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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

215崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/08/09(日) 22:43:50
「マル様はいつだって正義だ。光だ、サイッコーにエモいあーしらの英雄なんだ!
 あんたがマル様の何を知ってる、しょせんゲームの中の知識だけだろ!
 でも、あーしたちはここでマル様と一緒に旅をしてきた。あのヒトの決意も、悩みも、葛藤も――何もかも知ってる!
 その上で! あーしたちはマル様に付いて行くと決めた!
 あのヒトが望むことなら――なんだってやってやるさ! それがあーしたちの正義だ!!」

>ガザ公が言うには、俺は正義の味方らしいぜ!ガラじゃねえよなあ!
 だけどあながち間違いじゃあねえ。俺たちの正義をこれから証明する。
 悪の首魁マルグリットとその手下をぶっ倒してなぁっ!!

「クソコテが!! マル様のことを――語るなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!」

ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!

アニヒレーターが再度速弾きを開始する。立ち込める濃霧を吹き飛ばす、質量を持った爆音。
だが、音の有効範囲を見切ったヤマシタには当たらない。

ボッ!

濃霧を切り裂き、ヤマシタの大剣を薙ぎ払う。

『ギィィッ!!』

その切っ先がアニヒレーターの剥き出しの上半身を掠める。が、浅い。
ヤマシタが剣を振る直前、霧が揺れ動くほんの一瞬を察知したアニヒレーターは、ギターでその剣を間一髪受け止めていた。
大剣を受け止めた衝撃によって、ギターの弦が何本か弾け飛ぶ。
しかし、アニヒレーターとの決着には届かない。すぐにアニヒレーターはヤマシタから距離を取り、ギターを構え直した。

「おおーッとォーッ! 惜しい!
 インギーの音波の範囲を見切って、霧の中から奇襲とはヤルじゃん!
 でもなァ! あんたはそれで終わりだよ! 唯一のチャンスをものにできなかったあんたの負けさ!
 ――尤も――」

そこまで言って、にたあ……と嗤う。

「あーしのこの声。あんたにはもう、聞こえてないと思うけどね……?」

明神はすぐに、先ほどまであれほど周囲に響き渡っていた爆音がいつの間にか聞こえなくなっていることに気付くだろう。
アニヒレーターが演奏をやめたのではない。濃霧は未だ絶えず揺れ動き、音波が放たれ続けていることを示している。
だというのに、聞こえない。アニヒレーターの演奏も、シェケナベイベの挑発も、ヤマシタの足音も。

『自分自身の声さえも』――

騒音性難聴。それが音の聞こえなくなった原因だった。
ライブハウスでスピーカーの近くで爆音の演奏を聴き続けていたり、ヘッドホンで大音量の音楽を聴いていたりすると、
耳孔内の蝸牛が損傷し、音がよく聞こえなくなる。
アニヒレーターの得物は単なるエレキギターではない。そもそも、ファンタジー世界にエレキギターという概念はない。
パンクロッカー風の外見で勘違いしがちだが、アニヒレーターはミュージシャンのゾンビではない。
『ギターに似た魔杖を用い、魔力で音を拡散させる魔術師のゾンビ』なのだ。

「魔力の籠った音波は衝撃波として物理攻撃に使われるだけじゃないんだよォ!
 あんたらの聴覚を破壊し! 三半規管にまでダメージを与える『デバフ攻撃』としても作用するのさ!
 そォーら……そろそろ三半規管がブッ壊れた影響が出てくるころだ!
 まともに立っていられるかなァ、うんち野郎! ヒィ――――――ハ―――――――ッ!!」

マル様親衛隊包囲網戦を始めとして、今まで幾多の修羅場を勝ち残ってきた切り込み隊長の本領発揮である。
『音に由来する数々のデバフを付与し、高威力の音圧が全てを押しつぶす』――
シェケナベイベに対する明神の分析は正しい。
『迷霧(ラビリンスミスト)』で音響を可視化し、ヤマシタに対音波を想定した強化を施したまではよかった。
だが、それらはあくまで『音撃による物理攻撃』への対処だ。
音が齎すデバフに対しては、明神は何らの対抗措置も施さなかった。
三半規管に深刻なダメージがあると、人は平衡感覚を維持できなくなる。
耳鳴りによる重度の頭痛、眩暈、嘔吐感なども明神を襲うだろう。
そう――マル様親衛隊の戦闘においては、アタッカーのきなこもち大佐とタンクのスタミナABURA丸が前衛を務め、
シェケナベイベとさっぴょんが後衛を担当していた。
親衛隊のやべー奴、シェケナベイベの本領は、範囲直接攻撃ではなく範囲デバフにあったのである。

「さァーて、じゃあこっちの番だ! 一撃で木端微塵にしてやンよ……その安っぽい正義ごと!
 インギー、とびっきりのテクを見せてやんな! ――うんち野郎にダイレクトアタック!!」

『ギィィィィィィッ!!!』

アニヒレーターが大きく右腕を掲げ、次の瞬間に振り下ろす。

「――『速弾き王者の即興奏(エクストリーム・インプロビゼーション)』!!!!」

恐るべき指さばきによって生み出された莫大な音が質量を伴い、指向性を持ったミサイルの如き衝撃となって明神に迫る。
準レイド級の必殺スキルだ。全体攻撃ではないため多対一の戦いには向かないが、
個別攻撃だけあってその威力は範囲音響攻撃よりも高い。
喰らえば、明神は死ぬだろう。三半規管を破壊されているため回避もおぼつくまい。

だが、もし明神がこの攻撃を避けることができるなら――。


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