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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

210心の傷痕:2004/12/18(土) 01:06
六太が湯から上がり衣をつけていると、どやどやと足音がした。
「台輔、入ってよろしいでしょうね?」
女官たちである。えっ、ちょっと待ってくれ、と六太は思ったが扉は開けられてしまい
女官たちが入ってきた。
「まあ、本当だわ、やはり以前以上にお美しい」
女官たちはひそひそと囁きかわす。
しかし六太は抉り痕だらけの顔を見られていると思うと自然、俯いてしまう。
女官長は厳しい声を上げる。
「さっき、お聞きしたんですよ、台輔。どうして早く勅命のことを教えてくださらない
んです? こちらにも準備というものがあるのですよ? 私としたことが主上から
お聞きするまで知らなかったなんて。ま、台輔ぐらいお美しければ、もっと早く
こういうお話が出ていてもよかったのですけどねぇ」
あのような恐ろしい事件が起こる前であれば、と女官長は唇を噛む。この美しい
麒麟の初夜は当然、王のものであるべきであったのに。無礼者どもが妙な蔓植物を用い
台輔に狼藉をはたらいたことは、どこから洩れたか王宮の人々の間に密やかに知られ
はじめていた。しかしそれにしても、これは奇跡だ、と女官達は思った。常世一の
醜さに落ちぶれたと言われた台輔がこのように、以前に増して美しく甦るとは。
 さて、女官たちは六太を無理矢理別室に移すと、着替えさせ始めた。
「本当は正式な黒が良いけれど、準備の時間も無いしねぇ。台輔には、この白い衣が
お似合いだからこれにしよう。こちらの薄い色の玉石の首飾りをおつけしてね」
短い時間にどうやって準備したのか、六太にぴったりの大きさの衣である。長い首飾り
は六太の眼の色のような菫色やら桃色やらで白の衣を引き立てる。
顔にはなにやら粉をはたかれる。
髪も整えられ、自然な流れが少し緩やかになる。準備が整うと別室に連れていかれた。
「さ、この輿にお乗りあそばせ」
無理矢理、多くの玉が嵌めこまれた豪奢な輿に押し込まれると男たちが担ぎ上げる。
六太は思う。この醜さで、美しい衣をつけたり、あげくに化粧まで施されるとは、
お笑い以外の何物でもない。せめて普通の格好で歩いて行きたかった。
それにこれでは確実に、尚隆に顔を見られてしまうことになるではないか。


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