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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

1名無しさん:2004/11/03(水) 14:07
ここはなんでも書けるスレです。初心者、エロエロ、ムード系、落ち無し、
瞬間的モエ、特殊系、スレ内SS感想等なんでもщ(゚Д゚щ)カモーン!!
どんなカプでもお気軽にドゾー!!
投稿ルール、スレ説明は>>2、その他意見・質問はまずロビスレへ。

※もちろん個人での派生スレ設立は、さらに大推奨※

124名無しさん:2004/11/24(水) 05:47
適当海神参加者増えすぎかイマイチ動きに一貫性を作れなくなってきた。
何とか本編合わせに話を纏めようと持って行き過ぎたかしら?
キチク下手な私は出る幕無しだ。
ので尚隆同様しばし股間を難くしつつ傍観しまつー・・・。

125海神まとめに入ります:2004/11/24(水) 09:08
その次の瞬間六太の目の前が真っ赤に染まった。
何事か一瞬訳が分からずぼんやりしたが,次の瞬間覚えのある感覚が
躰を走り力を奪う。
六太は頭から血をかぶっていたのだ。
視力は奪われ、視界は紅い闇に沈む,音が遠ざかる。
だが微かに耳に悲鳴が届く。
断末魔の悲鳴。「うわあああああ」
家来たちの叫びが聞こえる。
遠ざかる意識の中六太は何事か理解した。
更夜の妖獣が家来を襲っているのだ。
更夜は斡由を慕っていた。斡由が望むなら,自分の手を汚してもよかった。
だが、大切な友達である六太に加えられる暴力を見せつけられ、自分のしていることに
自信が持てなくなってしまった。
本当にこんなことをしていいのか.斡由は生きている限り王を嫉み,六太に対して
加虐心を持ち続ける.
本当は領地をよく治める、よい令允であるのに、そのねたみが斡由を歪め苦しめる.
もうそんな斡由を見たくはない、斡由に罪を行わせたくない。
そのねたみを終わらせるためには斡由自身を終わらせてしまうしかないのだ。
それだけねたみは深く,斡由を蝕んでいることを更夜は知っていたのだ。
六太の躰がふわりと持ち上がり優しく抱きしめられるのを感じる.
懐かしく愛しい王気。そのまま気を失ってしまう。
大切なものをこの腕に取り返した思いを噛み締める。血で汚れたこの場所から
一刻も早く去らねばならない。
更夜は次々とその場にいたものを妖獣の鋭いくちばしで屠る.
斡由が血の海に横たわるのが見えた。
斡由はもう一人の自分であったかもしれない。
六太が自分を選ぶことなく誰か別の者のそばに使えていたら、自分はそれを妬まずに
いられたろうか。
麒麟と言う聖獣に選ばれ、すべてを我が手におさめる、王と言う存在。
嫉妬と羨望をその身に集め、欠けることなく幸福を約束されているように見えるだろう。
だがその王座には自分だけが存在する。
誰もいない。
背負った者の重さを知る者は自分以外に、ない。
誰もその孤独を分かちあえはしないのだ。
だからこそ天は、王に麒麟を与えてくれたのだ。
気が狂いそうになるほどの孤独な道のりをともに歩むものを。
王の半身を。
尚隆が六太を抱えその場を走り去る.
悲鳴を残して。

126名無しさん:2004/11/24(水) 09:25
そして、海神は雁、冬ソナへ続くのか
冬ソナねっとりのほほんラブ、いいよー
鬼畜でちょい疲れたので癒してください。

127雁・冬つづき:2004/11/24(水) 10:22
「そんなに子供の身体って暖かい?」
「ああ」
「…尚隆も暖かいよ。すげー…気持ち良い…」
北東に位置する、冬は寒冷な雁国の地。その地を力強く照らす、雁の太陽。…おれの太陽。
その太陽が凍えたなら、暖められるのがおれならば良い。
互いを求め、掻き抱く腕に力が篭る。尚隆の半ば露わになった厚い胸が六太の平らな胸と擦れる。
暫し後、尚隆は少し身体を離し六太の胸元を確認する。赤く、小さな乳首は痛々しく先端を尖らせている。
いつも思うのだが、と前置きして言った。
「お前は授乳をする女でもあるまいに、何故こうも尖らす?俺に吸うて欲しいのか?」
「知るかよ」
ぷい、と拗ねて横を向いたその耳元に唇を寄せ、囁く。
「…淫靡で可愛いな」
言われぞくり、と背筋が反応する。
「可愛いぞ、六太」
耳朶を甘く噛みながら、尖った乳首を指先で転がす。
はあ、と切なげな声を漏らせば頬に口付けが降ってくる。
さっきから綺麗だの可愛いだの。そんなのは女に言う台詞だ。男だと思われていないようで腹が立つ。
腹が立つ一方、心が喜んでいるのを感じる。胸がトキメク、とはこういう感覚だろうか。
「肩が冷えるだろう」
横を向いた際布団からはみ出した裸の肩が、尚隆の大きな掌に包まれる。その手が嬉しい。



海神は原作に沿わないバッドエンドでも良いかなー、とか思ったりしてメロドラマ
にしてスマン。雁冬はハートウォーマーな感じでひとつ…。

128適当海神:2004/11/24(水) 13:28
だが、六太を抱えた尚隆の行く手を阻む者があった。
「ふん、逃げられると思うなよ!」
行く手を阻んだのはあの巨根の男だった。
「卿伯は倒れても俺が卿伯の願いを叶える。約束通り、王の命までは奪いはしないが、
卿伯の願い通り、台輔には常世一醜い姿になっていただく」
この男は無類の忠義者だったのである。しかも常識はずれの巨根故、女達から避けられ
ている自分に斡由は台輔との快楽を与えようとしてくれたのである。そして恐ろしい
ことに、この男は更夜にも勝る妖術使いだった。
あっ、という間に尚隆は金縛り状態にされてしまった。
六太も足が動かなくなり動くことができない。
男は刀を抜く。
「自分たちだけ幸せの限りを味わう王と台輔よ、思い知れ!!」
凶悪な刀は六太の美しい顔を抉った。鮮血が飛ぶ。
尚隆は金縛りで声を出すこともできない。
抉り続けるうち、美しい顔は、目は潰れ鼻は削げ頬といい額といい顎といい、肉を
抉られまくった醜い肉塊となり果てる。血の穢れに倒れた体をさらに凶刃が襲う。
愛らしい小さな尻の双丘は抉りとられ、かわいい蕾も容赦なく抉られ、もはや、
並ぶものがなかったほどの名器の面影を全く留めない。そして体中の柔肌に隙間無く
醜い深い傷が入れられ、足には後遺症を残さずにはおかないほどの打撃が加えられる。
もちろん胸の可憐な桃色の飾りも切り取られてしまう。金の髪も生え際から削がれる。
もはや六太は醜い肉の塊でしかなかった。
男は全ての作業を終えるとその醜い肉塊を蹴り上げ唾を吐きかけた。
そして今度は自らの胸に刀を向ける。
「卿伯、この肉塊を捧げます」
祈るようにそう言うと、刀は胸に突きささり、男の命は果てた。

129海神まとめさせて:2004/11/24(水) 13:51
そして尚隆にとって永遠とも思える時間が過ぎ去ったとき、やっと救援は訪れた。
「主上、大丈夫でございますかっ。さ、参りましょう」
「ま、まて、六太を運ばねば」
「え? 台輔がどこにおられるのでございますか?」
尚隆は足を引きずり、倒れた六太の前に立った。
「は? なぜ、こんなところに肉の塊があるのですか?」
尚隆はその言葉を無視して声をかけた。
「六太…」
意識を失っていて返事はできない状態だろうと思ったが、声をかけずにはいられな
かったのだ。だが、予想に反して、肉塊は微かに動いた。そして掠れた弱弱しい
声が聞こえた。
「しょ・・りゅ・・・。あるけな…い………おぶって」
「六太、聞こえるか。まず、手当てをしてもらおう。それからお前をおぶって帰ろう」
もちろんお互いにおんぶなどできない状況であるのはわかっていた。例えどんなに
手当てしようが、帰るには柔らかい寝床に横たえて運ぶしかないだろう。それでも
六太はそう言ってみたかったのだ。言葉だけでも甘えてみたかった。外見に関係なく
想ってくれるといった主の気持ちを、今こそ味わわねば生きる気力を持続できないか
もしれないと思ったのだ。
「六太、俺がついている」
「尚隆、おれは生き続ける。例えどんな醜い生き物に成り下がろうとも。生きていら
れればそれでいいんだ。俺が生きていさえすれば尚隆は生きられるから」

130海神まとめさせて:2004/11/24(水) 14:05
六太は遠のく意識の中で思った。自分は常世一醜い生き物として生き続け、尚隆の治世
は長く続いていくだろう。今日は初めて尚隆に肉体を愛される幸せを味わったけれど、
そのような幸せはもう二度と戻っては来ないだろう。尚隆はたくましい体を抑制できず、
他の誰かを抱くだろう。美しい誰かを愛するようになるかもしれない。それは六太に
とっては体を引き裂かれるほどにつらいことだけれど、でもそれでもよい。これは
自分で選んだ道なのだから。時がたち醜い六太を見なれるにつれ尚隆は外見に関係無く
「惚れている」と言った言葉を忘れるようになるかもしれない。そうなったって、
自分は尚隆を愛し続けるだろう。尚隆には国を治め続け民に安寧を与え続けてほし
い、そのためなら己の外見など少しも惜しくはない。尚隆を守るため醜くなった己の
姿に六太はむしろ誇りを感じてさえいた。それは人に不快感を与えるものであるから
今後はなるべく人目を避けねばならないけれども。

131海神まとめさせて:2004/11/24(水) 14:26
明るい日差しの輝く庭園の東屋。
尚隆は思い出話をそこまで語った。陽子はこの悲惨な話を気丈に聞いていた。
隣に座っていたはずの楽俊は、そのつつしみ深さ故に聞き終えた途端、卒倒して床に
落っこちていた。
「俺は斡由のほうが玉座にふさわしかったのではと思うことがある。斡由はもう一人
の自分であると」
「そうですか? 私には延王のほうが優れているとしか思えませんが」
「慈悲の生き物である麒麟を切るなど普通、できることではない。家来にそこ
までさせるとは斡由は並大抵の者ではない。そして斡由のこの行動があったからこそ、
俺も延麒もお互いへの真実、深い想いの底に気付くことができた。人にこれだけのことを
気付かせられるというのは、すごいことではないかな……だから、私は斡由が教えて
くれた大切なことを忘れないために、ときどき斡由の墓を訪れ祈りを捧げているのだ」

132海神まとめさせて:2004/11/24(水) 15:00
楽俊もやっと気をとり直して座りなおし、陽子と共に神妙に尚隆の話しを聞いていた。
話の余韻の中、静かな空気が流れ、三人はしばし、それぞれ想いをめぐらせていた。
すると、その空気を破るように明るい声が聞こえてきた。
「よう、陽子と楽俊じゃないか!」
現れたのは常世一の美貌の持ち主、延国の麒麟であった。
「これは、延台輔」
陽子は会釈し楽俊は人間形態に変身し慌てて着物を着、拱手して礼をとった。
「何しけた昔話してたんだよ?」
尚隆は延麒の頭を撫でると、恋人達を二人だけにしてやろうというように立ち上がり、
延麒を促した。
「陽子と楽俊は、まあのんびりしていけよ」
美しい麒麟は笑顔でそう言い残すと、大股で歩き去る己の王に追いつこうと走っていく。
陽子と楽俊は、仲睦まじそうに去っていく二人の背中を見送りながら考えに浸った。
延台輔はこの世に並ぶ者の無いほど美しい。あの思い出話は真実なのだろうか。王は
客人に、この話を通して伝えたことを忘れさせないために、話に色をつけて語った
のだろうか。
 いや、真実の想いや真実の美は何があろうと汚されたり損なわれたりするものでは
ないのかもしれない。民意とはどんな傷をも修復できるほど、本当は強いものなの
かもしれない。天帝はこの世に生る者にそのような強さを与え賜うたのだろう。

                <了>

133名無しさん:2004/11/24(水) 15:14
「適当な東の海神」勝手にあとがき
言い出しっぺのキチーク者が、勝手に最後をまとめさせていただきました。
多くの姐さん方のご協力により、素敵にエロい鬼畜小説に仕上がったと思います。
というか私一人ではとてもここまでのエロさや迫力、アイディアは出せませんでした。
(とゆーより、ほとんど姐さんたちが書いてたんだが)
この場を借りてお礼を言い、完成の祝杯を上げたいと思います。
書き手の皆様、ろむの皆様、本当にありがとうございました。
今後も別館にモエ多かれと祈らせていただきます。
                                一鬼畜者

134名無しさん:2004/11/24(水) 19:50
残酷シーンはちょっぴり気絶しそうになりました。
こわいよう・・・がくがくがく・・・

135名無しさん:2004/11/24(水) 20:40
>133
残酷シーンは読めなかったけど(ゴメン
まとめ、乙です。心情とか、上手くまとまってるなあ…。
「おぶって」が…。六たんが切ないよ…。

136名無しさん:2004/11/24(水) 22:01
>134、135
まとめ読んでくれてありが㌧。怖がらせてすみません。
海神のハイライト書いてくれた他の姐さん方も、それぞれあとがき書いてくれたら嬉しい
んだけど。エンドレスに出来ないのはわかってたけど、いつまでも読んでいたいくらい
素敵でした。一応、結末はつけたけど、体の修復&お清めエチ書こうと思います。
残酷シーンいやな思いされた方は、その辺は無かった
ことにして(尚隆が話に尾ひれをつけたという説で)、お清め編は全くの別の話と
捉えてもらえれば…。むちゃかなー。残酷書きたかったのでユルシテ。

137名無しさん:2004/11/24(水) 23:22
汚しても汚し切れない清らかさが六太の魅力・・・
ちょい参加させて頂けて幸せでした〜
これでちったぁキチクも書けるようになった・・・らいいな(爆)
   一参加おたく

138名無しさん:2004/11/24(水) 23:39
なんだかみんなで「おつかれさまー」って感じですね。
楽しく参加して読めました。
今は氾六の展開と冬ソナのネッチリ加減が気になるところ。

139心の傷痕:2004/11/25(木) 00:50
キチーク者です。なんか136の書き方もヘンだった…。話尾ひれ説ととられた方は、この
続編はスルーということで。さすがにこのままでは気持ちがなんだかなので、じこまん
的に補足させて。

140心の傷痕:2004/11/25(木) 01:34
*誘拐事件の後、なんとか玄英宮に帰り着いた六太である。六太がおそらく常世一
であろうと思われるほどの醜さに変貌し、かつての美しさを取り戻すすべもないと
わかると、女官長は泣き崩れた。彼女にとって台輔の美しさは誇りであり、美しい
六太をさらに美しく磨くのが生きがいだったのである。そして台輔の美を誇って
いたのは玄英宮の他の誰もが同様だった。六太は彼らの落胆する様が気の毒になり
心が痛んだ。足を引きずる癖は奇跡的に治り一人で歩けるようにはなったが、なるべ
く人目につかぬように暮らし、顔の部分には被り物から布を垂らして醜悪な顔で
人々を怖がらせることがないよう装っていた。
 外見は恐ろしく醜悪なままではあったが、黄医の努力の甲斐あって、信じられない
ほどの回復力で痛みは感じられないまでになってきた。それでそれ以後は、これ以上
の回復はもう望めないだろうと、黄医の診察も断り、全く人に素顔をさらすことなく
暮らしている六太である。そんなある日のこと。

