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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章
251
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2020/09/05(土) 03:51:41
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
嵐のように巻き起こる、音と音との激突。
その衝撃は計り知れず、モンスターだけではなく『異邦の魔物使い(ブレイブ)』にまでその余波がやってくる。
鳩尾を殴られたかのように響く重低音。頭を直接揺さぶられるような高音。
ヤマシタとインギー、双方の発する不協和音が、天秤の皿が揺れるように危うい均衡を築く。
ほんの一瞬でも気を抜いた方が負ける。音の弱い方が吹き飛ぶ。
今まで培った絆の力が劣る方が――敗れる。
>楽しいギグもそろそろ幕引きの時間だ。最高のトリを飾ろうぜ、シェケナベイベ!!
「ははッ、面白ぇーっつーの! うんち野郎、あんたとMCして! 対バンして!
地球じゃ思いもよらなかったよ、あんた……デキるヤツだったんじゃん!
――でもな! 勝つのはあーしだ! あたしたちなんだ!!
あたしだっていっぱい背負ってきた! 抱え込んできた! そいつは何があったって下ろせない、下ろしちゃいけない!
あたしは――あたしの絆で! あんたに………………勝つ!!!」
日頃のいかにもパリピといった口調をかなぐり捨てて、シェケナベイベは叫んだ。
絶対負けないと、盟友スタミナABURA丸に約束した。マルグリットの宿命と苦悩をその目で見てきた。
さっぴょんときなこもち大佐にだって、抱く思いはたくさんある。
マル様親衛隊は、ブレモン界にて最強。
それを、示す。
『イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』
インギーがシャウトする。その腕の動きが一層早くなる。
ワントーン上がった演奏が、ヤマシタのスキャットを圧倒し始める。その身体をズズ、とほんの少し後ろに押し遣る。
――勝った。
シェケナベイベは口許を綻ばせた――が。
その瞬間、ブツン! という音を立て、ギターの残りの弦が弾けた。
先程、濃霧に紛れてのヤマシタの一撃をインギーはギターを盾にして防いだ。
その際、幾本かの弦が切断された。そのときは、フィールドにいる全員がそれだけで終わりだと思い込んでいたが――
本当は違った。ヤマシタの一撃によって、すでにギターはほぼ全壊状態になっていたのだ。
それに気付かず限界以上の性能を出しての演奏を敢行したがゆえ、ギターは今度こそ完全に崩壊した。
ギターがなくなってしまえば、インギーはもう音波攻撃を出すことが出来ない。
バギィンッ!!!!
『ギャボォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!???』
ヤマシタの『聖重撃(ディバイン・スマイト)』が、インギーの左頬に炸裂する。
インギーは光と闇の螺旋をまともに浴び、錐揉みしながら遥か後方にあるレプリケイトアニマの内壁に激突した。
強固な螺旋回天の内壁に、クレーター状の巨大な亀裂が入るほどの衝撃。
「イ……、イン、ギー……」
シェケナベイベは呆然とした表情で、がっくりと床に両膝をついた。
壁に磔になっていたインギーが、ずる……と床に倒れ伏す。
音と音の勝負、絆と絆の決戦は、明神に軍配が上がった。
……いや、果たしてそうだろうか?
「……まだ……、まだだ……!」
ギリ、とシェケナベイベが歯を食い縛る。
致命傷を負ったはずのインギーが、ゆらりとゾンビのように立ち上がる。……元々ゾンビだった。
「まだだ……、こんなところじゃ、終われやしないんだ……!
あたしたちの絆は……強さは! こんなもんじゃない……こんな程度なんかじゃ、ないんだ……!
あたしは……証明を……約束、を……守って……、アブラっち……」
シェケナベイベはうわごとのように呟く。
だが、誰がどう見ても決着はついている。シェケナベイベを支えているのは、まさしく絆の力だけだった。
「ギターがなくなっても……まだ、闘える……。
スペルカード……『マグマのようにミキサーを操る男(ムラタ・ザ・マグマミキサー)』……プレイ……!」
満身創痍の震える手で、それでもシェケナベイベはスマホを手繰る。
明神と同じく、背負ってきたもの。捨てられなかったもの。
大切なものの想いに応えるために。
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