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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

159明神 ◆9EasXbvg42:2020/07/13(月) 06:32:05
>「わかった・・・全部を話そう・・・」

古傷を掻きむしり、再び血を流すように、ジョンは語る。
あるいは、傷は癒えてなど居ないのかもしれなかった。
表面にほんの少しカサブタが張っているだけで、その下では今でもドロドロした血が滞留している。
俺たちは今から、ジョン・アデルという人間に流れる血の色を――確かめるのだ。

>「ロイとロイの妹の・・・シェリーと出会ったのは小学生に上がった直後でね・・・

ジョンの語った過去は、あらゆる意味で俺の想像を超える壮絶なものだった。
まだ十歳かそこらのジョンは、遭難した幼馴染のシェリーを探すために単独で森の中に分け入り、
少女に襲いかかる熊をナイフ一本で殺して見せた。

あり得べからざる話だ。人間は接近戦じゃどうやったって熊には勝てねえ。空手や柔道をやってようがだ。
比較的小型なツキノワグマですら、大人の人間が食い殺されるニュースは毎年のように報道される。
いわんや、小学生がナイフ片手に熊を殺したなんて、誰が信じるってんだ。

俺だっていくらなんでもそりゃ嘘だろって思う。思ってたと思う。
アコライトでジョンがアジ・ダカーハの首をぶった切ってなけりゃ、今でも信じられなかった。

そしてそれは、目の前でジョンの大立ち回りを見たシェリーにとっても、そうだったんだろう。
熊を殺したのが、自分の友達であると、信じられなかった。
人間ですらないもっと別の――化け物。そう感じちまっても不思議はないだろう。

そうしてシェリーはジョンの前から逃げ出し、山から滑落して、致命傷を負った。
シェリーがもう助からないと悟ったジョンは。これ以上苦しまないように……彼女を『楽にした』。
これがジョンと、ジョンが介錯した少女の兄、フリントの因縁。その始まりだ。

「殺したってのは、そういうことか……」


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