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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

160明神 ◆9EasXbvg42:2020/07/13(月) 06:32:25
『ミセリコルデ』という剣がある。欧州の言葉で『慈悲の剣』って意味の名前だ。
全身甲冑の鎧騎士が戦場で幅を利かせてた時代に、鎧の隙間を貫いて攻撃するために用いられた刺突特化の短剣。
本来スティレットと呼ばれるこの剣に、慈悲の二つ名がついたのには理由がある。

衛生状況も医療体制もまともに整わない戦場では、重傷を負った戦士はまず助からない。
手の施しようがなくても、即死しなければ長い時間傷の痛みに苦しむことになる。
だから武器とは別に、すばやく息の根を止めて楽にしてやる為の、鎧を貫く短剣が必要だった。

助からないなら、苦しませたくない。
同じようにシェリーにナイフを突き立てたジョンの心には、きっと『慈悲』があったんだろう。
だけど、ジョン自身が自分をそんなふうに許すことは出来なかったし、フリントの野郎もそうだった。
振り下ろす場所のない拳がいつまでも宙ぶらりんになったまま、二人はこの世界で再び出会ってしまった。

>「これが事件の全容だ・・・ところどころ端折ってはいるけど別に細かく聞きたいわけじゃないだろう?」

「……そうだな、もう十分だ」

これ以上詳しく突き詰めたって何が変わるってわけでもない。
ジョンという人間が何者なのか、知りたいことはこれで知れた。

>「同情なんて必要ない・・・僕にはそんな価値がないからね」

「同情なんかしねえよ。外野があれこれ言えるような話でもない。フリントとの因縁は、お前が決着をつけるべきだ。
 だけどこれだけは言っとくぜ、ジョン・アデル。……話してくれて、ありがとうよ」

幼馴染にトドメを刺したのを、『仕方なかった』で済ませられるような奴なら、俺はこいつを助けたいなんて思いやしなかった。
だがジョンは、十年以上経った今もなお、罪の呵責に苦しみ、のたうち回り続けている。
こいつの中から、在りし日の幼馴染の影は何一つ消えちゃいない。

――ジョンのパートナーモンスター、ウェルシュ・コカトリス。
そいつに付けられた名前は、幼馴染の愛犬――目の前で飼い主を殺された犬と同じ『部長』。
過日の罪の、唯一の目撃者を、今もこいつは傍に置き続けているのだから。

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