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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第十章

113バトル1〜勇気の魔法〜 ◆92JgSYOZkQ:2024/04/27(土) 00:48:33
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【闘いの唱歌(バトルソング)】
磨き抜かれた剣の 刃に映るのは
揺らがぬ決意を秘めた 美しき瞳

【護りの祝詞(ガードフォース)】
無敵の盾に刻まれた 数え切れない傷
それはいつも君が僕を守ってくれた証

【疾風の賛歌(アクセラレータ)】
まだ見ぬ未来を夢見て進みゆく
恐怖をも凌駕する憧れはいつか
どんなに高い壁も超えてゆく翼となる

114明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 00:59:43
>《それじゃ、こういうのはどうかしら。
 ジョンさんの言う通り、チームはスリーマンセルが三つ。
 ナユタとエンバースさん。カザハとジョンさん。それからミョウジンと――》

それぞれの提案を元に、ウィズリィちゃんが分隊のメンバーを割り振っていく。
さぁみんなのトラウマ、組分けの時間です!ぼくと組むのは誰かなぁ〜?

>「別に『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』でペアになんなきゃダメってワケでもねーだろ。
 トーゼン、ボクは明神についてく。明神だろ、ボクだろ、んでマゴット!
 それでスリーマンセル成立だ。ヤマシタとガーゴイルはいつでも呼び出せるから除外で」

>《んん……、何かバランスが悪い気がするわね……。
 それに、マゴットもミョウジンのパートナーモンスターでしょう?》

>「細かいこと言うなよな魔女子。別にそれでいーじゃん、戦力的にはボクたちチーム明神だけで充分!」

「そうだよ」

俺は便乗した。

「激戦区っつっても俺の目的はイクリプスの打倒じゃない。極論ソロでも十分だ。
 救出班の方が確実に追手を始末する必要があんだからそっちに戦力回そうぜ」

ガザーヴァは……ついてきて欲しいかな……。
ソロプレイには慣れてるけど一人で行くのはそれはそれで寂しいしさぁ!

>「では、妾もザ・ストリップへ同道させて貰おうかの」

エカテリーナが同行を提案する。

>「ザ・ストリップはこの地で最大の激戦区。今現在うろついておる敵も多い。
 此方としても頭数は少しでも多い方がよかろう、どうじゃ? 明神」

「あっマジで?そりゃ来てくれるってんなら超ありがたいけども」

>「え〜?」

ガザーヴァは露骨に口を曲げた。

>「あのさあ! 我儘ばっかり言わないの! 修学旅行の班分けじゃないんやで!?」

「やめっやめろ!思ってても言わなかったのに!!」

カザハ君の諫言に過去の記憶が蘇る。
ふざけやがって……どこの班も俺を押し付け合おうとしやがる……。
別にソロで修学旅行したっていいじゃねえかよ!俺は寺で座禅組むより鹿と戯れたかった!

115明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 01:00:11
>「往生際が悪いぞガザーヴァ。いいか、こういう時は発想を逆転するんだ。
 ここは一度仕方なく折れてやった事にしておけ。実際はお前がひたすら駄々をこねてただけだが。
 とにかく一つ貸しにしておく。するとその貸しが後々――」
>「虚構魔術を用いた明神さんの複製体逆ハーレムになって返ってくるんだ。
 確かに、所詮複製は複製だ。だがそれはそれとして――
 沢山の明神さんに囲まれるのはきっと楽しいぞ。分かったらここは大人しく退け」

「気軽に地獄を召喚しようとするな。やだよ俺みてえな奴が何人も居るとか……
 俺は俺と仲良くできる自信がねえ。世界一しょうもねえ蠱毒が発生すんぞ」

大量の、いや超大量のうんちぶりぶり大明神がガザーヴァを取り囲む姿を想像してSAN値が下がった。
いやでも中身はカテ公なんだっけ?前世で何したらそんな刑罰食らうんだよ。

>「そんな顔を致すでない。
 人命優先で逃げながらの持久戦を展開すればよいモンデンキントやカザハらと違い、
 其方らは戦いながらアンチを増やす持久戦を展開せねばならぬ。
 ならば、必ずや妾の虚構魔術が役立つであろう。多数の敵を翻弄し手玉に取る、それが虚構魔術の真骨頂ゆえ」

「まぁ貸し云々については別途ご両人で交渉してもらうとして……カテ公が来てくれるんなら是非もねえ。
 虚構魔術、俺なら悪用の仕方を100個は思い付く。援護は任せた」

俺が真にカテ公の同行を必要としてることが伝わったのか、ガザーヴァはこれ以上ゴネなかった。
もしくはエンバースの提案が効いたのかもしれなかった。ホントにぃ?

>《うん、それならバランスもいいんじゃないかしら。どう?ナユ――》

大方の方針が固まって、ウィズリィちゃんはなゆたちゃんに水を向ける。
その視線の先では――
電池が切れたみたいに眠り続けるなゆたちゃんの姿があった。

>「……寝かしておいてやろうかの」

カテ公の言葉に、俺はもう何も言えない。
こいつが、なゆたちゃんが、どれだけ止めようが最後には飛び出していっちまうことを知ってる。
ただ、今だけは、ほんの少しでもいいから、休んでいて欲しかった。

>《みんなのスマートフォンからも、マップを閲覧できるようにしておいたわ。
 それから、この回線も常時開放しておくから。生存者がいたら報告して頂戴。
 こちらから『門』を開いて、ワールド・マーケット・センターに収容できるようにするわ》

後方支援の役割分担も決まり、最後に留意点を確認する。
ラスベガスには地下街も人の入れるサイズの下水道もあるが、そこはイクリプスも出入りが可能らしい。
いざというときに地下に引っ込むプランはこれで使えなくなった。
生存者の救出は……インチキテレポがあるから支障はない。

116明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 01:00:29
>「んじゃ、モンキン焼死体チームとバカザハジョンぴチームが下水道を進む間、
 ボクらは真正面から打って出ればいーってコトだな。
 コソコソすんのはボクの流儀じゃないから、ちょーどイイや!
 いっちょド派手にブチかましてやんよ!」

「強気じゃん。ひひっ、無理すんなとは言わねえよ。
 イクリプスの連中に散々ボコられていい加減ムカムカしてたんだ。
 あのスカした美少女共の横っ面をぶん殴ってやろうぜ」

出撃に向けて気炎を高める中、なゆたちゃんは未だ眠ったままだった。
肩を貸してるエンバースが軽く揺すって起こす。

>「ぅ……ん、んん……。
 ……はっ!? わ、わたし、寝てた? ゴメン! こんな大事な話してるときに……!」

「問題ねえよ、95割はいつもの他愛もねえ雑談だ。重要な部分はエンバースに聞きゃ良い。
 それよりちゃんと寝れたのかよ?休めるときに休むのは義務だぜ義務」

>「大丈夫、大丈夫! 今ちょっと寝られたから、元気いっぱい! 体力マックスだから!
 ね、カザハ、わたし寝てる間に寝言とか言ってなかった? ヨダレ垂れてない?」

なゆたちゃんは回復をアピールするが、それが空元気なのは誰の目にも明らかだった。
見かねたイブリースが助け舟を出す。それでも、あるいは案の定。決意を覆すことは出来なかった。

