もラストも決まりましたので
どんなご都合主義もグダグダヌルい内容も笑って許せるお優しい方、チラシの裏の隅の落書きに
お付き合い下され。
一人リレー気分…。語彙と脳が足リナイヨ!!

174名無しさん:2004/12/05(日) 23:04
春怨、どこまでもついていきます姐さん
突っ走ってください。
どういったらいいのやら
エロがないのにこの上なくエロい…
姐さんの書く尚隆はいい男だ、人間の弱さもありながら
踏みとどまる強い男っぷりに惚れます。
六太がけなげでかわいいし。どうしてくれるんだ、この胸の高まりを。

175心の傷痕モエモエ:2004/12/05(日) 23:31
六太は、一人湯船に浸かってあれやこれやと考えを巡らせる。
勅命だから仕方が無いとようやく心を決めて湯の用意をさせる頃には
すっかり日は傾きかけてしまっていた。
そうしてようやく女官に準備は整えてもらい、一人湯を使っている。
しばらく身体を暖めた後、湯船から上がって小さく口中で女怪の名を呼ぶ。
白い鱗に覆われた手が背後に現れる。
「髪を洗うのを手伝ってくれ。」
醜くなった俺だけど、髪だけは昔と変わらないから。
尚隆が気に入っているこの髪だけでも、せめて綺麗にしておきたい。
ゆったりと髪をすく手に身を任せる。

尚隆は俺に何を求めてるんだろう。
俺の為に、部屋に幕を引き明かりを消すと言った。
まるで自分の心の渇きや身体の疼きを読まれてしまったようで落ち着かない。
そうまして俺を抱いて、尚隆にどんな利点が有るのか皆目見当が付かない。
思考はグルグルと同じ所を回り続ける。
でも、勅命だもの。逆らう事なんて出来ない。
自分にどんな理由があれ、これで主の傍に侍るしか無いのだ。
不安や期待がないまぜな己の心におののいて、六太は小さく身体を震わせた。
「お寒う御座いますか?」
女怪の言葉に我に返った。
「いや、大丈夫だ」
言って心を決める。
何もかも考えても詮無い事だ。
尚隆は俺に伽を命じたけど、俺の姿は見ないで呉れると言った。
その心に、今は素直に甘えたいと思った。


えええん;;;

湯殿に伽!!
ネタ的にはかぶってるので、先に書かせてもらいましたー・・
149さん〜〜〜汗


そして、春怨も台輔の勤めもむっちゃ気になります!ドキドキです!

176『台輔の勤め』15:2004/12/06(月) 00:29
久々にリレスレ書いてこっちも。春怨も心の傷跡も萌え…!!



用意の整った湯殿に氾王を案内する。
「じゃあ…俺、先に行くから」
湯世話をする者の入り口は奥に別にある。六太はそちらに足を向けた。
控えていた女官が手際よく六太を浴着に着替えさせる。
重い着物を脱がされ鬣を飾っていた簪が外されると六太はほっと息をついたが、
それも束の間、今度は手際よく金の髪が結われていく。唇を彩っていた赤い紅は拭き取られ、
薄桃色の紅を塗られた。
「それは…いいよ」
拒んだものの、なりませぬ、とぴしゃりとやられて口ごもる。
「かの氾王のお世話です。そこには一分の隙も許されませぬ」
「……」
朱衡に余程言いつけられているのか、それとも女官の意思なのか。
とにかく普段身世話をさせない六太に、彼女達はここぞとばかりに情熱を燃やしているように見える。
実はそうであった。女官らは、普段六太があまり装いに頓着しないのを口惜しく思っていたのである。
ただでさえ愛らしい容姿のこと、髪を結い、美しい着物を着せめかしつけたなら、
さぞお綺麗になられるでしょうにと語り合ってきたのである。
そのように涙を呑んでいた女官らに、この機会を逃す手はなかった。
──かくして新たにめかしつけられた六太は何とも可憐な湯女であった。
このようないでたちで湯世話をされたなら誰もが心を怪しくさせるであろう、そのような出来であった。
尚隆が見れば頭から湯気を沸かせて憤るに違いない。
「──湯世話の者はまだ来ぬかえ」
しまった、と六太は顔を上げる。
「今──!行くから」
返事を返しながら慌てて湯殿へ入る。
先に来ていた氾王は既に髪も解き、玉で出来た台座にゆるりと腰をかけていた。
「ごめん…遅れた」
六太の姿を見て氾王はくすりと笑った。
「…また愛らしい湯女に化けたものだね。何、構わぬよ。その姿は気分が良い」
六太の身に着けているのは桜色の薄い襦袢であった。頭のやや片側に寄せた形で
高くまとめた金の髪は、耳の横と遅れ毛のみを少しだけ垂らし、何とも艶めかしい。
対して氾王は一糸纏わぬ姿であった。着衣の状態からは予想だにし得ないその裸体は
がっしりとした骨格に沿うように美しく筋肉がついていて、六太は不覚にも鼓動が高くなるのを覚える。
胸がどきどきとして、まともにその体を見ることが出来ない。
「…えと、まず何をすればいい?」
思わず伏し目がちになるのを隠しながら口を開いた。

