したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

249崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/09/05(土) 03:46:07
「あなたたち、チェスはご存じないかしら? 知らないわよね、シルヴェストルだもの。
 それなら教えてあげるわ……チェスの駒は六種類、今まで盤上にいたのは五種類。
 だったら……最後の駒はどこにいたのかしらね?
 当然の話、最後の駒は私自身。私こそが、このミスリル騎士団の『王者(キング)』――!」

王冠を戴いた巨大な駒の内部で、さっぴょんが告げる。
その円柱のような装甲が展開し、内部からさっぴょんが姿を現す。当然、その身体はまったくの無傷だ。
ふぁさ、とさっぴょんは髪をかき上げた。

「私たちが仲間を切り捨てたと言ったわね。
 あなたたちに何が分かるのかしら? 私たちの何を……?
 ええ、ええ、確かに私たちはスタちゃんを置き去りにしてきました。それは紛れもない事実よ。
 けれど、あなたたちは今まで、それを一度もしてこなかったと言えるのかしら?」
 
鋭い視線で、さっぴょんはカザハを射貫く。

「私たちがこの世界に召喚されて、それなりの時間が経ったわ。
 現在生き残っているということは、あなたたちも短からぬ旅をしてきたのでしょう。
 その道程の中で――ただの一度も別れはなかったと?」

むろん、カザハを含むアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』も、多くの別れを経験してきた。
ウィズリィと。真一と。しめじと。そしてみのりと――。
理由は様々だったが、ウィズリィを除いた皆はそれぞれの意思でそれぞれの道を歩むことを決めたのだ。
それはマル様親衛隊も変わらない。さっぴょんたちはスタミナABURA丸の選択を尊重したに過ぎない。
共に仲間の気持ちに配慮し、離別を受け入れた。違うのはスマホの有無――それだけだ。

「あなたたちに、私の大切な仲間の何が分かるというの?
 あなたたち風情が、どうやって私に思い知らせるというの?
 いいでしょう。やってご覧なさい――思い知らせて、みせればいい!!!」

ガションッ!

さっぴょんにとって、マル様親衛隊の仲間のことをとやかく言われるのは地雷以外の何物でもない。
静かな怒りを燃やすさっぴょんの背後で、王のチェスピースがバラバラに分解する。
そして、細かく分かたれたパーツがさっぴょんの身体に纏わりついて新たな様相を構築してゆく。
白銀の鎧を纏い、頭上に王冠を戴き。真紅のマントを纏った輝く戦姫の姿へと。

「あなたがた風情に奥の手を見せることになってしまったけれど、まあいいわ。
 奥の手なんて、また考えればいいだけだもの。
 さあ……この『魔銀の王騎(ミスリルメイデン)』の力を存分に味わうといいわ。
 そして――私に大きな口を叩き、親衛隊の結束を侮辱した報いを受けなさいな!!」

ギュオッ!!!

パートナーモンスターと合体し、今やレイド級モンスターにも等しい力を手に入れたさっぴょん――
否、ミスリルメイデンが一気に突っかける。狙いはもちろんカザハだ。

「……来なさい。『聖剣王(エクスカリバー)』」

ミスリルメイデンはスマホを軽くタップした。途端、右手に白く輝く刀身を持つ長剣が出現する。
『聖剣王(エクスカリバー)』。ブレイブ&モンスターズの中でも最高位、レジェンダリー・クラスの武具である。
その攻撃力は強力無比。使用者の全ステータスを底上げし、特に闇属性の敵に対しては致命的な破滅を齎す。
キングの駒を装着したことで、ミスリルメイデンは人知を超越した運動性能を見せる。
絶死の聖刃が、カザハを両断しようと迫る――

しかし。

ガギィィンッ!!

そんな聖剣の一撃を、突如として割り込んできたガザーヴァが騎兵槍を激突させて防いだ。

「させるかよ!」

「フ。いいのかしら? こんなことをして。
 ナイトとビショップを倒したわけではないのでしょう?」

「うっせー! そんなの知ったことかよ!
 こんなヤツ、守る義理なんてないけど! なんなら死んだって構わないって、むしろ死ねって思ってるけど!
 でもな……それでも! ここでテメーに殺らせるワケにはいかないんだ!」

鍔迫り合いを繰り広げながら、ガザーヴァが叫ぶ。

「コイツは! 仲間だから! ……ウチのパーティーの一員だから!
 見捨てちゃダメなんだ、一緒にいなくちゃいけないんだ!
 ボクは……正義の味方になる! だから……絶対に! ここで、コイツを見捨てたりなんてしない!」

「世迷言を! ならばここで死になさい、幻魔将軍!」

ゴッ! と音を立て、ガザーヴァがカザハを救うため放り出してきたナイトとビショップが迫る。
その馬上槍が、鉄球が容赦なく振るわれ、ガザーヴァに直撃する。
メキメキと肉が、骨がひしゃげて軋む。幻魔将軍は面頬の下から苦鳴をあげた。

「……ぅ、ぎ……ぃ……!」

だが、ガザーヴァは鍔迫り合いをやめない。カザハを助けるのをやめない。
正義の味方になる。明神の傍に、胸を張って立っていられる自分になる。
それが、ガザーヴァのたったひとつの望み、だから。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板