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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

106崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/05/31(日) 19:48:48
そして。

「……助けてくれ、だと」

アルフヘイムとニヴルヘイム、そして十二階梯の『異邦の魔物使い(ブレイブ)』が一堂に会した場で、襲撃者が口を開いた。
低く冷たい男の声。明神もカザハも、もちろんなゆたも、その声を聞いたことはない。
だが――

ジョンは。聞いたことがあるだろう。

襲撃者はヘルメットに両手をかけると、一息にそれを脱ぎ去った。
くすんだ金色の髪が、硝煙のにおいの濃い風に揺らせてそよぐ。
さらにゴーグルを外すと、怜悧な眼差しの双眸が露になった。さながら猛禽類のそれを思わさせるような、鋭い碧の眼光。
精巧な、精悍な、どこかサイボーグだとかロボットを連想させるような、そんな無機質な相貌の男だった。
年の頃はジョンと同じくらいであろうか。背丈や身体つきまで似ている。

「貴様のような人殺しが。常人と相容れないはみだし者が。どの面を下げて助けなど求められる? 
 これまで貴様がしてきたことを思い出せ。貴様が考えてきたことを顧みろ。
 貴様は自分のことしか考えていないというのに」

襲撃者はグローブに包んだ右手でジョンを指さした。
襲撃者はジョンを知っている。自衛隊のヒーロー、ジョン・アデルではなく――ジョン個人を。
そして、ジョンもまたこの男のことを知っているだろう。

「進歩のない男だ、貴様は昔から過ちばかりを犯す。間違った道ばかりを選択する。
 そして、また殺すのか? 仕方なかった。やむを得なかった。そんな逃げ道を用意して」
 
男は告げる、ジョンを糾弾するごとく。弾劾するごとく。告発するごとく。
過去の行状を、法廷で証言するごとく。
そして、男は最後にこう言った。

「そう、『あのときのように』――」

男の名はロイ・フリント。
かつて、ジョン・アデルの友だった男である。

「――俺がここにいることが不思議、という顔だな。
 何も不思議ではないさ……誰だって、あのゲームをインストールしていれば召喚される可能性がある。公平にな。
 もっとも――俺はインストールしていただけで、プレイしたことさえなかったが」

「そ、そ、そ、そうッス!
 あいつは――『ブレモンをプレイしたことがない』んス!
 あいつは『異邦の魔物使い(ブレイブ)』でさえない、あいつは――」

「黙れ」

ちゅんっ! とゴブリンの威嚇射撃がアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』たちの足許に命中する。

「ブレモンをやったことがない……? それなら、どうして……」

なゆたは眉を顰め、不可解な状況に怪訝な表情を浮かべた。
陣営によって違いこそあれ、アルフヘイムもニヴルヘイムも世界を救うという共通目的によって、
地球から『ブレイブ&モンスターズ!』のプレイヤーを召喚しているはずである。
特にニヴルヘイムにはアルフヘイムにはないピックアップ召喚という手段があり、高レベルプレイヤーを優先的に召喚できる。
ミハエルしかり、帝龍しかり、マル様親衛隊しかり、今まで出会ったニヴルヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』は、
皆錚々たるトップランカーばかりだった。
この世界を救うことができるのは『異邦の魔物使い(ブレイブ)』だけ。となれば、敢えて初心者を召喚する理由がない。
だというのに、なぜ――

「……そういうことか」

黙して遣り取りを見遣っていたエンバースが、得心したように呟く。

「奴は。『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を狩る『異邦の魔物使い(ブレイブ)』ということらしい」

――『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を狩る、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』。

「そうだ。俺は貴様らを潰すために召喚された。
 ミハエルと帝龍は、貴様らと同じ土俵に立って勝負したから負けた。ゲームで遊んだばかりに敗退した。
 だが、俺は違う。貴様らの得意なゲームに付き合うつもりはない。
 俺は俺のやり方で貴様らを葬る――アメリカ陸軍仕込みの軍隊戦術でな」

剣と魔法の世界に銃器を持ち込み、ATBとスペルカードの戦いに実弾での戦いで乱入した男。
ブレイブハンター、フリントは冷淡に言い放った。


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