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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第四章

91崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/05/01(水) 12:37:29
「機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)は不完全な魔法だった。
 極端な話『とにかくある程度まで時間を元に戻せさえすれば、小さいことは知ったことじゃない』な代物だったんだ。
 時間は元に戻ったものの、その副産物として様々な歪みが――君たち風に言うとバグが生まれてしまった。
 私やイブリースがそうだ。本来『一巡目』の記憶は失われるはずが、それを持ったまま蘇生した」

機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)が完全に発動すれば、すべてが巻き戻る。
当然、その間に起こったことや見聞きしたもの、記憶も一切が消滅する――はずだった。
しかし、不完全な魔法であったがゆえの歪みで、一部の存在は前世の記憶が残ってしまった。
イブリースの言った『今度はこちらが勝つ』と言うのも、きっとこのことなのだろう。
また、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の中でブレモンの正式サービス開始時期にズレがあるのもこのバグが原因に違いない。
他にも、機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)の生み出したバグはあるかもしれなかった。

「私には『一巡目』の記憶がある。だから、もう同じ轍は踏まない。
 だが、私の力だけでは限界がある。よって君たちの力を借りたいんだ。
 君たちには、絶望を希望に変える力がある。未来を切り開く力がある――この世界の住人にはない力が。
 私のことをどう思ってくれてもいい。胡散臭い、ペテン師、偽善者、悪党……どう罵ってくれても。
 信用だってしてくれなくていい、私は魔王だ。罵倒の言葉なら言われ慣れているからね!
 信じてくれなんていくら言葉で言ったって、なんの意味もない。
 だから――私のこれからの行動を見て評価してくれればと思うよ」

もしも、これからバロールが『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を欺いたり、罠に嵌めようというそぶりを見せるなら。
今までの言葉を反故にするような仕草を見せたなら――そのときは逆らってくれていい。牙を剥いてもいい。
そう言っている。
言葉よりも、行動で。『異邦の魔物使い(ブレイブ)』たちの信頼を勝ち得るようにしよう、と。

「この世界が崩壊すれば、地球も危機に瀕する。だから、君たちもただ地球に帰れさえすれば一件落着……とはならない。
 救ってもらわなければならないんだ、この世界を。
 侵食を食い止め、それに対処する方法を探さなければならない。でなければ――
 いつか、地球にも侵食は発生するだろう。そうなったらもう、本当におしまいだ」

そこまで言うと、バロールは小さく息をついた。
これで、あらかた言うことは言ったということらしい。

「私の伝えたいことはこのくらいかな。他に質問はあるかい?
 なければ客室に案内させよう。疲れただろ? 今日はゆっくり休んでほしい。
 明日になったら、アコライト城郭へ向かうためのミーティングだ。忙しくなるからね」

バロールは踵を返して、庭園から立ち去ろうとした。
しかし。

「……バロールさん!」

その背中に、なゆたが声をかける。
一拍の間を置いて、バロールは振り返った。

「何かな?」

「……ひとつだけ。最後にひとつだけ、質問を……いいえ、お願いをしてもいいですか?」

「お願い? もちろん。何なりと」

微笑を湛え、バロールが虹色の魔眼でなゆたを見つめる。
なゆたはほんの少しだけ深く息を吸い込むと、まっすぐにバロールの魔眼を見つめ返し、

「じゃあ、誓ってください。あなたは本当に、この世界と地球と。ふたつの世界の平和と幸福を願ってるって」

そう告げた。


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