177名無しさん:2004/12/06(月) 00:51
お風呂祭りですね。いやっほう
どっちも素晴しい。
台輔の勤め、女官の気持ちになって読んでいます。
ろくたんにおめかしさせたい…

178名無しさん:2004/12/07(火) 00:51
祭りに春怨に、いろいろあってクラクラです。
傷痕続きの姐さんほんとにありがとう。私には続き思いつけなかったです。
期待しまくってます!

179春怨二人9:2004/12/07(火) 17:28
「ああ、そうやって主の傷を抉る。不死でも心の傷はなかなか癒えぬものだぞ?」
悲しそうな面を作ったが、それも一蹴される。
「知ってるよ、んな事。でもお前の遊びの心の傷なんか、一晩寝りゃ治るだろ。てか、傷
なんて元々付いてないだろ」
「ばれたか」
「とーぜん」
そして笑い合った。こんな下らぬ遣り取りは、仕事時以外では常の事。共に居る時の同じ
空気。それは、心地の良いものだった。

庭園の、離れの四阿で主従はのどかな春光を受けていた。
「…で、お前はこんな所で何をしておったのだ?政務をさぼりおって」
「お前にだけは言われたくないけどな。午前中に午後の分もまとめてやっちゃったから良いの」
六太はたまの隣に寝転がった。見下ろしてくる主の視線は疑わしげだ。
「今は、日向ぼっこしながら昼寝。邪魔が入っちゃったけどさー」
そう言って欠伸を一つする。寝転がると先程の眠気が再びやって来た。
「昼寝か。気楽な奴。たくさん寝て良く育つ事だな」
「嫌味言うなってのー。…お前は何しにここに来たんだよ?」
すると尚隆は少し言い淀む。六太はちらと主を横目で見やった。
「…下界から帰って来たら空から派手な金が見えたでな、少し遊ぼうと思ったのだ」
「何だよー…。おれは…玩具じゃ、ふわあ…ねえ、ぞ…」
この睡魔は尚隆の王気が気持ち良い為だろうか。そう、今の尚隆は大丈夫。
尚隆がかつて己を裏切る気持ちを起こしたとしても、それは過去の事。それならば良い。
「でもまあ…久し振りにお前と…こんな風に……喋れて……良かった………かなー…」
その言葉は徐々に、すう、と寝息と共に消えていった。

寝入ってしまった六太の隣で、尚隆は軽くその頭を撫でる。
「…俺は、お前に会いに来たのだ」
誰に言うでもなく、そう呟いた。

180春怨10辻褄合わせの為尚隆が純、六タンハアハアに…(不本意:2004/12/07(火) 19:35
尚隆には六太をしばしば放置していた節が有る。それは、この子供の気性を考えれ
ば「王と麒麟」という関係に縛られる事を哀れんだからだ。―六太にとっては残酷
な優しさだろう。
だが今は、尚隆から六太に会いに来た。己の寂しさ、人恋しさを埋める為に。
寂しい、その気持ちを認めてやる。それは心が老いていない証拠だ、と自らに弁明
する。

