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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

266カザハ ◆92JgSYOZkQ:2020/09/14(月) 00:23:05
「ここは……」

そこは、風渡る草原だった。目の前で巨大な風車が回っている。
“始原の風車”――風渡る始原の草原の中枢、幾重にも張られた結界の中に存在するという。
普通の風車は風の力で回るけど、これは逆。
誰が作ったのか分からないけど太古の昔からそこにあり、
どういう原理で回ってるのか分からないけど世界中の風を生み出してるんだって。
その上に、虹色に輝く妖精の翅を持つ少女が腰かけている。
ボクと同じ、新緑のような色の髪とエメラルドグリーンの瞳。誰だかすぐに分かった。

「”一巡目”……」

少女は翼をはためかせ、ボクの目の前に降り立つ。

「あなたがここに来たということは、暗示が解けてしまったようね。強い力を望んでしまったのかしら?
……やっぱり私が出るしかないようね――
あなたには自由に生きて欲しかったけど……どう足掻いてもこの力からは逃れられないのね」

“一巡目”は、左手の甲に埋まったエメラルドのような宝石を示した。
王者の素質”レクス・テンペスト”をその身に宿す者は、体のどこかにこの宝石のような器官を持つ。

「なんだそりゃ、ボクにしてはえらくスカした口調だな」

「こっちが元々よ。マスターの前では違う自分になりたくてあなたの振りをしていたの。
あなたは云わば私が生きてみたかった仮初の人格……」

そうだった――
役立たずで、無能で、何の力も持たない一般人の人生は、他でもないボク自身が望んだものだった。
でも、それももう終わりだ。終わってしまう。
しかも、今度は1巡目と違って、望まぬ力に翻弄される被害者であることも許されない。

「入るパーティを間違えたのが運の尽きだったわね。明らかに付いてこれない者は置いていくのが優しさだと思わない?」

「……そう思うよ。これじゃあ何のために力を捨てたのか分からない。
ボクのままじゃみんなに付いていけないみたいだから……お願いします」

「分かったわ。全てが終わるまで――あなたはそこで待ってなさい」


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