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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

140崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/06/23(火) 02:32:23
といって、二つ目の機空艇グランドセイバーも無理がある。
クエスト『グランド・ブルー・ファンタジア』は三部作の大規模シナリオから成り、
『グランド・ブルー・トリロジー』とも呼ばれる。他のクエストとは比較にならないテキスト量を誇る、
一大キャンペーンである。
幻の島・イースターシァを求めて旅をしている機空団に協力し、急速に台頭してきた軍事国家ヴェルデス帝国と戦う――
という壮大な話で、クリアまでの総プレイ時間は最短でも本編スタートからグランダイト討伐ほどもあるという、
サブクエストの範疇を大きく逸脱した話だ。
おまけに『グランド・ブルー・ファンタジア』第一章開始の舞台はアズレシアである。
クエスト攻略に時間がかかりすぎるし、そもそもこれから行くべき場所がスタート地点ではお話にもならない。
だとすれば。

なゆたたちが狙うべきなのは、三つの飛行船のうち最後のひとつ。

「……強襲飛空戦闘艇……ヴィゾフニール……!」

強襲飛空戦闘艇ヴィゾフニール。
三つの飛行船の中でも最高のスピードを誇る、いわゆる戦闘機である。
クルーザーほどの大きさの艦艇で、デザイン化されたワイバーンのような流線型の機体が美しい。
ゲーム内の設定では、魔王バロールが人間界の制圧のために大量生産しようとしていた新型飛行船で、
創世魔法により一隻だけ建造された試作機という触れ込みだった。

ヴィゾフニールを手に入れることができれば、海を越えてエーデルグーテまでひとっ飛びだ。
補給や休養のためにアズレシアやその他の都市に寄る必要もなくなるし、大幅な時間短縮にもなる。
また、ヴィゾフニールは面倒くさいお使いイベントや大規模キャンペーンシナリオをこなさずとも手に入る。
とあるダンジョンの隠し部屋にひっそりと格納してあるのを見つけ、取って来るだけでいいのである。尤も――
その『とあるダンジョンに行って取って来る』のが、大問題なのであるが。

「でも、ヴィゾフニールは……」

最後の希望の名を告げてはみたものの、なゆたはすぐに口ごもった。

《なゆちゃんの言いたいことは分かっとるよ〜。
 気球もグランドセイバーも手に入れるのには時間がかかりすぎるし、といってヴィゾフニールは――
 『もう手に入らない』ってなぁ》

「……うん」

ヴィゾフニールはいつでも入れる普通のダンジョンにあるのではなく、
ストーリー本編の終盤でバロールが創り出したとあるダンジョンでのみ、時間限定で獲得することができるのだ。
というのも、そのダンジョンはストーリーの都合上一度しか入ることができず、攻略後は崩壊し消滅してしまう。
おまけにそのダンジョンは攻略に時間制限があり、限られた時間内に隠し格納庫を発見しなければ、
永遠に入手することができなくなってしまうのである。開発側のいつもの底意地の悪さが発揮された悪意ある仕様だ。
もっとも、ヴィゾフニールは一番速度が出るという他は他の二種類の飛行船と大して変わらない。
一般のプレイヤーはグランド・ブルー・ファンタジアの報酬である機空艇グランドセイバーで事足りるし、
ヴィゾフニールはいわゆる隠し機体。あくまで廃人用のトロフィー代わりといった意味合いが大きかった。

「この世界が二巡目の世界であるなら、バロールはまだ『あれ』を投入してないから、存在しない。
 一巡目なら一巡目で、『あれ』は消滅してしまったはずだから、やっぱり存在しない……。
 ヴィゾフニールを手に入れることなんて――」

《ところがどっこい、や。
 うちらはみんなと交信を断っとる間『あれ』についての情報を集めとってなぁ。
 この世界には一巡目の遺物として『あれ』がまだ存在しとることを突き止めたんよ〜》

「え!?」

思わず声をあげる。
件のダンジョンはアルフヘイムの総戦力によって攻略され消滅したはずだ。
だというのに、まだ存在しているというのはどういうことだろう?

《きっとそれも『機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)』のバグかと思うんやけど〜。
 詳しいことはうちらにも分からへんのよ〜、ごめんなぁ。
 ともかく、うちらが調べたのは『あれ』がこの世界にまだあるってこと。中にも入れること。
 おそらくヴィゾフニールも無傷のまま残ってるはず……ってことだけやねぇ》

みのりの情報によると、件のダンジョンはアイアントラスから樹冠都市ブラウヴァルトへ向かう街道の外れにあるという。
ここからなら、だいたい馬車で十日くらいの距離だ。
十日で現地に到着し、ダンジョンと化した内部を攻略し、ヴィゾフニールを手に入れる。
少なくとも、ニヴルヘイムの襲撃に怯えながら馬車で海の果てのエーデルグーテを目指すよりよほど近道であろう。
……みのりが『あれ』と呼ぶダンジョンを攻略できるなら、の話だが。
スマホの液晶画面の中で、みのりが頷く。

《そう。『あれ』や。
 ストーリーの山場、ラスボスバトルより盛り上がる……なぁんて評判の。
 師匠の『創世魔法』の極致――》

「螺旋廻天……レプリケイトアニマ……!」

緊張感を拭い去れない強張った面持ちで、なゆたは『あれ』の名前を告げた。


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