[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章
232
:
明神
◆9EasXbvg42
:2020/08/30(日) 07:26:05
「怨身換装(ネクロコンバート)――モード・『歌姫』」
風をはらんで飛翔したのは、純白の羽根。
アコライトの希望の象徴にして、かの地でその命を散らした一人の戦乙女。
――初代ユメミマホロの忘れ形見だ。
大剣を放り出したヤマシタの背中に、マホたんの羽根が突き刺さる。
瞬間、目を焼かんばかりの白い光が革鎧を包んだ。
バルゴスを再現し、膨れ上がっていた体格が目に見えてすぼむ。
角張った肩が丸くなり、腰部がほっそりと絞られ、女性的なフォルムへ変わっていく。
兜の両サイドから、鎧同士を繋ぎ止める革紐が髪のように吐き出され、ツインテールのように垂れ下がった。
その右手には、大剣の代わりに革で象られたマイクを握っている。
アニヒレーターの一撃の前に、ヤマシタはふわりと飛び出した。
「――――!」
言葉を作らない音だけの歌、スキャットが革マイクから放たれる。
それはアニヒレーターの音弾と空中でぶつかり合って、お互いに弾け飛んだ。
窓を閉めようが外の音が聞こえて来るように、音は壁を回り込む。
故に音響攻撃を防御することは出来ないが、騒音を無効化する方法はある。
地球のオーディオ機器にも使われる『ノイズキャンセル』……音同士をぶつかり合わせて、大気の振動を相殺したのだ。
――ユメミマホロの『想い』を使った、怨身換装による革鎧の機能拡張。失われた歌姫の再現。
こいつが俺の切り札だった。……使いたくない、奥の手だった。
マホたんは、彼女の犠牲は、その辺のネクロマンサーが好き勝手利用して良いようなものじゃない。
アコライトのオタク殿たちにとって、文字通りの生きる希望だった。絶望に抗う光だった。
同じようにユメミマホロにとっても、命を投げ出してまで護る価値のあるものはたったひとつ、アコライトの皆だった。
俺がこうして死霊術で彼女の力を扱うことは――
アコライトに殉じた初代ユメミマホロの覚悟と想いを穢すことに他ならない。
『マホたんが死んでくれたから俺の手札が増えた』なんて、言いたくはなかった。
「……ヤマシタ、『感謝の歌(サンクトゥス)』」
膝を着きながら、俺はパートナーに命令を下した。
ユメミマホロのスキルがひとつ、『感謝の歌(サンクトゥス)』――癒やしの歌。
損傷した内耳神経が修復され、世界に音が帰ってくる。
ヤマシタの奏でる歌は、本家マホたんには遠く及ばない。
劣化再現にしか過ぎなくても、わずかな回復力に過ぎなくても、俺のデバフを解くには十分だった。
難聴の原因は騒音によって神経についた微細な傷だ。ほんのちょっとの傷を、ちょっとの回復で癒やした。
「シェケナベイベ。お前らのやってることは……たぶん、間違っちゃいねえよ。
俺も未だにわからん。ジョンを旅に引っ張り回し続けることが、本当にあいつにとって幸せなのか。
もしかしたらお前らがABURA丸にしたみたいに、スマホぶんどって無理くり退場させんのが正解なのかも知れない」
仲間を見殺しにしたなんて、とんだ見当違いだった。
こいつらはこいつらなりに、戦えない奴のことを考えて行動している。
捨てることで救う道を見出して、それを体現している。
お人好しのマルグリットが親衛隊を傍に置いているのも、こいつらがただ邪悪な集団じゃないからだろう。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板