 痛みは全く感じなくなった。だが最近は別のことに悩まされていた。体がうずくの
である。それは尚隆の体を求めてのうずきだった。体が火照り、腰に熱がともる。
唯一日、尚隆と体の喜びを分かち合った日のことが頭に浮かぶ。あのときの底知れぬ
快感が心を離れない。他のことで気を散らそうとしても全く駄目だ。それどころか
欲望は日増しに大きくなってきており、もう限界だと感じられた。
 だが、尚隆に求めるわけにはいかない。ただでさえ、こんな醜い姿はさらせない
のに。尚隆は何かと言えば六太と共に過ごそうとするが、六太のほうはなるべく
尚隆を避けていた。こんな欲望に捉えられる前すら、あの事件以来感じる奇妙な
寂しさにかられ、ともすると尚隆に体を摺り寄せたくなってしまうのだ。だが、
いくら尚隆が見かけではなく惚れていると言ってくれたとはいっても、このような
姿になったら醜い者としての分際というものがある。惚れてると言ったって、
こんな姿形の者に擦り寄られたら気持ちが悪くなってしまうだろう。顔を隠した格好
をしていても、あの事件直後を見られていると思えば、近寄れない。あまつさえ、
尚隆は顔を隠す布を剥ぎ取ろうとしたことが一度あったのだ。六太があまりにも
怒ったので二度とはなかったが。自分で見てさえ思わず食べた物を吐いてしまった
ほどの顔なのである。絶対に見せることはできない。
 そしてそんな自分だから、どんなに体がうずこうが、あの日のように肉体を抱かれ
愛されるなど、もう二度と願っても叶わないことなのだ。尚隆なら頼めば抱いて
くれるかもしれない。六太の醜さを思えばあまりに突飛な考えではあるが。だが、
そんなことは死んでもいやだった。心はこんなに尚隆の体を求めているのに。

141心の傷痕:2004/11/25(木) 02:03
 六太は熱に浮かされたように、その場所にやってきた。玄英宮の庭園にこんな場所
があるとは今まで見過ごしてきたほどに、そこは庭園の隅であり、さびれた場所だった。
だが、そこには小さな泉がある。あまりきれいな水ではなかった。だが、ここなら
人は来ないだろう。六太は衣服を脱ぎ捨て、うずきに火照った体を吹き抜ける風に
さらす。全て脱ぐと泉に入る。麒麟が入れば濁った水も浄化される。それは六太の
ような醜く変貌した麒麟であっても同様であった。六太が体を浸けると水は次第に
透明さを増し、きらきらと美しく日光を反射する。
 しかし。泉に映る己の姿がふと目に入ってしまい、六太は硬直し吐きそうになった。
なんとか吐き気を抑え、普通の皮膚というものが見えない傷痕だらけのでこぼこ抉れた
体を水で清め、泉からあがった。
 水浴びを終えても一向に疼きは収まらない。もともと水で疼きを抑えるために
ここへ来たのではない。もっと嘆かわしい理由で来たのだ。
水から出た六太は、自分の手の指が己の肉棒へと伸びて行くのを制止できない。
そのためにここに来たのだから。と言っても水浴びをすれば気が変わるかも等と
空しい期待もあるにはあった。しかしやはりみっともない欲望を抑えることが出来なか
ったのである。肉棒に指を添えただけで、はあはあと息が上がる。
「ん…」
そこからはもう自制心も理性も吹き飛んでしまった。尚隆のことだけが頭にある。
愛しい面影を心にしっかりと抱き指を動かす。あの日の尚隆を思い出す。胸の飾りや
首筋を吸われたこと。そして股間に顔をうずめられ吸い上げられたこと。甘い囁き。
「尚隆…」
指の動きは次第に高まっていく。六太は我を忘れた。
「しょう、りゅ・・あ、あぁん、・…んっ…あぅ…んっ…しょ、お、りゅぅ…」

142心の傷痕:2004/11/25(木) 02:39
 尚隆は珍しい小鳥を捕まえにいくところだった。手ずから捕まえた珍鳥を渡せば
六太を喜ばせることができるかもしれない。女官が庭園のはずれの泉でその鳥
を見たと教えてくれたのである。政務などどうでもよかった。六太は顔を隠す布を
とってはくれないが、なんとか喜ぶ声を聞きたかった。それに鳥を持っていけば
長居させてくれるかもしれない。
 鳥を驚かせぬようにと木の繁みからそっと顔を出し泉の方角の様子を窺う。
だが、そこで尚隆の目を捉えたのは鳥より遥かに美しい姿だった。尚隆は驚きに息
を飲んだ。そこには一人の子供の後姿があった。
 日光に輝く瑕一つ無い白い肌。日差しにきらきらと輝く金の髪。華奢な細腰。
すんなり伸びた足。悩ましく上がった小さな尻。その尻はもだえるように僅かに
動いている。
 思わず何もかも忘れて見とれていると、唐突に自分の名前が聞こえびっくりした。
「ん…しょうりゅぅ…あっ、んっ、あぁんっ…しょ…りゅ…」
尚隆は我に返り、何が起こっているのかを理解した。だが、あの姿は? ありえない
ことではないのか。しかし疑問を長く留めておけないほどに尚隆は欲情を感じ始め
ていた。
「六太」
名前を呼んでも気付かない。そもそも麒麟が王気に気付かないとは。行為に夢中に
なっているせいだろう、と尚隆は思った。こんな状況で声をかけるのはまずいかと
も思ったがこの不思議な光景を見捨てて去ることはできなかった。
 実は六太が気付かなかったのは行為に夢中だったせいもあるが、空想の中で王気
に浸ってみていたというせいもある。尚隆が近づいてきても、その王気を自分の
空想の産物と取り違えていたのだ。
 だからそっと近づいた尚隆が六太を後ろから抱き締め、後ろから廻した手で愛撫を
始めても、それも空想の産物と捉えるしかなかった。いや、むしろ、そう思いたかっ
ただけなのか、そこはわからない。あまりの現実感に、抱き締められたまま首を後ろ
に巡らす。
「ん…しょうりゅう…?」
いつしか肉棒に添えた手は尚隆の手に取って代わられていた。尚隆の手の感触…
俺の想像だ、と六太は思った。
ひとしきり吐精させた後、尚隆は六太を抱き上げた。

143心の傷痕:2004/11/25(木) 03:12
自分の現実感ある想像力に六太はうっとりとなっていた。本当に抱き上げられている
ようだ…。
 
 尚隆は久しぶりに見る美しい顔に見とれていた。裸の六太を抱いたまま自室へ向かう。

欲望、そして二度と戻らないと思っていたものが再び得られた嬉しさに、はやる心を
抑え、遥かな距離を歩き尚隆は自室に辿りついた。通りすがる者たちも部屋の前の
衛兵も目をまるくしてこちらを見たが、かまってはいられなかった。
 部屋に入ると真直ぐに寝台へ向かい六太をそっとそこに降ろす。そうすれば後は
もう己の全身で美しい麒麟に情愛をぶつけていくだけである。六太のほうは、まだ夢見
心地で現実とは気付けない。だからこそ厭わずに裸体も顔も晒せる。感じればその
まま声や体で表現できる。二人の夢のような、だが激しい交情はいつまでも続いた。
尚隆は感嘆するしかなかった。六太はなぜか以前よりさらに美しく、又,交情から
得られる快感も以前を上回るものになっていたのだ。以前でも充分すぎるほどの
快感だったのだが。恥じらいながら尚隆を受け入れるかわいい蕾は以前に増して
尚隆自身をキュッと締め上げ陶酔に導いてくれるのだった。

その翌日だった、尚隆が真実を知ったのは。黄医に六太を診察させたのである。
黄医は台輔の肉体が完璧に再生されたのだと奇跡を告げたのまではよかったが。
だが、事件の後遺症として六太は心に傷を負ったのだった。端から見れば誰よりも
美しい六太であるが、自身が我が身を見れば、それが姿見に映る姿であろうと己から
見える範囲の体の部分であろうと、事件当時の醜い姿にしか見えないのだった。
黄医はこれは難しい症状であると頭を抱えていた。誰がなんと言い聞かせようと
六太は己の目に映る姿しか信じようとしないのだ。

144名無しさん:2004/11/25(木) 03:15
なんか一人でこういうの書くって、すごく恥ずかしいorz

145名無しさん:2004/11/25(木) 03:25
こっちはじりじり萌えながら読んでるっすよ。
ハァハァ…とりあえず身体は治ってて良かったね、六タン。

146心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:34
ね・・・姐様・・・萌えです〜・・・
こんなナイス続編まで用意して下さるなんて神です!
「二人の夢のような激しい交情」の妄想をおかずに、ご飯3杯大盛りでいけます。
恥かしがらずに、もっと啼いてごらん・・・いい子だ・・
という事で、なるべく流れを妨げずに妄想補足参加させて頂きます。

翌日目覚めた六太は、見慣れた自分の寝台の天井の模様を見上た。
ぼやけた意識が覚醒してきても、どうも自分が此処にいつ入ったのか記憶が定かで無い。
昨日の事で思い出せる事とえいえば、いつもの様にあの隠れた泉で自分に施しをしていて常ならぬほど夢中になった事ぐらいだ。
しかし、いつもならあの行為にふけった後は、後悔と自己嫌悪にさいなまれて、沈んでいるはずの気持ちが、妙にすっきりしている。
身体は、腰がだるく感じられ、後ろの口には甘い痺れと痛みすらあるが、とても満たされた感じがする。
「どうしたんだ?俺・・」
考えを巡らそうとした時、ある気配を察して六太ははっと首を上げる。
間違えようの無い主の気配だ。
慌てて被り物で自分を覆ったと同時に自室の扉が開かれる。
布越しなのに、いつのに増して明るく眩しい陽光のような尚隆の王気に目が眩む。
黄医を伴い部屋に入って来た尚隆は。真っ直ぐ自分の方に歩を進めて来る。
尚隆が近づいて来ると、どうした事か身体が小刻みに震え出す。
混乱し動揺する六太のその心はただ「嬉しい」と叫ぶ。
「目覚めたか。具合はどうだ?」
いつもの尚隆の低い優しい声に「大丈夫」と答えようとしたのに声にならず、溢れた涙が褥にポタポタと落ちる。
慌てたように尚隆が「おい」と声を掛けて来るが黄医に遮られる。
「主上はお外に」と促され、そのまま無言で尚隆が退室する。
静かに遠ざかる王気を寂しいと感じながらも、六太はようやく少し落ち着きを取り戻せた事に安堵する。

147心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:36
「では診察をいたしましょう」
言ってそっと被り物を取られて、思わずうつむく。
ずっと自分の治療にあたってくれている、自分の素顔を間近に見ている唯一の人間だ。
しかしたとえ自分の主治医である黄医であっても、醜い自分を曝すのにはどうしても抵抗が無くならない。
診察が終わり、ようやく被り物で我が身を隠す事が出来てホッと息をつく。
「今日はとても具合が宜しいようですね?ご気分は如何ですか?」
「ドキドキしてる・・。だって。起き抜けに尚隆に会えるなんて思わなかったから」
クスリと笑ってそういうと、自分を見つめる黄医の目がすっと細められる。
「まだ、主上にお顔をお見せになれませんか?」
ドキリとして顔を背ける。
「・・駄目だ。こんな醜い姿、他の誰に見られても尚隆にだけは見られたくない。」
吐き捨てるようにそう言うと、静かに黄医が告げる。
「主上は寂しがっておいでですよ」
え?と思わず顔を上げると、にこやかに黄医は微笑んでいる。
「一緒に悪さが出来なくなってしまって、毎日一人で官に色々と文句を言われていらっしゃいますから」
なるほど・・と思わず噴出すと、六太の手を取って黄医は告げる。
「今回の乱では、台輔は心にも身体にも深い傷を負われました。同じように主上も傷ついておられるのです。
御自分の心の一番奥を、よくご覧なさいませ。そして主上にも主上のお気持ちが御座います。決め付けずにもっと寄り添うてお上げになってみては如何でしょう。」
そう言って、そのまま静かに黄医は部屋を出て行く。

148心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:39
・・・・尚隆の気持ち・・・・
あのことが有ってから、自分の辛さばかりにかまけていて、尚隆からにげてばかりいた。
そんな自分を尚隆はどう感じていたんだろう?
考え込んでいた自分の目の前に、金色の鳥篭が差し出される。
びっくりして見上げると、尚隆が笑っていた。
「ぼうっとしおって」
「・・・考え事してんだよっ」
拗ねるように言って鳥篭に目を戻す。
クスクスと笑う尚隆の声が耳にこそばゆい。
「でもどうしたんだ、これ?」
聞くと王宮の庭園で捕まえたという、水色で尾の長い小鳥が2匹入っている。
鳥篭の中では可哀想だと言うと、頭の良い鳥なので慣れてしまえば放しても鳥篭の入り口を開けていればまた戻って来るらしい、と言う。
小首を傾げてこちらを見る様子も可愛らしく、すっかりこの小鳥が気に入った六太は、どの位でなれるのかな、そか考える。
尚隆と鳥篭をはさんで笑いあいながらふと、こんな風に他愛も無い話をするのも、随分と久しぶりなような気がする。
会話が途切れ、小鳥を見つめ合いながら、ゆるやかに時間が過ぎる。
ふと尚隆が問う。
「で、身体の具合はどうだ?昨日の今日ではまだ辛いか?」
「・・・昨日?」
何の事かわからずに、尚隆の顔を見上げる。
しばし自分の顔を無言で見下ろす主の視線は、痛いほどで・・。
「六太」
急に名を呼ばれて胸がはずみ、思わず鳥篭を抱く。
「今晩は俺の部屋に来い。」
全身の血が下がる。
「窓に厚い幕を引こう。部屋に入れば明かりはみな消すが良い。だから、おれの部屋に来い、六太」
「・・・駄目だ・・駄目だ!そんなこと出来ない。尚隆」
指先の震えを止めたくて、指が食い込むほどに鳥篭にしがみ付く。
「今宵の伽をせよ。逃げる事は許さん。勅命だ」
尚隆は静かに、しかし確かにそう告げて、ゆっくりと立ち上がると、部屋を出て行く。
尚隆の背中が扉の向こうに消えても、その閉じた扉から随分と長い間六太は目を離すことが出来なかった。


という事で、エッチ書き逃げは駄目ですよっ♪お姐さん!
お後がよろしいようで〜・・

149名無しさん:2004/11/25(木) 11:28
>148
まさに逃げようかと思ってたんだがw
148さんが書いてくれれば展開のわからないのを読む楽しみがあっていいんだがなあ…

150名無しさん:2004/11/25(木) 23:10
>149さんが頑張ってエチ書いてくだされば、相乗りしますよ〜きっと
148

151『台輔の勤め』11:2004/11/27(土) 16:20
可愛らしい。
よもやこの子供にこれほどの興趣が湧くことがあるとは。
麒麟が美しい生き物であることは知っている。この幼い姿の延麒とて例外ではなく、
あの好色な猿王が唯一溺愛しているというのもわかる。
だが、ここまで変貌するとは思いもよらなかった。
氾王は己の胸に久しぶりに感じる高揚感を楽しんでいた。
──久々に楽しみが出来たようだ。
「いつもと違うお主と対するのは面白いものよ」
頬を染めたまま下を向いている六太に、にこりと笑う。
「…他の顔にも興味が湧くというもの」
「え…?」
その囁きはかすかで、六太の耳には届かない。聞き返した六太に何、と笑い返して氾王はついと立ち上がった。
「他愛のないことよ。…更なるもてなしに期待が出来るやもなと、そう申したに過ぎぬよ」
「そう…か」
やや不安げに眉を寄せた表情も愛らしい。赤く濡れた唇が小さくつぐまれるのを目を細めて眺める。
「…やれやれ、またもうあれに会わねばならなくなったかえ」
氾王の溜め息混じりの言葉に、その視線の示す方を振り向き見れば、
「…もてなし役とは言えお前のものではないぞ。あまり気安くそれに触れるな」
低い声で言った尚隆が目の据わったままの表情で二人の方へ近付いてくるところであった。
「尚りゅ…うわっ」
己の名を呼びかけ立ち上がった六太の腰に手を掛け、その体をぐいと引き寄せた。
「おい、尚隆…!」
「お前は黙っておれ。好き放題されおって。──こいつには
釘を刺しておかねば何されるかわからんのだぞ、六太」
「相も変わらずなかなかに心外なことを言ってくれるの。
…お主と一緒にするでないわ山猿。──延麒、私の側へ」
冷たい火花が散ったような二人の長身の男の間で六太はとまどう。
きつく抱かれた腰を解くことも出来ず、ただ睨み合う二人の王の顔を交互に見つめた。
「尚隆、なあ…」
困ったように主を見上げる。…どうしたらよいのか。
尚隆という自分の主を離れ、訪れた王に誠意仕えるのが今回の自分の責務である。
だが、何分初めてのこと、その境界がよくわからない。
加えて普段と違う格好、身なりによって体が動きずらい。
氾王の意外な反応も手伝っていつものような言動・行動がどうにもうまく出てこないのだ。
その姿は二人の王の目に大変悩ましく可憐なものに映っていた。