>「ありがとう、みんな。
 わたし……行くよ。何があっても、ここは行く。後ろで待ってるなんて出来ない」

「お前がそう言うんならもう止めねえよ。でもな……ちゃんと弱みは見せろよ。
 やべえときはやべえって言え。キツいときはキツいって言え。
 お前はシャーロットじゃねえんだ。お前は――」

>「だって、わたしはシャーロットじゃない。あくまで普通の女子高生!
 モンデンキントこと崇月院なゆた、だから――」

「世界救ったときに、『崇月院なゆた』がそこに居ないなら、この戦いに意味はねえんだ」

 ◆ ◆ ◆

117明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 01:01:48
崩壊したラスベガスの街を、俺達は行く。
そこかしこに転がる瓦礫。爆発した車両。砕け散ったアスファルト。
そして……焼け焦げた、あるいは原型をとどめていない、死体の山。

ひとつひとつが目に入るたび、胃袋からせり上がるものがある。
そいつを飲み込んで前を向くうちに、絶望を怒りが上塗りしていくのを感じた。
ふざけやがって。ぶっ殺してやる。やがて、死体を見ても吐き気を催さなくなった。
最悪の、慣れだった。

>「なぁ、明神。
 この街、スッゲーキレイなとこだったんだろ?
 瓦礫を見ただけでも分かるよ。きっとスッゲェキラキラ光ってて、ピカピカに輝いてる街だったんだろうな」

「バルディア自治領って行ったことあるか?
 ほら、霊銀結社のお膝元の。光の魔法で昼も夜もなくギラギラしてるとこ。
 あそこと同じことを、魔法以外の力でやってたのがこの街なんだ。
 俺も写真でしか見たことなかったけど、夜景とかめっちゃ綺麗だったらしいぜ」

>「……壊される前に来たかったな」

「……そうだな」

眠らない街のきらびやかなネオンを思う。
そして、すべてが過去形で語るほかないことに、腹の底が寒くなった。

>「管理者としての力を用いれば、破壊される前の状態に戻すことも出来るのではないか?
 それこそ『機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)』の技術を応用するなどしてじゃな。
 師父ローウェルをお止めし、侵食を取り除くことが出来さえすれば、そういった研究も出来るようになるであろうよ」

ふと、エカテリーナがそんなことを零した。

「サーバーのロールバックか……そいつができるなら、オブジェクトデータ以外も巻き戻せねえかな。
 あー……つまり、建物とかだけじゃなくて、人や魔族も。
 ラスベガスで死んだ人たちや……あるいは、滅ぼされたキングヒルや、ローウェルに消された軍隊も」

アルメリアは首都が滅び、正規軍も『侵食』で消滅しちまった。
もう国としての体裁を保つことは出来まい。早晩他の国に取り込まれるだろう。
大陸の覇権国家が突如として消滅すれば、空いたポストを巡って戦争だって起こり得る。
レプリケイトアニマで大地の栓をぶっこ抜かなくても、アルフヘイムは滅びに向かっている。

もしもロールバックが可能なら、地球だけじゃなくアルフヘイムもニヴルヘイムだって救える。
そう考えたら、少しは希望が見えてきたのかもしれない。

>「そーだよな。ん! じゃあ、サッサとスクラップどもをやっちゃって!
 クソジジーもバーン! って吹っ飛ばして! このキレーな街、元に戻そーぜ!
 この街はミズガルズいちのカジノの街だったんだろ?
 んじゃ、一切合切終わった暁にはカジノでギャンブル三昧だー!」

「いいねえ。俺さ、海外旅行って言葉わかんねーからイマイチ怖くて行けなかったんだよ。
 でもブレイブには翻訳機能がある。英語赤点の俺でもその辺の看板の文字が読める。
 世界中どこでも行き放題だぜ。ラスベガスに飽きたら次はヨーロッパとか行こうぜ!」

クラフトビールの本場のドイツだろ、海鮮とかピザとかパスタとか美味そうなスペインにイタリアだろ。
あとアレだ、トンカツっていうかカツレツの源流を辿るとフランスのコルトレットに行き着くはずだ。
トンカツフリークとしては見逃すわけにいくまい。

118明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 01:02:36
>「ま……何か目標を持つということは善いことじゃな。
 目的のため、何としてでも生き残らねばという気になる。
 何にせよ――先ずは連中を何とかせぬことには始まらぬが、な……!」

ひときしりガザーヴァとはしゃぎ合っていると、カテ公が鋭く警告する。
意識を前に遣れば、そこには10人ばかしのイクリプスがたむろっていた。

「出やがったな、クソったれの侵略者どもがよ。
 お船に帰らねえで何やってんだ?本隊がしゃぶり終わった食いカスでも漁ってんのか。
 シケモク拾いに精が出ますねえ、スカベンジャーに改名したらどうすか」

>「……やっと出てきたのね。
 建物の中に閉じ籠って、ブルブル震えてるだけの相手じゃ埒もないと思っていたんだけれど――
 死ぬ覚悟が出来た、ってことかしら?」

>「ヘッ。そりゃこっちの科白だってーの。
 ザコを殺して最強気取りのテメーらに、ホントの最強ってのがどういうモンか教えてやるよ!
 お代は――テメェらの命でなァッ!」

ガザーヴァが吠える後ろで俺も中指を立てた。
両手で。奇跡のカーニバル開幕だ。

>「ははッ! 久しぶりの運動だァ! 明神――ボクは『遊ぶ』ぜえッ!
 命令はその後にしろよな!」

犬歯を剥き出しにして幻魔将軍がイクリプスに躍りかかる。
ライブでヘトヘトになってから半日も経ってないってのに恐るべき体力だ。
俺達がリューグーとガチバトルする中、ずっと歌っててフラストレーションが溜まってたのかもしれない。
いつも以上にテンションが上ってプレイできるのも頷ける。

俺はと言えば、ガザーヴァと対峙する槍使い以外の連中の動向に気を配りつつ、
眼の前で繰り広げられる剣戟の一部始終を目に収めていた。

ガザーヴァが敢えて単独で飛び出した理由。
暴れたいってのももちろんあるんだろうが、敵の手前隠したもうひとつの目的がある。
俺に、敵の出方を見せること――冷静に、俯瞰して見れば、イクリプスの立ち回りを分析できる。

奇しくも槍を得物とする者同士、ガザーヴァとイクリプスの戦いは熾烈を極めた。
目にも止まらぬ刺突の応酬。
ガザーヴァは踊るように身を躱し、返す刀で痛打を叩き込む。
対するイクリプスも、ビットみてえな小型の自律武装を展開し、波状攻撃を以て臨む。

加速度的に手数を増すイクリプスの攻勢に、追い詰められ始めたガザーヴァ――
その様子を目の当たりにしても、俺はちっとも怖くなんかなかった。

偽りの窮地を"エサ"にして、隙だらけの大振りを誘い込む。
ゲームでさんざん煮え湯を飲まされたガザーヴァの十八番。
幻魔将軍の悪辣なライフハックだ。

>「――なワケねーだろ、バーカ」

カウンターの蹴りに喉元を穿たれ、血の尾を引きながらイクリプスが縦回転する。
蹴られたイクリプスはおろか、周囲のギャラリーすら何が起こったか理解できないようだった。

119明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 01:04:21
>「……見切った? 見切った、と言ったの?
 この私の攻撃を? 最強の『星蝕者(イクリプス)』の攻撃を……?」
>「おーよ」
>「ふざ……けるなァァァッ!」

