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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

200明神 ◆9EasXbvg42:2020/08/03(月) 04:42:06
思わずマル様の雄姿に目を奪われていた意識を、シェケナベイベの奇声が現実に引っ張り戻す。
迫りくるアニヒレーターが大上段から振り下ろすギター。防いだヤマシタの大盾が陥没する。
なんつー硬さだ……フライングVはケンカで叩き壊すのがロックンローラーの流儀だろうが!

「まぁ構わねえよな!おめーのチューニング今まで合ってたことなかったもんなぁ!!」

マルグリットが俺たちの敵に回る以上、その親衛隊とも激突は避けられない。
シェケナベイベはここで会ったが百年目とばかりに真っ直ぐ俺の首を取りに来た。

>「明神ッ!」
>「残念ね、そうはさせないわ……幻魔将軍。

ガザーヴァの声が背後から聞こえる。
そしてそれを阻むさっぴょんの言葉も。
俺は振り返らずに、左手でガザ公を制した。

ガザーヴァが俺の安否をいの一番に気にしてるのは、これまでの戦いで分かってた。
バロールに向ける執着に似たその感情を、受け止めるのがあいつを仲間に引き入れた俺の責任だ。
だからこそ、今ここでガザーヴァに頼るわけにはいかない。

親衛隊長さっぴょんは、おそらくブレモン界隈で最強に名を連ねるプレイヤーだ。
対人ランク14位は伊達じゃない。アクティブ1000万人のこのゲームで、世界で14番目に強いってことだ。
おそらく日本に限るなら五本の指に入る実力者だろう。

単純なステータスだけで語るなら、シナリオ途中退場の幻魔将軍ガザーヴァより遥かに格上だ。
ボディを新造した『今の』ガザーヴァにシナリオのレベルキャップが適用されないとしても、
レイド級を従えられるクラスのプレイヤー相手にどこまで戦えるかは分からない。

あんまし認めたくはないことだが、このクラスの戦いじゃ俺は足手まといにしかならない。
俺を庇いながら戦えるほど、さっぴょんというプレイヤーは容易くない。

だから――この戦いで、俺はガザ公に頼らない。
いつまでもおんぶに抱っこじゃ、バロールの野郎にも鼻で笑われちまうからな。
全部ガザ公任せにするだけが能じゃないって、証明してやるぜ。

「さあ、ギグを始めようぜシェケナベイベ!お前の耳障りなデスボイスも今だけは謹聴してやるよ」

ギターを弾かれたアニヒレーターが二歩下がり、周囲に巨大スピーカーを展開。
同時に俺はスペルを手繰った。マル様が開戦を遅らせたおかげで、ATBゲージの蓄積は済んでる。

「『迷霧(ラビリンスミスト)』――プレイ!」

乳白色の濃霧があたりに立ち込めると同時、不可視の音圧がそれを吹き飛ばす。
俺は横っ飛びに音響攻撃の範囲から逃れ、霧の中に姿を隠した。

――『親衛隊のやべー奴』シェケナベイベ。
アンデッド最上位モンスター『アニヒレーター』を駆るコンボ使いだ。
俺は親衛隊包囲網で戦った経験から、こいつの戦術や火力の性質を知悉している。

シェケナベイベの特質を一言で表すなら、『範囲攻撃の専門家』ってところだ。
音に魔力を乗せて放つ、いわゆる楽器系の武器を扱うキャラはエリにゃんはじめ多数存在する。
おしなべて音速による攻撃速度や範囲、防御貫通なんかが特徴だ。

シェケナベイベの場合、攻撃範囲に極めて特化したビルドを組んでいる。
左右のスピーカーから放たれる魔力入りの大音響は、音の届く範囲全てに破滅的な破壊をもたらす。
音に由来する数々のデバフを付与し、高威力の音圧が全てを押しつぶす。
多数を相手に最大の火力を発揮できる、面制圧のスペシャリストと言えるだろう。


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