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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章
217
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2020/08/09(日) 22:45:52
「く……さすがはアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』。
このマルグリットの攻撃をここまで凌ぎ、アニマガーディアンまで退けるとは、まさに驚嘆の一言。
貴公こそ、世界を救う力を持つ勇者に相違ありますまい」
エンバースがアニマガーディアンを撃破すると、レイドモンスターは一瞬彫像のように固まった直後、灰となって崩れ落ちた。
それを見届けたマルグリットが杖を引き、身軽に数歩後退してエンバースの健闘を称える賛辞を贈る。
「されど、それだけに……それだけに惜しい。
なにゆえ、貴公が師兄の側に付かれたのか……。師兄の選択は、一時凌ぎでしかありませぬ。
恒久の平和、永劫の安寧には程遠い……なぜ、師兄も貴公らもその事実から目を背けられるのか。
侵食は、最早誰にも止められぬというのに」
侵食。
突如として空間に得体の知れない虚無が発生し、すべてを呑み込んでゆくという、正体不明の事象。
侵食を食い止める方法を探し、可能ならそれを実行する。それがなゆたたちが地球からアルフヘイムに召喚された理由だった。
侵食の正体を解明し、それを解決すれば、アルフヘイムとニヴルヘイムが生存を賭けて争う理由もなくなる。
その勝者のどちらかが、地球に侵攻してくるという事態も避けられるのだ。
だというのに――
マルグリットは『侵食は誰にも止められない』と言った。
まるで、侵食の正体を知っているかのように。
「……おしゃべりが過ぎました。お忘れを。
今現在、貴公と私は敵同士――ならば余計な会話は攻撃の手を鈍らせることともなりましょう。
後は、ただ干戈を交え闘争の決着を見るのみ!
お見せ致しましょう。『聖灰魔術(キニス・インヴォカティオ)』、『高速格闘術(ハイ・ベロシティ・アーツ)』に続く、
我が奥義!!」
ざ。
ざざっ、ざざ。
ざざざざざざざざ―――――――――
エンバースの攻撃によって崩れ去ったアニマガーディアンの灰が、地面で大きく渦を描く。
風もないというのに灰が舞い上がり、螺旋を描いてマルグリットの周囲を取り巻き始める。
武器として用いていたトネリコの杖を背に回し、徒手になると、マルグリットは大きく身構えた。
手のひらを開き前方に突き出した両腕、その右腕を天へ。左腕は地へ。
極端にスタンスを広く取ったその構えは、マルグリットの武の極点。
元々、聖灰魔術によって顕現したモンスターは一度マルグリットによって撃破された形なき存在である。
よって、再度倒されたとしても消滅はしない。ただ元の灰に戻るだけだ。
だが――マルグリットの『聖灰魔術』とは、単に倒したモンスターを従属させ戦わせるだけの、底の浅いものではなかった。
「『第三闘技(カルタイ・ウィクトリケス)』!―――参る!!!」
ゴッ!!!
灰を身体に纏わりつかせたマルグリットが、強く強く地面を蹴りしだいてエンバースへ吶喊する。
迅い。
そのスピードは先刻アニマガーディアンとのコンビネーションで見せたものの比ではない。
手甲を装備したマルグリットの右掌が、旋風を撒いて繰り出される。
ゲームではマルグリットは限定ガチャとしてごく稀にピックアップされる。
そのため、ステータスの数値もすべて解析され研究され尽くしている。習得するスキルも当然網羅されている。
というのに、マルグリットが用いた『第三闘技(カルタイ・ウィクトリケス)』というスキルに関しては、
なんの情報もない。
「はあああああああああああああ―――――――――ッ!!!!」
マルグリットがさらに一段ギアを上げてくる。怒涛の連続攻撃は、あたかも掌打の弾幕。
その一撃一撃が必殺必倒の威力。むろん、ゲームのマルグリットを極限まで鍛えたとしてもここまでの強さは得られまい。
『第三闘技(カルタイ・ウィクトリケス)』とは、言うなれば『聖灰魔術』と『高速格闘術』の融合。
聖灰魔術で従属させたモンスターのATK、DEF、HPなどのステータス、そのエッセンスをそのまま自分に加算する、
マルグリット独自のバフスキルだった。
レイド級モンスター、アニマガーディアンの各ステータスによって超強化されたマルグリットは、
レイド級はおろか超レイド級にも匹敵する力を秘めている。
マルグリットの纏っている螺旋状の聖灰が強く輝く。全身に力が漲る。
あたかも舞うようにピタリと構えを取り直すと、マルグリットは豁然と双眼を見開いた。
「受けられよ、エンバース殿!
世界に平和と安寧を、民草に幸福と清適を!
次なるが――我が終極の武技!」
マルグリットの全身から間欠泉のように闘気が迸る。
十二階梯の継承者、第四階梯。
『聖灰』の称号を持つ、この世界でも第四位の実力者が――エンバースを撃殺せんとその秘めたる力を解放する。
【各人戦闘続行】
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