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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

252崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/09/05(土) 03:56:00
「受けられよ、エンバース殿!
 世界に平和と安寧を、民草に幸福と清適を!
 次なるが――我が終極の武技!」

『遺灰の男』と『聖灰の男』の戦いが、最終局面を迎える。
大きくスタンスを取ったマルグリットの全身から、恐るべき純度の闘気が間欠泉のように迸る。
だが――本当に警戒すべきなのはマルグリットの全身から噴き出る闘気、ではなく。
その足許に展開されている、白く輝く聖灰の煌きだった。

ざ、ざ、ざ。
ざざ、ざざざ、ざざざざ。
ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ――

聖灰がふたたび何かを形作ってゆく。それも一体ではない。
そして、出現するのはアニマガーディアンのようにマルグリットが打ち倒したモンスター、ではなく――
あたかも鏡像のような『聖灰の』マルグリットが、六体。
マルグリットは聖灰に自らの溢れ出る闘気を分け与え、自分自身を複製したのだ。
聖灰とは千変万化。戦況に応じて武具にも防具にもなる。
その中でマルグリットは最終の極技を放つ前段階として、おのれを増殖させたのだった。

「エンバース殿、貴公は強い……。
 ゆえにこそ、私もそんな強者たる貴公を打ち破るため、奥義を放ちましょう。
 貴公に最大の敬意を払い……『聖灰の』マルグリット、参る!!!」

ゴウッ!!!!

灰で造られた六人のマルグリットが、一気にエンバースへと突っかける。
その勢いは、まさに暴風。破壊の大嵐。
六人のマルグリットは、単にマルグリットの外見を似せただけのレプリカではない。
マルグリットの闘気、そしてその血を与えられた、まさしく第四階梯の忠実なコピー……なのだ。
六人に増えたマルグリットが、その超絶の武技をエンバースへと解き放つ。
ダインスレイヴの衝撃波が幾人かの複製を捉える。その胴体を薙ぎ払う。
しかし、それだけだ。複製は一瞬腹部を裂断されるも、その部位が灰化。
すぐさま肉体を再構成し、何事もなかったかのように迫ってくる。
奇しくもそれはエンバース自身が攻撃の回避のために用いた戦術であった。
そして――

「此れなるは秩序の大渦!
 聖なる灰よ、其の身で大義を知らしめよ――――! 『渦斬群朧拳(プレデター・オーバーキル)』!!!!」

ぎゅばっ!!!!

本体を含めた七体のマルグリットが、全天全地すべての空間から同時にエンバースへと襲い掛かる。
その拳は必殺。その脚は必倒。
アニマガーディアンを手もなく屠り去り、しもべとして使役したマルグリットの奥義。
ゲームには遂に実装されなかった、文字通りの奥の手。
それが、『渦斬群朧拳(プレデター・オーバーキル)』。
アルフヘイム最高戦力、十二階梯の継承者。その第四席に籍を置く者の全力だった。

「はあああああああああああああああああッ!!!」

一度や二度の灰化では、マルグリットの奥義を回避しきることはできないだろう。
フラウの援護があったとしても、同じこと。エンバースと同じく灰で構築された六体のマルグリットが、
執拗に攻撃を繰り出してくる。
灰のマルグリット達がエンバースの視界を遮る。意識を自分たちへと向けさせる。
本体のマルグリットが灰の自分自身を突き破ってエンバースの懐へ、至近距離へと迫る。
凝縮され臨界に達した闘気によって、聖灰の男の拳が眩く輝く。

ドゴゥッ!!!!

マルグリット渾身の双掌がエンバースの胸に炸裂する。闘気が爆発し、轟炎が灰と化したその身体をさらに灼き尽くす。
生身の存在であれば、胴体を吹き飛ばされて即死しているだろう。
エンバースを大きく弾き飛ばすと、マルグリットは構えを解いた。
同時に六人の分身たちもその容を喪い、元の灰へと還る。


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