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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

170崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/07/17(金) 00:07:41
『ブラッドラスト』を自ら発動させたジョンが、恐るべき攻撃力でモンスターたちを駆逐してゆく。
その姿は、まさに破壊の暴風。血煙の化身。
モンスターを使役する『異邦の魔物使い(ブレイブ)』であるはずのジョン自身がモンスターになってしまったかのような、
そんな錯覚さえおぼえ、なゆたは呆然と立ち尽くした。

>ふふふ・・・いくらバロールが作った兵器といえども僕みたいなイレギュラーは計算外だったみたいだな?

《いやぁ……まったくだね。
 かつての私は結構厳選してモンスターを配置したつもりだったんだけれど。
 ジョン君のような存在のことは考えていなかった! だいたい、ブラッドラストなんてスキルはなかったからねえ!
 この場においては大いに助かるけれど、なんだか複雑な気分だなぁ!》

ジョンの言葉に、スマホ越しにバロールが妙な関心をしている。
血みどろ臓物まみれで嗤うジョンは、完全に常軌を逸しているように見える。
闘争バカで有名な十二階梯の継承者――『万物の』ロスタラガムさえ、ここまでの戦闘狂(バーサーカー)ではない。
これがブラッドラストの効果によるものなのか、それともジョンが元々内に秘めていたものなのか、なゆたには分からない。
だが――これだけは言える。
ジョンの破滅は、近い。

>それ以上は駄目! もうやめて!

なゆたと同じ危惧を抱いたのだろう、カザハがジョンに縋りつく。

>ボクは知ってる気がする……。ブラッドラストに侵された者の末路を!
 夢を見たんだ……。そいつは殺戮の化け物に成り果てて最後には殺されるんだ……!

そうだ。
ブラッドラストの習得者は、例外なく破滅している。血まみれで凄惨な死を迎えるさだめが待っている。
なゆたの錯覚が現実のものとなる。ジョンは早晩本物の怪物と成り果て、敵味方の区別さえもつかなくなって――
そして、死ぬのだ。

>どうしたんだ?早くいこう。時間がないんだろう?僕なら大丈夫!まだまだ壊したりないくらいさ!
 ロイを倒すのにこんな程度の力じゃ足りないしね

だが、そんなカザハの必死の説得さえ今のジョンには何も響かない。
カザハを押しのけ、ジョンは破城剣を片手に、さらに先へ進もうとした。

>受け入れちまうのかよ、その力を……

明神も、ジョンがブラッドラストを躊躇いなく使用したことに対して驚きとも落胆ともつかぬ呟きを漏らす。
その気持ちは分かる。
今まで明神やカザハ、なゆたはジョンにブラッドラストを使わせまいと骨を折り、神経を使い、あらゆる手を尽くしてきた。
問題児ばかりのマル様親衛隊と一時的に手を組んだのだって、エーデルグーテまでの旅の負担を減らそうとしたからだ。
アコライト外郭を発ってからのパーティーの旅は、すべてジョン中心に回っていたと言っても過言ではない。
ジョンを死なせないために。ブラッドラストを進行させないために。
そんな気遣いを、ジョンはいともあっさりと踏みつぶした。
これで何もかもご破算だ。ここ暫くのパーティーの苦労は、すべて水の泡になった。

パーティーはジョンを守ろうとしてブラッドラストを使わせないようにした。
ジョンはパーティーを守ろうとしてブラッドラストを使った。

目的は同じなのに、仲間のことを想っているのは共通しているのに。
なぜ、こうも気持ちがすれ違ってしまうのだろう?
どうすれば、この齟齬を修正することができるのか――?
それを考えるのが、リーダーである自分の役目だろう。パーティーの気持ちをひとつにできないリーダーに、
リーダーの価値などない。

だが――

今のなゆたには、その答えを出すことができなかった。
ジョンがひた隠しにし、そして幻覚を見るほどに悩まされている、過去の罪。
それを聞いてしまった今は、猶更。


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