152『台輔の勤め』12:2004/11/27(土) 16:56
「……」
六太は眉を寄せて見上げる。その瞳が一瞬細くなったのを見た氾王は突然
一歩前へ進み出ると腕を伸ばして尚隆の手をはらった。
「っ──何をする!」
「たわけ!痛がっておるのもわからぬか」
氾王の一喝に尚隆は目を見開いた。
息をついた六太の姿に知らず力をこめてしまっていたことに気付く。
チッと短く舌を打ち、顔を背ける。
「──…すまん…」
押し殺したようなその呟きに、六太は胸が切なくなるのを覚えた。
「いや…平気だから…」
「足がふらついておろう」
その氾王の言葉と同時に脇の下に両腕が差し入れられたと思った次の瞬間、
不意に視界が高くなり六太は驚く。
抱き上げられたのだ。
「え、あっ!ちょっ…氾王」
「愛でてくりょうと申したであろ。私は半身の梨雪をあのように無体に扱ったりはせぬ主義ぞ。
延麒はいつもあのように扱われておるのかえ。不敏なことよ」
宵の宴席までまだ時間があろう、と六太を腕に抱いたまま氾王はくるりと尚隆に背を向ける。
「無粋な横槍はそれまで望まぬ」
そしてそのまま少し歩を進めたところで振り返る。
「…確かに延麒は私のものではないが、こ度の滞在中は私の配下に置かれる。
王と言えど私の許しなく無体を働くことは認めぬよ」
邪魔することもの、と切り結んだ言葉に尚隆は顔をしかめて吐き捨てた。
「…勝手にしろ」
しばらく対峙したのち、ついとまた向きを変え、六太を抱き上げたまま氾王は小立に消えた。
「くそ…あの野郎」
ぎり、と唇を噛み消えた方向を睨みつける尚隆に、そこにいた官がおろおろと声をかける。
「あの…主上。どういたしましょう…やはり後を追った方が…何かありますと」
それを遮り、構わんと尚隆は怒鳴った。
「邪魔するなと言ったのだ。放って置け!何かあってもあいつの責任なのだからな。
俺は知らん!」
は、はいと官が飛びはねる。
「あ、あの…主上はどちらへ…」
「寝るのだ!くさくさしてかなわん!──おい!」
「はっ、はい!」
「朱衡に伝えておけ!宴の準備をさっさとしろとな。…あー!!おさまらぬ!」
頭から湯気を立てながらやはり小立に消える主を見送り、官ははい、と呟いた。

153名無しさん:2004/11/27(土) 22:15
この後、氾王がどこまでなさるのでしょうか ワクワク
よろしくおながいしますね姐さん。
尚隆もおめかし状態の六太を食べてよいのかしら。

154名無しさん:2004/11/28(日) 02:06
尚隆の主食は六太ですもんね〜・・・♪
それを氾王に横からつまみ食いされちゃ・・・
違う意味で尚隆切れるのかしら??
続き、たのしみで〜す

155名無しさん:2004/11/28(日) 03:15
六太がかわいい・・・
もーめろめろです
続きまってます

156春怨二人1/尚六ほのぼの:2004/11/30(火) 19:49
書き捨てスレなのにレベル高くて書き捨て難い…。
>2を思い出してゴー!!
設定/尚隆碁石集めは飽きた頃以降、陽子とか泰麒が現れる以前。特に意味無いけど。
まだくっついてない主従。
これきり書き捨てか、だらだら続け…ます。


緑の柱が立ち並ぶ、歓楽街のとある妓楼。女達の嬌声かしましいその一房。
男は昨夜の情事に怠い身体を窓辺に凭らせ、春日に呆ていた。
舞い散る桜を何とはなしに見やり、胡弓の音は耳に心地良く転がって来る。
胡弓の弾き手は昨夜の相手の妓女であったが、年端の行かぬ娘には無い、
しっとりとした色香があった。

不意に胡弓の音が止む。気付き、男は続きを促そうと女に目をやる。
すると弾いていた筈の胡弓を傍らに置き、女は三つ指をついていた。その改
まった様子に男は首を傾げる。
「風漢さま。私、この春見受け先が決まりまして…。今までご贔屓にして下
さり、有難うございました…」
女は頭を下げ、感謝の念を示す。瞬時呆け、風漢は目を丸くする。だが直ぐ
に飄々とした面を浮かべ、戯言を吐く。
「何だ、そうか。―惜しいな。俺が見受けしようと思っていたところを」

157春怨二人2:2004/11/30(火) 19:57
「ほほ…冗談ばかり。たびたび有り金を巻き上げられ、店の下働きをされる
方に払える額ではございませんよ、私は」
女の冗談に、風漢は気を悪くするでもなく「そうか」と苦笑する。それに、
と女は話を続ける。眼差しに、戯れを感じさせない。
「風漢さま、心から想う方がいらっしゃるのでしょう?―これは、女の勘で
すが。違いますか?」
これで最後だからか、男に立ち入った事を尋ねる。
暫し、風漢は何かを考える様に窓の外に目をやっていたが、やがてその問い
に答えた。
「…まあな。だが、どうにも手を出し損ねておる」
女はそれには驚いてみせる。初心でいらっしゃる事、と。
「風漢さまに本気で口説かれたなら、落ちぬ女など居ないでしょうに…」
「ならば、そなたを口説こうか」
女の顔を覗き込み、顎に手を掛けるが、女はゆるゆると首を振る。
「それこそ、お戯れ。本当に、掴めぬ方だこと」

その楼の門を後にした。振り向けば楼上から先程の女がこちらに手を振っていた。
初めて会った頃のその女は、物慣れぬが愛嬌の有る娘だった。年を経てそれ相応
に落ち着いたが、その変化も好ましかった。惚れてはいないが、好いていた。
だが共に永い生を生きる者でなければ、それは忽ち過去となる。しかし風漢の恋
愛遊戯の相手は尚隆にとって雁の一民となり、その民の幸せを願う。
女に手を振り返し、楼から去った。

158春怨二人0・5:2004/11/30(火) 20:20
春麗らかな玄英宮。春鶯はさえずり、見上げれば空は桃色で覆われていた。
春眠暁を覚えない、雁国の台輔は四阿に横たわっていた。
暖かい春の光の元での日光浴は、陽光が身に染みるようで心地が良い。
この感覚は何かに似ている、そう思った。


↑冒頭に来る筈が、コピペし忘れた。トホー。

159名無しさん:2004/12/01(水) 08:10
いやん、新作。
楽しみにしてますー

160名無しさん:2004/12/01(水) 16:55
身請け…ぐらい書いてクレロ。
ほかの文がキレイナノニ、もったいないダロ。

161名無しさん:2004/12/01(水) 20:40
尚隆のほうが言い出せずにいた系のは別館では初めてのようで
楽しみです。尚六スレのとパターンが逆ですよね。

162『台輔の勤め』13:2004/12/02(木) 03:44
オフの修羅場の中息抜きに更新。レス下さった方有り難うございます。
どこまでいってよいものやら迷いあぐねている内にこんな数…orz




風が強い。
「…なあ」
あおられて顔にかかる髪をうるさそうに指ではらいながら六太は声をかける。
先程の庵から場所を変えた玄英宮の端、雲海を見渡す広い庭園に二人はいた。
「何だね」
「小姐はどうして来なかったんだ?」
六太はあの生意気ながらも愛くるしい氾麟の姿を思い浮かべる。
「梨雪には小用を任せておったのでね。随分とさみしがっておったが…仕方あるまいよ。
些細なことであるのだがね、ちと手の離せぬ件があるのだ。だが、あれに任せておけば安心出来よう」
「…へぇ!小姐は中々優秀なんだな」
そう言った六太に、意外かえ、と愉快そうに氾王が目を細める。
「梨雪はああ見えて骨があるぞえ。延麒にも劣るまい」
俺は別に、と六太は口をすぼめた。国政の大切な仕事を任されているらしき氾麟に
己の身を照らした六太は彼女を少し羨ましく思ったのだ。
尚隆は自分をそのように見ているだろうか。有能で、いざという時に頼れる麒麟だと。
(ちょっと違うよなあ…)
己が役に立つのはその子供の外見を生かした諜報くらいのものだろう。
尚隆は自分に国政の一端を任したりはしない。
「いいな、小姐は。信頼されてるんだな、随分と」
「延麒とてそうであろ」
「違うよ。俺は何にも出来ない」
「おや!」
随分と殊勝なことよ、と氾王は大仰に笑った。
「子猿の台詞とは思えぬの」
「ちぇ、本音だよ」
「かように台輔の役を果たせておるであろ。…その様装がお主を慎ましくさせているのかえ?」
全く愛らしいことを申す、とやはり氾王は柔和に面を崩したまま呟いた。
「あまりに上出来すぎてお主の王が臍を曲げておるというに…」
くつくつと笑う。
「…そなたはあやつにとりかけがえのない麒麟よ。何を案ずることがある。
あれの無張面なぞ見慣れたものだがね、ほれ。あそこまで臆面ものう
吝気を見せたのはついぞ初めてのことよの」
明らかに尚隆は怒っていた。氾王に、そして六太に対して。
確かにあれが嫉妬ではないと誰が思うだろう。
「…延麒よ」
六太は顔を上げて氾王を見上げた。
「私はね、本来はあまりかような心情を抱くことはない」
意味深げに細められた瞳に、六太は眉を寄せその真意を問う。
「…だがね、あれを見て少々悪趣味な気持ちが湧いた」

163『台輔の勤め』14:2004/12/02(木) 04:52
「え?」
意味がわからずに聞き返す。
氾王はそれには答えずただ笑い、少女のように可憐な装いをした目の前の美しい子供を見つめた。
「景色は悪くないが、ここはちと風があるの…なんと埃を被ったことよ」
立ち上がり髪に手をやった氾王に、六太も慌てて立ちその着物に指をやった。
舞い上げられ薄くついた砂を、布地に気を遣いながらはらい落とす。
甲斐甲斐しいその様を満足げに見下ろしながら氾王はお主もの、と言い六太の髪を撫でた。
「さよう…宴の前に湯を使わせてくりゃるかえ」
口にした言葉は六太の動きを止める。
「え。──ああ!うん。構わないけど…」
「ならば女官を控えさせておかなくてはなるまいね。湯上がりの様装も整えねばならぬであろ」
そなたはね、と氾王は六太を見て微笑んだ。六太の目が開く。
「えっ──ちょ、それって、もしかして──」
俺も、と開きかけた口をそれに触れた長い指が押しとどめる。
「…よもや湯殿での身世話を他の者に任せるなどということはすまいね、台輔?」
「──!…」
何か言おうとしたものの甘く、だが真っ直ぐに煌めく瞳に見据えられ六太はとうとう頷く。
「わかったよ…。──沃飛」
はい、と足元から返した女の声に告げる。
「…女官に氾王の湯殿の用意、…それと、俺の浴着の用意をするよう伝えてくれ。
新しい着物も…それから」
おめかしの支度もですね、と柔らかな笑いを含んだ声がそれを引き継いで絞める。
「…そうだ」
六太は短く応え、女怪を行かせた。
「なあ…。思い付いた悪趣味ってこれか?」
溜め息をついて見上げると、なんの、と言って氾王は笑った。
「湯世話など当然の義であろ、台輔」
「じゃあ何だよ」
「…この場で申すようなことかえ。総い延麒にはその覚悟が出来ておると思うておったのじゃが?」
ぴくりと背が張った。
「…予定は今日一日のはずじゃ?」
日を跨ぐとは聞いてはいない。
胸が不穏な音を立て始める。六太は横を向き、平静を装って尋ねた。
「確かにね。そのつもりであったのじゃが…さてね」
だから宴も早い時間に設定されている。だが湯を使えばそれは遅れることになろう。
そうすれば宴席の終わりには陽は落ちている。国賓を夜に帰すことは有り得なかった。
無論不測の事態に備えて臥室の用意はされている。…だが、この状況でそうなれば。
まさかとは思うが、…だが。
六太の表情が強張った。
「……」
覚悟がない訳ではなかった。


伽という役。

164春怨二人3チラシの裏気分。:2004/12/02(木) 21:19
尚隆は乗騎を預けてある宿屋へ向かい、そして己を乗せたとらを空へと走らせた。
こんな風に、突如時の流れから弾かれた様な日は、あの城へ帰りたかった。
時の流れの緩慢な、己の家へ。

光が、寝返りを打つ金の頭に反射し弾ける。
春光の中、ぬくもりに満たされるこの感覚―。似たものは直ぐに思い出される。
六太はやや眉を顰め、寝そべったまま腕を高く上げ、ある方向を指で指し示す。
「…あっち」
誰に言うでもなく、意味の無い行動は「似たもの」を思い出した事が悔しかったから。
悔し紛れに、己の思考がすぐに主に直結する事を肯定してやった。

不意に、己を満たす心地良さ―陽光が強くなった。もう昼を大分過ぎた頃か。
もしも、もしも尚隆が自分を置いて逝ってしまい、次の王を選んだとしても、この
陽光が有れば自分は生きていけるかもしれない。そう思ったその時。
「人を指で指すな、莫迦者」
突如現れ、ずかずかと歩み寄る背の高い男。
―何だ、本物か。姿を見ずとも分かる、降り掛かった声にやや気落ちする。
己にはこれに代替するものが無いのだ、と。

寝そべったままの六太の隣にどっかと腰掛け、尚隆は項垂れ、大仰にはあ、と溜息
を吐いた。
「…女に振られた」



>160
それがよう、インフォシーク辞典に【身請け/見受け】と有ってよう。
字面の柔らかい方を使いたくてよう。厨でゴメン。

165名無しさん:2004/12/02(木) 21:44
微妙な心のうごきとか、何気ないやり取りの中に見える感情とかが禿萌えなので
春怨二人はなんかすごい楽しみにしておりますよ!
チラシの裏気分で書きなぐってくだせえ。

166名無しさん:2004/12/03(金) 09:36
春怨、いいですね。萌えます
ねちねち尚隆の心をがっちり描いてください。
氾六の六太かわいい!

167春怨二人4そんな良いモンじゃないですチラシの裏。:2004/12/04(土) 21:04
それには六太は腹を抱えて笑ってやった。主の情けなく、しょぼくれているであろう
顔を見てやろうと半身を起こす。気だるく起こす金のあたまから、降り積もった桜の
花弁がはらはらと流れ落ちる。
頬杖を突き面白くもない面をした主を仰ぎ見ると、その姿は想像通りで六太を愉快に
させた。彼をよく見れば服装から、下界からたった今帰って来た事が窺え、足元には
騶虞のたまがじゃれ付いている。
「格好悪いなあ、お前。一国の王様が」
主を無視する様にたまに飛び付き、その抱き心地を楽しむ。一応、主の話し相手も務
めてやる。
「ふん。王は関係有るまい」
「どうせ、遊びだったんだろーが。相手の女の方が迷惑だっての」
背を向けたまとじゃれ合い、六太は何気無く表情を隠した。
どうもこの手の話は良くない。尚隆の只の話し相手として、平然と付き合うのは身に
堪える。それは、悋気などではない。尚隆が下界を遊び歩いている内は、雁はきっと
安泰なのだ。そう割り切りつつ、胸に苛々しさを生じさせる。だが六太にはその苛々
の正体が知れていた。例えるなら、妻を失ったやもおの息子が、その父の再婚に際し
て抱くような気持ち、寂しさだと思う。
尚隆が妻を迎えたなら、自分はきっと寂しい。それだけ。悋気ではない。
決して、ない。

168春怨二人5    ベタ:2004/12/04(土) 22:36
尚隆は多少は色の有る話の中で、ふとこの子供を口説いてみたくなった。
六太と己との平行線とも言える間柄は、いつか、いずれは交わる時が来るのだろう。
そう漠然と思っていた。しかしそこで気付いた事がある。己は姿形を変えず、依然
悠久の時を過ごすつもりなのか、と。