激昂したイクリプスが再度突貫するも、今度は一撃すらガザーヴァを捉えられない。
そして再びのカウンター。真芯を穿たれたイクリプスは、起き上がることも叶わずそのまま消滅した。

>「ンー。鹵獲作戦は無理かぁー。ま、そりゃそーだよな」

ガザーヴァは消えたイクリプスを最早顧みることすらなく、無感情にそう吐き捨てた。
怖え〜〜っ。
それ以上に強え……なんつう頼もしさだ……。
これが三魔将。ニヴルヘイム最強戦力の一角、その面目躍如だ。

>「ふん、旧作のキャラだからといって舐めて掛かるからこうなる。
 次は私だ、格の違いというものを見せてやろう」
>「いーぜ、いーぜぇ。
 明神、コイツの動きをよぉーく見てろよ。そしたら、コイツらの弱点がすぐ分かるハズだから」

槍使いの敗北を見届けた残りのイクリプスから新手が進み出る。
この期に及んで戦力の逐次投入をやらかしてんのは、未だにこいつらが俺達を舐め腐ってる証左だろう。
そして"その程度"の相手に負けるガザーヴァではなかった。

>「分かったか? 明神?」
>「コイツら、攻めのパターンが少なすぎンだよ。バリエーションに広がりがなくておんなじ技ばっか使ってくるから、
 それさえ見切っちまえば当たるワケねー、ってコト!」

「ははぁ……なるほど。こんだけしっかり見せてもらえりゃ大体把握できたわ。
 攻撃ボタン1個か2個くらいしかないのね」

言われてみりゃ納得の仕様ではある。
格ゲーじゃあるめえし、PVEのゲームで武器の振り方による駆け引きなんざ操作が無駄にややこしくなるだけだ。
強攻撃と弱攻撃、あとはボタン長押しで溜め攻撃くらいか?三種もありゃ十分コンボパーツは成立する。
そもそもの話として――SSSはまだ対人戦をシステムに組み込んでないんだろう。
シンプルな攻撃速度とステータスの差に惑わされがちだったが、付け入る隙はいくらでもあったんだ。

『こちらザ・ストリップ。イクリプスの攻撃モーションはおそらくクラスごとに固定だ。
 初撃の始動を見逃さなければカウンターを取れる。
 注意すべきは、始動がワンパっつう弱点はイクリプス側にもいずれ周知されるだろうってことだ。
 遠からず、モーションキャンセルによる隙潰しを編み出してくる』

カザハ君とウィズリィちゃんが繋いだ回線に声を投げる。
無双できるはずのイクリプスが『原住民』に何も出来ず敗北した――
このニュースはすぐに連中の母艦で共有されるはずだ。
あるいは今まさに、死んだ槍使いのプレイヤーがフォーラムあたりに書き込んでるかもしれない。

コンボの始動を潰されると分かってしまえば対策は不可能じゃない。
例えばダッシュとかジャンプとか、別のアクションを織り交ぜることによるモーションキャンセル。
あるいはキャンセルを前提にしたフェイントなんかにも気をつけるべきだろう。

120明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 01:05:42
>「先程は不覚を取ったが……。此度はそうは行かぬぞ。
 妾の虚構魔術、その精髄を見せてくれよう!」

エカテリーナが魔力を込めた紫煙を燻らせ、一帯を幻惑に包む。
イクリプス達は視界を奪われ、惑い、果てには同士討ちさえも始める。

『エンバースの推測通りだ。連中は回避できないタイプのデバフを初見で防げない。
 それから……奴らは死ぬと消滅する。ドロップアイテムは今のところなし。
 次は生け捕りと装備の剥ぎ取りを試そう。オーバー』

>「明神、頼むぞ。此処に居る者ども、皆アンチにするのじゃろう?」

さて、いい加減俺もぼっ立ちで観戦かますのを終わりにしよう。
魔力を調節してボイチャの回線をガザーヴァとエカテリーナだけに設定する。

『カテ公、今から共有する俺のイメージに沿って虚構魔術で幻影を構築してくれ。
 ガザーヴァはマゴットと一緒に指示したタイミングで攻撃を頼む。
 俺達で……SSSをクソゲーにしてやろうぜ』

ボイチャ魔法は通常声を伝えるだけのものだが、魔術を齧った俺ならもう少し踏み込んだ仕様に改造できる。
言葉にする前の漠然としたイメージ。映像めいたそれを、高速かつ齟齬なく相手に伝えられる。

エカテリーナの虚構魔術で創るのは――巨大な狼。
リバティウムでライフエイクと戦った時にカテ公が身に纏った、近接戦特化の虚構の拡大版だ。

「オオオオオオォォォ――ッ!」

巨狼が咆哮し、イクリプスの集団めがけて突貫する。
カテ公の虚構は単なる幻影じゃない。その爪にも、牙にも、実体がある。殺傷力がある。
アスファルトを切り刻みながら疾駆し、イクリプスの一人に剛腕を振り下ろした。

当然、敵もただ漫然と立ち尽くしているわけじゃない。
迎撃に光弾を放つ。米軍の戦車を装甲ごと焼き尽くす威力を秘めた光の束が巨狼に殺到する。
直撃――だが、虚構で造られた巨狼は止まらない。毛皮の各所を焦がしながらも一切速度を減じることなく爪を振り抜く。
イクリプスは鎧を抉り取られ、吹き飛んで建物の壁に激突。そのまま消滅した。

「ぎゃはは!ワンパンじゃねえか!もしかしてですけどぉ……強靭がカスであられる!?」

仲間のデスを横目に見ていた残党達が一斉に武器を振るい、巨狼に突き立てる。
30ミリの鉄板をぶった斬れる日本刀も、戦闘機を小枝みたいに振り回す握力も、巨狼の動きを止められない。

虚構魔術の真骨頂、その一つは『虚実』を織り交ぜられることにある。
爪も、牙も、殺傷力を有する部位は本物だ。そしてそれ以外の肉体を構築する全てを幻影で造った。
そして同時に、『攻撃した手応え』を幻影で再現することで、実体がないことを悟らせない。
攻撃してくるのに攻撃が通じない理不尽の塊みてえな巨大ボスの完成だ。

ゲームをクソゲーに変える明神メソッドその1――『ずっと敵のターン』。
とりわけ高難度のアクションゲームは、アクションでありながら"ターン制"のバトルと表現される。
敵の猛攻を凌ぎ、隙を見つけて反撃し、怯ませ、追撃を叩き込む――
これはすなわち、敵のターンをいかにして生き残り、自分のターンに攻撃を入れられるかっつうターン制の様式そのものだ。

では、敵が一生隙のない出し得モーションを擦り続ければどうなるか。
反撃しても怯まず、攻撃を継続してくればどうなるか。
――ただひたすらに敵が暴れまわるのを眺めるだけの、敵だけ楽しそうなクソゲーが爆誕する。

121明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 01:06:23
「おやおや?どうした?反撃が来ねえな?試合放棄かな???」

巨狼が再び吠え、そのあぎとにイクリプスを捉える。
対するイクリプスは――迎撃の無駄を悟ったのだろう――回避を選択した。
ジェットパックと思しき背中のスラスターを蒸かし、横っ飛びに牙を躱わす。

