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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章
176
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2020/07/17(金) 00:43:38
フリントが不快げにマルグリットを見遣る。
「……なんだ? 貴様の出る幕じゃない、引っ込んでいろ」
「いいえ。確かに、我らは見届け人として貴公に同行するよう賢兄より仰せつかりましたが――
敢えて口出しさせて頂く。これでは一方的な虐殺ではありませんか」
「だから?」
「例え敵であろうとも、同等の条件で死力を尽くし戦うのが戦士の礼儀。
小鬼どもを退けられよ。ここは正々堂々、真っ向勝負で戦うが筋というもの」
マルグリットは何を思ったか、フリントに諌言を始めた。
元々真っ直ぐすぎる気性の青年である。アイアントラスではフリントの起こした虐殺に義憤を感じていたし、
その気持ちは今でも変わっていないのだろう。
しかし、だからといってあっさりと言うことを聞くようなフリントではない。
「筋? ならば、敵が抵抗できない状態で一方的に攻撃しとどめを刺すのが軍隊の筋だ。
貴様は黙っていろ。子供の遣いまがいの簡単な仕事もできん無能と、兄弟子へ報告されたくなければな」
「……気に入らないわね、フリント。
マル様はあなたがアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』に無様にやられないように、
あなたの保険としてここにいらっしゃるのよ。あなたこそ、郷に入っては郷に従いなさい。
カードを手繰ることさえできない無能と、雇い主へ報告されたくなければね」
フリントのマルグリットを愚弄するような発言に、さっぴょんが反論する。
マルグリットさえ良ければ後はどうでもいい、というのがマル様親衛隊である。アルフヘイムもニヴルヘイムも関係ない。
「そうッス! ここは自分たちに任せて引っ込んでろッス! このログボ勢のヘボ軍人!」
「こいつらはあーし達の獲物なんだよォ! テメェは手下とサバゲーでもやってな! ヒーハー!」
きなこもち大佐とシェケナベイベもここぞとばかりにさっぴょんに加勢する。
チッ、とフリントは舌打ちした。
「何が望みだ」
「ジョン殿以外のアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』との戦い、どうか我らにお任せ願いたい。
貴公の交わした契約は、ただ『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の殲滅のみ。誰が斃したかは問題ではございますまい。
むろん手柄は貴公にすべて差し上げる。……何卒お願い致します」
マルグリットはなゆたたちがこのまま銃で無抵抗に殺されるよりは、
『異邦の魔物使い(ブレイブ)』としての勇敢な闘いの果てに斃れる方が良かろうと思ったらしい。
だが、フリントは肯わなかった。マルグリットから視線を外すと徐に右手を高く掲げ、
「構え」
と言った。すぐさま、ゴブリンアーミーが片膝立ちでなゆたたち『異邦の魔物使い(ブレイブ)』に照準を定める。
そして――フリントの掲げた手が今にも下ろされようとしたとき。
「――御免!!」
ぶあッ!!
マルグリットの右の拳閃が、フリントを狙って繰り出された。
フリントがそれを紙一重で半身を引いて躱し、返礼とばかりに強烈な右のハイキックを繰り出す。
「ぐ……!」
胸の前で両腕をクロスさせ、蹴りを防御したマルグリットが大きく後退する。
親衛隊がマルグリットを守るようにフリントとの間に立ち、スマホを構える。
「マル様!」
「大事ありません。
フリント殿……確かに我らは見届け人。であるがゆえ、闘いの不備を見過ごすことはできかねます」
マルグリットの身体から、サラサラと何かが零れる。
砂のように白い、けれど砂よりももっときめ細かい粉末状の『何か』――
「だったら?」
「――介入させて頂く。
『異邦の魔物使い(ブレイブ)』には『異邦の魔物使い(ブレイブ)』らしき最期を。それが尊厳ある闘いの姿なれば!」
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