「まあな。…言っておくが、お前には俺を慰める義務が有るぞ」
「はあ?何でだよ。麒麟にそんな義務有るわけねえだろ」
―さもありなん。どうにも伝わらぬ様子がおかしい。元より、男に口説かれるとは六
太も思うまい。
だが暫し間を置き、六太は尚隆を振り返る。そして、慰める訳ではないが、と前置き
して。
「…お前が本気で好きなら、無下にする女はそう居ねえんじゃねえの…」
それは先程の苛々を吹っ切る為に吐いた言葉だった。だが主は眉を寄せ、じっと六太
を見つめる。その為、六太はやや慌てた。
「い、いや、客観的に見て、だな」
「本当か?」
「う…。まあ、良い線行くんじゃねーの」
どうでも良いような口振りに「そうか」と返し、六太の側近く寄り目線を合わせる。そ
して目の前のその小さな手を取り、真摯なまなざしを向けた。
「…我が春怨の君よ。俺の、生涯の伴侶となってはくれぬか」
空気が止まった。それは春風が吹き抜け、桜の花弁を攫う事が見て取れる時間。
この尚隆の全ての行動、発言が六太の考えの及ばぬところであった。六太は目を瞬かせ、
やがてこの上無く白けた顔をする。
「何それ。練習か?…お前な、そんな芝居掛かった爺臭い台詞で口説かれる女なんか、
幾らなんでも居ねーだろ。重いしさ」
尚隆の握る手を払い、前言撤回、とばかりに呆れてみせた。

169名無しさん:2004/12/04(土) 23:27
やばいこれ、もうドキドキでキュンキュンですよ先生。

170名無しさん:2004/12/05(日) 09:06
いかん・・・
続きが読みたい。春怨。
六太と尚隆の微妙な駆け引きが・・・ああん
私を殺す気ですか姐さん

171春怨二人6:2004/12/05(日) 20:56
払った手が、払われた手がそのぬくもりが去っていく事が少し寂しい。
「仕方なかろう。俺も、年寄りだからな」
爺臭いのは勘弁しろ、と言って笑う。
「あのさ、思ってもない事言うなよな。どこにこんな好色な年寄りが居るんだよ。世の
お年寄りが聞いたら呆れるぜ?」
「お前こそ、何時までも子供のつもりだろうが」
お前は変わらんな、と腕を伸ばし六太の頭をくしゃりと撫で付ける。それに少し眉を寄せ。
「そんな事ねえよ。中身はちゃんと大人になってる。気付いてないのは、お前だけ」
そして、尚隆こそ、と言いかけ主の顔を覗き込む。―そうしようとした時。突風が吹き
付け尚隆の黒髪を掻き乱した。
六太は腰を上げ手を伸ばし、彼の面に掛かった髪を側面に除けた。小さな手が頬に触れ、
どうにもこそばゆい。だが、されるがままにしていた。
六太は尚隆の面を、瞳を凝視している。何かを探るように。
面と面が近付き、近付き過ぎ、尚隆は緊張する己を感じた。
このまま腕を伸ばし、この「自分は大人だ」と言う子供の腰を抱き、肩を抱いて少し顔
の角度を変え、目を閉じれば―。

「…うん、今は良い感じだな。悪くない。前は少しやばかった」
不意に身体を離し、一人六太は納得する。だがこちらは納得がいかない。何が良くて何
が悪いのか。そして、己は一体何をしようとしていたのか。
「前?」

172春怨二人7路線変更シリアスくずれ:2004/12/05(日) 21:49
主が問えば、六太は言うつもりではなかったのか顔を顰め、背ける。
「そうだな…。百年くらい前、かな?」
ぽつりと漏らしたそれに、尚隆は思わず身を固くした。
「あの頃さ、なんか上手く言えないんだけど…。仕事するのも、遊びにも、目が死んで
たっつーか。…精彩を欠いてた、っつーの?そのくせ妙にぎらぎらしててさ、…とにか
く変だった、お前」
漸う語り出した六太も、尚隆も互いに顔を逸らし、ただ正面を見やる。先程の突風に吹
かれた花弁はまだゆらゆらと辺りを漂っている。舞い散る桜の花弁が暗示するもの。
「おれさ、あの頃雁の歴史とか、各国の王朝の昔を調べたりしてたんだ。…成笙がさ、
そうしろって」
成笙も無茶を言う。各国の歴史など、麒麟には酷な陰惨な事も多かろうに。だが、前王、
梟王の忠臣としてその変貌する様を知る男は、現王の半身たる麒麟に訴えたい事が有っ
たのだろう。
「で、何が分かった?」
「…立朝三百年頃、善政を敷いていた王が暴君と化して国が滅びる事が多い…って事と
か、かな」
二人は漸く面を向け、瞳を合わせた。六太は固く膝を抱いている。
「…お前がその頃、俺にそのような話をした覚えが無いが」
「お前に説教とか忠告すんの?…お前がその気になったら、おれ達が何言ったって無駄、
かえってお前を煽るだけだろう?」
「それは、突き放しているのではないのか?」
尚隆は眉を寄せる。己が暴走しても、誰も止めてくれぬとは。
「いや、絶対ムキになる。だから、自然の成り行きに任せた」
腑に落ちない尚隆を横目に、でも、と言う。
「おれは、思ってたよ…。お前がそんな例通り、暴君と化す様なつまんない、三流の王
なんかじゃないって…」
「三百年持たせて三流と言うか。…そうなったら、朱衡が嬉々として下らん諡を付ける
様が目に浮かぶわ」

尚隆は否定も肯定もしない。だが六太はこう読んだ。尚隆にも暴君となり得る時期が有
ったのだ、と。
主の顔を仰ぎ見、恐る恐る、慎重に言葉を吐く。ずっと確かめたかった事を聞く。合わ
せた目を、目を逸らさないでくれ、と祈りながら。
「…昔の話、だよな?」
「ああ」
目を逸らさず事も無げに言ってのければ、六太はにんまりと、輝くように笑った。

173春怨二人8:2004/12/05(日) 22:27
「あーあ、心配して損しちゃったなあ。なあ、たま」
倒れ込む様にたまにしがみ付いた。その小さな背中は、肩は震えていた。声を押し殺して、
泣いているのだろう。
背を向け隠しても、こちらから見えるたまはくおんくおん、と鳴き、慰めるように主の頬
を舐めていた。
その涙は、唯一無二の主に仮にも裏切られた悔しさ悲しさの為、しかし現状を省みての安
堵ゆえ。その身体に、きっと百年もの間その憂いを封じ込めていたのだろう。
尚隆に今、六太に掛ける言葉は無い。ただ、気の済むまで泣かせていた。

どれくらい経ったのか、泣き止んだ六太が尚隆を振り返る。少し作った感が有るが、笑顔
を浮かべていた。
「でもさ、良く考えたら、いや良く考えなくても、雁が四百年も持ってる方がキセキ、ま
ぐれな訳だしな!おれ、いつでも覚悟は出来てるよ?」
雁はお前の好きな時に、好きな様にしろ、と言外に言った。
「…そう言われると何やらつまらんな」
「それが、ねらい」
お前の性格なんかお見通しだ、と小さく作った拳を伸ばし、主の頬にぐりぐりと押し付ける。
―この子供の、気丈さ強さが何より好きだ。踏みにじられても、決して折れぬ。もっとも、
これを踏みにじるのは己以外有り得ないが。
「…泣いたくせに」
「はあ?泣いてねえよ?お前何か見間違えたんじゃねえの?」
惚けてみせる六太の、泣き腫らした面の頬を摘み、ぎゅう、と引っ張る。
「どの顔で言うか、鴉かお前は」
そうすると、六太の頬は餅のように良く伸びた。
「いてててててっ!麒麟の御尊顔を引っ張るな!!」
「お前のどこが尊いのだ。よく食うわ遊ぶわ、低俗麒麟が」
「低俗って言うな!てめーだって似たようなもんだろうが、この振られ男!」






コメントに冷や汗する心苦しい中の人です。
春怨=恋に嘆き悲しむさま。って事らしいです。
で、誰も気にしてないと思いますが、台詞に有った「春怨の君」ってのは
「自分を恋に嘆かせるあなた」、てな風に強引に。ウソ語ですが。ウソ日本語。
でも「春怨」→「春エン」→「春雁」と被るのがちょっと良いかと。
恐らくレス15前後掛かるかと思われますが、一応内容もラストも決まりましたので
どんなご都合主義もグダグダヌルい内容も笑って許せるお優しい方、チラシの裏の隅の落書きに
お付き合い下され。
一人リレー気分…。語彙と脳が足リナイヨ!!

174名無しさん:2004/12/05(日) 23:04
春怨、どこまでもついていきます姐さん
突っ走ってください。
どういったらいいのやら
エロがないのにこの上なくエロい…
姐さんの書く尚隆はいい男だ、人間の弱さもありながら
踏みとどまる強い男っぷりに惚れます。
六太がけなげでかわいいし。どうしてくれるんだ、この胸の高まりを。

175心の傷痕モエモエ:2004/12/05(日) 23:31
六太は、一人湯船に浸かってあれやこれやと考えを巡らせる。
勅命だから仕方が無いとようやく心を決めて湯の用意をさせる頃には
すっかり日は傾きかけてしまっていた。
そうしてようやく女官に準備は整えてもらい、一人湯を使っている。
しばらく身体を暖めた後、湯船から上がって小さく口中で女怪の名を呼ぶ。
白い鱗に覆われた手が背後に現れる。
「髪を洗うのを手伝ってくれ。」
醜くなった俺だけど、髪だけは昔と変わらないから。
尚隆が気に入っているこの髪だけでも、せめて綺麗にしておきたい。
ゆったりと髪をすく手に身を任せる。

尚隆は俺に何を求めてるんだろう。
俺の為に、部屋に幕を引き明かりを消すと言った。
まるで自分の心の渇きや身体の疼きを読まれてしまったようで落ち着かない。
そうまして俺を抱いて、尚隆にどんな利点が有るのか皆目見当が付かない。
思考はグルグルと同じ所を回り続ける。
でも、勅命だもの。逆らう事なんて出来ない。
自分にどんな理由があれ、これで主の傍に侍るしか無いのだ。
不安や期待がないまぜな己の心におののいて、六太は小さく身体を震わせた。
「お寒う御座いますか?」
女怪の言葉に我に返った。
「いや、大丈夫だ」
言って心を決める。
何もかも考えても詮無い事だ。
尚隆は俺に伽を命じたけど、俺の姿は見ないで呉れると言った。
その心に、今は素直に甘えたいと思った。


えええん;;;

湯殿に伽!!
ネタ的にはかぶってるので、先に書かせてもらいましたー・・
149さん〜〜〜汗


そして、春怨も台輔の勤めもむっちゃ気になります!ドキドキです!

176『台輔の勤め』15:2004/12/06(月) 00:29
久々にリレスレ書いてこっちも。春怨も心の傷跡も萌え…!!



用意の整った湯殿に氾王を案内する。
「じゃあ…俺、先に行くから」
湯世話をする者の入り口は奥に別にある。六太はそちらに足を向けた。
控えていた女官が手際よく六太を浴着に着替えさせる。
重い着物を脱がされ鬣を飾っていた簪が外されると六太はほっと息をついたが、
それも束の間、今度は手際よく金の髪が結われていく。唇を彩っていた赤い紅は拭き取られ、
薄桃色の紅を塗られた。
「それは…いいよ」
拒んだものの、なりませぬ、とぴしゃりとやられて口ごもる。
「かの氾王のお世話です。そこには一分の隙も許されませぬ」
「……」
朱衡に余程言いつけられているのか、それとも女官の意思なのか。
とにかく普段身世話をさせない六太に、彼女達はここぞとばかりに情熱を燃やしているように見える。
実はそうであった。女官らは、普段六太があまり装いに頓着しないのを口惜しく思っていたのである。
ただでさえ愛らしい容姿のこと、髪を結い、美しい着物を着せめかしつけたなら、
さぞお綺麗になられるでしょうにと語り合ってきたのである。
そのように涙を呑んでいた女官らに、この機会を逃す手はなかった。
──かくして新たにめかしつけられた六太は何とも可憐な湯女であった。
このようないでたちで湯世話をされたなら誰もが心を怪しくさせるであろう、そのような出来であった。
尚隆が見れば頭から湯気を沸かせて憤るに違いない。
「──湯世話の者はまだ来ぬかえ」
しまった、と六太は顔を上げる。
「今──!行くから」
返事を返しながら慌てて湯殿へ入る。
先に来ていた氾王は既に髪も解き、玉で出来た台座にゆるりと腰をかけていた。
「ごめん…遅れた」
六太の姿を見て氾王はくすりと笑った。
「…また愛らしい湯女に化けたものだね。何、構わぬよ。その姿は気分が良い」
六太の身に着けているのは桜色の薄い襦袢であった。頭のやや片側に寄せた形で
高くまとめた金の髪は、耳の横と遅れ毛のみを少しだけ垂らし、何とも艶めかしい。
対して氾王は一糸纏わぬ姿であった。着衣の状態からは予想だにし得ないその裸体は
がっしりとした骨格に沿うように美しく筋肉がついていて、六太は不覚にも鼓動が高くなるのを覚える。
胸がどきどきとして、まともにその体を見ることが出来ない。
「…えと、まず何をすればいい?」
思わず伏し目がちになるのを隠しながら口を開いた。

177名無しさん:2004/12/06(月) 00:51
お風呂祭りですね。いやっほう
どっちも素晴しい。
台輔の勤め、女官の気持ちになって読んでいます。
ろくたんにおめかしさせたい…

178名無しさん:2004/12/07(火) 00:51
祭りに春怨に、いろいろあってクラクラです。
傷痕続きの姐さんほんとにありがとう。私には続き思いつけなかったです。
期待しまくってます!

179春怨二人9:2004/12/07(火) 17:28
「ああ、そうやって主の傷を抉る。不死でも心の傷はなかなか癒えぬものだぞ?」
悲しそうな面を作ったが、それも一蹴される。
「知ってるよ、んな事。でもお前の遊びの心の傷なんか、一晩寝りゃ治るだろ。てか、傷
なんて元々付いてないだろ」
「ばれたか」
「とーぜん」
そして笑い合った。こんな下らぬ遣り取りは、仕事時以外では常の事。共に居る時の同じ
空気。それは、心地の良いものだった。

庭園の、離れの四阿で主従はのどかな春光を受けていた。
「…で、お前はこんな所で何をしておったのだ?政務をさぼりおって」
「お前にだけは言われたくないけどな。午前中に午後の分もまとめてやっちゃったから良いの」
六太はたまの隣に寝転がった。見下ろしてくる主の視線は疑わしげだ。
「今は、日向ぼっこしながら昼寝。邪魔が入っちゃったけどさー」
そう言って欠伸を一つする。寝転がると先程の眠気が再びやって来た。
「昼寝か。気楽な奴。たくさん寝て良く育つ事だな」
「嫌味言うなってのー。…お前は何しにここに来たんだよ?」
すると尚隆は少し言い淀む。六太はちらと主を横目で見やった。
「…下界から帰って来たら空から派手な金が見えたでな、少し遊ぼうと思ったのだ」
「何だよー…。おれは…玩具じゃ、ふわあ…ねえ、ぞ…」
この睡魔は尚隆の王気が気持ち良い為だろうか。そう、今の尚隆は大丈夫。
尚隆がかつて己を裏切る気持ちを起こしたとしても、それは過去の事。それならば良い。
「でもまあ…久し振りにお前と…こんな風に……喋れて……良かった………かなー…」
その言葉は徐々に、すう、と寝息と共に消えていった。

寝入ってしまった六太の隣で、尚隆は軽くその頭を撫でる。
「…俺は、お前に会いに来たのだ」
誰に言うでもなく、そう呟いた。

180春怨10辻褄合わせの為尚隆が純、六タンハアハアに…(不本意:2004/12/07(火) 19:35
尚隆には六太をしばしば放置していた節が有る。それは、この子供の気性を考えれ
ば「王と麒麟」という関係に縛られる事を哀れんだからだ。―六太にとっては残酷
な優しさだろう。
だが今は、尚隆から六太に会いに来た。己の寂しさ、人恋しさを埋める為に。
寂しい、その気持ちを認めてやる。それは心が老いていない証拠だ、と自らに弁明
する。

六太の髪に次第に降り積もる花弁を払ってやる。その面には泣き腫らした名残があ
った。
―泣いたくせに。いっそ泣いて縋れば良いものを。「覚悟は出来ている」などと小
賢しい。あの頃の、国も己をも焼き滅ぼし尽くさんとする炎は今は鎮火している。
燻る火種を心のどこかに感じるが、それでも今、雁は安泰を保っている。
「たまには、褒美をくれても良かろう…?」
卑怯な事をする。春草出る地面に手を置き、眠る六太の上に影を作る。起きぬよう
そっと顎を捉え、微かに上を向かせる。そして面を近づける。先程誘惑に駆られた
事を、行った。
それは軽く触れるだけ。それでも、六太の一部が欲しかった。柔らかく、瑞々しさ
を湛えるそれ。ああ、白粉や紅の匂いはしないのだな、と当たり前の事を思った。
唇を離れる際、舌先で軽く舐める。それは甘く、桃か何かの味がした。恐らく尚隆
がここに来る前に食していたのだろう。