『――ぶちかませ、ガザーヴァ』

巨狼の側面に回り込んだイクリプスへ、ガザーヴァが槍の一撃を叩き込む。
『巨狼の中から』だ。実体のない部分に、姿を消す虚構を纏わせたガザーヴァを潜ませておいた。
牙の届かない位置に退避していたはずのイクリプスは、完全に想定外の位置から不可視の攻撃を食らう。
鎧ごと胴体を貫かれ、そのまま消滅した。

――クソゲーメソッドその2。『当たり判定詐欺』。
敵の攻撃を紙一重で躱したはずなのに、亜空間じみた広い攻撃判定に引っ掛かってダメージを受ける。
実際は透明化した別の攻撃を食らったわけだが、イクリプスが真相を把握することは不可能だろう。

奴らはβテストに手を挙げる程度にはゲームをやり込んでるタイプのプレイヤーだ。
アクションゲーに親しんでいればいるほど、不自然なダメージを『理不尽な当たり判定によるもの』と納得してしまう。
そして「今の避けただろうが!!!」とコントローラーを投げるのだ。
俺もめっちゃ経験あるからよく分かる。

「――――!!」

不意に爆発。巨狼の牙が弾け飛ぶ。
見れば、巨大なマシンガンを抱えたイクリプスが後方から巨狼の牙を狙撃していた。
……そろそろこの理不尽なクソゲーに対応してくる奴が出始めたか。
実体がある牙や爪を狙えばダメージを与えられると気付いた奴がいるらしい。

『エカテリーナ、プランB』

すぐさま指示を投げると、狼がその巨体を光の粒に溶かして消滅した。
そして戦場から100メートルほど離れた地点に再出現する。
巨狼にはローウェルの指環を仕込んである。ターゲットマーカーにも表示されたんだろう。
イクリプス達は即座に巨狼に飛びかかり、見極めた弱点部位へ攻撃を加える。

巨狼が消滅。
そしてまた、離れた地点に出現した。

――クソゲーメソッドその3。『露骨な遅延行動』。
攻撃を受けたら即座に姿を消し、場所を変えて再出現する。
消えている間は当然攻撃できない時間だ。仕切り直しを頻繁に挟まれれば当然ストレスはマッハに達する。

終わらない敵のターン、不自然な当たり判定、無意味に長引く戦闘時間――
高難易度と理不尽を履き違えた数々のクソゲームーブを積み重ねられて、イクリプス共の脳みそは沸騰寸前のはずだ。
トドメの仕込みを打つときが来た。

「『幽体化(エクトプラズム)』――プレイ」

安置になってる建物内に退避し、幽体離脱で身体を抜け出す。
幽体は攻撃はおろかスマホを持つこともスペルを手繰ることも出来ないが、今からやることに支障はねえ。
巨狼に翻弄され続けているイクリプス達のもとへ駆け出した。

122明神 ◆9EasXbvg42:2024/05/05(日) 01:07:12
「イクリプスの皆さん!こんにちは!!うんちぶりぶり大明神です!!!
 『星触のスターリースカイ』のβテストはお楽しみいただけていますでしょうか!」

カテ公の『扇動』の効果で拡大された俺の声は、戦場を飛び回るイクリプスの全ての耳に届く。

「ああ?クソ判定の狼がウザい?そうでしょうともそうでしょうとも!
 おたくのナイ君と相談したんですよ、『簡単にクリアされたら悔しいじゃないですか』ってね!
 あの狼ちゃんはテコ入れの結果ってわけ。
 正式リリースの暁にはこういう"歯ごたえのある"敵をバンバン実装していく予定だから、みんな楽しみにしててね!」

瞬間、俺の首が飛んだ。
イクリプスの一人が瞬間移動めいた速度で接近し、刀を横薙ぎに振るっていた。
だが今の俺は物理的に相互の干渉ができない幽体だ。落ちてきた首は元の胴体に収まった。

「駄目でーす。さっきも言ったろ、俺はナイと内通してんだって!ナイだけに(笑)。
 あのクソボケナビと同じ存在なの!ちゃんと最後まで話聞かないと実績解除されないよ??」

クソゲーメソッドその4!『ウザいNPC』!!!!
クエスト依頼者とかにありがちな厚顔無恥で上から目線の要求してくる奴!
護衛対象とかで弱いくせに謎の義侠心を発揮して先走って敵の渦中に飛び込む奴!
ひたすら話が長くてくどくてうっとおしい奴!
クソムカつくのに殺せないNPCの存在もまた、ゲームをクソゲーに変える要素だ!!
ナイ!おめーのことだぞ!!!!

――ブレモンとSSSで客層が大きく異なる以上、イクリプスの殆どはブレモンを『同じ運営の旧作』としか捉えてない。
ブレモンの知識が多少でもあるなら、ガザーヴァの持ってる神代遺物相手に無警戒に飛び込むはずもない。
俺が本当にナイと同質の存在なのか、それとも『幽体離脱』で魂だけになってるのか、判別する術がない。

「さて、自己紹介も済んだことだしそろそろ本題に入りますか。
 俺はナイ君と違って本題に入るっつったらちゃんと本題に入るからね。
 その辺あの子にも見習ってほしいものですね。今日は皆さんに、重大な発表があります」

息を吸う。たっぷり"溜め"を作る。
こういう無意味な『間』も、人をイラつかせるテクニックだ。

「僕の考えたSSSの18禁同人誌のタイトルを発表します。
 ――『生殖のスターリースカイ』(笑)」

クソゲーメソッド、最後のひとつは……『没入感の否定』。
ゲーム、特にRPGってジャンルのキモは"ロールプレイ"、キャラクターを『演じる』ことにある。
プレイヤーはその世界に生きるキャラクターとなって、世界を救ったり仲間を助けたり強大な敵と戦ったりする。
感情移入したキャラクターの成長や成功を追体験することがRPGの楽しさの本質と言って良いだろう。

良質なゲーム体験には、作品世界への没入が不可欠だ。
そしてそれは、アクションRPGと銘打つ以上SSSにおいても変わりない。

安易なメタネタや公式の悪ノリで冷水をぶっかけられれば、現実に引き戻されて……萎える。
そういうクソゲーの数々を、俺はいくつも見てきて、その度にGEOに駆け込んできた。

さあ、SSSをクソゲーに変える手札はこれで品切れだ。
イクリプスが萎え落ちするか、クソゲーを続ける気概のある奴が現れるか。
分の悪い賭けが始まった。


【虚構魔術をフル活用して高難度と理不尽を履き違えたクソボスを構築
 プレイヤーの没入感に冷水を浴びせかける】

123ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:27:49
>《それじゃ、こういうのはどうかしら。
 ジョンさんの言う通り、チームはスリーマンセルが三つ。
 ナユタとエンバースさん。カザハとジョンさん。それからミョウジンと――》

>「別に『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』でペアになんなきゃダメってワケでもねーだろ。
 トーゼン、ボクは明神についてく。明神だろ、ボクだろ、んでマゴット!
 それでスリーマンセル成立だ。ヤマシタとガーゴイルはいつでも呼び出せるから除外で」

