したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

196明神 ◆9EasXbvg42:2020/08/03(月) 04:38:52
ジョンとの競争は、結論から言えば俺たちの圧勝だった。
言うまでもなくガザーヴァが暴れまわったおかげだが、俺とて何も貢献してなかったわけじゃあない。
俺にはこれまでのゲーム遍歴で培ってきたMOB狩りの技術があるのだ。

古式ゆかしきMMOの迷惑行為がひとつ、『横殴り』。
読んで字の如く、他のプレイヤーが殴ってる敵を横から殴って報酬を横取りするクソプの極みだ。
インスタンスダンジョンの台頭によっていわゆる『狩り』はネトゲの世界じゃもっぱら見なくなったが、
マルチプレイのゲームで何したら他人に嫌がられるのかってのは今なおもって通底しているマナーだ。

当然ながら俺は、こうしたゲームにおける嫌がらせ・迷惑行為に精通している。
効率良く相手をイライラさせる横殴りの技術――そいつはこのアルフヘイムでも覿面に通用した。

ジョンがこれから何を殴るのか、今まさにトドメに入る瞬間なのか、俺には手に取るように分かる。
そこをかすめ取るように横からトドメさしてやれば、ソロプレイヤーを手玉にとるのは容易かった。
俺自身に火力足りなくてもガザ公にちょいと立ち回りを指示すりゃそれで良かったしな。

ほどなくして、積み上がったアニマのザコ敵の骸の先に、最深部への大扉が見えた。
ジョンは殆ど敵を殴れず、ブラッドラストのオーラも火が消えたみたいに静まってる。
とりあえず当面の目論見、1つ目はクリアってところだ。

>「うひぃ〜……さすがに疲れた……」

「ぜぇ……ぜぇ……ちょ、ちょっと飛ばしすぎたかな……」

言葉とは裏腹に涼しい顔のガザーヴァ。その隣で俺は水揚げされた魚みたいに喘いでいた。
休みなく連戦しまくったおかげで体力がすっからかんだ。
多分もうあと一歩でも動いたら俺は死ぬ。

「っどーだジョン!宣言通りだ、おめーの呪いも引っ込んじまって泣いてるぜ」

>「・・・完敗だ・・・これになんの意味があるのかはわからないが・・・」

「うっせ。ブラッドラストさんに嫌な思いさせられたら大勝利なんだよ俺たちは」

ジョンのボヤきに、俺は憎まれ口で返した。
まぁ実際のところ、たしかに意味なんざないんだろう。先走って敵全部倒すのも、自己満足でしかない。
来たるべくアニマガーディアン戦でガス欠すりゃ本末転倒ってのもなゆたちゃんの言う通りだ。

だけど――俺にとっちゃ重要な問題だ。ゲーマーとしての矜持が、ここに問われている。
俺は、ジョンの俺たちに対する過小評価が気に入らない。
呪いで命削んなきゃ守れねえような子羊ちゃんだとでも思ってんのか?舐めんじゃねーぞ。
守られるだけの弱者じゃないって、絶対に認めさせてやる。

それに。
ここまでの連戦を、俺は足を止めることなく完走した。
アコライトじゃ魔法二発撃つだけでぶっ倒れてた俺がだ。

キングヒルで出会ってから、俺はジョンに『訓練』と称して何度も薫陶を受けてきた。
貧弱な本体がウィークポイントとならないように、生身で生き残る術を、伝授されてきた。

疲れにくい体の動かし方や、効率よく酸素をとりいれる呼吸の仕方。
敵の行動を予測し、攻撃圏内に入らないようにする立ち回り方。
それらは何度も実戦を重ねるなかで、俺のなかに技術として染み付き始めてる。

こいつみたいにでっけえ剣を振り回したり、焼死体みたいな立体機動は出来ないけれど。
俺だって少しずつ、順当に成長してきてんだ。
そしてこれは、お前がいなきゃ出来なかった成長でもある。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板