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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

175崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/07/17(金) 00:39:12
「……随分とのんびりした到着だな。
 レプリケイトアニマが霊仙楔まで到達するかと思ったぞ」

体育館ほどの広さの空間、紅く明滅するアニマコアの手前でアニマガーディアンの代わりに佇んでいたのは、
タクティカルスーツに身を包んだロイ・フリントだった。
同じくタクティカルスーツに身を包んだ50匹ばかりのゴブリンたちが、じゃきっ! と一斉にアサルトライフルを構える。
無数の銃口を向けられ、なゆたは緊張に身体を強張らせた。

「俺はそれでも構わなかったがな。
 俺の請け負った仕事は貴様らアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の殲滅。
 世界の転覆は契約外だが――結果的に貴様らが死ぬのなら、同じことだ」

まるで仮面のように整った冷たい面貌を向け、フリントが淡々と告げる。
ジョン・アデルの親友だった男。ひとりぼっちだったジョンにただひとり手を差し伸べた男。
正義を貴び、悪を挫き、どんなときにも光を見失わなかった男――
ジョンに妹を殺され、その恨みと憎しみから闇に堕ちた男。
一巡目の遺物と化していたレプリケイトアニマを再起動させたのはフリントだった。
イブリースの持つ知識を用いれば、フリントがこの巨大なドリルを動かすのも不可能ではないということらしい。

「フリント……!」

「さて、約束だったな。
 貴様らが呑気に旅している間に、ゴブリンどもの練度も上がった。
 今ならどんな相手でも葬り去ることができるだろうよ。
 貴様らのようにゲームにうつつを抜かしている素人ならば、猶更だ」

フリントはデュエルに付き合う気がない。『異邦の魔物使い(ブレイブ)』にATBを溜める間など与えない。
フリントがゴブリンに命令し、ゴブリンたちがライフルの引き金を引くだけで、なゆたたちは死ぬのだ。
ジョンがブラッドラストを使ったとしても、一斉射撃からパーティーの全員を守ることは不可能だろう。

「ジョン。死ぬ準備はできたか?
 安心しろ、貴様は俺がこの手で殺す。ゴブリンどもに手出しはさせん。
 このナイフで掻き切ってやろう、貴様の首を――貴様がシェリーにしたようにな。
 そして……あの世でシェリーに詫び続けるがいい」

左肩のナイフホルスターから大振りのコンバットナイフを引き抜くと、フリントはその切っ先をジョンへと向けた。
ゴブリンたちがなゆたや明神、カザハたちを射殺し、最後に残ったジョンをフリントが殺す。
それで何もかもが終わる。アルフヘイムも、ブレイブ&モンスターズも――
……いや。

「……お待ちください」

声は、フリントの背後から聞こえた。
よく通る、涼やかな美声。それをなゆたたちは聞いたことがある。
どころか、つい先日まで身近に聞いていた。
決して忘れ得ぬ、その声の主は――

「あなたは……」

なゆたは驚きに息を呑んだ。
流れるような金色の長髪、整った凛々しい顔立ち。
ローブに手甲足甲を装備し、トネリコの杖を持った美丈夫。
十二階梯の継承者、第四階梯――『聖灰の』マルグリット。

「アルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』よ、またお目にかかれて光栄の至り。
 斯様な少勢でこのダンジョンを踏破するとは、まこと驚嘆する他はありませぬ。
 貴公らこそまことの勇者。まことの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』でございましょう」

マルグリットは隊伍を組んだゴブリンたちを押しのけて前へと出、なゆたたちと向き合った。
お互いの目的と主義主張の違いからアイアントラスで袂を別ち、別々の道を行くことになった青年が目の前にいる。
もちろん、その親衛隊である三人組も一緒だ。
フリントとマルグリットが並んで立っている。その構図の意図するところは、ひとつしかない。

「……なんてこと。
 そう……マルグリット、あなた――ニヴルヘイム側についたのね。
 それもローウェルの指図かしら? わたしたち相手に、大賢者も随分余裕がないじゃない」

「弁解は致しますまい。私は『黎明』の賢兄の指示にてこの場へ赴きました。
 これなるフリント殿と、貴公らの戦いの見届け人となるために」

「見届け人……ね」

なゆたはフン、と一度鼻を鳴らした。
フリントと一緒に襲い掛かってくる気はないようだが、それでもマルグリット達が敵であることに変わりはない。
依然、こちらが窮地であることにはなんの変更もないのだ。

……と、思ったが。


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