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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章
245
:
ロイ・フリント
◆POYO/UwNZg
:2020/09/05(土) 03:42:26
>ロイ。君が狙う弱点はココだ。明確に力が劣っている君でもここにナイフを突き立てられたら君でも勝てるかもしれない
>もしさっきの兵器頼みの一撃が…君の最大火力なら…君の勝ち筋はここしかない
「そいつは……ご丁寧に、だ……。
では……遠慮なく、狙わせてもらおう……」
ジョンはそこらに転がっているゴブリンどもの死骸を自らの血で操る芸当までやってのけた。
同じブラッドラストを習得しているが、オレにはとてもこんな芸当はできそうにない。
怪物としての才能まで、あっちの方が上とはな……まったく嫌になる。
だが。
だからといって……諦める訳には。いかない……!!
>いいかい?…もういいんだね?…一度始まったらもう止められないよ…本当に苦しいんだ…僕もう…
「来い。お前を止められるのはただひとり……オレだ!!」
オレは抜き放ったコンバットナイフにタクティカルスーツのポケットから出したアンプルの中の液体を塗布し、
身構えてジョンを迎え撃った。
>いただきます
ジョンが猛烈な速度で飛び掛かってくる。以前戦地で遭遇したジャガーだって、こんなに素早くなかった。
ふざけやがって、完全に捕食者気取りか。
だが、彼我の戦力差はいかんともしがたい。やつとオレとの力の差は開くばかりだ。
ジョンの目にも止まらぬ攻撃を、ブラッドラストを駆使して避けるのが精いっぱいだ。
>ちょこまか動かないでくれよロイ!
>…ロイ?ロイ!ロイイイイイイイイ!
「ッぐ……!!」
オレは一瞬の隙を衝かれ、ジョンに捕まった。首を物凄い力で締め上げられ、意識が明滅する。
もう、オレにこの腕を振り払う力は残っていない。オレはもう死ぬだろう。
だが――それでいい。
「が……は……!」
>ごめんごめんゴメン………ロイ……
>……シネ………シネエエエエエエ!!!!
……嗚呼。
ジョンが哭いている。その双眸から血が……ブラッドラストの――
いや、あいつの涙が……購われない罪となって零れている……。
シェリー、大丈夫さ……オレはちゃんとやり遂げる。
この、しょうがない弱虫を殺して……オレもまた死を受け入れよう。
そうして、また……三人で……仲良く……。
「……ジョン……。覚えているか……? 昔、三人で……家で、ホラー映画を観た……夜を……。
映画の殺人鬼を……シェリーは、怖がって……途中から、観るのを……やめてしまったが……。
お前は……最後まで、食い入るように……その、顛末を……見守って、いたっけ……」
オレは首を絞めつけられたまま、苦しい息の下で喘ぎ喘ぎ言った。
「殺人鬼は……銃弾でも……炎でも、決して……死ななかった……。
そんな、不死身の殺人鬼に……主人公たちは、どうやって……勝ったの、だった……かな……?
懐かしい……な……!!!」
ジョンは血の涙を流している。オレを殺すことにだけ意識を集中させている。
唯一守るもののない、無防備な首筋は――がら空きだった。
最後の力を振り絞り、ジョン自身の言った弱点にナイフを突き立てる。
たっぷりと薬物を塗り付けておいたナイフを。
映画の中で殺人鬼を最後に殺したのは、毒物だった。
不死身の怪物は、ライフルでも爆弾でもなく。土の中に埋まっていた、ただ一本の錆びた鉄棒を胴体に突き刺されて死んだ。
その鉄棒に付着していた錆や、土中の堆積物。それらの成分によって死亡したのだった。
オレがナイフに塗布したのは、αテタノスパスミンD-1152という破傷風由来の劇毒だ。
単なる破傷風と違い、米軍によって改良を施されたその効果は即効性。おまけに毒性は20倍。
青酸カリの400万倍の致死性を持つ、米軍の隠し弾だ。その症状は強直性痙攣、弓反り反射、呼吸困難による死。
いくら外皮を岩に変えられても、内臓までは石にはできないだろう。
コイツが生物である限り、毒物は必ず効く。殺せないまでも、隙を作ることはできる。
なのに――
オレには、その次の……一手、が………………
…………ジョン…………。
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