六太に気付かれぬよう、唇を盗んだ。己の心を明かさず相手の心も確かめず、この
卑怯な真似。それは男同士である、等を気にしての事ではない。ただ、この子供を
いつ裏切るとも知れない己が居たからだ。

181名無しさん:2004/12/07(火) 21:08
姐さん、いっそ殺してくれ。
萌え死ぬよ
春怨!!!
いいですー
早く続きを・・・お願いします、早く・・・

182春怨二人11:2004/12/07(火) 21:50
身体を起こしつつ自嘲する。望めばどんな贅沢も出来る己が、これが褒美とはささ
やかに過ぎるのではないか。
知らず唇を主に捧げた六太は安らかな寝息を立てている。もう暫くして、風が冷え
てきたら仁重殿にでも運んでやろう、そう思った時遠くに人の気配を感じた。

「お前らー――!!こんな所におったかー!!すぐに捕まえてくれるわ!!」
「主上は三日分の政務、台輔は午後の政務が残っていらっしゃるでしょう!!」
突然の官吏の声に、尚隆は振り返り六太は目を覚まして身を起こす。
「お前、午後の分もまとめて片付けたのではなかったのか」
「へへへ」
三人の官吏は今にも捕まえん、と二人目掛けて駆けて来る。だが、こちらにはたま
が居た。
「たま、帰って来たばかりですまんが、もう一働きしてくれんか」
その囁きにたまはくおん、と鳴き返す。尚隆はたまに飛び乗り、反射的にたまに手
を掛ける六太の身を掬い上げ、己の前に乗せた。
「こらー――!!逃げるな貴様ら!!」
その声に縛られる事無く、「行ってくれ」という声と共に二人を乗せたたまは駆け
出し舞い上った。
庭園の柵を越え、桜の回廊をくぐり抜ける。その際、尚隆は手を伸ばし桜の小枝を
数寸ほど手折った。

たまを走らせ、空の上から振り返れば官吏達はもう小さく見える。それでも腕を挙
げ、盛んに非難している様は見て取れたが。
「どこ行くんだよ?」
たまの上で六太が主に問うと、特に決めてない、と返ってきた。
「別に政務を執っても良かったのだがな。追われた為、反射的に逃げてしまった」
「お前なあ…。でもそれは、分かる」
二人は互いに顔を向け合うと、楽しげに笑った。

183春怨二人12 ラヴコメ(臭:2004/12/07(火) 22:32
「とりあえず関弓に降りるか」という主の言葉に、六太は常に持っているのか胸元
から巾を取り出す。それを頭に巻こうとしたところ、遮るように声が降ってきた。
「六太」
呼び掛ければ振り返る子供の耳の上、流れる金色の隙間に先程の桜の小枝を挿して
やった。
「…何のつもりだよ」
「いや、少し動くな。…ふむ」
鑑定人よろしく手を顎に当て、暫し見つめる。後、軽く吹き出した。
「…呆れるほど良く似合う」
「お前な、そんな下らない事言う為に花を手折んなよ」
顰めた顔を向けてやれば、主は更に顔を覆いたくなるような事を言い出した。
「なに、お前の髪に飾られて花も幸せだろうて」
「うっわー!尚隆寒いよー、おれの周りだけ冬が来た!」
寒そうに体を抱きつつ簪と化した小枝を抜き、それを手に持ち見つめる。
己の為に手折られたその枝を捨てる気にはならず。そうしていると尚隆は六太の手
からそれを取り、六太の衣の襟元に挿した。
「まあ…勘弁してやる」
仕方なく受け入れた、己の胸元に咲いた花を見やり思う事がある。
それは、主に与えられたもの。

「お前さっき、おれが寝てる間、おれにく…、いや何かした?」
「いや?…墨と筆が有ればお前の顔に落書きでもしてやったところだが」
振り返って問うた六太に恍けてみせた。
「あのなあ。餓鬼かてめーは」
そっか、と前を向き面を伏せる。唇に手の甲を当てる。気のせいだったか。朧に感
じた、その行為が愛情表現の一種である事は六太も知っている。男と女の。
尚隆が自分にそんな事をするわけが無い。願望を夢に映したのだろうか。…そんな
願望を己は抱いているのだろうか。そんな莫迦な。おれは男で、こいつも男で。

六太が思いを巡らせている内に、主従を乗せたたまは間も無く関弓の街に降り立った。





次回、…関弓デート…(鼻汁

184名無しさん:2004/12/07(火) 23:17
萌えすぎて呼吸が苦しいです姐さん!
尚隆の言葉を本気に取ろうとしない六太がじれったい!
非情にイイです。続きをみたい…!

185名無しさん:2004/12/08(水) 18:28
姐さんに人生狂わされそうだよ
尚隆のご褒美キス泥棒にくらくら・・・
続きをくれなければ死ぬので
お願いしますよ

186春怨二人13 萌エ無シダラダラホノボノ。:2004/12/08(水) 19:50
夕を迎えるまで幾らかの時間を残す関弓の街は、道行く人々でひしめき合っていた。
もっとも、数百年前からこの街は静寂を知らなかったが。
そこに有る風景。活気の有る商人達。露店で売られる菓子や点心が蒸篭で蒸され立
ち上る湯気。路上で芸をする朱旌たち、またそれに群がる人々。他国からの旅行者
か、この春に妙に着膨れした者、薄着な者。学生と思われる集団が茶店の店先で何
やら熱心に語り合う様子。子らが駆け回るその横を酔っ払い達が通り過ぎる。
この活気に満ち溢れた街は、延主従にとっての庭だ。

二人がたまを宿屋の厩に預けた後、六太が早速提案した。
「おれ、腹減った。茶店に行きたい」
「そうだろうよ、お前は。先程桃を食っただろうに」
「え?何で知ってんの?」
「いや、…いつも食っておるだろうが」
後、飯を奢れだの手持ちが少ないだの言い合いをしていると、道行く広い通りに妖
獣の群れが現れた。
それは旅の商人に騎獣として躾けられた、売りものであると知れた。
近寄り様、尚隆は何気に一頭の天馬を撫でる。すると天馬は尚隆を気に入ったのか
盛んに頭を擦り寄せている。それに可愛げを見出したのか、尚隆はその背や顎の下
を楽しげに撫で返していた。

六太はその光景、天馬に羨望を覚えた。己は、このように素直に尚隆に甘えた事が
そう有るだろうか。
六太には、尚隆との距離を度々置いていた節が有る。それは己の「王を慕う麒麟の
本能」ゆえ。己が尚隆に纏わり付く事、慕情を示す事を、ただの「本能」ゆえとは
思われたくはなかった。
尚隆を想う故に、尚隆と距離を置いた。矛盾する思いを抱える。
だが、その想いとは一体?

187春怨二人14 萌エ無シダラダラホノボノ。:2004/12/08(水) 19:57
一しきり天馬を可愛がった後、去ろうとした二人の尚隆の袂が引っ張られた。気付
き振り返れば、先程の天馬が袂を銜えていた。行くな、とその瞳が訴える。
中年の騎獣商人がそれに気付き、ずかずかとやって来て尚隆を訴えた。
「おい兄ちゃん、売りものを懐かせないでくれよ!困るよ!」
「そんな気は無かったのだが」
頭を掻きながら、天馬と目の高さを合わせる。そして獣に尋ねた。
「俺のものになるか?それとも、黄海に帰りたいか?」
「おっおい、兄ちゃん、何勝手な事言ってんだよ!あんたのにするも、黄海に帰すも、
まずは金払ってくれよ!」
六太は呆れて呟いた。この、女たらしに獣たらしが―。
「兄ちゃん、どうするんだよ?」
腕を組み睨む商人に、言われ尚隆はその天馬の値札を手に取り見やる。民には法外な
その額に、驚くでもない。
躊躇無く胸元から財嚢を取り出すが、しかし大した額は入っていなかった。
「うむ、俺が買おう。だが今は手持ちが少なくてな。付けで…」
「旅商人に付けが利くかっ!飲み屋じゃねーんだ」
手に顎を置き、財嚢と天馬を見比べ唸り考える、その暫し後。
「では待っておれ。少々金策するでな」
「いやに偉そうだな、兄ちゃん…」
訝しげに見てくる商人を尻目に、尚隆は当てが有るのか何処かへ歩き出した。

「おい、金策って何か当ては有るのかよ?」
天馬と戯れていた六太は、意思の疎通が出来るのか何事か語らっていたが、駆け足で
主を追い掛けた。
「…何か質草にするしか思い付かんな」
尚隆は溜息を吐きながら袂を漁る。何か、金目の物は有っただろうか。その様子を見
て六太は微笑んだ。
「…お前って、意外と優しいんだな」
「意外と、とは何だ。俺は俺を慕うものを邪険にはせんぞ。もっとも、去るものは追
わんが」
―本当に?ただの本能で慕うものも、受け入れてくれるのか?
六太の胸に、そんな思いが去来した。

188春怨15 伏線になるのかこの辺…:2004/12/08(水) 22:43
脚は何処へ向かうのか、袂を漁る手が何かを掴む。「あったあった」と呟きな
がら、取り出した物は。
「範の奴が送ってきた物だ。わざわざ俺宛にな。どうせ、俺の趣味には合わん。
いずれ売っ払ってやろうと思っていたのだ」
そこそこの額にはなるだろう、と天にかざせばきらきら輝く、それは帯留めで
あった。翡翠に細工が施され、見るからに趣味が良い美しい品である。
「それを売ろうってのー?止めとけよ。あの御仁、お前の事〝まだ見込みが無い
訳じゃない、あと百年も有ればなんとか〟とか言ってたぜー?」
「ふん、見込みが無くて結構だ。大体、あと百年あいつが玉座に居るのか」
かの国の王の話となると途端に不機嫌になる自主を宥めつつ、売った後で氾王に
その帯止めの事を問われたらまずい、などと説得しどうにか思い留まらせた。

「風漢さん…。これは買い取れませんねえ」
暫し後、尚隆の馴染みらしき質店に辿り着いた。薄暗く古書や珍品等が佇むそこ
で、彼は勘定台の店主にある物を軽く、投げつけるように渡したのだ。
店主の老人がその渡された包みを開いた後、現れた物。
「〝延王御璽〟とありますねえ。本物ではないでしょうが風漢さん…。何やら犯
罪の臭いがしますねえ…」
尚隆の隣で様子を窺っていた六太は思わず目を疑った。
「おっ、おまっ、あれっ、ぎょっぎょくっ…、んッんんー――!!」
指差して呂律も回らず叫ぶ六太を、尚隆が肩を抱くようにその口を押さえ込んだ。
暴れる子供を訝しみながら見やり、店主は玉璽を元のように包みに戻した。そし
てそれを尚隆の元へ押し戻す。
「ま、お得意さんですから深い事情はお聞きしませんが…。私も善良な関弓市民
として、こういった事には関わりたくありませんねえ」
「それはすまん」と、尚隆は軽く謝罪して突き返された玉璽を袂にしまった。六
太を押さえ込んだ手を離せば、暴れ止んだ六太は大きく息を吐いていた。

もう質草にするような物が無い為か、尚隆は何とはなしに店内をうろうろと見渡
した後、店主に尋ねた。
「今すぐ大金が要るのだが。何か得られる方法は無いものか」
「そう言われてもねえ。…ああそうそう、あんたには打って付けかも…」

189名無しさん:2004/12/09(木) 02:33
姐さん連投お疲れです
いっぱい読めて今日は幸せだあ…
ありがとう
明日もたくさん書いてください
待ってます

六太と尚隆が自分の意志なのか…の意志に踊らされているだけか迷いながら
惹かれ合う様子が…たまんねえ!!
尚隆ご褒美キス泥棒のシーンはマイベストシーンとして何度も読返しちゃいます

190「春怨」中の人:2004/12/09(木) 18:18
>189
すみません、昨日休日だったんでドバッといきました。
これから少し間を置いて、書き溜めてからドバッといこうかと。

結局レス20前後掛かるかと思われますが、どんなご都合主義も
グダグダヌルいゲロ甘内容も耐えられるお優しい方、お付き合い下され。

皆さんのSS、このスレの連載の続きもリレスレも楽しみです!!(エロ待ち)

191名無しさん:2004/12/09(木) 23:35
>190
人類が死に絶えるほどのゲロゲロに甘いの読みたい。

192名無しさん:2004/12/10(金) 01:00
191さん、同意
人類が死に絶えるに笑った
どんなものですかそれは

193春怨16ダラダラ長く…:2004/12/12(日) 21:02
「打って付け?」
店内の商品を物色していた六太も尚隆と共に老人を覗き込む。老人は頷き、そっ
と尚隆の腰に佩いた剣を指差した。
「あんた、剣は強いんだろう?なんでも、市の広場で剣術の競い合いが有るそう
だよ。賞金も出るらしい」
尚隆はふと己の腰の剣を見やり、水を得たとばかりに目を光らせた。
一方六太は自主のその様子に辟易していたが。

競合はもう始まっている頃だろうが、間に合えば飛び入り参加も受け付けるだろ
う、と言う質店の主に礼を言い、路地裏に有るその店を出、早足で広場に向かう。
歩んだ途端、尚隆は己の横に虚を感じ、後ろを振り返る。
果たして、数歩離れたところにその虚ろに居るべき子供―六太は佇んでいた。そ
れを呼ぼうと尚隆が口を開きかけた時。
「おれ、お前が傷付いたり人を傷付けるところ、見たくない…」
だから、この辺で数刻待ってる。どうせお前の居場所は分かるから、と言う。や
や眉を寄せつつ。
「俺に傷を付ける奴が居ると思うか?それに俺も、人を傷付けたりはせぬ」
離れた六太の側近く寄るが、六太は面を伏せ表情を硬くしている。
「では、お前に血を見せぬと約束する。全て、剣を弾いて勝ってみせよう」
尚隆は更に言い募る。
「剣は、俺の唯一の特技なのだ。知ってる奴が見て、褒めてくれねばつまらん」
そう言うと六太は漸く面を上げ主を見やり、小さく笑った。
「…絶対だな?よし、じゃあもしもお前が人を傷付けずに優勝出来たら、おれも、
お前に何かして…」
途中言い淀んだ六太の面を尚隆は背を曲げ、面白そうに覗き込んだ。
「ほう?何かしてくれるのか?」
「…ああ、でもおれがお前にしてやれる事って、あんまり無えよなあ。お前の仕
事を代行しようったって、おれには埒外だし。…せいぜい、お前が出奔する時囮
になってやるくらいかなあ」
己が主に施せる事は何も無い事に気付く。それは、妙に六太を寂しくさせた。

194春怨17 ダラダラ強引に:2004/12/12(日) 21:08
説得に応じた六太は尚隆と共に広場に向かい歩き出す。
「でも、あの天馬買ってどーすんだよ?家にはたまととらが居るだろ」
確かに騶虞が二頭も居れば、天馬に乗る機会などあまり無いかもしれない。
「うむ、それだがな。成笙か毛旋あたりに下賜しようかと思う。…それか」
「それか?」
「白沢の爺にくれてやるのはどうだ?あの爺が妖獣を乗りこなす様はなかなか見も
のだと思わんか?」
「ひっでーなあ、お前。乗りこなせるかよ。白沢の腰が抜けたらどーすんだよ。…
でも」
白沢がふらふらと天馬に乗る様を想像したのか、六太は軽く吹き出した。だがやや
あって表情を戻す。
「…でもさ、あいつお前の事気に入ってたみたいだから。お前の側近く置いて、た
まには乗ってやれ」
必要とされないのは寂しいから、と続ける。一拍の後、尚隆はそれに頷いていた。

広場に近付くにつれ、ざわめく周囲の喧騒は大きくなっていった。


「…お前、気付いてたか?観客皆白けてたぞ?何だよ、五合も合わせずに勝ち抜きや
がって。何か、八百長みたいだったぞ…」
六太は尚隆から投げ渡され、受け取った包みから賞金を取り出し面白くも無さそうに
数えていた。