六太の髪に次第に降り積もる花弁を払ってやる。その面には泣き腫らした名残があ
った。
―泣いたくせに。いっそ泣いて縋れば良いものを。「覚悟は出来ている」などと小
賢しい。あの頃の、国も己をも焼き滅ぼし尽くさんとする炎は今は鎮火している。
燻る火種を心のどこかに感じるが、それでも今、雁は安泰を保っている。
「たまには、褒美をくれても良かろう…?」
卑怯な事をする。春草出る地面に手を置き、眠る六太の上に影を作る。起きぬよう
そっと顎を捉え、微かに上を向かせる。そして面を近づける。先程誘惑に駆られた
事を、行った。
それは軽く触れるだけ。それでも、六太の一部が欲しかった。柔らかく、瑞々しさ
を湛えるそれ。ああ、白粉や紅の匂いはしないのだな、と当たり前の事を思った。
唇を離れる際、舌先で軽く舐める。それは甘く、桃か何かの味がした。恐らく尚隆
がここに来る前に食していたのだろう。

六太に気付かれぬよう、唇を盗んだ。己の心を明かさず相手の心も確かめず、この
卑怯な真似。それは男同士である、等を気にしての事ではない。ただ、この子供を
いつ裏切るとも知れない己が居たからだ。

181名無しさん:2004/12/07(火) 21:08
姐さん、いっそ殺してくれ。
萌え死ぬよ
春怨!!!
いいですー
早く続きを・・・お願いします、早く・・・

182春怨二人11:2004/12/07(火) 21:50
身体を起こしつつ自嘲する。望めばどんな贅沢も出来る己が、これが褒美とはささ
やかに過ぎるのではないか。
知らず唇を主に捧げた六太は安らかな寝息を立てている。もう暫くして、風が冷え
てきたら仁重殿にでも運んでやろう、そう思った時遠くに人の気配を感じた。

「お前らー――!!こんな所におったかー!!すぐに捕まえてくれるわ!!」
「主上は三日分の政務、台輔は午後の政務が残っていらっしゃるでしょう!!」
突然の官吏の声に、尚隆は振り返り六太は目を覚まして身を起こす。
「お前、午後の分もまとめて片付けたのではなかったのか」
「へへへ」
三人の官吏は今にも捕まえん、と二人目掛けて駆けて来る。だが、こちらにはたま
が居た。
「たま、帰って来たばかりですまんが、もう一働きしてくれんか」
その囁きにたまはくおん、と鳴き返す。尚隆はたまに飛び乗り、反射的にたまに手
を掛ける六太の身を掬い上げ、己の前に乗せた。
「こらー――!!逃げるな貴様ら!!」
その声に縛られる事無く、「行ってくれ」という声と共に二人を乗せたたまは駆け
出し舞い上った。
庭園の柵を越え、桜の回廊をくぐり抜ける。その際、尚隆は手を伸ばし桜の小枝を
数寸ほど手折った。

たまを走らせ、空の上から振り返れば官吏達はもう小さく見える。それでも腕を挙
げ、盛んに非難している様は見て取れたが。
「どこ行くんだよ?」
たまの上で六太が主に問うと、特に決めてない、と返ってきた。
「別に政務を執っても良かったのだがな。追われた為、反射的に逃げてしまった」
「お前なあ…。でもそれは、分かる」
二人は互いに顔を向け合うと、楽しげに笑った。

183春怨二人12 ラヴコメ(臭:2004/12/07(火) 22:32
「とりあえず関弓に降りるか」という主の言葉に、六太は常に持っているのか胸元
から巾を取り出す。それを頭に巻こうとしたところ、遮るように声が降ってきた。
「六太」
呼び掛ければ振り返る子供の耳の上、流れる金色の隙間に先程の桜の小枝を挿して
やった。
「…何のつもりだよ」
「いや、少し動くな。…ふむ」
鑑定人よろしく手を顎に当て、暫し見つめる。後、軽く吹き出した。
「…呆れるほど良く似合う」
「お前な、そんな下らない事言う為に花を手折んなよ」
顰めた顔を向けてやれば、主は更に顔を覆いたくなるような事を言い出した。
「なに、お前の髪に飾られて花も幸せだろうて」
「うっわー!尚隆寒いよー、おれの周りだけ冬が来た!」
寒そうに体を抱きつつ簪と化した小枝を抜き、それを手に持ち見つめる。
己の為に手折られたその枝を捨てる気にはならず。そうしていると尚隆は六太の手
からそれを取り、六太の衣の襟元に挿した。
「まあ…勘弁してやる」
仕方なく受け入れた、己の胸元に咲いた花を見やり思う事がある。
それは、主に与えられたもの。

