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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

212崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/08/09(日) 22:42:22
「く、くそ……! 圧迫感ハンパねぇ!
 なんだよッこいつ……やることなすことボクの先回りしてきやがって!
 超能力者か!? ボクの考えてることが分かるってのかよ!?」

ガーゴイルに跨ったガザーヴァが苛立ち紛れに叫ぶ。
なんとかして明神の援護に回りたいガザーヴァだったが、さっぴょんのミスリル騎士団がそれを許さない。
詭計姦計、敵の裏をかくのが大得意のガザーヴァがどれだけさっぴょんを出し抜こうとしても、
ミスリルの駒たちがそれを事前に阻んでくる。
結果、ガザーヴァはただウロウロと周囲を飛翔することしかできなくなってしまった。
これでは、カザハのかけてくれた『俊足(ヘイスト)』も意味がない。

「フフ。超能力なんて用いずとも、あなたたちの考えていることくらい手に取るように分かるわ。
 私のミスリル騎士団の包囲網からは逃れられない――私たちマル様親衛隊の聖地を燃やし、マル様を嘲笑った罪。
 たっぷりと償って貰いましょうね……あなたのその命で!」

フィールドの奥に陣取り、腕組みしたままのさっぴょんが言う。
さっぴょんはワールドレコード14位の猛者。名実ともにブレモントップクラスの実力者だ。
その力はアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』最強であるなゆたよりもはるかに強い。
最終決戦の随分前で戦死したガザーヴァでは、まるで太刀打ちできない。
それでなくとも、ガザーヴァはNPC。否応なしに、エネミーとして設定されていた頃の思考ルーチンというものに支配されてしまう。
さっぴょんがそれを把握し、適切に対処することは容易い。
だからこそ――

「おいっ! バカ! ジョンぴーに構ってる場合かよ!
 ジョンぴーを助けたかったら、この高飛車チェス女をぶっ倒すのが先だろうが!」

ガザーヴァは不倶戴天の敵であるはずのカザハに援軍を求めた。
本来カザハはガザーヴァにとって真っ先に殺さなければならない相手だ。認めてはいけない存在だ。
カザハがいる限り、自分はコピーという軛から逃れられない……そう思っている。
そんなカザハに協力を求めるということは、即ちカザハを認めるということ。力があるということを裏付けること。
最もしてはいけないこと、のはずだったが。
ガザーヴァはその信念をあっさり曲げ、助けろと言ったのだ。――大好きな明神のために。

「どうしたのかしら? まだ、私は本気の一割も出していないけれど。
 もう息切れ? いいえ、いいえ……認めないわ。幻魔将軍も、そのシルヴェストルも、刃向かうのならばすべて敵。
 この世のすべての痛みに優る痛みを味わわせ、ズタズタにしてこの地上から抹殺してあげる……!」

端正な面貌を嗜虐的な笑みに歪め、さっぴょんは死刑宣告にも似た言葉を言い放った。
しかも『すぐには殺さない。じわじわいたぶって殺す』と言っている。

「オッカネーんだよ、このヒスババア!」

びゅお! とガザーヴァが騎兵槍を繰り出す。カザハが『風精王の被造物(エアリアルウェポン)』で生成した弾丸を放つ。
が、さっぴょんには通じない。ビショップとナイトの駒がすべて弾き返してしまう。
しかし、ガザーヴァが決死の覚悟でビショップとナイトをさっぴょんから引き剥がすのに成功する。
ルークはさっぴょんからやや離れたところに位置取りしており、ポーンに至ってはなぜか戦闘に参加もせず、
カザハもガザーヴァも無視して、ただただ前進してはカザハ・ガザーヴァ組側のフィールドの奥へ突き進んでいる。
つまり、現在さっぴょんは孤立している。

「今だ! やれ!」

ガザーヴァが叫ぶ。今カザハが『瞬間移動(ブリンク)』でさっぴょんに接近し、一撃で気絶させるなりすれば、闘いは終わる。
……それが出来れば、の話だが。

「言ったでしょう? あなたたちの考えていることなんて、手に取るように分かると。
 誘いこまれたのはあなたの方よ? シルヴェストルさん――」

カザハが間合いを詰めても、さっぴょんは余裕の表情を崩さない。
スマホを軽くタップすると、スペルカードを一枚手繰った。
そして。

「――『入城(キャスリング)』……プレイ」

瞬間、さっぴょんとルークの立ち位置が入れ替わった。
チェスにはいくつかの特殊ルールがある。そのひとつが『入城(キャスリング)』である。
キングはある一定の状況下において、その立ち位置を瞬時にルークと交換し難を逃れることができる。
さっぴょんのデッキはチェスデッキ。その特殊ルールを反映したという訳だ。

『ブロロオオオオオオオアアアアアア!!!』

巨大な車輪付きの塔を模したルークが唸りを上げ、その円柱状の巨体でカザハに体当たりを見舞う。
軽量級のカザハにとっては少なからぬダメージだろう。
そして――

「フフ。チェスの特殊ルールは『入城(キャスリング)』だけじゃないのよ?」

さっぴょんが笑うと同時、ひたすらに前進を続けていたポーンがカザハたちの最後の壁に到達する。
この場において最強の『異邦の魔物使い(ブレイブ)』、ミスリルメイデンがスマホから新しいスペルカードを選び出す。

「――『昇格(プロモーション)』……プレイ」

ポーンが俄かに輝き始め、その姿が変わってゆく。
ただの円柱に丸い飾りがついただけの駒が、王冠をかぶった姿へと――。
特殊ルールのひとつ『昇格(プロモーション)』である。
ポーンは敵陣地の最一番奥に到達すると、クイーン、ルーク、ナイト、ビショップいずれかの駒に姿を変えられる。
さっぴょんはそのルールをブレモンに反映させ、前進するしか能のなかったポーンを縦横無尽に移動できるクィーンに変えたのだ。

「さて。我がミスリル騎士団は不破の軍団。その力は無双、その統制は無比。
 どう抗っても私に勝てはしない……マル様親衛隊の恐ろしさ、理解して頂けたかしら?」

前方にはナイト、ビショップ、ルークが陣取り、背後ではクィーンが機を窺っている。
いわゆる挟撃の状態。カザハとガザーヴァは窮地に立たされていた。


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