>《んん……、何かバランスが悪い気がするわね……。
 それに、マゴットもミョウジンのパートナーモンスターでしょう?》

「僕はカザハと二人っきりで構わない…とういか僕の戦い方に大所帯になられても…邪魔になると思う…お互いに」

カザハの能力的には大人数のほうがいいのだろうけど…カザハはスキルの性質上とっても目立つ。
大人数にバフをかければそれだけ効率はあがるが…それに比例して敵のヘイトを買う事にもなる…。

明確な人数不利な今…カザハが歌わない事に越したことはないが…。

>「ザ・ストリップはこの地で最大の激戦区。今現在うろついておる敵も多い。
 此方としても頭数は少しでも多い方がよかろう、どうじゃ? 明神」

>「え〜?」

あぁ…この二人の会話を聞いてるだけで絶望的な今の状況を忘れられそうだ。
暗すぎるのはダメだ…気が滅入る。明るく…落ち着いてこれからの物事に対処しなければ僕達に明日はない。

>「そんな顔を致すでない。
 人命優先で逃げながらの持久戦を展開すればよいモンデンキントやカザハらと違い、
 其方らは戦いながらアンチを増やす持久戦を展開せねばならぬ。
 ならば、必ずや妾の虚構魔術が役立つであろう。多数の敵を翻弄し手玉に取る、それが虚構魔術の真骨頂ゆえ」

まあ…もうちょっとだけ…危機感を持った方がいいかとも思わないわけではないけど…。

「まあまあ…遠足じゃないんだから…わがままいわずに…なゆもなにかいって………」

なゆは眠っていた…。

>「正直あまりいい兆候ではないけど……そっとしておくって事には同意見だ」

これは…本当に疲れているから寝てるのか…?

そんな…よくない不安だけが僕の中で溜まっていく。
仕事柄…気絶するように寝たり本当に気絶した人間を見てきたが…このなゆの状態は…

「…早く終わらしてみんなで…遊びにでもいこう」

不安を口に出すよりも…一刻もはやくなゆを解放してあげよう…そう誓うのだった。

124ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:28:00
>「私と兇魔将軍はこのワールド・マーケット・センターにいるわ。
このラスベガスで一番大きな収容施設がここになるから、生存者はどんどんこっちに運んできて頂戴。
怪我人がいれば治療するし、休ませる場所だってあるでしょう。
道中、医薬品や治療道具、食糧……なんでもいいから、役立ちそうなものがあればそれも送ってくれると嬉しいわ」

>「オレも打って出たいところだが、已むを得ん。
 ニヴルヘイムの同胞たちを発見したら、これを見せてやれ。
 大人しく貴様らに従うはずだ。その者たちも此処へ連れてきてもらおう。
 保証は出来んが、作戦に有用な力を持っている者も確保できるやもしれん」

「わかった…ありがとう」

僕はイブリースからメダリオンを受け取る。

>「三魔将の割符! あったなぁー、そんなの! オマエまだ持ってたんだ?
 パパから貰ったものなんか全部捨てたと思ってた!」

>「……まあ……な」

イブリースは顔を逸らし少し恥ずかしそうにしている。
彼にとってこのメダリオンは大事な物なのだろう…それを躊躇もなく僕に渡す…。

僕の一人よがりかもしれないけど…少しだけ…絆を感じた。

>《みんなのスマートフォンからも、マップを閲覧できるようにしておいたわ。
 それから、この回線も常時開放しておくから。生存者がいたら報告して頂戴。
 こちらから『門』を開いて、ワールド・マーケット・センターに収容できるようにするわ》

>《探索の際は、こまめにセンターに戻ってきて適宜補給と回復を受けて頂戴。
 それから、連絡は密にね。どんな小さなことでも、何か異常があればすぐに報告して。
 こちらからも常にモニターはしているけれど、相手は未知の敵よ。
 何が起こるかまったく予想できないから》

「しかし門…便利だね」

多人数が使用できる移動手段が弱いわけないが…余りにも便利すぎて…
だが今現在僕達が持ちうる手段や技術の中で明確な有利を取れている部分である。

>「行った先からこっちに帰る用の門はいつでも開ける……ってこと!? すごいじゃん!」

不利な状況で相手に勝つためには自分たちの有利を押し付ける必要がある。

>《このワールド・マーケット・センターやマンダレイ・ベイなどのホテルは外から攻撃されても破壊されないと思うし、
 『星蝕者(イクリプス)』に侵入されることもないと思う。
 彼女らにはマップ上の敵を倒すことはできても、障害物として配置された建物を壊すことは出来ない。
 だから、戦闘の際は地形も効果的に使うことが出来るわね。ビルなどで射線を切れば、相手の攻撃は届かないということ。
 でも、先程の戦闘を見るに……マップ上のオブジェクトに干渉することは出来そうだったわね。気を付けて頂戴》

「オブジェクトを動かして…自分達じゃ直接破壊できないものを破壊できる可能性があるって事か?…あ〜…こうゆうの考えるのは苦手なんだが」

そういえば戦闘機を振り回してる奴もいたっけ…はあ〜…まあ…今から僕の頭で考えてもまともな案はでないだろう。

>《それと……メトロや下水道は通常のマップとして認識されているとの結果が出たわ。
 つまり、『星蝕者(イクリプス)』にとっても侵入は可能、ということね。残念だけど》

「どっちにしても気を抜くつもりなんてなかったから関係ないさ…」

>「基本は下水道を通っていくことになりそうね。スラムがあるのだったかしら?
 ……エーデルグーテで私たちが『永劫』の賢姉に対抗していたときと同じようなものかしら。
 あのときも、私たちは聖罰騎士の手を逃れて信徒たちを隠し村へ保護するのに、地下に広がる万象樹の根を使っていたから」

スラムか…この緊急事態だ…もし騒ぎになったら少し黙ってもらう必要があるかもな…なるべく平和にね

>「そうだね。我々の行先は一番生存者がたくさんいそうだ……。
ジョン君、敵の情報収集は他のチームに任せてさ、敵がいない下水道で行こう。
一人でも多く助けようね……!」

「あぁ…そうだな!」

125ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:28:17
>「作戦は決まりじゃな。
 ならば、善は急げじゃ。さっそく出立を――」

「………なゆ」

>「ぅ……ん、んん……。
 ……はっ!? わ、わたし、寝てた? ゴメン! こんな大事な話してるときに……!」

>「大丈夫、大丈夫! 今ちょっと寝られたから、元気いっぱい! 体力マックスだから!
 ね、カザハ、わたし寝てる間に寝言とか言ってなかった? ヨダレ垂れてない?」
>「やめとけ。空元気なのは見れば分かる」

なゆはもう限界だ…このままいけば戦闘中に突然気絶する事すらありえる。

>「その状態で外へ出るのは危険だ。
 ……オレがお前の代わりに行く。お前はここで継承者と一緒に、生存者の保護に当たってくれればいい」

本当なら無理やりにでも…止めるべきだ…絶対に戦場にでるな…と。しかし…

>《そうね……。その方がいいかもしれないわ。みんなはどう?》

しかし…

>「ありがとう、みんな。
 わたし……行くよ。何があっても、ここは行く。後ろで待ってるなんて出来ない」

>「マスター、でも」

>「最後まで歩きたいんだ。みんなと、一緒に」

>《ナユタ――》

>「……連れて行って。エンバース」

>「今度は俺が応える番だ。好きなだけ俺を頼りにしろ。どこへだって連れて行ってやる」

なゆは…だれがどうみても…限界だ…これ以上戦う事なんて…できてもするべきじゃない…それでも…
この戦いに決着をつける為に…この物語を平和に終わらすために…なゆは絶対に必要だ。

