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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第四章

89崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/05/01(水) 12:31:09
>それで、うちらがアルフヘイムを救わなあかへん理由ってありますのン?

今まで、多くの会話をした。多くの質疑応答があった。
しかし。
みのりの投げかけたこの問いこそが、すべての本質であろう。

「それを説明するには、かつてこの世界に起こったこと。そして――君たちの世界に起こったことを説明しなければいけない」

バロールは頷いた。そしてもう一度紅茶を飲み、少しだけ深呼吸をすると、意を決したように口を開く。

「この世界と君たちの住む世界とは、お隣同士の世界なんだ。
 天文学的な距離はさておき――次元が隣接している、と言うべきか。
 この世界に来てから、夜に空を見上げたことはないかい?
 天気のいい夜には見えるはずさ……君たちの本来いるべき星がね。そう、私たちの世界は兄弟なんだ」

そう言って、バロールは空を見上げた。が、今は昼間なので星も月も、そして地球も見えない。

「あるとき、王宮占星院の導師がこの世界に小さな綻びを見つけた。
 ほんの小さな、直径1メートル程度の『穴』だ。……それがすべての始まりだった。
 王宮占星院は現地調査のため調査隊を組織し、穴を調べに行ったが、誰も帰ってこなかった。
 そう、誰も。誰ひとりだ……そして、穴の正体を掴みあぐねているうちに、それはどんどん大きくなっていった」

「……穴」

それはいったい何なのだろう。なゆたは眉間に皺を寄せた。
たんなる物理的な穴ということではないのだろう。魔術的なものだろうか? まるで想像がつかない。
バロールは続ける。

「穴はすべてを呑み込みながら、日に日に拡大していった。
 人を。家畜を。モンスターを。建造物を、村を、街を、国を、山を、湖を――何もかもを喰らいつくし、世界を侵すもの。
 それを王宮占星院は『侵食』と名付けた」

侵食はまったく正体不明の存在だった。
アルメリアの、否、アルフヘイムの知の最高峰である王宮占星院の導師たちをもってしても、その正体を掴めなかった。
そして、それを食い止める方法も。

「侵食によって失われるのは、目に見えるものだけじゃなかった。
 世界そのものの力とも言えるクリスタル、それもまた枯渇していった。
 お蔭でクリスタルを巡り、各国では諍いが絶えなくなった。戦争を起こす国もあったりでね。
 アルフヘイムはどんどん荒廃していった。いや、アルフヘイムだけじゃなく、ニヴルヘイムでも侵食は起こっていた。
 そんな折だ。私たち『十三階梯の継承者』が集められたのは――」

「……えっ? ち、ちょっと待って!
 それって、もしかして……」

思わず、なゆたは声を荒らげた。
バロールの語る話は、なゆたの知る物語とあまりによく似ている。
すなわち、『ブレイブ&モンスターズ!のストーリーモード』と。
なゆたの言いたいことをバロールも察したらしく、うん、と小さく答える。

「大賢者ローウェルの死をきっかけとして、私はニヴルヘイムへ渡った。
 鬣の王の首を手土産にね。それから魔王に変じて闇の世界を掌握し、ニヴルヘイムのために戦った。その結果――
 君たちに敗れ去った。正確には、君たちの操るモンスターたちに……かな。
 そう、君たちの知る『ブレイブ&モンスターズ』。そのシナリオは、その昔現実に起こったことなのさ」

なゆたたちがゲームとしてプレイしていた物語が、実は実際に起こった出来事をなぞるものだった。
そのことに、なゆたは衝撃を受けた。
だが、それならば。この場にいる『創世の』バロールはいったい何者なのだろう?
バロールは討伐され、世界には平和が戻ったはずだ。それに、この世界ではローウェルが存命なのも気になる。
ストーリーモードのシナリオが今いる世界の過去譚なのだとしたら、バロールと同じくローウェルも死んでいないとおかしい。


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