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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章
213
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2020/08/09(日) 22:42:45
「おい、バカ。
あっちは『異邦の魔物使い(ブレイブ)』入れて5人。こっちは4人。
ひとり一殺で行くぞ。オマエんとこの馬とガーゴイルにも、一匹ずつ相手してもらう。
……ビショップとナイトはボクがやる。お前はあのチェスババーを狙え」
ガザーヴァが騎乗したままカザハの隣に佇み、視線を合わせないまま一方的に告げる。
「言っとくけど、オマエなんかの力を認めてるワケじゃねーかんな。
ネコの手も借りたいくらい人手が足んねーから、しょーがなく手伝わせてやるってだけだし。
でも――」
そこまで言って、一度言葉を切る。ガザーヴァはほんの一瞬だけ逡巡してから、
「オマエは、ネコよりかはマシだろ。……たぶん」
と、呟くように零した。
「馬どもが駒を押さえていられるのは、たぶん一瞬だ。しくじるんじゃねーぞ!」
言うが早いか、ガザーヴァは黒い甲冑を着込んだ姿で巨大な騎兵槍を右脇に掻い込み、前方のナイトとビショップへ吶喊した。
同時にガーゴイルが背後に布陣しているクィーンへと突進してゆく。
「おらおらおらおらァーッ! 邪魔だ! どけどけェーッ!」
『ギオオオオオオオ!!!』
まずナイトがガザーヴァの行く手を阻む。馬頭を模したその体躯から、数多の槍が放たれる。
文字通りの槍衾、目にも止まらぬ無数の刺突。
しかし、ガザーヴァも負けじと騎兵槍を爆速で突き出して対抗する。
互いの槍がギャガガガガガッ!! と激突し、激しい火花が散った。
「ぬああああああああああああああああッ!!!」
ガザーヴァとナイトの攻撃速度、威力はほぼ互角。
だが――ガザーヴァの相手はナイトだけではない。
グオンッ!!
ナイトと鎬を削るガザーヴァの左側へ、ビショップが飛び出してくる。
その武装は巨大な鉄球付き鎖――いわゆるモーニングスターだ。
ビショップのモーニングスターがガザーヴァへ向け、唸りを上げて振り下ろされる。
ガザーヴァは薄皮一枚の見切りで身体を移動させると、鉄球の直撃を避けた。が、代わりにその左腕に鎖が幾重にも巻き付く。
「ぐ!」
鎖に拘束されたことで、ガザーヴァがその場に縫い留められる。
その機を逃さず、ナイトがガザーヴァを串刺しにしようと槍を突き出してくる。
ガザーヴァは自らの騎兵槍を素早く投げ捨てると、突き出されたナイトの槍を右脇で抱え込み、がっしと受け止めた。
さっぴょんが目を瞬かせる。
「あら」
「へへん……バーカ! 捕まったのはオマエらの方だよ!」
ガザーヴァはナイトとビショップに足止めされたのではない。
逆に、我が身を楔としてナイトとビショップをその場に繋ぎとめたのだ。
ふたつの駒はすぐにそれぞれの得物を回収しようとしたが、ガザーヴァが渾身の力でそれを阻止する。
ガオン!
身動きの取れなくなったナイトとビショップを救援しようと、
クィーンの駒が底部からジェット噴射ばりの炎を出しながらガザーヴァへと迫る。
しかし、そんなクィーンにガーゴイルが横合いから渾身の体当たりを仕掛ける。乗用車が正面衝突したような激突音が響き、
クィーンが横ざまに吹き飛ぶ。ガーゴイルがそれをさらに追撃せんと突進する。
仲間たちを助けるべく、ルークが円柱状の胴体の両脇からじゃきん!と一対の砲門を展開する。
ガザーヴァもガーゴイルも自分たちの担当した駒の相手で手一杯だ。ルークの砲撃を受ければ一たまりもない。
だが、それもカケルが対処するならばなんとか一瞬は無力化できるはずだ。
後に残ったのはカザハと、騎士団を失ったさっぴょんの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』同士だけ。
だというのに――
「……フフ」
事実上丸裸にされたさっぴょんは、まったく怯む気配を見せない。
それどころか、胸の下で緩く腕組みしたまま余裕の表情を崩そうともしない。
酷薄な薄い笑みを浮かべたまま、世界ランキング14位の『異邦の魔物使い(ブレイブ)』はカザハを見遣った。
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