>「さあ――行こう!
 わたしたちの助けを待ってる人たちを保護して、『星蝕者(イクリプス)』も倒す!
 そして最後にはローウェルをやっつけて、ブレモンがまだまだ伸びしろのあるコンテンツだってことを教えてあげなくちゃ!」

僕がやらなきゃいけない事は無駄に反対して騒ぐ事ではなく…一刻も早くこの馬鹿げた戦いを終わらして…なゆに平和を…世界に救いもたらす事…。

「あぁ…必ず認めさせよう」

126ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:28:36
…とかっこつけ勇んできたものの…僕とカザハはお世辞にもきれいでもいい匂いでもない場所を歩いている…いわゆる下水道って奴だ。
フレモント・ストリート・エクスペリエンスを目指して進軍中である。

カザハはなゆ達と別れてから何か考え事をしてるようだ。なゆの体調を気遣っているのだろう。

>「羽根……生えてる。きっと、ジョン君のことを助けたくて進化したんだろうな……。
見て、カケルと似てる」

カザハの不安を感じ取ったのか…部長がカケルの背中によじ登る。

「今はこれ自体で空を飛べるわけじゃないけど…空中で方向転換をこれでする事はできるんだ
パッシブも強くなったし…これから部長はもっと強くなるぞ!」

「にゃー!」

>「あの羽根、モフりたい……」

うーん存分にモフらせてあげたいけど…今は前を警戒しなきゃいけないからまた後でねと伝える。
しかしこの匂い…部長が普段よりも険しそうな顔しているのも納得の臭さである。

>「下水道ってなんかすごくファンタジーRPGのダンジョンっぽいね……!
ここ、地球のはずなのに変な感じ……!」

「たしかに…道を逸れれば宝箱があるかもしれないな…いや冗談だよ」

リューグークランとの一件があったからだろうか…会話がぎくしゃくする。
恥ずかしいのと何を言っていいのか…しかもあんな事があった直後に二人っきりになるなんて…クソ…どうしたらいいんだ…?何を話したらいいんだ…?

クソ…ヤングなボーイでチェリーでもあるまいになにを狼狽えているんだ僕は…!

ひじょーーーーに気まずい沈黙が流れる。その沈黙を破ったのはカザハだった。

>「ジョン君……まだちゃんとお礼言えてなかったからさ。
リューグークラン戦のとき、ありがとね。
キミだって本当は人に生命力を分け与える程の余裕は無かったはずなのに……。
……思い返してみれば最初からずっと守って貰ってたよね。それこそ明神さんとデュエルした時から。
頑張って守ってくれるの、すごく嬉しいんだ。そんなの駄目なのに。
本当は間違っても我のために怪我してほしくないし無理させたくないのに……!
どうしよう、心が二つある……!」

「何言ってるんだよ…僕を守ってきてくれたのは…君じゃないか」

この世界にきてずっと必死に目の前を走ってきた。
流されそうになるほどの情報量にひたすら流されて…見たくない真実さえも強制的に見させられた。

裏切りを本気で画策した事もあった…
心が折れて自分の人生を諦めようとしたことさえあった。

それでも僕が今ここにいるのは…

「僕は…したい事をする…そうゆう風に僕がしたいって思えるようになったのは…君のおかげなんだ…だから素直に僕を頼ってくれ…カザハ」

ところで…

「ところで…さ…その生命力を分けたくだりなんだけどさ…あの時は無我夢中でっていうかその…あの…くち」

「ニャッー!!!」

部長が生存者の匂いをキャッチしたらしい。話を切り上げ歩くスピードを速める。

>「あ……、あんたたちは……?」

よかった…生存者はどうやら無事のようだ…数も概ねレーダーで予測した数と一致する。

「安心してください。私たちは救助隊です…すぐに後続の救護部隊の所にお連れしますのでこの場所にいる者達をここに今すぐ集合させていただけ…」

>「落ち着いて聞いて。こんな姿だけど、敵じゃない。
広い意味ではあなたたちと同じ世界の存在で、サ終阻止……って言っても分かんないか!
えーと、要するにあの制服のやつらに対抗する勢力……!
我々が来たからにはもう大丈夫だからね! あいつらの好きなようにはさせない!」
>「ワールドマーケットセンターを拠点にしてるんだけど、
そこにいけば仲間の高位の回復術士と強い護衛がいるから、ここより安全だと思う」

一般人に突然魔法とかいっても通じないし…混乱させるだけだが……がまあ仕方なし…門の説明もしなきゃいけないからそのほうが手っ取り早いか…。

>《転移門を開くわね》

「皆さん…詳しい説明はこの先で行う者がおります」

127ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:28:55
やはり門で移動する事に抵抗のある人達が少しの間渋っていたがなんとか移動させる事に成功し…また下水道で移動を再開する。

>「どういうこと!? こんなところに生存者……!?」

マップを見ていたカザハから下水道に生存者がいるのを発見して。
普通の人間がこんな所をうろついているとは考えにくい気がするが…。

>「行こう! 襲撃を受けて下水道に逃げ込んだのかも……!」

どっちにしろ僕達に選択肢はない…なるべく早く向かう事にした。

>「おやおやおやぁ〜?
 ドブネズミみてゃぁーに下水道を伝って悪さしとるヤツがいると思ったら――」

>「アンタらかにゃ。アルフヘイムの『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』たち」
>「よーっ! こんなトコでまで会うだなんてキグーだなぁー! ははッ!」

星蝕者ではなかっただけマシといえばいいのか…やはり避難民などではなかったな。

>「ナルホドにゃァ……『星蝕者(イクリプス)』の寄り付かない下水道を使って人命救助とは、
 なかなか考えたもんだにゃ。
 ただにゃぁ……そんな小細工、アタシたちには通用しにゃーて。
 アタシもロスやんも、地下を通るのは得意だで」

>「そーゆーコトだ!
 でもさ、よかったー! 師匠のめーれーでこの世界に来たんだけど、何が何だかわかんなくてさ!
 イスリクプ? ってやつらも、おれたちのいうことぜんぜん聞いてくれないし……。
 おもしろくないなーっていってたんだよ! なー、エリ!」

「なるほどなるほど…じゃあ…お前等は『敵』なんだな?」

クソ猫と問答してる時間は僕達にはない。
しかしも星蝕者と繋がってると分かった時点でかける慈悲もない。

「クソ猫…お前にはカザハの件でも貸しがあったよな………口だけ聞けるようにすればいいか」

>「とっ……とにかく、おみゃーさんらを見つけてまった以上、見過ごすことはできにゃぁンだわ。
 大人しく観念してちょぉ?」

「僕がお前を許すと思うのかッ!」

カザハに地面に頭を凝りつけて謝罪するまで痛めつけてやるっと思ったその瞬間…間に割って入る形で乱入者が現れる。

>「こんなところに隠れていたとは……地上をいくら虱潰しにしても、下らない雑魚しか出てこない筈ですね」

>「うちのチーム、基本戦闘しない想定だったから手薄なんですよ……!」

「あぁ…もうこっちもあっちも失言だらけじゃねーか!!!!」

128ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:29:12
>「あ、あの……」
>「え、ええと、その……『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』を見つけて、『星蝕者(イクリプス)』の皆さんに報告したのは、
 アタシたちだで……どうか、ナイ様にはよしなに……」
>「褒美にありつきたいと? 浅ましい……やはり時代遅れの旧作のキャラは思考が低俗ですね。
 いいでしょう。忘れていなかったら伝えますよ」
>「……あ、ありがとうございます……にゃ」