「お前さっき、おれが寝てる間、おれにく…、いや何かした?」
「いや?…墨と筆が有ればお前の顔に落書きでもしてやったところだが」
振り返って問うた六太に恍けてみせた。
「あのなあ。餓鬼かてめーは」
そっか、と前を向き面を伏せる。唇に手の甲を当てる。気のせいだったか。朧に感
じた、その行為が愛情表現の一種である事は六太も知っている。男と女の。
尚隆が自分にそんな事をするわけが無い。願望を夢に映したのだろうか。…そんな
願望を己は抱いているのだろうか。そんな莫迦な。おれは男で、こいつも男で。

六太が思いを巡らせている内に、主従を乗せたたまは間も無く関弓の街に降り立った。





次回、…関弓デート…(鼻汁

184名無しさん:2004/12/07(火) 23:17
萌えすぎて呼吸が苦しいです姐さん!
尚隆の言葉を本気に取ろうとしない六太がじれったい!
非情にイイです。続きをみたい…!

185名無しさん:2004/12/08(水) 18:28
姐さんに人生狂わされそうだよ
尚隆のご褒美キス泥棒にくらくら・・・
続きをくれなければ死ぬので
お願いしますよ

186春怨二人13 萌エ無シダラダラホノボノ。:2004/12/08(水) 19:50
夕を迎えるまで幾らかの時間を残す関弓の街は、道行く人々でひしめき合っていた。
もっとも、数百年前からこの街は静寂を知らなかったが。
そこに有る風景。活気の有る商人達。露店で売られる菓子や点心が蒸篭で蒸され立
ち上る湯気。路上で芸をする朱旌たち、またそれに群がる人々。他国からの旅行者
か、この春に妙に着膨れした者、薄着な者。学生と思われる集団が茶店の店先で何
やら熱心に語り合う様子。子らが駆け回るその横を酔っ払い達が通り過ぎる。
この活気に満ち溢れた街は、延主従にとっての庭だ。

二人がたまを宿屋の厩に預けた後、六太が早速提案した。
「おれ、腹減った。茶店に行きたい」
「そうだろうよ、お前は。先程桃を食っただろうに」
「え?何で知ってんの?」
「いや、…いつも食っておるだろうが」
後、飯を奢れだの手持ちが少ないだの言い合いをしていると、道行く広い通りに妖
獣の群れが現れた。
それは旅の商人に騎獣として躾けられた、売りものであると知れた。
近寄り様、尚隆は何気に一頭の天馬を撫でる。すると天馬は尚隆を気に入ったのか
盛んに頭を擦り寄せている。それに可愛げを見出したのか、尚隆はその背や顎の下
を楽しげに撫で返していた。

六太はその光景、天馬に羨望を覚えた。己は、このように素直に尚隆に甘えた事が
そう有るだろうか。
六太には、尚隆との距離を度々置いていた節が有る。それは己の「王を慕う麒麟の
本能」ゆえ。己が尚隆に纏わり付く事、慕情を示す事を、ただの「本能」ゆえとは
思われたくはなかった。
尚隆を想う故に、尚隆と距離を置いた。矛盾する思いを抱える。
だが、その想いとは一体?

187春怨二人14 萌エ無シダラダラホノボノ。:2004/12/08(水) 19:57
一しきり天馬を可愛がった後、去ろうとした二人の尚隆の袂が引っ張られた。気付
き振り返れば、先程の天馬が袂を銜えていた。行くな、とその瞳が訴える。
中年の騎獣商人がそれに気付き、ずかずかとやって来て尚隆を訴えた。
「おい兄ちゃん、売りものを懐かせないでくれよ!困るよ!」
「そんな気は無かったのだが」
頭を掻きながら、天馬と目の高さを合わせる。そして獣に尋ねた。
「俺のものになるか?それとも、黄海に帰りたいか?」
「おっおい、兄ちゃん、何勝手な事言ってんだよ!あんたのにするも、黄海に帰すも、
まずは金払ってくれよ!」
六太は呆れて呟いた。この、女たらしに獣たらしが―。
「兄ちゃん、どうするんだよ?」
腕を組み睨む商人に、言われ尚隆はその天馬の値札を手に取り見やる。民には法外な
その額に、驚くでもない。
躊躇無く胸元から財嚢を取り出すが、しかし大した額は入っていなかった。
「うむ、俺が買おう。だが今は手持ちが少なくてな。付けで…」
「旅商人に付けが利くかっ!飲み屋じゃねーんだ」
手に顎を置き、財嚢と天馬を見比べ唸り考える、その暫し後。
「では待っておれ。少々金策するでな」
「いやに偉そうだな、兄ちゃん…」
訝しげに見てくる商人を尻目に、尚隆は当てが有るのか何処かへ歩き出した。