結局、観客溢れる競合に「風漢」として飛び入り参加をした、世界一の剣豪は難無く
優勝してしまった。
玄人の卓越したその剣技は見る者が居れば唸ったであろうが、素人の観客相手には派
手さを欠き、その試合は面白味の無いものだった。
今はその競合の後に、騎獣を売っていた大通り目指し歩いている最中である。
「人を傷付けるな、というお前の希望に沿ったではないか」
「でもなあ…。そもそもお前が出る事自体、反則みたいなもんだしな。王が民の娯楽
を奪うなよ」
「以後気を付けよう」
その気など無さそうな主に呆れ、六太は賞金を数え終えた。少し首を捻りながら。
「この額で…あいつを買えるかなあ?」

195春怨18 色無し強引に:2004/12/12(日) 21:14
黄昏時も間近、目指す大通りに近付けば人垣が出来ており、何やら様子がおかしい。
野次馬と思しき人垣の隙間から目を凝らせば官府の卒がうろつき、縄に掛かっている
―騎獣商人達。
「何か…夏官が動いているのか?」
「ああ、取引中詐欺が有ったらしいよ。商人連中は官府に連行、騎獣も押収、だとよ」
六太が覗き見呟いた言に、野次馬の一人が節介にもそれに答えた。

項垂れ、卒に連行される罪人達を目に、暫し立ち尽くし呆然とする主従。
―金策に走ったのは何だったんだ。
主従は呆気に取られていたが、六太は見やる現場に見知ったような者を見掛けた気がし
た。卒達を指揮するその男。
「…おい、尚隆。あの、ほらあそこで指揮してる色黒い奴、成笙じゃねえの?」
隣を見上げ小さく指差せば、主よりも先に件の成笙がこちらに気付いた。
「お、お前ら…!!」
成笙は瞬時、身近な部下に指示を出す。恐らくこう言っている、捕らえろ、と。
「あの、背が高くて桃色の巾で髪を結わいている男と、その連れの頭を巾で覆った子供、
そう、子供共、両方だ!!」
気配を感じ取った主従は駆け出した。それは騎獣など要らぬかのような勢いで。
「おっ、おい!?何でいきなりおれ達が追い掛けられるんだよ!?…そりゃ、政務さぼ
ってるけどさー!!」
道行く人並みを縫って走る。怒鳴る六太が遅れそうになれば、尚隆はその手を引いた。
「知らん!俺達があいつらを見ると反射的に逃げたくなるように、あいつらも反射的に
俺達を捕まえたくなるのだろう!!」
追手を撒こうと路地へ路地へと入り込む。それが功を奏しているのかどうか、遠くで無
口な成笙の叫ぶ声が聞こえた。
「その男は、国一番の詐欺師だー!!」
ひどいことを言う。

196春怨19 あと5レスくらい…:2004/12/12(日) 22:19
関弓を良く知る二人が逃走すれば、徐々に追手の気配は失せていった。
気付けば大分街外れに来たらしく、黄昏時にその辺りは少々の侘しさを感じさせた。近
くには河原があり、数本の桜が植わっている。
河原で走る脚を休め、弾む息と上下する胸を落ち着かせる。
大きく息を吐いた後、河原の向こうを眺めつつ六太は呟いた。買えなかった天馬の事を。
「…あいつ、良い主人に恵まれると良いな」
「そうだな。…だが、その点お前は恵まれている」
主たる尚隆が六太を見下ろし笑み掛ければ、従たる六太は一瞬首を捻る。だが直ぐに思
い至り、不愉快な色を面に浮かべる。
「どこがだよ、ばーか」
主の言に急に疲れが出たのか、六太はその場にへたり込んだ。

「尚隆、おれ腹減った。疲れたし…って、最初茶店に行く予定だったんだよな」
「そう言えばそうだったな。金も十分有る事だし、少し早いが飯でも食いに行くか」
先程剣で稼いだ銭を手にすれば、「奢ってやる」と笑む者と、「当然」という顔をした者。
飯屋を探すべく近辺に目をやれば、白い煙を吐く店は直に見付かった。

街の外れらしく少々鄙びた店であったが、既に歩くのが面倒なのか、二人とも異論無く
その狭く薄暗い店の卓に着く。尚隆が菜譜から適当に品を選び、酒と共に注文する。
直に料理が運ばれてくれば、六太は飯に生臭が有ればそれを取り除く。それを残す事は
せず、「人に食われる為に死んでるんだ」と取り除いたものを尚隆の皿に移す。それは
二人で街で食事をすれば常なのか、尚隆は気にするでもなくそれを口にする。

飯に箸を付けながら、六太は今日の出来事を頭に巡らす。何か色々有った。色々な思い
が有った。
ちら、と主を見やりつつ、雑談に紛れて心中を織り交ぜる。
「…ほんと、お前は莫迦だよなー」
違う。そんな事が言いたいんじゃない。
「でも、退屈しない。お前と居ると」
それも違う。そうじゃない。
「…お前と居ると、楽しいよ。王とか関係無く」
珍しく素直に告げた。その思いは最上ゆえに、恐らく手放せない。
そう言われた彼は意外そうに眉を上げ、だがやや目を細め、口元を綻ばせていた。

197春怨二人20:2004/12/14(火) 16:06
尚隆はただ小さく笑い、「そうか」と答えるのみだった。少々の自嘲を込めて。
己は何時まで六太を楽しませる事が出来るのやら。
思いを告げた相手の向かい、六太は改めてその様な事を言った為か、照れ気味
に俯いていた。だが、口にしてしまった為か急に戸惑いを覚える。
己は尚隆と居ると楽しい。けれど尚隆はどうか。ただ、子供の相手をしている
だけではないのか。
これまで思いもしなかった事が不安となり、口数の多い六太を黙らせた。

沈黙したまま、二人は黙々と箸を進める。その為周囲の会話が聞くとはなしに
耳に入ってきた。主従の隣の卓に着いた、恐らく仕事帰りだと思われる男達の
雑談である。
「…恭に新しい王が立ったってさ」
「らしいな。何でも餓鬼だって話じゃねえか」
「まあこれで柳からの荒民が少しは減ると良いが…餓鬼じゃあなあ」
「全くな。柳だか慶だか知らんが、荒民は何とかならんもんかね」
男達の話題が荒民に移ると、彼らのその口が荒れだした。
「そうそう、あいつらのせいで治安が悪いったらありゃしねえ」
「この間なんか、俺の連れが荒民に財嚢を掏られたってさ」
一瞬店内の空気が止まり、他の客達も彼らに注目し出し、話に入り込んでくる。
「何だそりゃあ。荒民ってのは性質が悪いな。…国はちゃんと、そこんとこ考
えてるのかね」

その後も周辺の客同士でざわざわと語り合っていたが、六太はそれには意識を
逸らした。勝手な事を言う民に少々気分が悪い。荒民も好きでその国に生まれ、
そして逃げ出した訳ではあるまいに。
「尚隆…。罪を犯して、捕まった荒民は――雁で裁かれるんだよな…」
「それはそうだ」
間髪置かぬ尚隆に、六太は溜息で返す。それに対し、だが、と彼は続けた。
「これから荒民を保護し、最低限の暮らしを保障する制度を整える。…前から
考えていた事だ」
そうする事で雁の民も守られるだろう、と。
酒を口に運びつつ、だが王の顔を見せる尚隆に、六太は瞳を輝かせ、すごく、
すごく抱きつきたい衝動に駆られた。既に、心は尚隆に抱きついている。
「まだ、やる事は山と有るな…」

198春怨二人21:2004/12/14(火) 17:12
家に帰るか、と六太の気は知らず席を立つ。勘定を済ませ外へ出てみれば既に
陽は落ち薄暗く、地平線にほんの僅かな紅を残すのみ。

その春の残照の紅を、暫し二人佇み見やる。そして尚隆が六太、と呼び。
「―この国が俺を必要とする限り、俺はこの国の王だ」
見上げた主は遠く、地平線の彼方を見つめていた。その瞳は何処を見ているの
か。この緑溢れ、豊かかつ広大な雁国の地か。それとも、六太も知る、彼が成
し遂げられなかった遺恨を残す地か。
「じ、じゃあ、やる事が無くなって、お、お前を必要としなくなったら…?」
問うた矢先。ざあ、と強風が吹き、辺りの桜が風に踊る。尚隆が六太の胸元に
挿した桜の小枝も、花弁を散らし六太の胸から飛び去った。六太は思わず手を
伸ばすも、それはもう何処とも知れず。
強風の後には散り落ちるばかりの桜の花弁。…舞い散る桜の花弁が暗示するも
の。それは、吉とは言えず。
「…さあな。ああ、今年の春も逝くか」
桜を見つつ強風に乱れた着衣を整える、そんな主が恨めしく。
そんな事を言わないでくれ。六太は面を伏せ、その肩を震わせ呟いた。それな
らば、と。

「やる事が、有ればいいのか…?」
その声は尚隆の耳に届かなかったのか、彼は六太に小さく首を傾げて見せた。
為に六太は面を上げ、主に届くよう目一杯叫んだ。
「大昔に約束した、…覚えてるか!?緑の大地は一生受け取らない!!いつか
更夜に会ったら、「雁はまだまだ住めたもんじゃない」って言ってやる!!…
…尚隆、おれは、おれは…」
叫んだ筈の声は徐々に勢いを無くす。
「仕事して…でも出奔して遊んで、帷湍に、追っかけられて、…朱衡に、嫌味
言われて、成笙に、嘆かれて……でも、官は育って、…国は少しづつ発展して
さ、民も、もっと豊かになって…。それで、たまにこんな風にお前と遊んで、
……お前と居られたら、…お前が、居てくれたら!」
知らず胸の内を吐きながら、六太はそうか、と己の心を確認し、納得した。
「…おれは、幸せなんだ…。だから、だから尚隆、お願いだから…!!」
―ずっと優しい王で、おれの王でいて。
おまえの代わりなど、居ないのだから―
慈悲の麒麟が、王の慈悲に縋った。民のために、己のために。
己は我儘だろうか。己の我儘がこれから先、尚隆を縛るのだろうか。
六太はその場に立ち尽くし、泣いた。ただ子供のように。

199春怨二人22:2004/12/14(火) 20:35
毒にも薬にもなる強力な、雁州国の稀代の名君。その半身は弱い民を象徴するか
のような小さな子供。
長い六太の告白を黙って聞いた後、尚隆は六太を掬い上げた。大丈夫だ、と。
その尚隆のぬくもりに緊張を解いたのか、六太は未だ泣き止まずその首にしがみ
つく。
掬い上げ、身を預けてくる六太を安堵させるよう、そっと背を撫でてやる。
きっと己はこんな風に六太が泣けば、何度でも掬い上げるだろう。
この子供の気丈さ強さ、それと併せ持った脆さが愛しい。

「…覚悟は出来ているのではなかったのか?」
嗚咽が止まぬ六太にそう問えば、その彼の首を一層力を込めて抱く。
「そんな訳、そんなわけないっ…!!お前が、おれにいろいろくれたくせに…!!」
六太の幸せ。それはごくありふれた。だが己がそれらに幸せを見出した事が無か
ったと言えるのか。
かつて全てを無くした己が、無から始まった子供の幸せを否、とする事が出来るのか。
与えられた、滅びかけの国に力を注ぎ、その結果国が完成された達成感の後に己
が注いだ力と同等の虚脱感に苛まれ、それを無に帰したいと願った事が有ったと
しても。そして己の命にも見切りをつけ、最愛のこの子供も道連れにしようと思
った事が有ったとしても。

この子供と、六太と共に同じ幸福に生きる道も有るのではないか。完成された国
が己を必要としなくなっても、六太が己を必要とすれば、己は生きていけるので
はないか。
そう思い六太を見上げれば、しがみついて来るこの子供がどうしようもなく可愛く、
愛しかった。

尚隆は暫し六太が落ち着く迄を見計らい、小さく息を吸い込み、そして言った。
「…お前はそれで幸せで良かろうとも、俺は幸せではないな」
六太がそれに身体を大きく震わせ、面を上げればそれは蒼白であった。
「尚隆、そんな…」

200春怨二人23:2004/12/14(火) 21:48
六太は涙でぼやけて尚隆の顔がよく見えていなかったが、彼は微笑んでいた。
「俺にも、幸せになって欲しいか?」
問われ、こくん、と頷く。己の掛替えの無い人、それの幸福を願わぬ訳がない。
「ならば、お前にはして貰わねばならん事が有る」
我ながら卑怯な事を言おうとしている、そう思いつつ尚隆は六太のきれいな面を濡
らす涙を袖で拭ってやる。
「でもっでもっ、…おれがお前にしてやれる事なんか、何も無いっ…!」
「そんな事は無いぞ?俺にはお前が必要だ。例えば…」
六太に何事かを耳打ちすれば、その意を理解したのか、理解出来たのか、衝撃の為
に嗚咽が止まる。そして徐々に、六太の頬が紅に染まった。
「こ、こんな、真面目に話してる時にお前何言って、じょ、冗談は…」
「冗談ではない。お前にはこれ位はっきり言わねば理解せんだろうが。面倒な奴め」
「お、お前には適当な相手がいっぱい居るだろ?何で、おれ…」
「お前でなければ嫌だ」
そう言うと、腕の中に抱き上げていた六太の身を肩に担いだ。歩き出すその脚は一
体何処へ向かうのか。
「嫌って、お前…。大体、おれ男だぞ!?男同士だろーが!!」
「出来るのだな、それが」
「で、出来るって…」
「なに、男同士でも口付けを交わしたではないか。そんな感じだ。…多分」
尚隆の肩に担がれ、暴れていた六太はふと動きを止め考える。口付けを交わした?
そんな事をした覚えは無い。そんな事をした覚えは――。
「…あー!!お前さっき、おれが寝てる時やっぱり本当にやりやがったな!?」
「したかったのだ、すまん」
「謝罪に心こもってねえ!何だよ恍けやがって!!おれは、嬉しかったんだ!!……あ」
「嬉しかった?」
慌てて口を押さえる六太に対し、そうか、と尚隆は顔を綻ばせた。

201春怨二人24 了:2004/12/14(火) 21:53
肩に担いだ六太を下ろし己と向かい合わせに立たせ、尚隆は腰を落し六太と目の高
さを合わせる。辺りは既に夕を過ぎ夜を向かえ、暗がりの中で六太の泣き腫らした
赤い顔が見えた。
「…遠回しな事ばかり言ってすまんかったな」
六太には何が遠回しだったのか分からなかったが、尚隆は手を伸ばし、そっとその
泣き腫らした頬を撫でる。慈しむように。尚隆の、光を宿す漆黒の瞳と六太の菫色
の瞳は暫し出会ったまま二人は動かなかったが、やがて尚隆が口を開いた。
「俺は、おまえに惚れている。…これは俺の偽りなき真心だ」
それは、初めて言った言葉。言えた言葉。六太と共に生きる、そう決めたから。

六太は知らず収まった瞳が、身体が熱を持つ事を感じていた。惚れている。…尚隆
が、自分に。本当に?それを受け入れて良いものか。また己は尚隆によって無上の
喜びを知ってしまったのではないか。そう戸惑う中、尚隆は真摯なまなざしで、お
まえはどうだ、おまえは俺が好きか、と問うてくる。
その問いに六太は声にはならず、ただ頷いた。
何度も何度も頷いた。
懸命に首を縦に振る、それが肯定である事は尚隆にも知れた。


雁州国の、今年の春の終わり。この春は六太の心にある感情――種は植わっていた
のだろうが、それを芽生えさせた。
そして、尚隆の春怨の終わり。




202「春怨」 後書きして良いですか。:2004/12/14(火) 22:05
見 事 な チ ラ シ の 裏 っ ぷ り よ !!
日々不足する尚六分を補う為に書いた。尚六なら何でも良かった。正直スマンカッタ。今は猛省している。
設定で「碁石集めに飽きた頃」なんて書いてしまった為に浅く薄いシリアスくずれに…。
自分でも展開と無駄な長さに驚いてます。通しではきっと読めない…。
「春怨」コメント下さった方、読んで下さった方、ありがとうございました!!
とりあえず、尚六の下らん会話シーンが書いてて一番楽しかったです。そして、自分的糖度臨
界点は見事突破致しました…。アマッ!カユッ!
とにかく、全てにおいて書き逃げって事で勘弁汁。むしろ許すと言え。…ですが一つ言い訳。
六タンの尚隆への想いが本能か自我か、ってな件は話中ちょっと触れながらも最初からその辺は
華麗にスルーの予定でした。それに触れると只でさえアレなのに更に収拾がつかなくなるんで。

ここは私の心のオアシスなのですが、より沢山の萌えで満たされる事を祈りつつ。

203名無しさん:2004/12/14(火) 22:24
春怨、姐さん乙でした!!まさにGJ!!…萌えた…感動した…身悶えた…!!
何じゃこりゃあって感じにやられました。
流れるような文章の上手さが情景を鮮明に瞼の裏に浮かばせました。二人の気持ちも。
尚隆はいい男だしろくたんは可愛いく…二人とも気丈で切なく、何と言ったらいいものかもう。
この二人の過去の一つの史実として私の中で勝手に公式に加えさせていただきます…。
本当に素敵でした。いいお話をありがとう…。
ハラシマ真っ最中の我が身が癒されました。姐さんの文章を見習いたい氾六の中の人…。

204名無しさん:2004/12/16(木) 23:41
春怨の姐さん、ありがとう!!
幸せでした。
もっと続きが読みたいけど、これでいい!!
エロがないのに究極のエロ、姐さんこそ究極のエロ職人!!
いい仕事をありがとうございました!!