「おい…僕が…言うのもなんだが…お前それでいいのか?」

どうやらクソ猫の組織内力関係はこれではっきりした。それだけでも収穫ではある…あるのだが…。

問題は…もうエンカウントしてしまって逃げる事は不可能だって事だな。

>「ウィズリーちゃーん! 門開いてー! 門!」
>「早速逃げ帰ろうとしとるこの人……!」

「何言ってるんだカザハ!だめだ!避難所を危険に晒す事は絶対にできない!」

>「今の冗談! 冗談だから! 開かなくていいよ!」

「早く応戦する為の魔法の準備をしろ!はやく!!」

油断している今しか僕達のチャンスはない。

>「マリスエリスとロスタラガムに見つかっちゃった! イクリプス20人ぐらいと戦いになりそう……!」

>「ジョン君、大丈夫だからね……!
多分みんな忘れてるけど! 我、ゲームで言ったら多分レイド級か少なくとも準レイド級だから……! 知らんけど!」

「いいから準備しろって!!」

クソ猫との会話を終えたのか星蝕者が一斉にこっちに振り向く。

>「さて。では、始めましょうか。誰が殺しても恨みっこなし――ですよ!」

>「ああああああああああああああ! やっぱりいいいい!
少数を大勢でボコるのはああああ! 良くないと思ううううううう!」

まだ接近してくるタイプはまだいい…だが…出鱈目に乱射してくる銃タイプが厄介すぎる!!

>「テンペスト・ヘイスト! 我のことは気にしないで基本避けてね!」

そう…僕にも余裕などない…!急所に…一撃でももらえば余裕であの世行きだ!

「フン!」

横の壁を蹴り瓦礫…埃で視界を奪うついでにたまたま破った先の空間に飛び込む。

「カザハ!」

>「アトモス・リフレクション!」

煙によるリアルな妨害も…幻覚のような魔法的妨害も…問題なく適用される…!それなら勝機は…ある…!

狭い地形に必要以上の大所帯…それに埃による大量の煙に幻覚…ここまでくれば当然ヘタに撃つわけにはいかないはずだ。
僕は狼狽えていながらも…それでもなお僕を倒さんと前進してくる星蝕者に向かって走る。

「狙うのはお前だ!」

銃を持っている敵の高等部に目掛けて拳で一撃。よろめいたところに更に更に両手で一撃を食らわせる。
そしてそれで止まらず床に倒れた相手の頭に目掛けてサッカーボールのように蹴り上げる。

近接タイプが僕に気づいて振り向く。

「部長!」

部長が光刃を持った星蝕者の一人の肩に噛みつくそして星蝕者はそれを腕で払いのけようとする。
しかしはがれない…いくら強靭な力を持っていてしても肩を引きちぎるような覚悟で剥がそうとしなければ部長は決して外れない。

判断ミスだったな…武器でさっさと振り払えばワンチャンあったろうに…ま…部長に齧られて正常な判断できる相手はすくない…
そうゆう風に…人間が一番冷静でいられなくするためにどこをどう噛まれれば一番いやなのか…部長を僕が訓練したから。

「おらあ!!」

部長に注意が向いていた星蝕者の顔面に鋭い蹴りを放つ。

幻覚を浴びそれでもイノシシのように突出した二人をなんとか倒す。

129ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:29:24
星蝕者を倒した…それも無傷で……いや…無傷…とは言えなかったか

「クッ…」

星蝕者を殴りつけた手や足から血が流れる。

「くそが…どんだけかてえんだよ…」

星蝕者の会話を聞く限りカザハの方も何人かやったようだ…大金星の勝利ではあるが…

「たかが数体って事か…」

星蝕者はまだ大量にいる…今は幻覚や目くらましでまだ満足には動けないが…。
その内暴れ出す奴もでてくるだろう…味方を巻き込んでもだ。

カザハと距離を取らされ…シンプルに人数不利…
それにクソ猫と…脳筋のお仲間までいるような状態だ…どうすればいい…

「そうだ…こいつらの装備を剥げば…!」

そう思い僕は倒れた星蝕者に触れる。もうピクリとも動かなくなった星蝕者をみて一瞬【あれ…僕もしかして…殺った?】と思ったが
星蝕者の体はフアアという効果音と共に光になって消えてしまった…装備ごと。

「…クソッタレ」

考えろ…どうすればいい…カザハと僕…二人をこの場から五体満足で脱出する方法を…
とりあえず合流しなければいけない…それから…合流して…それから…

どうにもならない。

圧倒的に人数不足だ…逃げるにも…立ち向かうにも人数が足りない。

不意打ちで何人か倒す。しかしカザハと僕の間にはまだ大量の星蝕者がいる。

ババババババッ

幻覚の効果が弱まり僕に目掛けてなんとなく連射し始める奴まで現れた。
壁を壊したり横道を増やす事で逃れ逃れやってきたが…僕がその銃の標準に捉えられるのも時間の問題だろう。

部長のスキルを使って正面突破…?囲まれた状態じゃだめだ…それこそ一斉攻撃を浴びて終わってしまう!

>「終わりだとかみんな消えるとか……そんな……そんな悲しい事言わないでよ!
吟遊詩人のキミなら分かるよね!? ブレモンの音楽が素晴らしいってこと!
だったら、そんな音楽が彩る世界もきっと素晴らしいんだ……!
大体キミはまだ本領発揮してすらないじゃん! 吟遊詩人のくせに最後まで本職で戦わずに終わるつもり!?
それとも何!? 看板に偽りあり!? 肩書だけのフレーバーだったの!?」

迷っていた僕にカザハの叫びが聞こえる。

>「二人とも聞いて! これがブレイブ&モンスターズの通常戦闘曲「バトル1〜勇気の魔法〜」ヴォーカライズバージョンだ!
見てて! 吟遊詩人とパワーファイターは最高の組み合わせなんだ!」

130ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:29:40
声が聞こえる…音楽が聞こえる。

その圧倒的な歌唱力に星蝕者すらも動きを止め…聞きほれる。
僕はその隙にカザハの元に走る。

>「ジョン君! かっこいいところ、あの二人に見せてあげてください!」

「あの二人!?」

それってクソ猫と脳筋って事!?
二人の顔を見る。二人は完全にカザハの観客と化していた。

一体なにがなんだかわからない…わからないが…

「やればいいんだろ…殺れば…!」

いつもの事だが魂に響く歌声は…いつ聞いても気分が昂ぶる…例え場所がこんなきったねー下水道だろうが…。
しかも今回は更に…湧き上がる力を感じる…感情の昂ぶりを感じる。

