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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

123『台輔の勤め』10:2004/11/24(水) 03:47
何故かはわからないが、顔を上げられない。何だかとても恥ずかしい。
かすかに頬を染めてうつむいた六太の仕草が無性に可愛らしく思えて氾王はくすりとまた笑った。
「よいよい。では台輔はやめるかえ。延麒、これならよいであろ。…延麒」
近う、と言われて顔を上げる。その瞬間己の立場を思い出した六太は
はい、と答え体を貴人の近くに寄せた。
さら、と氾王の長い指が六太の髪を梳いた。ぴくりと頭が動く。
えっとそちらを向けば氾王の笑みが眼前に近付き、六太は目を見開いて体を固くする。
思わず目を瞑りそうになった時、その唇は頬をかすめた。
髪を梳いた指がそれをかき入り、六太の首筋に触れて優しく撫でる。
耳元に触れた唇の熱があった。
「っ…!」
「まこと感心することよ…こ度の役目をよう心得ておる。私はね、お主を見直したのだよ延麒」
耳に注ぎ込まれる囁きがくすぐったく、六太はかすかに身じろぎした。
「…こ度、我が麒麟梨雪のようにお主を愛でてくりょう…」
囁きと共に氾王の腕が六太の背を引き寄せた。自然前に倒れた六太の体が氾王の胸に落ちる。
慌てて起こそうとしたが、両の腕に抱き締められて叶わなかった。
「あ、あっと…俺…ちょ…」
頭が混乱する。押し付けられた胸は思いの他固く、自分を包む腕の布越しの感覚も
そこについた固い筋肉を想像させる、意外なほどに逞しいものであった。
すっぽりと抱きしめているそうは見えない広い肩幅と共に、
その肉体が成人の男のものであることを六太に伝えてくる。
心臓が不穏な動きをしだす。
氾王は六太を抱き締めたまま離そうとしない。
六太の頬が熱を持った。
「は、氾王…っ!」
思わず上げた己の声が思いの他上擦ったものであったことも頬の熱の温度を上げた。
ふふ、と笑いを漏らした声が耳元に聞こえ、束縛していた腕の力が緩む。
素早くもたれていた胸に手をついて六太は体を離す。
はあ、と荒く息をついた。心臓はまだ早く脈打っている。
「困ったような顔をしておるの」
そんな六太の様子を愉快げに氾王は揶揄した。
「別に、そういうわけじゃ…」
下を向いたまま慌てて否定する。
もてなす責任者の立場は、前提として相手には気に入られねばならない。
だからこそ身なりも相手に合わせて整えるのである。
成功ではないか。氾王は今回の六太の態度を気に入り、
あろうことか半身である氾麟と同等に扱うとまで言ったのだ。


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