205名無しさん:2004/12/17(金) 01:31
姐さん、ありがとう!おいらの尚六不足も解消されました。
個人的に尚隆に背を向けて泣くろくたんに心臓鷲掴みにされました…。
萌えをありがとう!

206名無しさん:2004/12/17(金) 22:29
姐さん、いうほど甘過ぎではないとおもいます。
ベルギー王室御用達という感じです。甘さひかえめでおいしいです。
私は羊羹に水飴と蜂蜜をかけ砂糖100gとチョコホイップをとっぴんぐで食べて
も平気です。
でも今夜はセコ○ヤチョコで甘さひかえめでいこうと思います。

207すとれす解消ss未満:2004/12/17(金) 23:01
セコ○ヤ 本館のネタ続きss未満

常世に来たばかりの尚隆。蓬山に行く前に雁国を見てまわっているところ。
いろんなところで農家の日雇い労働など。夜は焚き火して六太と共に野宿です。
ろくたんは期待でいっぱい。尚隆は雁をどのような国にしてくれるのかと。
「これから‘しょうりゅう‘って呼ぶから」
と勝手に決めて嬉しそうになついています。
でも不安もあります。女仙から以前に聞いた話だと雁の官は厳しいとか。
王宮に行けば式の準備その他、忙しくてなかなか尚隆と時を過ごすことも難しく
なります。その上、ろくたんは仁重殿に住まねばならず、尚隆とこのように添い寝
できるのも今のうちだけでしょう。さらに。王ともなれば王后を持つのが一般的で
す。官たちも后を押しつけてくるかもしれず、尚隆が気に入った女性を迎えいれる
かもしれず。尚隆が大切に扱う女性にろくたんはどのように接すればよいのでしょうか。
そのように考えてろくたんは小さな胸をいためています。
それにしても。昨晩のあれはなんだったのでしょうか。尚隆がろくたんのほっぺたに
唇で ちう と触れたのです。その時ろくたんの体に電流のようなものが流れました。
それで昨晩は尚隆の側に身を寄せてまるくなって寝ようとしても、もんもんとしてしまい
眠れなかったのです。
今、二人は焚き火の前に座っています。ろくたんはふと思いつきました。昨日、ちう さ
れたとき、すごくすごく嬉しくて、なにか赤くなって気が遠くなりそうだった。
あれを自分が尚隆にしてみたらどんな感じがするだろう。それでろくたんは本能的に
そうしてしまったのです。正面から尚隆にしがみついて、右頬に、左頬に、と
ちゅっ、ちゅっ、と繰り返してみました。ちょっと恥ずかしかったけど、良い気持ち
になれました。その往復を5回ほど繰り返してみました。
あっ、でも尚隆の様子が変になってしまいました!
なにかろくたんの見たことのない表情です。しばらく何かこらえているようでしたが
急に立ちあがると、ろくたんを置き捨ててどっかに行ってしまいました。

208すとれす解消ss未満:2004/12/17(金) 23:14
あーもう、あのまま続けられたらモエモエしんぼうたまらんちんとなるところだった…
と尚隆はろくたんから見えないところまで避難してくると、ほっと息をついた。
さて、焚き火のところに戻ってみると、ろくたんの様子が変です。尚隆が近づくと
くりと背中を向けてしまいました。
「ん? どうした」
ろくたんの正面のほうへまわってみると、膝を抱えたろくたんの大きなお目目が
うるうるとしています。ろくたんは ちう をしたのは悪いことだったのだと勘違い
して悩んだのです。それに昨晩のように尚隆が ちう してくれないので少しすねて
いたのでした。
あっ、ろくたんが立ち上がり、焚き火から少し離れたところで寝転びまるくなって
しまいました。一人で寝るつもりでしょうか?! 尚隆はろくたんの側に行くと
掬い上げていつもの場所に置きました。そしてろくたんを抱え込むようにして
いつも通りに添い寝したのでした。

209すとれす解消ss未満:2004/12/17(金) 23:48
さて、尚隆が王になってから、あっという間に月日が流れました。
最近ろくたんはすごく心を痛めています。女官達の間に妙な噂が流れているのです。
主上が寝室の続きの間の改装をお命じになった。いろいろな物も運び入れている。
官がうるさいので非公式に行っているが、あれはどう見ても王后となるべきお方を
迎え入れる準備のようだ。後宮ではなく続きの間を与えられるとは、なんと愛され
ているお方か。官の反対を受けても迎え入れるおつもりのようだ。主上がよく
行かれる下界の宿の女性かもしれない・・・。
ろくたんは最近、もう気が気ではありません。厳しい官達のせいで尚隆に自由に
会えない日々が続いており、しかもこの噂。ろくたんは王気不足で体調もおもわしく
ありません。今日の昼間は「お願い、ちょっとだけ尚隆に会わせて」と尚隆の執務室
の扉の前まで行ったのですが、「お仕事がお忙しいので」と追い返され、涙を飲んだ
のです。おまけに「主上とお呼びになって下さい」と注意も受けました。
その夜。そんなさびしいろくたんの仁重殿に尚隆がやってきたのです!
ろくたんは嬉しさで胸がはちきれそうになりました。おまけに尚隆は
「今夜は六太に贈り物があるぞ」と言い出しました。そしてろくたんを抱き上げると
いいというまで目を瞑っているようにと言いました。
尚隆はろくたんを抱っこしたままどんどん歩いていくようです。相当歩いて、さらに
別の建物の中をも相当歩き、扉を開けてどこかの部屋に入ったと思ったら、
「目を開けていいぞ」と聞こえてきました。
床に降ろされ目を開けてみると、目の前にすばらしい置物がありました。
どうやらこれが贈り物のようです。ろくたんは胸がいっぱいに!
「しょ、尚隆、ありがとう! オレ、ちょうどこんなのが欲しかった!」
ほんとは置物など興味が無いろくたんです。でも尚隆のくれるものなら違います。
ろくたんは、うんしょ、とそれを持ち上げようとしました。しかし重くて動きません。
「だめだ、持てない。後で誰かに運んでもらうよ」
「いや、その必要はない」
その言葉にろくたんはこおりつきました。贈り物を持ち帰ってはいけないなんて。
ろくたんは不安そうな顔で尚隆を見上げました。すると尚隆は言いました。
「ここもお前の部屋にするといい。俺の部屋と続きだ」
ろくたんは置物だけが贈り物だと思っていましたが部屋全部を貰えたのです!
そうです。尚隆はろくたんの輿入れを考えたのでしたが、麒とケコーンするなど、と
厳しい官の人たちに諌められ、非公式にろくたんをものにすることにしたのでした。
ここも改装したとはいえ尚隆の部屋の一部なのですが、ろくたんも自由に使って
良いのです。ろくたんは幸せでした。
   
一応おわり   この文体だと書いてて自分で少し気持ちわるくなりながらも。

210心の傷痕:2004/12/18(土) 01:06
六太が湯から上がり衣をつけていると、どやどやと足音がした。
「台輔、入ってよろしいでしょうね?」
女官たちである。えっ、ちょっと待ってくれ、と六太は思ったが扉は開けられてしまい
女官たちが入ってきた。
「まあ、本当だわ、やはり以前以上にお美しい」
女官たちはひそひそと囁きかわす。
しかし六太は抉り痕だらけの顔を見られていると思うと自然、俯いてしまう。
女官長は厳しい声を上げる。
「さっき、お聞きしたんですよ、台輔。どうして早く勅命のことを教えてくださらない
んです? こちらにも準備というものがあるのですよ? 私としたことが主上から
お聞きするまで知らなかったなんて。ま、台輔ぐらいお美しければ、もっと早く
こういうお話が出ていてもよかったのですけどねぇ」
あのような恐ろしい事件が起こる前であれば、と女官長は唇を噛む。この美しい
麒麟の初夜は当然、王のものであるべきであったのに。無礼者どもが妙な蔓植物を用い
台輔に狼藉をはたらいたことは、どこから洩れたか王宮の人々の間に密やかに知られ
はじめていた。しかしそれにしても、これは奇跡だ、と女官達は思った。常世一の
醜さに落ちぶれたと言われた台輔がこのように、以前に増して美しく甦るとは。
 さて、女官たちは六太を無理矢理別室に移すと、着替えさせ始めた。
「本当は正式な黒が良いけれど、準備の時間も無いしねぇ。台輔には、この白い衣が
お似合いだからこれにしよう。こちらの薄い色の玉石の首飾りをおつけしてね」
短い時間にどうやって準備したのか、六太にぴったりの大きさの衣である。長い首飾り
は六太の眼の色のような菫色やら桃色やらで白の衣を引き立てる。
顔にはなにやら粉をはたかれる。
髪も整えられ、自然な流れが少し緩やかになる。準備が整うと別室に連れていかれた。
「さ、この輿にお乗りあそばせ」
無理矢理、多くの玉が嵌めこまれた豪奢な輿に押し込まれると男たちが担ぎ上げる。
六太は思う。この醜さで、美しい衣をつけたり、あげくに化粧まで施されるとは、
お笑い以外の何物でもない。せめて普通の格好で歩いて行きたかった。
それにこれでは確実に、尚隆に顔を見られてしまうことになるではないか。

211心の傷痕:2004/12/18(土) 01:43
六太は、これは悪夢かもしれないと思った。決して今の醜い姿を恥じてはいない。
この姿は尚隆を守り通した、尚隆への愛の証しだ。しかしこの仰々しい輿やら、
美しい女が着るような衣やら化粧やら。似合わなさ過ぎる…。
跳ねあがりそうな心臓を抑えているうちに尚隆の部屋に輿は降ろされた。
「なんだお前達。こんな大げさにしろと言った覚えはないぞ」
と案の定の尚隆の声だ。何時になく怒気をはらんでいるようにさえ聞こえる。
人々は尚隆によってさっさと部屋から追い出された。すぐに約束通り部屋は真っ暗に
なったようだ。
「六太、たいへんな騒ぎになったようで済まなかったな。暗くとも俺が運んでやる故、
輿から出てこい」
六太は勇気を振り絞って輿を出るしかなかった。
輿から降りると、暗闇の中に薄明りを浴びたように尚隆の姿がぼおっと見える。
部屋は真っ暗だが、王気のせいだ。麒麟である六太には明りがなくともぼんやりと
尚隆の姿が見えたのだった。尚隆にはそのことは知られていないはずなのに、
尚隆の表情に嫌悪感はない。尚隆はオレのことを本心、気味悪がってはいない。いや、それ
どころか、オレの王はなんと優しい慈しみ深い表情をしているのか、と六太は胸が
熱くなった。
 そして尚隆も。六太はその事実を知らなかったが、尚隆にも六太と同じく相手の
姿が暗闇の中でも見えていた。六太の場合よりもはっきりと。麒麟の放つ光燐。
それはおそらく王と麒麟の繋がりが通常より深い場合にのみ見えるものなのだろう。
かつてこれほどまでに深い絆で結ばれた王と麒麟がいなかったため一般には知られて
いない事実ではあるが。美しく装ったこの世のものとも思えぬほどの麒麟の姿に
尚隆の心はうわずった。これほどまでに美しい者を抱けるとは、なんという僥倖。
尚隆の心はうち震えた。美しいものを救い上げ、愛を交わす場所へとそっと横たえる。
しばらく手を触れずにただその美を観賞した。そして静かに手を伸ばして触れる。
その瞬間、その美の化身は、びくん、と身を引いてしまった。
「い、いやっ…尚隆、ごめん、オレ、お前の気持ちはわかった。嬉しいよ。
でも、やっぱりだめだ。こんななりでそんなこと、自分が許せない。オレの王が
醜い者とそんなことするなんて。頼む、勅命を取り下げてくれ」
涙ぐみながら壁際に逃げて震えている。そんな姿を見せつけられると
尚隆は自分がこの美貌の者を捕まえて狼藉をはたらく無礼者になったような気分となった。

212名無しさん:2004/12/18(土) 01:45
ここまで書いた。「心の傷痕モエモエ」を書いてくれた姐さん、
続き書いてくれないかなあ。このあとちょっとまだ思いつけません。

213心の傷痕:2004/12/18(土) 11:36
 尚隆の胸は罪悪感で痛んだ。六太は姿を見られることはないと信じてここへ来たの
だ。それなのに見えてしまうとは。これは自分にも予想外であった。しかし尚隆はもう
抑えられない自分を感じていた。
「勅命をそう簡単に取り下げるわけにはいかん。
 真に命じる。勅命だ、従え」
 その声は六太をいたわる優しさに満ちたものでありながらも断固としていた。
「や、いや…」
「大丈夫だ」
励ますような語調でありながら、荒くなりそうな息を抑えている風情。
尚隆は自分の行為により六太に植えつけられてしまった恐ろしい記憶を拭い去って
やりたいと感じながらも、あの狼藉者達がいやがる六太の様子に煽られた気持ちも、
今ならわかるような気がした。美しい者が切なげにいやがる姿は男の劣情を煽らず
にはおかないのだ。
 尚隆は完全に気持ちがうわずり、もうわけがわからないほどだった。今晩は六太の
ための行為にするつもりだったのに、自制がきかない。
 それからはもう、ただ夢中だった。
 六太のほうはといえば、なんとか自制がきかなくなる前に逃げきろうと必死だった。
逃げ様とした体勢から、うつ伏せ状態で、逞しい尚隆の体の下に組み敷かれていた。
細い腕を尚隆の両手が敷布の上に抑えつける。
「あっ、やっ…」
いやいやをするように体をよじる。その悶えるような下半身の動きに尚隆の劣情はさらに
煽られた。
「六太、…六太…」
少しうわずった声で名前を呼びながら背中に優しく口付けてくる。
双方なにがなんだかわからなくなるうちに、いつのまにやら体勢はかわり、尚隆の唇が
六太の肉棒を捉えた。
「あっ、…あうっ…ああん」
抗議するような調子を帯びた甘い声に尚隆の中心は痺れ上がった。
口に含んだまま、両手の指が蕾の近くにまわされる。左右の手の指が小さな尻の双丘を
割り、それぞれの中指と薬指が蕾の左右にに触れるか触れないかのあたりを円を描く
ようにいやらしく揉みあげる。
さらに様々な甘い責め苦がいつまで続くのかと思った頃、ようやく六太の蕾の入り口に
尚隆のものの先端があたった。それが欲しい気持ちが高ぶり己の肉棒からは先走った
雫を恥ずかしく滴らせながらも、六太は尚隆を醜い生き物とは交わらせまいと必死で
尻を捩った。逃げるために体がせり上がる。
「逃げるなどして俺を悲しませるな」
尚隆のかすれた声が聞こえる。優しくいやらしい愛撫が続く中、とうとうそれは六太の
切ない部分に押したてられてしまった。
「あう! ああんっ!」
六太は絶望の声をあげたが、それすらも甘いものになってしまう。
もう抗えない、六太だって欲しいのだ。主を醜いものから守りたい気持ちとは裏腹に
六太の蕾はいやらしく収縮して尚隆自身をきつく絶妙に締め上げ、その動きは
自分の中に入れられたものを味わいつくそうとするかのようだった。

214心の傷痕モエ:2004/12/19(日) 11:32
は・・はう(大汗)御免なさい〜!姐さん!
時期が時期で・・オフ作業に手と頭を取られたりしていまつ・・
頭ん中は妄想で一杯なんですがははは

腰から登ってくる感覚に尚隆は軽く呻いた。
たまらんな・・・。
既に抗うことを止め、小さく震えながら己のものを咥え込む六太の秘所に、
より深く、ゆっくりと己を沈めて行く。
「・・・・あぁ・・・」
その質量に耐えかねてか苦しげに、しかし甘い吐息がその口から漏れる。
苦しげにそおして切なげに寄せられた眉、細い肢体、甘い声。
この上なく大切にしてやりたい気持ちと、粉々に壊してしまいたくなる嗜虐性。
相反する己の感情を沈めようと、ゆっくりその再奥まで己を収めると、
そのまま動かずにその相手、愛しい半身を見つめる。

一方六太は、逃げ切れずに主に犯される自分の身体に駆け上る快感に翻弄されて
身動きも侭ならず、ただその身を震わせる。
ゆっくりと進入してくる尚隆を、自分の身体はゆっくりと締め付けながらも
もっと奥へと引き込むように蠢くのを自身で感じる。
だめだ、と思っているはずなのに、確かに喜びを感じる自分も誤魔化せず、
六太は混乱する。
そんな自分を気遣うように労わるように、入ったまま尚隆は動かない。
そっと目を開くと、射るような視線を感じる。
己の顔に、肌に、善人に感じる視線に、自然身体が熱を持つ。
その視線を感じる肌が、焼けるようだ。
でも、その熱は、自身を焼くというよりは、ぞの熱で自身を溶かすように感じられて
自然に涙が溢れ、言葉が紡がれる。
「・・ごめん・・な。俺はお前のものなのに、こんなに醜くなって・・」

一瞬目を見張った尚隆は、すぐさま破顔した。
「ばかめ・・、それはもう止さんか。俺はお前が良いと言っとるだろう。」
その身体が、ゆっくりと律動を刻み始める。
「はっ・・あ・・ああ・・」
それはすぐさま六太の身体に快感を呼び起こしていく。

215心の傷痕モエ:2004/12/19(日) 11:42
あう・・続き書きたい〜〜
が・・野暮用が・・
イクのは夜までまってぇ〜

そして、自分でビックリ!セルフ突っ込み逃げます!

