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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

108崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/05/31(日) 19:53:40
アイアントラスはその名の通り、トラス式の橋桁を用いた鉄橋である。
見れば、フェルゼン公国側のトラス式鉄骨から黒煙が上がっている。そして、更に二度、三度の爆発。
強固なトラス式の鉄骨が吹き飛び、橋と大断崖とを繋げている巨大な鎖が弾け飛び、跳ねるように勢いよく谷底に落ちてゆく。
と同時に大きく地面が揺れ、橋梁都市は緩やかに傾斜し始めた。
近くにいたジョンにしがみつく格好になりながら、なゆたは瞠目した。

「まさか……!」

「俺は。俺のやり方で貴様らを葬ると言ったぞ、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』――」

ブレイブハンターが無表情のままで言い放つ。
フリントは自身の手でアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を倒そうとしているのではなかった。
それよりももっと効率的、かつ確実な方法でなゆたたちを消し去ろうとしている。

「この橋梁都市ごとボクたちを大断崖に落っことそうってのか! うっひょー! すっげええええ!!!
 そういうド派手なの大好き! どーしよー、ボクちょっとコイツのこと好きかも!
 あ、でも心配すんなよな明神! パパが一番で二番目がオマエなのは変わんないから!」

派手好き楽しいこと好きのガザーヴァがスケールの大きさに歓喜する。どっちの味方だ。
橋梁の基部を爆破し、この橋を大断崖の藻屑と化す。そうすれば馬鹿正直にデュエルをする必要さえない。
パーティーがアイアントラスに到着してから行動を開始するのではなく、到着の遥か以前から作戦行動をしていたのも、
邪魔なアイアントラスの住人を始末し破壊工作をしやすくするためだったのだろう。
なゆたたちはそんなゴブリンの目先の残虐行為にばかり気を取られ、フリントの真の目的に気付かなかった。
だが。

「心配するな、そんな無駄なことはせん。
 最小の行動で最大の戦果を挙げる、それが戦闘の鉄則だ。
 今はまだ、そのときではない――だが次で必ず仕留める。さらに練度を上げた軍隊でな。
 そのとき貴様も俺の手で始末してやろう、ジョン・アデル」

どうやら、フリントはこのアイアントラスを奈落の底に落とそうとしているのではないらしい。
では、なぜ橋桁の一部を崩落させ都市を傾けるようなことをしたのか?
むろん、フリントはその疑問に答えを示しはしない。右手を水平に伸ばすと、途端に空間に裂け目が生じる。
もうすっかり見慣れた『形成位階・門(イェツィラー・トーア)』だ。
ゴブリン・アーミーたちが撤退してゆく。その銃口は絶えず『異邦の魔物使い(ブレイブ)』に向けられており、阻止は不可能だ。
なゆたたちはただ歯噛みしてニヴルヘイムの軍勢を見逃すことしかできなかった。

「あいつも――妹も貴様が地獄へ墜ちるのを望んでいるだろうよ」

最後にジョンへそう言うと、フリントは踵を返して空間の裂け目を潜り姿を消した。
多数のアイアントラス住人の犠牲と、都市の破壊。
大きな犠牲を払って、戦いは終わった。

「……わたしたちのせいだ」

戦火に包まれたアイアントラスを半ば呆然と眺めながら、なゆたが呟く。
フリントはアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を葬るために召喚された、と言った。
であるなら、この惨状は間違いなくなゆたたちの手によって引き起こされたもの。
無辜の民を戦いに巻き込み、死に至らしめた――その事実が胸に濃い影を落とす。

「否。例えそうだとしても、ただ立ち尽くすにはまだ早いかと。
 我らが救える命は、まだあるはずです……諦念こそが人を殺す。参りましょうぞ」

マルグリットを先頭に、親衛隊たちが怪我人の救助に乗り出す。

「みんな、わたしたちも行こう。マルグリットの言うとおり、まだ助けられる人はいるはずだから……」

ぐっと拳を握り込み、感情を押し殺すと、なゆたはパーティーの仲間たちを振り返って言った。
それから仲間たちが手分けして救助に行くと、なゆたはジョンの許へと歩み寄る。

「ジョン、さっきはありがとう……危ないところを助けてくれて。
 あなたが来てくれなかったら、わたしはきっとフリントに殺されてた。
 あなたのことを助けるって。そう誓ったのに、あべこべに助けられてちゃしょうがないね」

ジョンの顔を見上げ、あはは……と困ったように笑う。

「……それから。助けてって言ってくれて、嬉しかった。
 やっぱり、わたしはジョンのことを見捨ててなんていけない。あなたの苦しみをすっかり取り除くことは難しくても――
 少しでも和らげられたらって思う。それはきっと、他のみんなも一緒のはず。
 だから……わたしたちに、あなたの力にならせて。
 その代わり……」

ジョンを戦いから遠ざければ、それで当面は上手くいくと思った。自分がジョンを守ってやるのだと息巻いていた。
けれどもそれは思い上がりだったかもしれない。ブレモンのトップランカーという自負が、驕りが、なゆたにはあった。
しかし、今度の敵には『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の、ブレモンプレイヤーの戦いの定石は通用しない。
相手は戦闘のプロだ。正真正銘の軍人、戦闘訓練を受けた地球の戦士。

「あなたの力を貸して。あいつに――フリントに勝つには、わたしたちだけじゃどうにもならない。
 あなたの力が必要なの。
 ジョンの持ってる、対人間のスキルが。きっとこれからの戦いの鍵になるはずだから」

なゆたは真っすぐジョンの瞳を見つめながら、その右手を取って両手でぎゅっと握った。


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