したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

番外企画スレ

1733名無しさん:2022/04/13(水) 23:16:48
>>1732
「え……?」

唐突に別れを告げられ、チノは呆気に取られる。
聖杯戦争の終幕。それはずっとチノが望んでいたことだ。
しかしマコトと別離するということは彼女の頭になかった。これまで必死で、そんなことを考える暇もなかった。

「マコトさんもバーサーカーさんや雲雀さんのように、消えるんですか……?」

バーサーカーや雲雀の最期を思い出す。彼らはチノに何かを託して、消滅していった。
深海マコトはサーヴァントだ。決して生身の人間ではない。

「いや。俺はずっとチノを見守っている。雲雀と一緒にあの青い空から――な」

青空からチノの未来を見届ける。それは雲雀が最期に話した言葉と同じものであった。
マコトにはもう何一つやり残したことも、悔いもない。
心の底からチノやココアの幸せを願い、この姉妹にはこの先も末永く仲良くしてほしいと思う。

「嫌です。マコトさんにはラビットハウスの新しい店員として……」

それでもチノはマコトと離れたくない。
いきなりお別れだと言われてすぐに納得出来るほど、チノは人格者じゃない。彼女は元々、普通の女子中学生なのだ。

「チノちゃん。マコトさんとお別れするのが悲しいのはわかるけど……それでも私達は帰らなきゃ。マコトさんもカイトさんも、ルカちゃんも――みんなそのために戦ってくれたんだよ」

「そんなこと、私にだってわかります!」

チノを落ち着かせようとするココアに対して、彼女は声を張り上げた。
これまでずっと頑張ってきた少女の、ありのままの姿だ。聖杯戦争では必死に頑張ってきたが、香風智乃という少女は本来そこまで強くない。

「それでも私は……マコトさんと離れたくありません……。マコトさんは私の仲間で、大切な友達なんです!!」

今までチノには叶えたい願いなんて何もなかった。
元の世界へ戻って、平和な日常へ帰れたらそれで良いと思っていた。
そんな彼女の心にたった今、叶うことのない願いが芽生える。友達と別れたくないという願いが。

「チノちゃん……」

チノの気持ちはココアにも痛いほど理解出来る。カイト、マズルカと二人もサーヴァントを失ったのだから。オービタルや人形達のことも忘れられない。
それでもココアは前を向いてきた。チノへの想いとたった一つの魔法の言葉で。

「私だってこの聖杯戦争で大切な友達と何回も別れてきたよ。それでもみんな、私やチノちゃんのために戦ってくれたから――私達も前を見なきゃダメだよ、チノちゃん」
「ココアさん……」

ココアの真剣な瞳に見つめられて、チノが少しだけ落ち着きを取り戻す。
マコトだけじゃない。カイトやマズルカの意志を無駄にしないためにも、なんとしても自分達は帰らなければならない。

「かっとビングだよ、チノちゃん。もうこれでお別れは最後だから――。これからも辛いことや苦しいことがあるかもしれないけど……そんな時は、お姉ちゃんに任せなさい!」

いつだってココアは――姉という太陽は妹を照らす。優しく暖かな陽だまりにチノの口が緩んだ。

「ココアさん。……少しだけ、お姉ちゃんっぽくなりましたね」

気丈に振る舞うココアにチノは一瞬だけ微笑んで――。

「え!?チノちゃん、私のことをお姉ちゃんって……」
「言ってません」

やれやれ――といつもの調子でチノはココアの言葉をピシャリと遮る。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板