善人ってナニ?・・→全身と打ったと思われ・・・・ピー

216名無しさん:2004/12/19(日) 23:41
>215
姐さんまた書いてくれてよかった!
待ち望んでいたけど、でも用事があるときは焦らないで〜。焦らせてしまったかな?
書いてくれるなら年越してとかでも待ってますから、
オフがんばってください。

217『台輔の勤め』16:2004/12/23(木) 20:53
氾王はまずその長い髪を洗う。六太は台座に近寄り、湯を使いそれを手伝う。
洗いあげた細くしなやかな髪を手持ちの櫛で漉き、香油を振った布でくるむと
氾王はうむと頷き、口元に笑みを浮かべた。
「大分心地良うなったわ。先程までの埃はどうにもかなわぬ」
「じゃあ…背中流すな」
言って再び後ろへ回ろうとした六太の腕を、氾王のそれがくいと掴む。
「よい、そなたを先に流してくりょう」
「いっ…!いいよ俺は!」
「湯世話の者が汚れていては具合が悪かろうよ」
抵抗するものの、引かれた腕を無闇に振り払うことはやはり出来ず、
六太は結局氾王の前に向かい合う体勢となった。
台座に座る氾王とその前に立つ六太の目線は同じ高さだ。
濡れた指が頬に触れ、六太はぴくりと顔を背ける。流した視線の内にくすりと笑った瞳が映った。
「あ…」
するりと儒伴が肩から下ろされた。身じろぎした六太の脇に両腕を入れ軽く持ち上げると、
開いた脚の間にその体を挟むように引き寄せる。
「…そなたはじっとしておれ」
口を開くのを牽制するように先に釘を刺され、六太は仕方なく頷いた。
余りにも近くにある氾王の体は既に触れてはいるが、ならばせめて何も見ないようにと瞼を伏せる。
何しろ、こうして間近で他人の裸体に接したことがない。尚隆だけである。
不思議なことだが、実際己の肌を晒すのはそこまで抵抗を感じることではなかった。
それは己の本質が麒麟という名の『獣』であり、獣形をとる時には無論何も身に付けていない為であるからなのか。
とにかく今、六太は己の裸体が晒されることよりも、
氾王の肢体を見つめていることの方に耐えがたい戸惑いがあったのである。
そんな六太の胸中を知ってか知らずか氾王は、目を閉じてあたかも諦観の様を呈する六太の姿に唇を緩ませた。
(さても、こと対人に関しては傍若にして奔放な子供とばかり思っていたが…)
…面白い。
このような表情をするとは。
恥じらいに耐えかねて瞳は伏せたままの六太の唇から、かすかな溜め息が長く吐かれた。
腰紐に手をかければびくりと息を飲む。
氾王は堪えきれず吹き出した。
「そう怖がるでない。取って食おうなどと思ってはおらぬよ」
六太はこわごわ目を開ける。
「いいよ…俺、自分で洗うよ」
ふ、と氾王の眼が細まったのを見たと思った次の瞬間、視界に影が射し六太の体が固まった。

218『台輔の勤め』17:2004/12/23(木) 21:52
突然己の唇を覆ったやわらかなもの、それが氾王の唇であると認識するまでしばらくかかったように思う。
「〜〜〜…───!!」
抵抗する間もなく口中へ差し入れられた温かく濡れた舌。
それはそのまま躊躇することなく六太の舌を絡めとり、吸い上げる。
乱暴では決してないものの、攻める舌に迷いはなく、余すところなく口内を味わい尽される。
捕われた六太の唇が隙間から声を漏らした。
「んっ…ん…っ…んん〜〜〜…!」
相手の肩を両手で掴んで離れようと試みるが、肌に爪を立てる事が出来ない為うまく力が入らない。
六太の顎を唾液が伝う。息が苦しい。
力一杯顔を振ろうとした時ようやく解放され、六太は肩で息をした。
「はぁっ、はぁ…っ…」
一通り呼吸を紡いで涙目で見上げれば、そこには悪戯に瞳を煌めかせた氾王の微笑。
「な、に…。何なんだよ…」
薄い紅はとれたはずなのに一層赤みを増したように見える六太の唇は吸われたことによるものだ。
ふふ、と氾王が笑う。その顔は悪戯が成功した子供のそれ。
だが、揺らめいたその美しい瞳は不思議な妖しさを秘めていた。
「これで口は綺麗になったじゃろ」
「何言って…──、っ!」
不意に六太の背がびくんと反る。腰を降りた腕が着物の裾をまくり上げたのだ。
「…紐を解かれるのが嫌なら無理強いはせぬ」
笑いを含んだ声が耳元で囁き、腿の裏を撫で上げていく掌の感覚に六太は全身をこわばらせた。
「ちょ、ちょ…っ、やめ…!」
腿の付け根までゆるりと撫で上げた手が、双丘へ伸びる。
「や…!」
着物の下には何も着けていない。小さな丸い膨らみを、氾王の掌が直に包みこむ。
いつの間にか六太の体はぴたりと氾王の胸に押し付けられていて、その肩幅の中にすっぽりと収まっていた。
抱きすくめられたような体勢で、容易に身動きもとれなくなっている。
「あっ…あ…─!やめ…ろよ…っ…!」
強く、だが優しく揉みしだかれ、腰におかしな感覚が走るのを感じた。
胸にかすかな恐怖が沸き上がる。
氾王は何も言わず、六太の尻を両の掌で撫でる。
円を描くように大きく、時折軽く揉み込むようにしながら。
六太の顔は氾王の鎖骨のあたりにあって、肝心の相手の表情は見えない。
六太は抗議の声を上げながら眉を寄せ、息を荒くしていく。
両側から広げられた長い指が、膨らみの中心へと触れていく。
「あ…っ!やだ──、やだっ、て!…」
掠れた叫びが上がる。

219名無しさん:2004/12/23(木) 22:59
姐さん、六太がかわいいよ!!
氾王妖しい!!しかもテクニシャン!!
続きプリーズ!!

220心の傷痕モエ:2005/01/02(日) 16:35
あの最初の時のように、媚薬に侵されている訳ではない。
己の妄想の尚隆に抱かれている訳でもない。
はっきりと自分の身体で尚隆を感じられる幸せに酔い、
ゆっくりと己の中を突き上げられる感覚に、意識も飛びそうになる。
「んっ・・・あ・・あん・・・はっ・・しょ・・しょうりゅ・・・っ・・」
たまらず名を呼んでその背にしがみ付くと、同じようにきつく抱き返してくれる。
それが嬉しくて、その胸元に額を寄せると頭上から尚隆の静かな声が降る。
「六太・・すまん・・」
意味のわからぬ謝罪の言葉に、顔を上げると視線がぶつかる。
「俺にはお前の姿が見えているんだ。」

「え・・そ・そんな・・」
その余りの告白の衝撃怯えて、思わず身をよじって逃れようとするけれど
かっちりと身体を捉えられて動けない。
「逃げるな!」
尚隆のきつい言葉に思わず身がすくみ、動けなくなる。
「・・逃げないでくれ・・・」
しかし、続いた言葉は小さなつぶやきだった。
その声にドキリとして、思わず主に視線をもどす。
「お前が傷ついたのは俺の罪だ。お前が醜くなった自分を恥じねばならんのなら
その咎は俺にある。皆からその姿を隠したいならそれを俺が止める事は出来ん。
しかし、俺の前でまでその姿を隠すことは無い。」
尚隆の大きな手が頬を包むのを感じる。
「そもそも、お前の姿が変わったくらいで何で俺がお前を疎んじると思うんだ。
あまり俺を侮ってくれるな。
お前の姿を見たとて、お前の中の俺は萎えてはおらんだろうが。
これでも俺が信じられんのか?」
言われて今の自分の状況に思い至って、顔が熱くなる。
真摯なその視線にに見つられて、胸が高鳴る。
「こんな俺でも、お前の傍にいても良いのか?」
「そう誓ってくれたのでは無かったか?俺の側を離れるな」

ようやく気付いた。
尚隆の傷は俺自身だったんだ。
あの乱で、尚隆と生き延びた事に恥じることは何も無かった。
けれども、変わってしまった自分の姿を自分自身が受け入れられず、
尚隆から逃げ回る事によって、尚隆を傷つけ続けていたんだ。
そんな俺を、己の罪だと言って、責める事もせず見守ってくれた主の思いが嬉しくて
自分が情けなくて、たまらず涙が溢れた。
「ごめん・・ごめん、しょうりゅう・・」

221心の傷痕モエ:2005/01/02(日) 16:55
「・・泣くな・・」
涙を舐め取るように優しく尚隆が頬に口付けてくれる。
「おれ・・もうはなれないっ・・から・・・っ・」
言葉は、きつい口付けに奪われた。
口腔を犯され、息も奪われ苦しいけれど、
きつくなる愛撫や律動ももう構わない。
ただ全身で尚隆を感じられる、その幸せな感覚を六太はひたすら求めた。

あけおめです・・・
新年からこんなモノ書く愚かな私。
今年も尚六萌えで走れそうですよ。
きっと落ち用意されてたんでしょうにすまないです216>の姐さん。
懲りずに続投乞いまする。

222『台輔の勤め』18:2005/01/02(日) 23:51
氾王の指先が双丘の谷間をなぞる。
と、次の瞬間、六太は声を上げて背を反らせた。
「──ひっ…!」
何かぬるりとしたものが窪みに触れたのだ。
「や…やっ…、な、に…っ!?」
触れている質感は指のそれ。だがぬるぬると擦りつけられているものは──
「…そなたを洗ってくりょうと申したであろ」
耳元に響いた笑いを含んだ囁きに、それが洗料であることを悟る。
「いっ…!いいよっ、…やだって!そこ、は…っ…!」
顔を赤くして叫ぶ六太の抵抗は、氾王の体に封じられて全く動きに出せない。
ふふ、と愉快げに笑う声が湯殿に溶ける。
「忘れたかえ。…私は梨雪のようにそなたを愛でてくりょうとも申したぞ。
我が半身、梨雪は常に湯殿ではかように私に身を任せておるぞえ。…のう、」
延台輔、と声が続く。
長い指が優しく、六太の窪みをほぐすように撫でる。
「嘘っ…!──あ、や…っ──!」
片方の手が前に回り、反応し始めていた六太の花芯を捉えた。
掌にゆっくりと包みこまれびくん、と大きく体が跳ねる。
「あ─…あ…っ…」
六太は喘いだ。
ぬるりと握られた花芯は素直に反応しゆるゆると立ち上がり始める。
息が上がる。
氾王は静かに含み笑うと共に、前後への愛撫をきつくしていく。
花芯をしごくように上下に擦り上げ、親指の腹でその先を撫でつけてやると
六太の喉から声にならない喘ぎが上がる。
後口は強弱をつけて何度もくすぐり、円を描くように動かしたその指を徐々に狭めて中に沈めた。
「──っ!」
その瞬間、肩先に六太の爪が食い込んだ。大きく跳ねたその小さな体を押さえこみ、
内部に押し込んだ指先を少しずつ進めていく。
「…のう、台輔」
耳を刺激する甘い囁き。
「洗うという行為は身を清める儀式じゃ。表面だけ磨き上げても無粋よ…
常より目につかぬ、かように奥まった処から丹念に清めぬとの」
特にそなたのこと、と笑いが言葉を紡ぐ。
「…山猿の所有印が残っておるやも知れぬ」
六太は身を震わせて頬を朱に染めた。
「今度の滞在中、おぬしは私の麒麟じゃ。私の手で清めておくに不都合があろうかえ?」
六太は返す言葉につまる。
「そん…なの、詭弁だろうが…っ」
やっとそれだけ口にしたものの、語尾は掠れ、甘い喘ぎが口をついてしまう。
くちゅくちゅと卑猥な音が耳につく。
己の中を巧みに掻き回す指、前を優しくしごきあげる指がもたらす快感に、
六太は眉を寄せて耐えていた。

223『台輔の勤め』19:2005/01/03(月) 00:53
「ひ…──あぁ…!」
下肢から駆け昇る快感に腰が震える。
内部を犯す指はいつの間にか数を増し二本となっていた。
どうしてわかるのだろう、氾王の指先は器用に六太の弱い箇所を探り当て、
そこを執拗に攻めてくるのだ。
六太の先端に蜜が滲む。
執拗な愛撫に己の体が高まっていくのを押さえられない。
目尻に涙が溜っていくのがわかる。
緩急をつけた抜き差しと併せるように前を包み込んで擦り上げる掌の動きも激しくなる。
「ふ…、おぬしの中が熱うなってきたね…。気持ち良いかえ」
あまりの恥ずかしさに何も答えられない六太の、知らず腰が揺れる。
(元来過敏であるようにも見えるが…それにしても随分と開発されておるようじゃの)
撫でつけた洗料だけではなく、今は六太の先端から溢れる蜜が掌を濡らしている。
しごきあげる度にくちゅりくちゅりと水音を立て、
唇からは押しとどめられない甘い嬌声が上がる。
入念に攻め立てる中、六太の掠れた声がかろうじて囁いた。
「も…、や…!だめ…」
やめて、と切なく語尾が消えた。それを聞いた氾王は声もなく笑い、指の動きを早める。
「や、や…あ…っ──!」
大袈裟な程に大きく震えた体に、容赦なく快楽を与えていく。
敏感な箇所を指の腹で強く擦り、握った花芯を一際激しくしごきあげた。
「…っ!〜〜〜──!!」
直後大きく体を震わせた六太の内部がきつく収縮し、握り締めた掌の中のものが弾けた。
声にならない声を上げた六太の全身から一瞬力が抜け、がくりとその膝が折れる。
「…達したかえ」
へたりこみそうになった体を支え起こし、氾王は精を放った六太の
上気した表情を見やって微笑んだ。
荒い息をつき、ぼんやりと潤んだ瞳を向けてくる綺麗な子供の顔を満足げに眺める。
「…可愛らしい顔よ。気持ち良かったかえ」
囁いて目を細めてやれば、慌てたように頬がたちまち赤くなった。
「──おやおや、私が汚れてしまったようじゃの」
悪戯な目をして紡がれたその言葉に六太が目をやれば、
氾王の下腹に己が放った痕跡が散っているのが見えた。
「あ…」
あまりの恥ずかしさといたたまれなさに、すぐに反応を返せず、
六太はとりあえず下を向いて目を伏せる。


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