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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章
131
:
明神
◆9EasXbvg42
:2020/06/15(月) 04:51:32
>「……わたしたちのせいだ」
>「僕が悪いんだ・・・」
未だ火も消えないアイアントラスを前にして、打ちひしがれたようになゆたちゃんが零した。
ジョンもまた、薄暗い表情でつぶやく。
人がたくさん死んだ。街も、たくさん壊れた。怪我人だって数え切れないほど居る。
そしてそれらの被害は全て……俺たちがアイアントラスに来たから引き起こされたものだ。
この街の住人からすれば、俺たちは災いを運んできた疫病神にだって見えるだろう。
「……ちげーだろ。この街をこんなにしたのも、人が死んだのも。
全部全部、あのフリントとかいうクソ野郎がやらかしたことじゃねえか。
俺たちは何も悪くない。……誰にも悪いなんて言わせるかよ」
言葉の上ではそう言っても、俺自身自分を納得させられなかった。
もしも。俺たちが陸路でフェルゼンへ向かわず、アイアントラスを訪れなかったら。
あるいは、行き先をエーデルグーテに定めて、旅をしてこなかったら。
そんな仮定ばかりが頭に浮かんで、理性がそれを打ち消す。
>「否。例えそうだとしても、ただ立ち尽くすにはまだ早いかと。
我らが救える命は、まだあるはずです……諦念こそが人を殺す。参りましょうぞ」
マルグリットの言う通り、打ちひしがれるのはもっと後で良い。
責任なんかあるとは思いたくもないが、それでも目の前の人間を助けない道理はない。
倫理観は、俺たちがブレイブ――地球の人間であり続けるための、最後の一線だ。
>「みんな、わたしたちも行こう。マルグリットの言うとおり、まだ助けられる人はいるはずだから……」
「了解。バロールに貰ったポーション類は全部出すぞ、回復魔法用の成形クリスタルもだ。
トリアージなんかしてられっか、目につく人間は片っ端から助ける」
生き残った兵士たちとプネウマの僧侶たちからなる救助隊に物資を提供し、手当てと生存者の救出を手伝う。
パートナーを使って瓦礫を押し上げ、出血が酷い者は工業油脂で無理やり固めて搬送する。
王都の高級ポーションは外傷にも火傷にも覿面にはたらき、怪我人の殆どはなんとか容態を持ち直した。
それでも――助けられない命はあった。
内臓に銃弾を撃ち込まれ、摘出もままならないまま息を引き取った者。
焼け焦げた民家の瓦礫の中から、真っ黒になって発見された者。
頭が吹っ飛んじまって、もはや誰だったかすらわからなくなってしまった者。
命を拾った者の中にも、まともに四肢を動かせなくなったり、手足を失った怪我人が多い。
生身に近い人間が、銃弾を受ければこうなるんだと……生々しい実感があった。
「吐きそうだ……人が死ぬのを、間近で見んのは……」
結局、俺はほとんど現場で動けなかった。
救助隊の連中は物資の提供だけで十分だとばかりに礼を言ってくれたが、不甲斐なさが身に染みる。
我が子を探して喉が枯れるまで呼び続ける親の声が、いつまでも耳に残った。
血まみれの毛布にくるまれた何かがそこかしこに転がっている。
その中で、俺は蹲るように膝を抱いていた。
この惨状を引き起こしたのは誰だ。あいつだ。ロイ・フリントだ。
何も関係ない、ただ普通に暮らしてただけの人々を、殺した。
復讐なんてガラでもないし、顔も知らない死人のために命をかける道理もない。
それでも、フリントは生かしちゃおけないと思った。
この街に絶望を振りまいていったあの男が、何の報いも受けないまま目的を達成するのは、我慢がならなかった。
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