「おい、金策って何か当ては有るのかよ?」
天馬と戯れていた六太は、意思の疎通が出来るのか何事か語らっていたが、駆け足で
主を追い掛けた。
「…何か質草にするしか思い付かんな」
尚隆は溜息を吐きながら袂を漁る。何か、金目の物は有っただろうか。その様子を見
て六太は微笑んだ。
「…お前って、意外と優しいんだな」
「意外と、とは何だ。俺は俺を慕うものを邪険にはせんぞ。もっとも、去るものは追
わんが」
―本当に?ただの本能で慕うものも、受け入れてくれるのか?
六太の胸に、そんな思いが去来した。

188春怨15 伏線になるのかこの辺…:2004/12/08(水) 22:43
脚は何処へ向かうのか、袂を漁る手が何かを掴む。「あったあった」と呟きな
がら、取り出した物は。
「範の奴が送ってきた物だ。わざわざ俺宛にな。どうせ、俺の趣味には合わん。
いずれ売っ払ってやろうと思っていたのだ」
そこそこの額にはなるだろう、と天にかざせばきらきら輝く、それは帯留めで
あった。翡翠に細工が施され、見るからに趣味が良い美しい品である。
「それを売ろうってのー?止めとけよ。あの御仁、お前の事〝まだ見込みが無い
訳じゃない、あと百年も有ればなんとか〟とか言ってたぜー?」
「ふん、見込みが無くて結構だ。大体、あと百年あいつが玉座に居るのか」
かの国の王の話となると途端に不機嫌になる自主を宥めつつ、売った後で氾王に
その帯止めの事を問われたらまずい、などと説得しどうにか思い留まらせた。

「風漢さん…。これは買い取れませんねえ」
暫し後、尚隆の馴染みらしき質店に辿り着いた。薄暗く古書や珍品等が佇むそこ
で、彼は勘定台の店主にある物を軽く、投げつけるように渡したのだ。
店主の老人がその渡された包みを開いた後、現れた物。
「〝延王御璽〟とありますねえ。本物ではないでしょうが風漢さん…。何やら犯
罪の臭いがしますねえ…」
尚隆の隣で様子を窺っていた六太は思わず目を疑った。
「おっ、おまっ、あれっ、ぎょっぎょくっ…、んッんんー――!!」
指差して呂律も回らず叫ぶ六太を、尚隆が肩を抱くようにその口を押さえ込んだ。
暴れる子供を訝しみながら見やり、店主は玉璽を元のように包みに戻した。そし
てそれを尚隆の元へ押し戻す。
「ま、お得意さんですから深い事情はお聞きしませんが…。私も善良な関弓市民
として、こういった事には関わりたくありませんねえ」
「それはすまん」と、尚隆は軽く謝罪して突き返された玉璽を袂にしまった。六
太を押さえ込んだ手を離せば、暴れ止んだ六太は大きく息を吐いていた。

もう質草にするような物が無い為か、尚隆は何とはなしに店内をうろうろと見渡
した後、店主に尋ねた。
「今すぐ大金が要るのだが。何か得られる方法は無いものか」
「そう言われてもねえ。…ああそうそう、あんたには打って付けかも…」

189名無しさん:2004/12/09(木) 02:33
姐さん連投お疲れです
いっぱい読めて今日は幸せだあ…
ありがとう
明日もたくさん書いてください
待ってます

六太と尚隆が自分の意志なのか…の意志に踊らされているだけか迷いながら
惹かれ合う様子が…たまんねえ!!
尚隆ご褒美キス泥棒のシーンはマイベストシーンとして何度も読返しちゃいます


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