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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第四章

126崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/05/23(木) 13:26:15
「では、おさらいをしよう。君たちにはこれから、世界各地の『異邦の魔物使い(ブレイブ)』と合流してもらう。
 その第一弾がアコライト外郭だ。そこで外郭を守る『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を救出し、キングヒルへ連れ帰る。
 王国は君たちへの支援を惜しまない。成形クリスタルも、食料も、ルピも、可能な限り提供しよう。
 最終的には侵食を食い止め、消滅させる方法を突き止め、それを実行してもらう。
 それが成された暁には、君たちへの褒賞は思いのままだ。アルフヘイムに住むもよし、地球に帰るもよし。
 アルフヘイム、ニヴルヘイム、そして地球――三界を代表してと言うと烏滸がましいけれど、確かに約束しよう」

バロールがそう念を押す。少なくとも、世界を救うという魔王の目的に偽りはないのだろう。

「クリスタルは明日、君たちが出発するまでには用意しておくよ。他にも装備など、欲しいものがあれば言ってほしい。
 レアリティの高すぎるアイテムや期間限定の品は難しいが、恒常ドロップのアイテムなら融通できるはずだ」

「了解! じゃあ、今日はゆっくり休んで、明日さっそくアコライト外郭へ向かいましょ!
 みんなで力を合わせれば、今度のクエストだって絶対乗り越えられる!
 がんばろうっ! おー!!」

なゆたは仲間たちの前で殊更大きな声を出して鼓舞すると、大きく右拳を空に突き出した。
足並みのバラバラなパーティーを少しでも団結させようという気持ちでのことだったが、上滑り感が強い。
或いはそれは、仲間たちに――というよりは自分へ向けての叱咤だったのかもしれない。

「ありがとう。……じゃあ、これを渡しておこう」

バロールはローブの袖をまさぐると、メモ帳くらいの大きさの羊皮紙を一枚差し出してきた。
それには何か文字列のようなものが一行だけ書いてある。
それを一瞥し、なゆたは目を見開いた。

「こっ……、これは……!」
 
「そう。これは――私のメアドだ」

ファンタジー世界とは最も縁遠いものがいきなり出て来た。
各々のスマホに登録しておけば、キングヒルを出てもバロールと交信できるというわけだ。

「まっ、メアドと言っても見た目をそれっぽくしただけでね。魔術のひとつさ、地球のそれとは根本的に異なる。
 ともかく……今後は私の後方支援も必要になるんじゃないかと思うし、持っていて損はないと思うよ!
 ということで、みんなメアド交換しよう!」

世界を救う算段をしているというのに、甚だしくノリが軽い。
こういうところが信用して貰えないところなのだが、本人は気付いていないようである。

「間違いなくファンタジー世界にいるはずなのに、いまいちそう感じられないのはなんでかしら……。
 それはともかく、はい。登録しましたよ、あとでメールしますね」

「いやあ、よかったよかった! 安心したよ! 本当によろしくお願いするね。モンデンキント君!」

なゆたが早速スマホにメアドを登録すると、バロールは嬉しそうになゆたのプレイヤーネームを口にした。
バロールは『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の名をプレイヤーネームでしか知らないので、当然のことである。

「任せといて下さい! ランカーの意地にかけて、必ず!
 世界を救うなんて全然ピンとこないし、できるかどうかもわからないけれど――
 滅びると分かってるものを放ってなんておけない。わたしたちが何かすることで、バッドエンドが覆るなら。
 精一杯がんばります!」

なゆたもまた、特にモンデンキントの名を隠していたわけではない。普通に返事をした。
明神の目の前で。自分はモンデンキントです、と言ったのだ。

「五穀豊穣君も、色々思うところはあるだろうし……釈然としないものもあると思うけれど。
 どうか、今は力を貸してほしい。全てが終わったとき、まだ私を信用に値しないと思うなら、そのときはそのときだ。
 私の首でも命でも、好きなものを差し上げるよ。それでどうかな?

 エンバース君、彼女たちが君を信じるなら、私も君を信じる。
 どうか、世界を救うのに力を貸してほしい。侵食なんてわけの分からないものに、わけも分からず殺される者が出ないように。 
 理不尽な破滅から、すべての世界を守れるように――」

バロールは順繰りに『異邦の魔物使い(ブレイブ)』たちを見遣る。

「ジョン君、不幸な手違いで君を牢獄に押し込んでしまってすまない。
 勝手なことをと思うだろうが、どうか君の力も私に預けてもらいたい。破壊は二度と起こしてはならないんだ。
 君の故郷に住む、君の大切な人たちのためにも。
 
 カザハ、君については……うん。なんて言えばいいのかなあ……? 私にとっても今の君の姿は予想外というか……。
 まぁいいか! 今の状態だと、そっちの姿の方がきっと都合がいいかもだ。何しろ昔の姿はアレだったからねえ!
 ともかく力を貸しておくれ。“以前みたいに”ね――」


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