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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章
205
:
embers
◆5WH73DXszU
:2020/08/04(火) 22:39:25
【パワー・オブ・エヴォルブ(Ⅱ)】
その後、遺灰は何の問題もなく先行隊に追いついた。
ただ後方から迫る敵を撃破し/前方に残された敵も殲滅する。
遺灰にとっては、しくじりようのないミッションだったとすら言えた。
『じゃ……行こう。
明神さんもカザハも、エンバースも。準備はいい?
速攻で片付けるよ――!!』
「威勢がいいのは結構だが……少し、下がってろ。扉は俺が開ける」
黒手袋がなゆたの頭部を掴む/後方へと押し退ける。
反対に、遺灰の男は一歩前へ/眼前の大扉に両手を触れた。
灰を固めただけの体が押し戻されぬように、上向きに力を込める。
『……随分とのんびりした到着だな。
レプリケイトアニマが霊仙楔まで到達するかと思ったぞ』
「まぁ……そんな事だろうと思ってたよ」
そして――異邦の魔物使いは再び、復讐者と邂逅した。
復讐者の率いる子鬼の軍勢が、自動小銃を構える。
遺灰の男は、背後の少女に目配せをした。
「……最悪の場合、俺は奴らに飛び込む。一人で凌げるな?」
返答は聞かない――どのみち、活路はそれしかない。
『俺はそれでも構わなかったがな。
俺の請け負った仕事は貴様らアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の殲滅。
世界の転覆は契約外だが――結果的に貴様らが死ぬのなら、同じことだ』
「ああ、いいぞ。その調子で好きなだけデカい口を叩いてくれ。
そういう奴ほど、叩きのめした時に気分がいい。
その相手がお前なら……尚更だな」
『さて、約束だったな。
貴様らが呑気に旅している間に、ゴブリンどもの練度も上がった。
今ならどんな相手でも葬り去ることができるだろうよ。
貴様らのようにゲームにうつつを抜かしている素人ならば、猶更だ』
「僭越ながら、ゲーマーとしての立場から意見を述べさせて頂くのなら――
――お前がしている事はなんて事のない初見殺し、初心者狩りだ。
そこらのにわかゲーマーならともかく、俺には通じない」
『ジョン。死ぬ準備はできたか?
安心しろ、貴様は俺がこの手で殺す。ゴブリンどもに手出しはさせん。
このナイフで掻き切ってやろう、貴様の首を――貴様がシェリーにしたようにな。
そして……あの世でシェリーに詫び続けるがいい』
「……少しの間でいい。躱せ。俺が奴らの陣形を崩す」
復讐者が白刃を抜く/遺灰の男が身構える。
守勢に回れば押し潰される/活路は一つ――敵陣への強襲。
襲撃者への対応を強いる事で、致命的な一斉掃射を阻害する――つまり、ヘイトコントロール。
幸いにして、命なき、未練のみが衝き動かす灰の五体は、銃弾に対しては相性がいい。
例え頭部を撃ち抜かれたとしても、その弾丸が遺灰の男を殺める事はない。
精々――その体が既に燃え尽きている事が、露呈するだけだ。
その程度なら、幾らでも誤魔化しは利く。
『……お待ちください』
果たして――遺灰の男が敵陣へと飛び込む事は、なかった。
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