「この…気持ちはなんだ…?…いうならば…そう!…RPGで即再行動を付与されたかのような高揚感!」

自分でも何を言ってるのかよく分からないが…理屈ではない…興奮・高揚…とにかく言葉には言い表せないレベルでの気分の…高まりを感じる。

「いくぞ部長…今ならこんなザコども相手にすらならん…そんな気がする
「雷刀(光)(サンダーブレードユピテル)」プレイ!」

部長に雷刀を装備させ自分はローウェル印のナイフを出す。
残念だが僕には…かっこいい刀より…無骨で…性能重視のこのナイフがしっくりくる。

正々堂々と…星蝕者の集団に向かって部長と共に歩いていく。

「力が…全身に行き渡る!」

【闘いの唱歌(バトルソング)】

「掛かって来い…不意打ちオンリーで焦れてきた頃だろ……はやく来い!
弱い僕と部長が…弱いからこそ…辿り着いた境地を見せてやる。」


僕に同時に二人光刃で切りかかってくる。僕は冷静に目の前の星蝕者に対処する。
攻撃を最低限の動きで避けナイフを首元を掻っ切る。

さっきの戦闘で敵が完全な行動不能状態になると消滅するという情報を手に入れた事が大きかった。相手が死なないと分かれば…僕も全力が出せる。
スポーツとしての技術ではなく…正真正銘殺人の為の技を。そしてそれは部長も同じである。

もう一人も僕に向かって武器を振り下ろそうとする。しかしそれは叶わない…部長に阻まれて。

「にゃ」

指輪の効果で歌の効果が跳ね上がり…そしてまた指輪の効果で雷刀の鋭さもまた飛躍的に上昇している。
重装備してる部位ならともかく…全裸のように露出してる肌を切り裂くなのに…その刃の鋭さは十分すぎた。

一斉に星蝕者達が引く。

一人のブレイブとそのパートナー…それに星蝕者全体が受け身に回る異常事態に場が混乱する。

近接武器だけなら恐れる必要なし!そう誰かが叫ぶ。
その言葉に僕はニヤリと笑いナイフを構える

「本気を見せてみろ!」

【護りの祝詞(ガードフォース)】

銃の乱射攻撃がくる…それを僕は…ナイフで…弾いた。

バババババババッ
キンキンキンキンキンッ!

「僕は…もう二度と…僕の歌姫の前で無様な姿見せないと…誓ったのだ。」

半分ほどの弾丸弾き返した…跳ね返した弾丸は発射した者や近くの者に跳ね返り相手を行動不能に追い込む。
実弾系ならば…バフの恩恵もあればできないことはないというのが分かった。
音楽だけではなく…自分が成長しているというその感覚も上乗せされば今の僕の調子はピークに到達していた。

ちなみにもう半分は僕の体に着弾した。

…痛い…急所にきた分は全部跳ね返したが…さすがに弾幕全てを返すには…身体能力というより動体視力が足りていなかった。
全身から結構な血が噴き出してくる…やはり…冷静に考えてリスクとリターンがあまり合ってなかった。その点は反省点である

しかしここでカッコ悪い姿を見せるわけにはいかない…!

「…それだけか?」

しかし歌姫にかっこいい所を見せてと言われたのだ…この程度で…大騒ぎしてなるものか…!

「残念だが次はない…!「雄鶏乃怒雷(コトカリス・ライトニング)」プレイ!」

指輪の効果で範囲も威力も増大された雷は…この狭い下水道では避けようがない…。
この雷そのものは致命打足りえない…がしかし…だ

【疾風の賛歌(アクセラレータ)】

「そして雷に一瞬硬直した奴…焦って回避を入力した奴…どれも僕と部長は…逃がさない」

容赦なく隙を狩り続け…ついに星蝕者グループ第一群の最後の生き残りにナイフを向ける。

「これが人間とモンスターの協力プレイ…そして歌姫の力も借りた…ブレイブの新境地…三位一体の力…!
現実…ってのがなにかはもう僕にはわからないが…戻ったらみんな伝えてくれ…そして宣伝してくれ
ブレイブ&モンスターズは仲間と共に無限のビルドを作れる神ゲーだ…ってね」

そうして最後の一人の首を刎ねる。

131ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2024/05/08(水) 14:30:10
「どうだカザハ…僕は…僕達は…かっこよかったかい?」

ただ一つ問題があった…今…僕は表面だけ見れば僕は星蝕者達を相手に正面から圧倒した。
しかし実際の所普通の人間(と思われていた人物から)の一撃必殺の不意打ちでしかない。
僕に倒された星蝕者達はカザハの歌にバフ効果があるなんて思いもしなかっただろう…複数の初見殺しが内包されたスーパー初見殺しである。

しかし…これからすぐにくる第二群である後ろからゾロゾロ現在進行形で増えている星蝕者援軍連中には…手の内がバレてる可能性が高い。

「さて…力も…かっこよさも…ブレモンの可能性も…いま見せた通りだ
本当はまだとっておきもあるにはあるんだけど…小回りが色々と効かなくてね…」

カザハが僕にかっこよく戦えと言った理由はなんとなく察している。
クソ猫…もといマリスエリスとロスタラガムを…仲間に引き入れようとしているのだと…。

このまま僕とカザハだけでは…敵ごと引き連れて撤退し生存者の命を危険に晒すか…もしくは…ここで死ぬしかない。
がしかし…この二人が仲間になるなら…話は別だ。

星蝕者第二群はこの惨状をみて…明らかにカザハを警戒している…数でカザハに詰め寄られたら僕だけでは守り切れない。
そもそも…今回は下水道・不意打ちだったからよかったものを…広い場所で冷静に空飛べばいいじゃん。そう気づかれた時点でこの戦法は破綻する。

今ここで…この二人を仲間に出来なかったら僕達は詰む。
最低でもここからの脱出を手伝ってもらわなければ…。

「………僕は…正直に言えばこの世界に愛着などない」

だってそうだろう?所詮ゲーム。所詮暇つぶし。だ。
確かに他のゲームよりは熱くなったりはしたけれど…だからといってそれ以上はなかった…今までは。

「でも僕は…仲間が愛したこの世界を…次のゲームが始まるからなんて理由で…いやどんな理由だろうと滅ぼされたくないんだ
僕はこの世界が好きな僕の仲間みんなが好きだ…カザハを愛してる!…だからこそ…ローウェルを…正さなきゃいけないんだ」

僕は汚水で塗れた床に正座し…そのまま頭を下げる。

「頼む…マリスエリス…ロスタラガム…お前らにもなにかそうしなきゃいけない理由があるんだろう…だけど…
特別な条件とか…僕には提示できないけど…けど!僕にできる事なら何でもする…!」

気丈に振舞っているがなゆは…もうそんなに長い時間残されていないのかもしれない。
なゆの負担をなるべく減らす為にも…長時間撤退戦をするのは…どうしても避けたい。

「落ち着いたら僕の事を星蝕者達に差し出せばいい。
お前たちが不甲斐ないから油断させて捕まえて来たとかなんとか言えば…面目だって立つだろう…だから…頼む。」

その為なら僕の命を賭けたっていい…なゆはそんな事するなって怒るだろうけど…僕には僕の命以上にみんなが好きだから…。
別に無駄に捨てるつもりは一切ない。僕一人なら…手足を縛られてもどうにもでもできる自信ある…

どんな条件を出されるのか…そもそも承諾されるのか…わからない。それでも…今の僕にとって仲間達の命以上に…大切な者なんてない。

【プレイヤー・モンスター・歌姫の三位一体のパワーで星蝕者第一群撃破】
【しかし完全な手づまりの為…渾身土下座で二人に仲間になるように懇願する】


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