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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

109崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/05/31(日) 19:56:02
アイアントラスの兵士や都市にあるプネウマ聖教会の僧侶たちと共に怪我人の救助を終えたなゆたたちは、爆破地点へ向かった。
爆破された地点は、魔法機関車の駅にもっとも近い橋桁だった。
橋桁が駅ごと爆破され、完全に崩壊している。
よほど強い爆薬を用いたのだろう。あまりに強い爆発が橋を固定していた巨大な鎖をも吹き飛ばしている。
お陰で橋が傾き、アイアントラスからフェルゼン公国方面へ行く橋と崖の間に上下10メートルほどの段差ができてしまった。
当然、魔法機関車の軌条も崩れてしまっている。
これで、当初予定していた魔法機関車と合流してフェルゼンへ――という計画は頓挫してしまった。
バロールが修理に梃子摺っているのか、魔法機関車がまだアイアントラスに到着していなかったのは不幸中の幸いか。
もし魔法機関車が先に到着していたなら、フリントはいの一番に魔法機関車を破壊していただろう。

「……これがフリントの目的だったんだ」

アルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』たちの移動手段を奪い、足止めする。
そうすることで襲撃の機会を増やし、いつでも軍事行動に移れるようにする。
狙われる側はいつ銃弾が飛んでくるかわからない恐怖におののき、精神を摩耗させてゆく。
一方で時間が経てば経つほどゴブリン・アーミーの練度は上がってゆき、その殺傷度と危険度は高くなる。
文字通り真綿で首を締めるような、確実かつ狡猾な手口だった。

「アイアントラスを離れよう」

なゆたが提案する。
魔法機関車が使えなくなった以上、ここに長逗留しても意味はない。
それに、いつまたフリントたちが『異邦の魔物使い(ブレイブ)』抹殺のために乗り込んでくるかも分からない。
フリントはアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を葬ると言った。
なゆたたちがアイアントラスに残れば、また無用の犠牲が出るかもしれない。
アイアントラスがこのような惨状になったのは、自分たちのせいだ。
それを償いたい気持ちはある。まだまだ、助けを必要としている人々はいるだろう。
しかし、そうすることで更なる惨劇を招くかもしれない――その可能性を考えると、これ以上この場所にいる訳にはいかなかった。
幸い、橋は完全に陸地と分断されてしまった訳ではない。
爆破されなかった側の橋桁から、馬車を使ってフェルゼン公国へ抜けることは可能だ。

「俺たちがエーデルグーテへ行くという情報を、連中は既に掴んでいるのだろう。
 だとしたら厄介だ、連中はいつでも俺たちを狙える。連中の狙撃の腕がいつまでも下手なままであればいいんだが――
 奴の口ぶりからすると、それは期待薄だな」

腕組みしながらエンバースが口を開く。
魔法機関車が使えれば狙撃もある程度防げただろうが、現状の幌馬車では防御力はゼロだ。
といって馬車を武装させるのもナンセンスだろう。武装すればそれだけ馬車は重量が増える。一頭では引けなくなる。
パーティーには馬車用に用意した馬の他、カケルとガーゴイルを加えた計三頭の馬がいるが、
馬車自体は一頭立ての構造のため他の二頭が引くスペースはなかった。
ならば三頭立ての武装した馬車を用意すればという話だが、そもそもそんな馬車など存在しない。用意するならオーダーメイドだ。
そんな特注の馬車を作っている間にフリントはパーティーにとどめを刺そうと襲い掛かって来るに違いない。
第一、幌馬車プランにはもうひとつ難点がある。

「ちょっ、こっからエーデルグーテまでえっちらおっちら幌場所で行くつもりかよー!?
 ジョーダンじゃねーぞー! ボクはアイアントラスまでってことで、今までガマンして鈍足で旅してきたのに!
 話が違う! そんなんじゃ、うら若き乙女のボクがババーになっちゃうじゃんかーっ!」
 
案の定というべきか、ガザーヴァがゴネた。落ち着きのなさと堪え性のなさでは他の追随を許さない性格の幻魔将軍である。
今まではアイアントラスで魔法機関車に乗るまでの辛抱――と宥めすかされてきたのだが、
フリントの襲撃によってそれもままならなくなり、不満が噴出してしまった。
今回の旅は単にエーデルグーテに到着さえすればミッションクリア、という類のものではない。
ジョンを蝕むブラッドラストを一刻も早く解かなければならないという、期限付きのミッションだ。
今後も幌馬車での旅を続けるというのなら、エーデルグーテまでは10ヶ月はかかるだろう。
ジョンの精神と肉体が、そんな期間を耐え抜けるかどうか――甚だ心許ない。

「こんなとき、みのりさんかバロールのアドバイスがあればいいのに……」

なゆたは歯噛みした。
こういうときにこそパーティーのバックアップをしてくれるはずのキングヒルからの通信はない。
どころかこの半月、なゆた側からコンタクトを取ろうとしてもまるでみのり達からの応答は得られなかった。
通信障害というのは考えづらい。恐らくマルグリットらを警戒して、敢えて通信を切っているのだろう。
今は後方支援は期待できない。このパーティーだけで物事に当たらなければならないのだ。
だから。

「……明神さん、ちょっと」

軽く手招きすると、なゆたは明神を連れ出してふたりだけで物陰へと移動した。


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